【悲報】アンジェリカさん、手加減を忘れ殺っちまった模様。   作:にわか

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相変わらずの糞文+短さで進みませんが、ご容赦ください。



転生、そして平行世界へ 3

 そう、人類の守護者のチカラは……人類の為に振るわれるものだ。

 士郎はそれを……

 その守護者のチカラを……

 

「くっ」

「ほら、士郎、次はオルガンよ。さっさと運びなさい」

「なんでさ……」

 

 雑務に用いていた。

 

 厳密には、士郎が改めて鍛え上げた筋肉を用いた肉体労働だ。その体は守護者の力を用いるため並々ならぬものに仕上がっている。そして、それを用いてやることは、道具を棚に揃え、箒をはき、雑巾をかけるなど掃除だ。

 これに至った経緯は特に変わった話でなく、結界作成のため冬木の街を一周した後、なし崩し的に道具の整理を手伝うこととなった、というものだ。

 因みにその策を弄した白衣の女はそれを椅子に座って監視している。マスクをつけてちゃっかり防塵対策もしている。手伝う気はやはりみられない。

 

(はぁ、いつものことか……)

 

 士郎はどこか悟った目で、作業を進める。

 現在位置は教会の地下。

 薄暗い蝋燭の灯りと、じめっとした空気が特徴の不気味な場所だ。さらに長年放置されたであろうガラクタが多く転がっていた。

 

「ガラクタじゃないわよ? 触媒や霊装の素材になるものばかりだもの。特に今あなたの手にあるそれは、最強の英雄にまつわる杯の欠片よ」

「だからそれをガラクタと言うんじゃ……まぁ、俺は掃除や整理は好きだから構わないけどさ」

「それは良かったわ。それに、学校もサボれて私みたいなか弱い女の子とふたりっきり。どこのヴィジュアルノベルの主人公かしら。はぁ、妹ちゃんたち(・・)に刺されそうで怖いわ」

「どういう意味だよ。あと……まだそうと決まった訳じゃない」

 

 士郎は、元気のない声でぽつりと言った。

 その顔は苦渋に満ちている。

 カレンはそれにどこかムッとした顔で言う。

 

「あら、そう?」

「カレンが言うのはあくまで推察だろ。さっき友人のハッカーに頼んで、過去数年分の冬木の戸籍データを調べてもらってる」

「私の話が信じられないって言うのね」

「そうゆうわけじゃ……」

「手が止まってるわ。で、そんなことをしてどうするつもり?」

「……」

 

(俺は……確信が欲しいのかもしれない。俺の願いは叶っていない(・・・・・・)という確信が……)

 

 士郎は前の世界で美遊(聖杯)に願った。

 

 美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように。

 やさしい人たちに出会って―――

 笑いあえる友達を作って―――

 あたたかでささやかな―――

 幸せをつかめますように。

 

 それは、思い返せば残酷な話で、

 世界を移動しなければ解決しない程の問題で、

 美遊一人にすることに他ならない話であった。

 

 士郎のように、生まれ変われるならそれでいい。

 しかし、今回は士郎の主観では突然現れたのだ。

 

 ラグ。

 逆行。

 転移。

 

 士郎の脳裏にそれら言葉が並ぶ。

 

 この世界はそんなにやさしくないと知った士郎だからこそ、悔いている。身元保証人も無しに、現代日本で生きていくことはできない。それは出来たとしてとても過酷なことは想像に難くない。

 だからこそ、データで知り、事実を確認したかったのだ。

 間違っていてくれ、と。

 

「でも、それってストーカーじゃないかしら。変態ね」

「いやでも……」

「いいじゃない、本人に直接聞けば」

「……」

 

 士郎は考える。

 それでイエスと答えたとしよう。

 だが果たして、自分に兄と名乗る資格があるのだろうかと。

 

「面倒ね。こんなにシンプルで分かりやすい話なのに」

「え……」

「まぁ、いいでしょう。士郎、お腹がすいたわ。昼食を作りなさい。マーボー豆腐がいいわ」

「……わかった」

 

 椅子から立ち上がり、出ていくカレン。

 士郎は手早く今していた作業を終わらせ、後に続いた。

 残されたのは倉庫のガラクタたち。

 その中の小さな欠片が、鈍く黄金に輝いていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 士郎はその後、マーボー片手に学校に来ていた。

 なんのことはない。

 これは士郎が頼んだこと(ハッキング)に対する、提示された報酬だ。

 依頼の際、丁寧にレシピまで送られてきたので、カレンに昼食をつくるついでに作ったのだ。

 だが、あの後片付けが終わるまで少し時間が経ってしまったので、今はもう放課後。授業を丸一日サボったことになる。

 

(まぁ、前の世界での記憶もあるし、そう真面目に受ける必要も無いんだけどな……)

 

 学力面で心配はない、赤点を取らない程度には。

 それでも士郎は授業に出たかった。

 それは何気ない平和の象徴。

 いつ、それが崩れてもおかしくないことを士郎は知っているからだ。

 

「やぁ、衛宮じゃないか。どうした、学校を休んで生徒会の仕事を手伝いにくるとは。わけがわからんぞ」

 

 士郎が向かった先、生徒会室の扉を開けようとしたとき、ちょうどメガネの男子生徒と出会った。彼は柳洞一成。士郎の友人だ。

 

「よう、一成。それについては目を瞑ってくれ。それで、書記はいるか?」

「書記……あぁ、うち(生徒会)の書記ならさっき、部費報奨金を即行で使い切った件について、先生に呼び出されたぞ」

「……何やってんだ」

「どうした、用事か?」

「あぁ、ちょっとな」

「そいえば、衛宮が来たら渡して欲しいって封筒を預かっていたな」

「え?」

「ラブレターにしては淡白だな。まぁいい、受けとれ」

 

 そう言われ、士郎は受け取った。

 中には一枚の紙が入っているようだ。

 

「俺は用事があるからいくぞ、じゃぁな」

「あぁ、またな」

 

 去っていく一成を見送って、士郎は封筒の中にあった紙に目を落とした。

 壁に寄りかかり、文字を追っていく。

 

 曰く、

 

 おそらくこっぴどく叱られるから、報酬は個人用のロッカーに入れておいて欲しい。

 そして、結果は黒であった。

 

 とのことだった。

 

 つまり、美遊は士郎の知る義妹である。

 美遊はひとりぼっちででこの世界に投げ出された。

 頼る親類もおらず、味方もおらずに。

 

 士郎はここで顔をあげ、目を閉じ、深く呼吸をした。

 頭の中を整理し、覚悟をして、再び内容に戻った。

 

 後の内容はあってないようなものが綴られ、最後に、エーデルフェルトが犯人と書かれていた。

 

 エーデルフェルト。

 その名前で士郎が知るのは、一人だけだった。

 フィンランドの魔術の名門、エーデルフェルト家のお嬢様で現当主。

 

「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト……」

 

 お向かいさんであった。

 

 

 

 

 

 

 


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