ただ提督が語るだけ   作:百日草

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戦艦と空母の場合

ある昼下がりのひと時、本日の秘書艦である青葉がふと口を開く。

 

「そういえば司令官。唐突ですが、私達の呼び方にこだわりってあるんですか?」

 

長い執務中に気分転換も兼ねて会話をするのは珍しくもない。しかし時折、私の艦娘達はこのように、なんの脈絡もなく話題を振ってくる。

 

「こだわり、とは。」

 

疑問と戸惑いを含め、青葉に言葉を返す。鎮守府において「青葉新聞」を発行する彼女にとって、いつものネタ探しの一環なのだろうか。無論これまででも唐突にインタビュー、その日の夕ぐれには不定期夕刊と銘打って発行し、それを読んだ金剛が執務室に突撃したり、赤城がニコニコしながらご飯をいつもよりおかわりしていたり、瑞鶴が爆撃しようとして加賀に鎧袖一触されていたりビスマルクと暁が一緒にブラックコーヒーを飲んで涙目になっていたりする。彼女らの奮闘により幾分穏やかになった海だが未だ戦闘は続いている。その癒しの娯楽としては、ガス抜きの役目もあってとても良い。たまにこちらに飛び火さえしなければなおよいのだが。

 

「ほら、私たちが司令官のことを司令官や、司令、提督とかクソ提督とかお呼びするじゃないですか。」

 

「最後のは含むのか?」

 

「まあ、アレは一種の照れ隠しみたいなものですが。それはそれとして、司令官は私たちのことを基本的には艦の名前で呼んでますよね。」

 

確かに。一部の潜水艦は番号をもじったもので呼んでいる。しかし、それが何かあるのだろうか。

 

「そこですよ、そこ。潜水艦だけなんか距離感が近くてズルいと声が上がっておりまして。」

 

誰から?

 

「金剛さんや、大和さん。他に空母の方々もそうですね。」

 

「空母からもか。」

 

前者二人はまだわかる。が、空母から声が上がるのは予想外である。艦娘はその外見に従って精神年齢が伴う場合が多い。特に空母勢は外見は大人の姿をとっており、精神的にも幼い駆逐艦のも目標になっている場合も聞く。

そんな彼女らが不満を持つ理由とは何だろうか。

 

「司令官はサラトガさんのことをサラ、イントレピッドさんのことをピッドさんと略称で呼ぶじゃないですか。だそれですよ。」

 

あー。

 

「付き合いが短いのに呼ばれて、初期から付き合ってきた私達にも、と言う声にならない声が。」

 

 

ペンを回しつつ、やれやれと言わんばかりの青葉。その姿にすこしイラッと来るものの、彼女たちの言い分もわからんでもない。たかが呼称、されど呼称か。

 

「そうは見えませんが鳳翔さんや間宮さんもなかなかですよ。」

 

「あの二人まで?」

 

「はい。私達だけさん付けされているのはどこか他人行儀がする、と。」

 

瑞鶴さんは加賀さんにそれでからかってましたからね。と付けくわえる青葉。とりあえず瑞鶴が鎧袖一触されただろうことは想像にたやすい。しかし私が思う以上に事態は重いようである。なにかしら対策を打たねばならんか。

 

「そこで、最初の質問に移るわけですよ。司令官の呼び方に。」

 

「なるほど。そういうことか。深く考えていなかったな。」

 

「そんな鈍感の司令官と!艦娘の橋渡しにこの青葉気を聞かせようと思いまして!」

 

さりげなく上官をディスるな。メモ帳を取り出してるところを見ると、結局のところお前のネタ探しじゃねぇか。

 

「まあまあそうかたいことを言わずに。ここは司令官が私たちのことをどう呼びたいかを一つ。」

 

「ふむ。」

 

ペンを止めて考えてみる。どう呼びたいか、か。

 

「深く考えなくて結構ですよ司令官。後は青葉が脚色しますから。」

 

ねつ造って知ってるか、青葉。

 

「ささ、御気になさらず妄想をどうぞどうぞ。」

 

妄想とまで言ったか。

 

「じゃあ空母からいくか。」

 

青葉が目を輝かせてメモの準備をする。どこか緊張の様子も見えるが。珍しい。

 

「まず、基本的には艦の呼び方で呼び捨てだが、さんを付けるとしたら、一つ基準がある。」

 

「基準ですか?」

 

「飛龍と蒼龍だ。」

 

私の中ではあの二人が基準である。というのも、同年代は呼び捨て、先輩はさん付け、後輩は言うまでもなく、と言う男社会あるあるにおいて、あの二人が同年代な感じがする。その基準でいくと、赤城と加賀はさん付け、鳳翔は自然と。龍驤?最初駆逐艦だと思ってたから。考えてみれば飛龍と蒼龍は気安い感はあるかもしれない。

 

「もしの話をすれば、赤城先輩とか加賀先輩とか呼ぶかもしれないな。」

 

「なるほどなるほど、司令官は先輩属性と。」

 

ぶっ飛ばすぞ。

 

「逆に、鳳翔さんや間宮さんを呼び捨てにできれば、なんか女性として考えられるのかもしれないな。」

 

「キモいですよ。司令官。」

 

ぶっ飛ば、顔こえーよ青葉。冗談だよ冗談。空母はそんくらいだな。ちなみに海外艦は呼びやすいようにしてるだけで、特に他意はない。

 

「じゃあ、気をとりなおして、戦艦の皆さんはどうです?」

 

戦艦の面々を考える。個性豊かな面々の中でもとりわけ光る戦艦の彼女たち。

 

「二つ、かな。」

 

 

「二つとは?」

 

 

若干キモいぞ?と前置きすると、

 

「若干じゃないから大丈夫ですよ。」

 

うるさいよ。

 

「一つは武蔵と陸奥、もう一つは金剛型が思いついた。」

 

2人が幼馴染だったらという場合だが、引くな青葉。武蔵はむっちゃんで、陸奥はむーちゃんだと思う。なんつーか、武蔵の場合は男の子だと思って付き合って、陸奥は女の子ととして付き合っていたんだが、大人になって再会すると二人とも魅力的になってるという感じだ。たぶん武蔵はむっちゃん呼びできるが陸奥はドモると思う。へタレなんて言うな青葉。自覚はしてんだから。

 もう一つは金剛型だ。これは榛名が基準になってくる。榛名が同年代だったら、「ハル―」とか、先輩だったら「ハルさん」とかになって、それにつられて比叡に先輩や金剛にさんがつくと思う。霧島はそのまま。それにさ、

 

「ハルナって普通に女性の名前だから、実は意識してしまったよね。女性として。」

 

だから、青葉顔こえーよ。

 

 

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