【悲報】アンジェリカさん、手加減を忘れ殺っちまった模様。   作:にわか

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あけおめことよろです。
お読み頂きありがとうございます!
年は変わってしまいましたが、
引き続き本作をよろしくお願いいたします。

【今までのお話】

士郎「妹だいすき! だけど兄の資格なんて……」
美遊「お兄ちゃんだいすき/// 士郎さんってお兄ちゃんに似てる……?」



アインツベルン城

 これは、俺の______衛宮士郎のもう1つの後悔。

 あの日、かつての俺は衛宮邸である少女と邂逅していた。

 

『これが、最後です』

『最後なんですっ、私だって本当は、もっとセンパイといたかった!』

『それももう、終わり……聖杯戦争が始まりました』

 

 楽しい一時の後、突如としてこう言い出したのは間桐桜(まとうさくら)。彼女は士郎含め2人だけしかいない弓道部の後輩であり、俺の射形を好きだと言ってくれた少女だ。

 

『間桐はその儀式を作り上げた家系の1つなんです』

 

 その内には、多くのものが秘められていたのだろう。それは話す内容からして想像に難くない。

 だが、俺は最初何の冗談かと、桜の気持ちなど考えもせず、騙していたのかと憤ってしまった。桜の顔を見れば、目尻に涙を浮かべ、今にも泣き崩れてもおかしくない様子だ。

 俺は慌てて口をつぐみ、何か声をかけようとして、何も言うことが出来なかった。

 そんな俺を気遣ってか、何事もなかったかのように桜は続ける。

 

『聖杯戦争は、このサーヴァントカードを使って、自身を英霊化させて殺し会う儀式です』

『このカードの英霊は、英雄王ギルガメッシュ。間違いなく最強の一枚でしょう』

『**ちゃんを助け出したいなら、聖杯戦争の勝者になって下さい。このカードなら、不可能ではないかもしれません』

 

 それは此度の聖杯戦争の在り方(ルール)

 ただ一つ俺が思ったのは、俺の最愛の妹が生け贄になる、そのことだけだった。

 あぁ、そうだ。俺はこの時、選択肢があったんだ。

 桜……

 だけれど、俺は……

 

『けど、もう1つ、許されるならっ、許してくれるならっ!』

『逃げてください! 魔術のことも、**ちゃんのことも忘れて、どこか遠くへ! センパイがそれを選んでくれるなら、私も全部捨てて、一緒に』

 

 俺は……

 桜を選ばず(捨て)______

 

『ダメですよぉ、センパイ?』

『ひどいですセンパイ。センパイにするのもされるのも、私じゃなくちゃダメなのに……』

 

 ……なんだ、これは。

 コイツは何を言っている?

 俺は知らない。

 知るはずがない。

 こんな______

 

『私とセンパイがお話しているのに、どうして知らない女が入って来るんですか?』

『はぁ、後でセンパイお仕置きしなきゃ。センパイを理解出来るのも、センパイを愛するのも、センパイを殺せるのも、私だけなのに』

『センパイ、誉めてくれるかなぁ。こう見えても私、得意なんですよ? 害虫を駆除するの』

 

 ______こんな(記憶)、あるはずが……

 

「っは!?」

 

 俺は思わず飛び起きた。

 その拍子に、今まで座っていたらしい椅子がガタンと倒れた。

 心臓のドクンドクンという音がうるさい。体は冷や汗びっしょりで、服に張り付いて気持ちが悪かった。

 平常心に戻るため深くゆっくりと呼吸しながらも、俺は周囲に目をやった。

 

「夢、か……」

 

 見れば、部屋は消灯され、空は真っ黒だ。

 しかし、窓から差す月明かりでうっすらと内部は照らされて、怪しく設置されたモニタや壁に掛かった銃器が光る。

 ここは……衛宮邸でもなければ衛宮家でもない。

 士郎の自室にこんな秘密基地的な造りはなく、所詮民家である。

 しかし、ここは違う。

 灯りは灯されていないとはいえ、天井には芸術品のような照明とモニタがぶら下がり、武器を描けてある壁は物静かな、しかし温かみを感じさせる石で出来ている。顔を動かせば、窓から見えるのは暗い木々と、輝く遠くの街並み。

 

 そう、ここは士郎にとって見慣れたアインツベルン城。

 今は違うが、かつては基本的に明かりが落とされる事のない不夜城として存在していた。外観は、建造物その物を俯瞰すれば凹字型になっており、中央のへっこみ部分が中庭に当たる。対霊加工は完璧で、半端な幽霊では進入出来ない。出来るとしたらそれは霊格の高い、名のあるモノのみといった仕様だ。

 その城の一室であった。

 

「あぁ、そうか……俺は……」

 

 倒れた椅子を起こし、再び腰掛け、目の前に広げられた黒い光沢のある部品に目を落とす。

 黒い部品はそれぞれは意味を成し、そこには技術者の工夫とかつての使用者(・・・・・・・)の拘りがある。

 それを士郎は思考に耽りながらも銃器を弄ぶ。

 

「……」

 

 士郎は一定の間隔ごとにこの城に訪れていた。

 表向きは親友、一成の家に泊まりに行くと言ってある。

 しかし、本来の理由は、武器のメンテナンスと鍛錬だ。

 まさか、イリヤ達がいるなか、銃を分解したり、投影を使って型の練習をしたりはできない。鉄や硝煙の匂いは中々とれないものだし、銃器や夫婦剣を使っての戦闘訓練となれば、まず場所がない。

 セラやリズはある程度は知っているにせよ、魔術は秘匿するものであるというのもある。

 

「…………」

 

 もう、何度同じことを繰り返してきたことか。

 士郎は目を瞑ってでも、これが何のパーツで、どの順番で組めばいいのか察することができた。その証拠に、体は勝手に動き特別仕様の短機関銃(キャリコ)が一つ組み上がっていた。

 

「もしあの時、この(暴力)があったら……いや」

 

 全ては救えない。

 俺は選択した______**(美遊)を救うと。

 決めたからには果てなく往かなければならない。

 それは独善的で、利己的な考えての元だったかもしれない。

 

「………………」

 

 散らばった弾を集め、ひとつひとつ丁寧に装填する。

 そして徐に完成させたそれを窓の外に向け、空へ浮かぶ黄色い的へ照準を合わせた。

 

 風が強いのだろう。

 雲が流され、的が雲に徐々に隠れていく。

 真っ暗な帳に満たされんとするが______その時部屋に、城全体に明かりが灯る。

 

「……侵入者?」

 

 これは敵のもたらした何かではない。

 士郎が、ここアインツベルン城に組み上げた、登録された人物以外を識別する防衛機構の一つだ。

 何故、目立つように明るくするかと言えば、迷い混んだのが単なるこそ泥だった場合、自然と退散することを期待しているというのと、それでも尚侵入する場合、消灯して視界を一時的に潰した後、強襲できるようにするためである。

 繰り返すようだが、アインツベルンの主な研究はホムンクルスの製造にある。だが、それだけでは防衛に向かず、副次的かつ必然的に、防御系の結界や防壁の研究も並列して行われていた。その一つだ。それ自体は迎撃等のルーチンは組み込まれていないが、これに連鎖して城の管理システムが起動する。

 

「……」

 

 この城は魔術的にも、機械的にも(・・・・・)守られている。

 衛宮キリツグは現代装備を好んだ。それは武器であったり、使い魔としてであったり、多岐に渡る。そのせいで城の周囲には数多のセンサーと監視カメラが設置されていた。

 

「監視システム起動、モニタに対象の映像を映せ」

 

 音声認証により、部屋の設備が稼働する。

 天井から吊るされたモニタに侵入者の様子が表示される。

 そこに映っていた人物は______

 

「______まさかっ! なんでさ……」

 

 

 

 ***

 

 

 

 時は少し遡る。

 

「いらっしゃいませ、皆様方」

 

 目の前には、魔法少女であるイリヤスフィール、そしてその家族のセラ、リーゼットがいた。

 それを出迎えるのは、白髪に髭を蓄え、眼鏡をかけた老人。かなり引き締まった体つきをしており、体には無数の古傷が刻まれた執事、オーギュストだ。

 彼は恭しく礼をし、彼女らへの歓迎の意を伝える。ひとり、あの男がいないのが些か気掛かりだと思いながらも、家の管理を任される者としての矜恃を以て、職務に従事する。

 

「ところで、本日は士郎様はいらっしゃらないのですか?」

 

 家の扉を開きながら、オーギュストは不自然さを感じさせないように注意深くたずねた。

 

「えっと、お兄ちゃんは今お友達の家にいると思うよ」

「ほう……?」

「なんか、鍛錬がどーのこーのって。朝も早くから出掛けて朝練だって」

「それは感心ですな」

 

 にこやかにそう言う裏で、思考を巡らせる。

 イリヤスフィールは年のせいもあって気付いていないようだが、普通、高等学園に通う生徒は鍛錬などという言い方はしない。よっぽど武道に励んでいれば別だが、お嬢様に伺えばどうもそういう訳ではないらしい。部活はやっておらず、授業後は生徒会に顔を出して何やら手伝いをしていると聞いていた。

 

(……怪しい)

 

 前の一件、オーギュストは士郎の急な来訪時の素振りから多少の心得はあると見込んでいた。それでなにもしていない筈がない。鍛錬……なるほど。朝と夜にどこかで鍛えているのだろう。それは武術か魔術か。あるいは両方か。

 ここで、オーギュストは一つの調査結果を思い出した。それは、何も分からなかったという結果だ。前回の調査よりも深く調べたにも関わらずにだ。これは一見無意味な結界と感じるかもしれないが、この場合は大きな意味を持つ。人にはルーツがあり、親があり、子がある。家系図というのがその最たる例だ。だが、衛宮士郎にはそれが無い。

 

 ふと、主と話す雪の如き色白い肌に紅い瞳を持つイリヤたちに目をみやる。

 

(アプローチを変えてみましょうか……)

 

 衛宮、戦闘家、家系図……今まではオーギュストのキャパシティで収まる表の諜報活動のみしてきたが、アインツベルンとその家系についての調査を怠っていたと気が付いた。これは執事業がメイン故仕方のないことだ。以後は魔術師関連の調査を仕える主にも協力を要請して、進めていくことを決めた。

 

「と、言うわけで……お風呂をお借りしたく参上つかまつったわけですが……」

 

 ちょうど方針が決まる間に、こちらの話も纏まったようだ。

 オーギュストの主がうんうんと頷いて、満面の笑みで彼女らを歓迎する。

 

「もちろん構いませんわ! シェ……イリヤの家族なら私の家族同然ですもの!」

「すみません、突然大勢で押し掛けてしまって……お風呂が何者かに破壊されたとしか言えない現状でして……」

 

 オーギュストは静かに目を閉じ、落ち着くために深呼吸をする。シェ……つまり、シェロ。士郎のことだろう。お嬢様は彼にご執心であることに違いない。

 お嬢様の未来の為にも、早いところ素性をハッキリさせなければ、と改めて決意する。

 

 目をあけ、ちらりと目をやれば、魔法少女たちが何やら話していた。

 

「なにかあったの……?」

「えっと、家の裏で新技の開発してたら手元が……」

「イリヤ、訓練ならもっと広いところで」

 

 なるほど、状況は盗み聞きであれども把握した。

 オーギュストは魔術のことは触り程度にしか知らないが、素直に日々の積み重ねをする姿は応援したいと思った。修理というのも金がかかる。業者の方に少し声をかけておくというToDoリストが追加された。

 

「美遊、浴場まで案内して差し上げなさい。ついでに貴女も一緒に入るといいわ」

「あ、はい」

 

 美遊が彼女らを案内し、場には主とオーギュストのみが残っる。

 

「お嬢様」

 

 オーギュストは、もといエーデルフェルト家はこれで士郎とアインツベルンの正体に着々と近づくこととなる。

 

 

 

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