【悲報】アンジェリカさん、手加減を忘れ殺っちまった模様。   作:にわか

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Chapter1 「星天を照らせ地の朔月」 
転生、そして平行世界へ


 人類の存続。

 その為にエインズワース家が起こしたのが聖杯戦争だ。

 それは、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七枚のカードを互いに奪い合い、他を御し、全てを揃えた者の願いを成就させるという、事実、言葉以上に大きな魔術儀式であった。

 

 あれからもう随分と時が経った。

 あの頃と同じ、学園の高等部へと再び(・・)通うこととなった今、俺、衛宮士郎は当時のことを振り返ってみようと思う。

 

 俺はかつて、もとい前世(・・)で聖杯戦争に参加していた。

 いや、せざるをえなかった。

 

「彼らは――ただ 子の健やかな成長を願った 富も繁栄も思いのままはずなのに

 親から子への…ごく当たり前の願いだけを叶えてきたんだ 四百年もの間 ひとつの例外もなく…!

 それを 悪だと言うのなら…

 俺は悪でいい」

 

 理由はあの人(前世の父)のような正義、救済の為などではない。

 ただ一人の妹のためだった。

 

 そして、妹の**はあの人が人類の救済を求めて最期に俺へと託した希望でもあった。

 彼女は神の稚児を信仰する朔月家の末裔であり、「人の願いを無差別に叶える力」を与えられた子供。その力は非常に強力であり、前世の冬木市で起こった謎の巨大災害で朔月家を覆っていた結界が壊れた際に多くの人々の「助かりたいと言う願い」が押し寄せ**に届いた結果、一瞬で災害が消滅した。ただし当の朔月家はその災害で**を残して全員が死亡している。 

 朔月の家に残された記録によれば、彼らは初代から**の代に至るまでの400年間、1つの例外もなく神稚児の力を自らの富や繁栄に使う事はせず、子の健やかな成長を願い続けていた。

 

 あの人は正義を求めた。

 **を犠牲にして全世界を救うと。

 個と種、救うべきは種であり、そのためなら個を切り捨てると。

 あの人の渇望は**をモノとして扱い、超常的な力に願うことだった。

 

 しかし、俺は違う。

 **と暮らしていく中、疑問に思ってしまったのだ。

 この手で守ろうとするものは本当に愛するものなのだろうか、と。

 

 故に、俺は決めた。

 全よりも個。

 見知らぬ誰かより妹を選択した。

 結果あの人を裏切ることになるとしても、最低の悪だとしても、俺は兄として妹を守ると誓ったのだ。

 

 そんな時だ。

 俺の前に立ちはばかったのは一義樹理庵(ジュリアン)

 またの名をジュリアン・エインズワース。

 エインズワース家を指揮する俺の___

 ___前世での友人だ。

 

 先に述べた通り、彼の目的は人類の救済。

 その為にあの日冬木市に災害を起こした。

 

 そして時は進み、俺が妹に全てを明かそうと、本当を初めようとしたとき、そのジュリアンが現れた。

 

 俺は咄嗟に、**に逃げろと叫んだ。

 だが、**はどこへと聞き返してきた。

 

 そして**は奴らに捕まった。

 魔術など触れてこなかった、一般人である俺に出来ることなどなかった。

 

 とは言えども、これは前世の話。

 現在、エインズワースの聖杯戦争は、いや、そもそもエインズワース家自体がこっちの世界では存在しない。

 代わりにあったのが、アインツベルンの聖杯戦争だ。

 俺も初めは驚き、怒りもしたのだが、なんとかなっているらしいと聞いて落ち着いた。

 詳しくは割愛するが、キリツグが世界を飛び回り芽を摘んでいるとだけ言っておこう。

 

 とにかく、またも聖杯に関わってしまっている以上、俺は聖杯について一度、考察しなければならないだろう。

 だが一体どういう仕組みで聖杯戦争が動いていたかなんて、俺には分からない。それは、例え今世の養父母たる二人に魔術を鍛えられた今でも変わらないし、その養父母も分からないと言っている。

 そもそも時間がかなり経っているため、記憶もおぼろげだという問題もある。当時は魔術なんて理解していなかったのだから覚えられないのも無理はないだろう。だから、ただの風景として大雑把に説明は出来るが、その程度で聖杯戦争レベルの魔術儀式を解明出来る訳もなく、これについては手詰まりだ。

 

 だが、実は一番の問題は、これではない。

 俺が幸せを祈った前世の妹の名前が思い出せない(・・・・・・・・・)ことなのだ。

 この世界では、当然あの闇の爆発は起きてないし、そもそも聖杯、天然モノの万能の願望器たる幼子など存在しない。

 平行世界であるから、つまり逆行では無いため、俺は前世があったと証明することが出来ない。

 故に、夢だったのではないか。

 かわいそうな孤児の妄想ではないか。

 今の幸せな生活に浸る中、何度も自身に問いかけた。

 

 その度、何度も否と答えてきた。

 あれは確実にあったことだ。

 俺は聖杯戦争に勝利し、前世の妹を最後まで守り、死んだ。その事について、悔いは無い。

 

「**がもう苦しまなくていい世界になりますように」

「やさしい人たちに出会って―――

 笑いあえる友達を作って―――

 あたたかでささやかな―――

 幸せをつかめますように」

 

 あぁ、あの時せっかく兄妹として、『本当』を始められそうだったのに。だが、あの世界では彼女は幸せになれないらしく、おそらく別世界に飛ばされた。いや、そんなことは些細なことだ。俺の願いは言った通り。アイリ曰く、聖杯なら必ず願いを聞き届けるとのこと。

 

 俺が都合よく、その別世界がここだったなら良かったのに、と考えてしまうのも必然的だろう。だから調べた。

 

 だが現実は非情だ。

 

 名前が分からず、記憶の中にある声や容姿だけで人物を特定できるなど、表の世界で出来る筈もない。

 ならば裏、魔術の世界ではどうだろうか。

 そう、いたのだ。

 詳しいことは省くが、俺は養父母のコネを最大限に駆使して、(もの)を探すプロに出会った。

 そして結果は、そのような人物は過去にもいないし、今現在も存在しない。とのことだった。

 

 俺はこの時、この世界で初めて泣いた。

 もう、名も知らぬあの妹には会えないのだと突きつけられて。

 俺は心のどこかできっと会えると信じてたのだろう。

 聖杯はきっと愛溢れるモノだと決めつけていたのだろう。

 

 こっちのキリツグにも、妻のアイリにも心配をかけた。

 もう迷わない。囚われない。

 俺はこの時改めて決心したのだ。

 もう二度と家族を理不尽に奪われないようにしようと。

 何がなんでも守り抜いてみせると。

 アイリ、キリツグ、イリヤ、セラ、リズ。

 大事な家族だ。

 

 俺は守るための力が欲しい。

 

 そして、"魔術師殺し"のキリツグと"魔術師"たるアイリの弟子となり、更には、英霊エミヤの投影魔術の鍛練。とにかく努力をした。

 

 俺は、それから本当の意味で、この世界の衛宮士郎として生きはじめたのだ。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 「おにいちゃん!」

 

 

 ……え?

 

 玄関を覗くとそこにいたのは___俺の記憶にある、前世の妹その人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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