【悲報】アンジェリカさん、手加減を忘れ殺っちまった模様。   作:にわか

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自信は無いです。



転生、そして平行世界へ 2

【√アインス!】

 

 

 

 

「とおさっ……あれ、イリヤ?」

 

 少女はその声を聞いた瞬間、胸が詰まる感覚に襲われた。

 それは、ある人物を思い起こさせるものだったからだ。

 

 少女には兄がいた。

 正確には義兄で、たった二人のかけがえのない家族だった人だ。

 その名を衛宮士郎。

 ()の世界で命がけで運命から少女を解放し、幸せを願ってくれた大切な()だ。

 今でも少女は、はっきりとの姿、声、そして温もりを覚えている。

 

「どど、どうも、お兄ちゃん」

「何なんだよ、一体? 訳が分からないぞ……遠坂とルヴィアはどこ行ったんだ。いや、その前にイリヤ。知り合いだったのか」

「あはは、いやぁ、ちょっと。あはは……」

 

 少女は振り返る。

 その姿は___

 

「なんかイリヤ、肌が白く……?」

「ひ、光のかげんじゃない? 気のせいだよ」

「お、おう。そうか……」

 

 ___その先にいる青年と同じ声、容姿、そして雰囲気だったのだ。少女の大切な兄と。大好きな兄と。

 そして、雰囲気。

 祭壇で最後に手を握り、少女の幸せを願ったときと同じ柔和さ、そしてどこか張り詰めたような空気。

 少女の知る士郎とまったく(・・・・)一緒なのだ。

 脳裏に、様々な思い出が一気に浮かぶ。

 

 気付けば、少女の体は動いていた。

 

「おにいちゃん!」

 

 少女はその勢いのまま青年に抱きついた。

 その思いを、青年にぶつけた。

 そしてそれを、青年は難なく受け止めた。

 その体は、抱きついたからこそ分かる引き締まり具合。

 発達した筋肉。

 ぶれない体幹。

 素人目ながらも、並みの訓練で身に付くものではないと少女は感じた。同時に、嬉しさで心が暖かくなる思いで溢れた。

 

 だが、と少女は考えを改める。

 

(いるわけが……ない)

 

 少女はこの年にして、残酷なほど冷静だ。

 故に、夢を抱くことができなくなっていた。

 その思考で考える。

 事実を思い出す。

 

 そう、少女はあの世界では願われたように幸せになれない。

 故に飛ばされた、この世界に。

 ……兄を置いて。

 

 少女はその手をほどき、数歩下がって、内心を悟られまいと必死に感情を圧し殺した声で言う。

 

「み……みみみ、美遊?」

「失礼しました……私の兄に……似ていたもので」

「……」

「な、なるほど。そういう……」

 

 少女、美遊は顔を上げられない。

 今、上げればきっと酷い顔だろうからと。

 頬を伝う感覚はハッキリと感じていた。

 

「えっと、君の名前(・・)は? イリヤとは友達?」

「……っ」

 

 青年は美遊に問う。

 俯いたまま、少女は答えるしかなかった。

 

「はい……クラスメイトの美遊、と言います」

「そ、そうだ。美遊とお兄ちゃんって会ったことなかったんだね……」

「そう……か。みゆ、美遊か……あぁ、ごめん。はじめまして(・・・・・・)、俺は衛宮士郎。イリヤと仲良くしてくれてありがとう」

 

 青年、士郎は、"はじめまして"とそう言った。その目はまっすぐと少女を見据えていた。

 そして、朔月(さかつき)美遊、ミユ・エーデルフェルトを名乗る少女は、この言葉に強いショックを受けた。

 もう、限界だった。

 

「……」

 

 美遊は現実を最考察する。

 希望を求めて。

 だがしかし、それでも___

 

(___私の、お兄ちゃんじゃ……ない)

 

 平行世界。

 ふと美遊の頭にこの単語が浮かんだ。

 頭では分かっていた。

 だが、心のどこかで期待していた。

 今、現実を突きつけられ、美遊は世界に、運命に絶望した。

 

「失礼します」

「美遊?」

 

 美遊は少し早口になったことを自覚しながらも、軽く会釈をし、逃げるように玄関の扉から出ていく。もう、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

 

 結果として、この不意の邂逅は美遊の心に波紋をもたらしていた。

 すなわち、希望は無い。

 美遊は兄のいない世界で生きているのだと。

 

 一方、これは美遊に冷静さを失わせていた証拠でもあった。

 美遊は気付かなかった。

 士郎の顔が、初め顔を合わせた際に少し歪んでいたことに。

 問いかける際、その目は美遊だけを捕らえていたことに。

 そして、美遊の名前を呼ぶ際、噛み締めるように呟いていたことに。

 

 美遊にもっと心を律する術があったなら、士郎の問いかけの意味も解したもかもしれない。

 だがそれはイフの話。

 過ぎた時はもう戻らない。

 

 

 こうして兄弟の邂逅は過ぎ去った。

 降り注ぐ雨はまだ止まない。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 雨上がりの朝。

 まだ完全に日の昇らぬ、薄暗い冬木の街。

 そこにで、二人の男女が特に会話もなく歩いていた。

 

 朝の涼しい空気に包まれ、日の差す光景は、同じ街とはいえ神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

 何回目かの曲がり角、青年が恐る恐る口をひらいた。

 

「で、今は何してるんだ?」

「……面倒ね。ちょっとはその節穴を広げて観察し、からっぽの脳ミソを使って思考なさい」

 

 女の方はほんとうに面倒くさそうに、青年の方に見向きもせずスタスタと歩き続ける。

 青年もいそいで追って歩くが、その頭ではしぶしぶと考えを巡らせていた。

 青年は女とは長い付き合いだ。

 例の件で、自分で対価を払うと養父母に告げたとき、申し付けられたのが彼女のここでの手伝いだった。

 

「いや冬木市をほぼ一周回るように点々と何か書き上げてるのは分かるんだが……聖堂教会独自のものは流石に……って、急に止まるなよ」

 

 女の足は止まっていた。

 青年がドンとぶつかるが気にもしない。

 女は青年に持たせた鞄をかっぱらい、道具を取り出し、かれこれ何回目かの仕込みを始めていた。

 

 女が青年の方に振り向く。

 白銀の髪をふわりと払う動作に、青年の目は釘付けにされた。

 そんな青年の様子に女は満足したようで、にっこりと笑った。

 青年はドキリとしたが、その様子に女は愉悦に浸るばかりであった。

 

「な、なんだ」

 

 気持ちを隠すように青年は女に問いかけた。

 

「さぁ、やりなさい」

 

 女は紙といくつかの道具を渡して、自分は仕事を終えたと言わんばかりの伸びをした。

 青年は紙を見る。

 どうやら手順が書いてあるらしい。

 様式は部外者の自分でも分かりやすいように、女が青年の為にまとめたものだろう。

 いつものことだ。

 青年は作業に移る。

 

 暫くして、女が口を開いた。

 

「誘眠と人払いの結界」

「……え? どうしてそんなモノを?」

 

 青年の様子に女は呆れたように額に手を当てる。

 

「さっき言ったことを忘れたの? あ、そこもう少し右よ。あぁ、もう。全部書き直して」

「え、紙には左って……」

「さっさとやりなさい、飼い犬」

「なんでさっ」

 

 青年は突っ込みながらも手は止めない。

 女はとある世界ではその性格だけで2騎を従えたと言うが、その手腕、いや素質は彼女にもあるようだ。

 

「間違えたわ、しっかり名前を呼んでしつけないとね、士郎(駄犬)

「変わってない!?」

 

 とは言え士郎も逆らえない。

 言われたように工程をやりなおす。

 その様子を見ながら、女は士郎に話しかける。

 

「お嬢様から聞いてるわ。教会を中継に人探しをさせた対価を自分で払うと言ったのはあなたなのでしょう?」

「くっ、教会というのはもっと慈愛溢れるものじゃなかったのか……」

「……世の中、金です。対価無くして誰も動きません」

「さいですか……ところでもう一度あの人にお願いすることは出来るか? もしかしたら、結果に間違いがあったかもしれない」

「ふふ、喜びなさい。彼を呼ぶ必要はありません」

「……?」

 

 ちょうど終わった士郎は女の方を見た。

 

 「本当はこっちの仕事だし、聞かれなかったから言うつもりはなかったのだけれど」

 

 女はそう前置きしてから告げた。

 

(美遊は……そう、なのか)

 

 それは、士郎に行動を起こさせるには十分なものだった。

 

 

 

 

 




【√ツヴァイ!(没)】




「おにいちゃん!」

 イリヤ(・・・)は思わずそう叫んでいた。
 目の前には呆然と立ち尽くす美遊と、対して、情熱的に彼女を抱きしめる士郎がいた。

 この状況で、数多の戦場を駆けてきたイリヤは、その目でこれを観察していた。

(おにいちゃんが美遊に涙を浮かべながら抱きついてる……)

 イリヤは少しイラっとしたが、自分を抑え、分析する。
 士郎の顔は今までに見たことが無いほど幸せそうであった。

(泣くほど嬉しいの……? だけど、美遊の顔は……控えめにいって気持ち悪がってる。って、あれ絶対私のおにいちゃんだから我慢してくれてるよね!? 美遊、大人すぎだよ……あぁ、そんな目でこっち見ないでぇえ)

 そもそも美遊の顔に、士郎と面識がある様子は見られない。
 他人。
 だけど友達の兄だから。
 突き飛ばすのも失礼だし、こういう挨拶かもしれないし(錯乱)。
 その死んだ魚のような目がイリヤと合った。
 対照に、士郎は抱擁をやめようとする様子は見受けられない。

 イリヤは状況に、ただ頭を抱えるばかりだった。

(にしても、おにいちゃん……よりにもよって私じゃなくて私の友達に手を出すなんて……あれ、美遊とおにいちゃん、会ったことないよね? もしかして○リコン!? 抱きついちゃうほどタイプ!? じゃぁなんで私に手を出さないの! って、美遊。なんか私に同情する目に変わってない? いや、むしろ変わるなら場所を変わってほしいんですけど!)


 イリヤは努めて冷静になろうとする。
 だが内心、引き剥がす方法を考えては、士郎のあの幸せそうな顔を見て、手が止まってしまうのである。
 イリヤには分からない。
 だが、あの雰囲気の士郎は止めてはならない気がしていた。

 暫く時間が止まったように三者は動かない。
 チクタクと、置き時計の針の進む音だけがここ、衛宮家の玄関に響き渡る。

「もう、いい加減にしてぇえええ!」

 とはいえども、流石に長すぎる。
 状況が変わらないことに対し我慢できなくなったイリヤの怒声が轟く。
 はっと士郎が美遊から離れた。
 因みに美遊の目はすでにあの人(前世の養父)並みに死んでいた。

「……イリヤ……私、還るね」
「どこに還るの、美遊!? そんな字が変わるほど我慢しなくても良かったんだよ!?」
「なあ、イリヤ。その子は友達? 名前は?」
「おにいちゃんは黙ってて! って、やっぱ初対面じゃん!」

 イリヤは叫びながらも、壁にドンと拳を叩きつけた。
 すこし拳が壁にめり込んだ。
 その思いを発散するため、壁は犠牲になったのだ。

「いきなりだったのはわるかったけど、仕方ないじゃないか」
「仕方ないって何!? 名前も知らない女の子に抱きつく変態なんて知らない!」
「なんでさっ」
「じゃぁ、さようなら。また明日」

 美遊は衛宮家の玄関の扉を開き、半分顔を出しながらそう言った。
 その目にハイライトは無い。
 それもそのはず。
 友達の兄が変態だったのだ。
 本来なら絶交モノである。
 その点、美遊は寛大であった。

「美遊、ホントごめんね、またね~ハハハ」

 だが問題は何一つ解決していない。
 いやむしろ、美遊が行ってしまったので、フォローをするというタスクがイリヤに追加されたくらいだ。
 これは絶対である。
 ……兄が通報されないために。

「みゆ……みゆちゃんか……」
「そんな噛み締めるように呟かないでよぉ、いつものおにいちゃんに戻って! 初対面の子に抱きつくような変態はやめーてー」
「ん? みゆは義妹だぞ?」
「……は?」

 これにはイリヤも素の声が出ざるをえなかった。



☆☆☆



「おにいちゃん……」

 美遊は自分に与えられた部屋で独り、考えていた。

「どうして……」










【あとがき】




2パターン考えて思考が停止しました。
一応載せてみます。

どちらかの√で続けたいと思います。

【選択肢(偽)】

  • √アインツ!
  • √ツヴァイ!
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