己の世界を守る楓   作:ふぁむな

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地下室・・・そして審議

 

 現在カエデはタンタンタンとリズム良く地下室へ向かう階段を下りていた。

 

 

――審議所は来たの初めてだなぁー。エレンは地下で一体どんな生活してるんだろ?

贅沢してたら一発殴ってあげよう!

 

 

 

 クスクスと笑いながら、知識の疎いカエデは審議所の地下はどんなところなんだろうと思いながら階段を下り終えたカエデは突き当りのドアを開ける。

 

 

 

「あれ・・・?」

 

 

 

 そこでカエデが見た光景は自分が想像していたところとはかけ離れていた。

 そこは重罪を犯した人間が入れられる鉄格子の牢屋が並べられていたのだ。

 カエデの想像していたものは、地下にはいくつもの部屋があり、その一室にエレンが生活しているものだったのだ。そう想像したのは、審議までの間の拘束であり、トロスト区に空いた穴を塞いだのはエレンなのだから悪い扱いは決してしないと思っていたからだ。

 

 

――ここにエレンが?そんなはず・・・

 

 

 カエデは並べられている鉄格子の中を1つ1つ見ながら歩いているとエレンと男性の声が聞こえた。

 聞こえた方を見てみると、見た限りその牢獄の前にだけ兵士が2人立っていた。

 

 

「すみません。便所に・・・」

 

「さっきいったばかりだろ」

 

「・・・。水をください」

 

「立場をわきまえろ化けも――」

 

「エレンは化物じゃない」

 

「・・・カエデ!?」

 

 

 カエデはエレンを化物扱いしようとした兵士のことを睨みつけて黙らせる。そして牢屋の中を見てみると質素なベットに座らされ、壁から鎖が出ている頑丈な手錠をつけられているエレンがいた。

 

 

「エレン・・・。ごめん・・・こんなところに入れられるとは思ってなかったよ。ここから出よう?」

 

 

 カエデがそう言ったことで兵士達はお互いを見たあと一回頷きあったあとカエデの腕を掴んだ。

 

 

「っ!?なにするの?」

 

「調査兵団所属カエデ・サクライ。お前がエレン・イェーガーの牢獄の前で危険な発言をした場合、拘束するように指示が出ている。大人しく拘束されろ」

 

「誰が大人しくなんて――」

 

「エレン・イェーガーの生死が今のお前の行動により大きく関わるぞ」

 

「なっ!?そんな・・・」

 

 エレンの命が関わっていると知ったカエデは大人しくなるしかなかった。さらにいつの間にか周りには銃を持った兵士が数人立っており、こちらに銃口を向けていた。

 

 

「・・・わかりました」

 

 

 兵士に手錠をかけられ、エレンが入れられている牢屋の隣りの牢屋へと入れられた。

 他の牢屋と牢屋はレンガで遮られていたのに対し、おそらく最初からカエデを入れるつもりだったのだろう。ここの牢獄だけエレンの牢獄とカエデの牢獄を遮るものは鉄格子だった。

 

 エレンは右隣の牢屋の中を鉄格子を通して見てみると、手錠をかけられたカエデが体育座りでベットの上に座っているのが見えた。

 

 

「カエデ・・・」

 

「んー。なにー?」

 

 

 エレンは明らかに気落ちしているカエデに声をかけた。

 

 

「なんか・・・ごめん。こんなことになったのは俺のせいだな」

 

「んー?そんなことないよー?私はエレンの味方だもん、このくらい平気だよ?」

 

 

 その一言でグッときたエレンは今にも流れ出そうな涙を見せないためにカエデとは逆の方を向いた。

 

 

「うわー・・・。なんか拒否された気分・・・」

 

「そんなことない!!ただ嬉しかったんだ・・・。それと悪いんだけどカエデが近くにいたら落ち着く」

 

 

 首を回してカエデの方を見てそう言ったエレンの目からは涙が流れていた。

 

 

「あははっ。その気持ちきっと5年前に私がエレン達に言われたときと同じ気持ちだよ!エレンうれしいこと言ってくれるね!」

 

「そう・・なのか・・・」

 

 

 そしてカエデはベットから降りて、自分とエレンの牢獄を遮る鉄格子に寄りかかり、牢獄の前にいる兵士に聞こえない程度の小さい声で話し始める。

 

 

「ねぇ・・・エレン・・・」

 

「なんだ?」

 

「エレンは巨人が憎いんだよね?」

 

「あぁ・・・。母さんを殺した巨人が憎い・・・」

 

 

 そのエレンの言葉を聞いたカエデは俯いた。

 

 

「そっかぁ・・・」

 

「カエデは巨人が憎くないのか?

 クラウス隊長と隊員達を殺した巨人が」

 

「んー。」

 

 

 カエデは少し考えたあとそれを言葉に出す。

 

 

「隊長を殺してしまったのは私の行動が原因でもあるんだけどね・・・。まあ・・・エレンと違うのは、私はクラウス隊長と隊員たちを殺した巨人はこの手で狩ったからね」

 

「それはそうだけど・・・」

 

 

「私は別に巨人自体を憎んではいないんだ。

 ミカサが言ってた・・・この世は残酷だって。

 私はそのとおりだと思う。

 人だって家畜を殺して食べるし、人によっては好奇心で虫を殺したりする。

 この世は弱肉強食・・・私はそれで納得しちゃってるんだ」

 

「この世は残酷か・・・。そうだな・・・。俺は巨人を駆逐したいと思っていたのに、俺自身が巨人になれるとはな・・・」

 

 

 エレンは現状を思い出し、顔を青くしながら俯いてしまった。

 

 

「こんなこと言っていいのかわからないけど・・・。こんな機会だから言わせてもらうね?」

 

 

 

「・・・おう」

 

 

 

 

 

「私は・・・今は人間の方が憎いんだ」

 

「え・・!?」

 

 

 このカエデの発言にエレンはかつてないほど驚いた。

 

――カエデは今まで人間のためになることばかりをやってきていたし、今回の作戦だって死者を出さないように一生懸命に取り組んでいた。作戦前の演説でだって・・・。

 

 その時エレンは演説の途中で自分にだけ聞こえる音量で言っていた言葉を思い出した。

 

――『昔なら本当にあんなふうに思って言えたのだろうけど、今はそんなに思っていない私がいるんだけどね』・・か。作戦の数時間前にあんなこと言われたんだもんな・・・。それも仲が良いと思っていた人たちから・・・。それじゃあなんで・・・?

 

 

 その疑問が出てきたところでカエデを見ると、カエデの顔は親と離れ離れになるのを拒む子供のような顔をしていた。

 

 

――そうか・・・カエデは俺を救うためには作戦の成功が不可欠で、成功させるためには大勢の兵士の力が必要だった。そのために今までの功績を利用してでも兵士たちをやる気にさせる様な演説を・・・。

 

 

 エレンがその考えに至ったところでカエデは再び話し始める。

 

 

「私の人生を狂わせてきたほとんどの原因は人なんだよね

 賊に襲われて両親を失った。

愚かな人間が私の小隊の女性を掴んだことによって優秀でやさしい女性が2人死んだ。

そして今、人が私の友人をどうにかしようとしてる。

私には巨人を殺す力はあっても、人を負かす力はないのが悔しいよ・・・」

 

「カエデ・・・」

 

 

「あははっ何言ってるんだろ私。ごめんごめん!空気が重くなる話をしちゃったね!!忘れて忘れて!!」

 

 

 カエデはエレンの様子を見て、慌てて忘れるように言った。

 

 

「忘れない・・・。俺を受け入れてくれたんだ。そんなカエデを俺は受け入れるよ」

 

「あははっ。ありがとう!!優しいねエレンは」

 

 

 エレンに言われた言葉によって安心したカエデはふにゃりと笑った。

 

 

「カエデにそれを言われるとなんか微妙だな」

 

「なにそれっ!まあいっかー!!早くこんなとこからでたいね」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 そんな会話をしていると誰かが来る足音が聞こえ、その足音をした方をみた兵士達は牢獄の前から去っていった。

 その足音の正体は調査兵団団長のエルヴィンとリヴァイだった。

 エルヴィンはエレンの牢屋の前に椅子を持ってきて座り、リヴァイは壁に寄りかかったのだが、リヴァイは視界に入った隣の牢屋の中にいる人物をみて驚く。

 

「おい・・・なんでカエデが捕まってんだよ」

 

「エレンを逃がすような発言したら捕まっちゃいましたっ!」

 

「はぁ・・・」

 

 てへっ と舌を出して謝るカエデに呆れるリヴァイ。

 そこで黙っていたエルヴィンがカエデに話しかける。

 

「カエデが捕まったのはおそらくだが・・・駐屯兵団隊長のヴェールマンがカエデの発言を言いふらし周ったのが原因だ。どうやらヴェールマンはあの発言をしたカエデがなんの処罰も受けず、さらに演説までしたのが気に食わなかったらしい」

 

 

「そっかー・・・。小鹿じゃなくて騒ぐ猿だったのね・・・」

 

「ぷっ・・・」

 

 カエデの発言にエレンが笑った。

 そんなエレンにエルヴィンが深刻そうな顔をして話し始める。

 

「エレンくん・・・。事態はあんまりよろしくない。少しの間ここで待っていてくれ」

 

「わかりました・・・。あ・・・あの!!」

 

「ん?なんだい?」

 

「少しの間というのは長くてどれくらいなのでしょうか?」

 

「すまない・・・それはわからない。明日かもしれないし1ヶ月かもしれない」

 

「そうですか・・・。よろしくおねがします」

 

 リヴァイはエルヴィンに頭を下げるエレンをチラリと見たあと、カエデに向かって手招きをして近寄るように指示する。それに従い、カエデは座っていた体を立たせ、歩いてリヴァイに近寄った。

 

 

「リヴァイどうしたの?」

 

「イェルクが消えた・・・」

 

「え・・・!?ど・・・どうゆうこと?」

 

「トロスト区に来る途中で別れて、先に行ったと思ったんだがな。俺が調査兵団と合流したときにはもういなかった。おそらくエルヴィンは何か知っているだろうが・・・」

 

「そ・・・そっかぁ」

 

 

 カエデは鉄格子に頭をつけながら俯いた。

 

 

「まぁ、心配するな。前からたまにいなくなることは会ったし、今回もきっと戻ってくるだろ」

 

「そうだよね!!」

 

 

 カエデはスっと顔をあげてリヴァイの顔を見た。

 

 

「あぁ。それよりだな・・・おそらくエルヴィンが考える最悪の事態としてお前が審議会で暴れないかも入っていると思う・・・。こんな状況になって大変かもしれんが、お前は精神を落ち着かせておけ」

 

「わかった・・・。がんばる」

 

 

 そう言ってリヴァイは鉄格子の隙間から手を入れ、カエデの頭を撫でる。それを素直に受け入れるカエデを見てリヴァイは少し笑ったあと来た道へと歩いて行った。

 

 

「じゃあ・・・エレンくん、カエデ・・・頼んだよ?」

 

「「はい!!」」

 

 

 そう言うとエルヴィンもリヴァイの後を追っていった。

 

 

 その後はエレンとカエデは特にしゃべることはしなかった。それはカエデが目を閉じて瞑想し始めたので、邪魔をしてはいけないと思ったエレンは喋りかけることをしなかったからである。

 

 

◆◆◆

 

 

翌朝――

トロスト区の訓練兵達が食事や話をするための広いスペースがある建物。そこにある広いテーブルについたミカサ、アルミン、ジャン、アニ、ライナー、ベルトルトの6人は朝早くから集まって話していた。

 

 

「エレンの審議って・・・なにをするの?」

 

「エレンをどうするかだと思う・・・」

 

「どうするかって・・・」

 

「たぶん・・・生かすか殺すかってことだと思う」

 

 

 アルミンのその言葉に、ガタンと音を立てながらミカサは立ち上がった。

 

 

「でもよ!カエデがなんとかするって言ってたから大丈夫だと思うがな・・・」

 

「たしかにライナーの言うとおりだとは思うんだけど・・・」

 

 

 俯いてしまったアルミンにミカサは話の流れからして、心配していることを聞く。

 

 

「アルミン カエデからなにか連絡はあった?」

 

「え・・?ミカサにも連絡ないの?」

 

「ない・・・」

 

 

 ミカサは他の4人の顔を見るが、4人とも首を横に振るだけだった。

 

 

「カエデさんに何かあったんじゃ・・?」

 

「カエデに限ってなにかされることなんかねえと思うけどな」

 

「ジャン・・・僕もそうとは思うんだけど・・・。なにもないことを祈ろう」

 

 

 その時突然建物のドアが開けられ、憲兵団の兵士たちが入ってきた。その兵士達はキョロキョロと辺りを見回したあと口を開いた。

 

 

「ミカサ・アッカーマン訓練兵!アルミン・アルレルト訓練兵はいるか!!」

 

「は・・はい!います!」

 

「今日の午後からの審議会に出頭しろとの命令だ!!」

 

 

「僕とミカサってことは駐屯兵に囲まれた時のことが大きく関与しているのかも・・・。行ってくるね」

 

 

 ミカサとアルミンはお互いの顔を見たあと4人に一言だけ伝え、兵士について行いった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 カエデが捕まってから次の日の午後――

 牢獄のある地下の道を歩く1人のメガネをかけた女性―ハンジ・ゾエはエレン達のいる牢獄の方へと歩いていた。

 

 ハンジはエレン達の牢獄の前に着くと、鉄格子を掴み勢いよく中を覗き込んだ。

 

 

「ひゃぁ!?」

 

「えへへ・・・。カエデちゃん今日も可愛いねー!!」

 

 

 びっくりしたカエデに興奮したハンジは、鉄格子の隙間から手を中に入れ、わきわきさせている。

 それをみたカエデは本気で怖がり、質素なベットの後ろに隠れた。

 

 

「カエデちゃんパワーを充電させてー」

 

「ひゃぁぁ。ハンジさんそんなこと言うために、ここに来たのではないでしょう!?そうでしょう!?」

 

 カエデはテンパりすぎてよくわからない言葉遣いでハンジに言った。

 するとハンジは手をぽんっと叩き思い出したようにエレンに話し出す。

 

「あぁ!そうだった君がエレンくんだね?」

 

 

「あ・・はい!」

 

 

 エレンは壁から出ている鎖についている手錠をはめられているためカエデのように逃げられないが、明らかに最大限ベットの端に寄っていることから本気で逃げていることがわかる。

 

 

「そんな怖がらないでよー。カエデちゃんの可愛さは君もわかるでしょう!?」

 

「はい!それはもう!」

 

 

 エレンのハンジに言葉に対する返答は即答だった。

 その言葉にカエデはベットの後ろで顔を赤くしながら、ベットの裏で人差し指を顔の前でツンツンし始めた。

 

 

「ぷしゅー」

 

「あ・・・」

 

 

 カエデがベットの裏で顔が真っ赤になったのを見てやってしまったと思うエレン。

 

 

「あははっ!君とは気が合いそうだね!

ああ・・そうそう。取り敢えずはここから出れるよエレンくん」

 

「本当ですか!?」

 

「うん!!ただし・・これを付けたらだけどね」

 

 

 そう言って、ハンジが手に持ってエレンに見せたのは頑丈そうな手錠だった。

 

 

「あのー?ハンジさん? 私は出れないのかな・・?」

 

「もちろん出すよ!私の愛の手錠なんてどう?どうだい!?」

 

「あ・・・ごめんエレン。私もう少しここにいたいかも・・・」

 

「ちぇー。つれないなーまったく。」

 

 

 口を尖らせていじけるハンジにエレンがほんのちょっと可愛いかもと思ったのは内緒である。

 

 

「カエデちゃんは今の手錠がついたままだってさ」

 

「・・・わかりました」

 

 不本意ながらも、出してもらえるならと頷くカエデ。

 

 

 そうして牢屋から出してもらったエレンとカエデは審議所までの道を歩いていた。

 

 先頭には、カエデが手を後ろに回され手錠されてることをいいことに、カエデと腕を組んで歩く幸せそうなハンジ、その後ろにエレン、そして調査兵団きっての精鋭である男性―ミケ・ザカリアス、最後に2人の銃をもった憲兵団の兵士だ。

 ミケ・ザカリアスは暗い色の金髪に長身、顎にヒゲをはやした男性だ。彼は調査兵団の中でもトップクラスの実力を持っている。でもそんな彼には欠点があった。

 それは――

 

 

クンクン

 

「あの・・・?」

 

 ミケ首筋の匂いを嗅がれ、ハンジに助けを求めるエレン。

 

「えっと・・・。彼も同じ分隊長のミケ・ザカリアスそうやって初対面の人の匂いを嗅いでは・・・」

 

 そこでミケがエレンから離れて急に鼻で笑った。

 

「・・・鼻で笑うクセがある」

 

「・・・」

 

 

 そうなのだ。彼の欠点は初対面の人にであっては匂いを嗅ぐという何とも言えないクセがあった。

 

 唖然とするエレンの横を通ってカエデの隣まできたミケはカエデの匂いも嗅ぎ始めた。

 

「えっ・・・あっ・・・ミケさん!ミケさん!くすぐったい!くすぐったい!

にゃぁああ・・・。ぷしゅー」

 

 

 カエデは何度かやられているが慣れることがなく、最後にはいつも真っ赤にしてうつむいてしまう。そんな真っ赤にしたカエデと匂いに満足したのか、エレンにドヤ顔したあとうれしそうにエレンの後ろへと戻っていった。

 

 

「あの・・?

 ハンジさんこれっていろいろとやばいんじゃ・・・」

 

「あー・・・。普通は捕まりそうだけどカエデはミケにコミュニケーションだと言われて納得しちゃってるみたい。私がやろうとしたら逃げるのに・・・」

 

「そう・・なんですか・・・。(あきらかにミケさんに飼いならされてるよね・・・)」

 

 

 

 そこでエレン後ろにいるミケの方を見て話しかける。

 

 

「あ・・・あのミケさん」

 

「なんだ?」

 

「なんでそんなに匂いを嗅いだりするんですか・・?」

 

「俺は鼻がすごく利くからな。匂いを嗅げばそいつの大体のことはわかる。あとはある程度近くにいればそいつがどこら辺にいるかもな」

 

「だ・・・大体ですか!?」

 

 匂いを嗅いだだけで大体わかってしまうというミケの言葉に驚くエレン。

 

「ま・・・まるで犬―――」

 

「なんだ?」

 

「な・・なんでもないです・・・。それで俺のことも大体わかったんですか?」

 

「フッ・・・。俺の方があらゆる面で優秀ってことが分かったぞ。匂いも俺のほうがいい。まぁカエデは別格だけどな」

 

 

 鼻で笑い勝ち誇るミケ。それをみてエレンは少し不機嫌になる。

 

 

「ミケさん・・・女性の嗅覚には、男性の遺伝子を嗅ぎ分けるある特殊な能力があるらしいですよ。だから、いい匂いかはカエデに聞かないと・・・(クスクス)」

 

「なん・・・だと!?」

 

 驚くミケに見えないように悪い顔をしながらクスクスと笑うエレン。そんなエレンを見て、カエデは少し怖くなった。

 

 

 

 

 

 そんなことをしている間に審議所の扉の前へとついた。

 

「あちゃーっ。無駄話している間についちゃったよ・・・。まあ・・・エレンくんが思っていることを審議所では言えばいいと思う!!勝手だけど私たちは君を盲信するしかないんだ」

 

「え・・・?」

 

 そうして扉を開けられエレンは審議所の中に入った。

 審議所は正面にこの審議の決定権を持つ人が座る椅子があり、その椅子の正面には中央にある台を囲むように柵があり、その柵の中の台の上に審議対象の人物を拘束するようになっている。

 エレンは憲兵団の兵士に連れられその台の上にひざまずき、そこの台に拘束するために、手を後ろで手錠によって組まされている腕の間に鉄の棒を通され、その棒は台にある穴に入れられた。

 そうしてエレンが拘束されたあと、カエデは手錠を付けられたまま調査兵団がいる正面から見て右側に連れてこられた。

 

 

「あれは・・・ミカサとアルミン・・?」

 

 

 エレンはミカサとアルミンがここにいることに驚き、ミカサとアルミンはカエデに手錠がつけられていることに驚いた。

 それもそうだろう、エレンの様子を見に行ったはずのカエデの腕に罪人の様に手錠が嵌められているのだから。

 

 ここにいるべき人間が揃ったのか、この審議のすべての決定権を持っている白髪に白い髭を生やし、貫禄がある男―ダリス・ザックレーは審議を始めた。

 このダリス・ザックレーは憲兵団、駐屯兵団、調査兵団の3つの兵団のトップである総統という地位を持っている。

 

 

「これよりエレン・イェーガーについての審議を始める。エレン・イェーガー君、君は公のために命を捧げると誓った兵士である。それは間違いないかね?」

 

「はい・・・」

 

「この審議は通常の法が適用されない兵法会議となる。君に対する決定権をすべて私が持っている。・・・君の処遇、そして生死をもう一度改めさせてもらう。意義はあるかね・・?」

 

「ありません」

 

 ダリスの言葉に一度目をつぶった後にエレンはそう答えた。

 

 

「僕の思ったとおりやっぱりエレンの生死を・・・」

 

「うん・・・」

 

「カエデさん・・・なんだか落ち着いているね」

 

「カエデはきっとエレンのためになる最善を尽くしていると思う」

 

「そうだね。それにしてもじっとしていると全然違うね」

 

「うん・・・」

 

 

 じっとリヴァイの隣に立ち、真剣な顔をしているカエデは皆の目を引き付ける華麗な美女だった。そして今のカエデにはダリスに負けないほどの貫禄が備わっており、審議所にいる人はカエデを見たあとゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 

 そして審議は今、エレンの動向を憲兵団に委ねるか、調査兵団に委ねるかということ進んでいく。

 

「今回の審議では君を憲兵団か調査兵団かに委ねるかを決定する。その決定により君の処遇は委ねられた兵団によって変わる。・・・では憲兵団から話を聞こう」

 

 

 ダリスに言われ、憲兵団の師団長ナイル・ドークがダリスの方を向いて提案を話し始める

 

「我々は・・・。エレン・イェーガーの人体を徹底的に調べたあと、速やかに処分すべきと考えております。理由としましては遠くない未来に、未だに壁外への不干渉を貫く有権者と、トロスト区の穴を塞いだ巨人の能力を持つ彼を英雄視した民衆とで内乱が生じようとしているからです。

 今回の襲撃を防いだのは事実ですが、このことを考えると人体を調べ上げて情報を残してもらった後に、我々人類の英霊となってもらいます。

 それと・・・憲兵団に委ねられた場合、調査兵団のカエデ・サクライをエレン・イェーガーの件が終わるまで拘束、そしてその後の監視をお願いしたい」

 

「「「なっ!?」」」

 

 

 エレンの件はともかく、カエデの処遇についても憲兵団が話したことにエレン、ミカサ、アルミンはもちろんのこと、調査兵団の一部も驚いた。

 

 

「そちらの理由はカエデ・サクライの発言と行動が問題視されているからです。

 そのエレン・イェーガーを守るためなら駐屯兵を殺すと、そしてその場にいたヴェールマン隊長に刃を向けたと。彼はピクシス司令がいなければ自分は殺されていたと言っています。

 このことを考えるとエレン・イェーガーを処分しようとした時、彼女は多くの人を殺してでも止める可能性が高いです。そしてその後も何をするかわからないので監視を」

 

 

「ま・・・まってください!!俺は自分の審議に意義はないですがカエデを審議するのは意義があります!!ここは俺の審議の場であり、カエデの審議の場ではないはずです!!」

 

 

 エレンとナイルがにらみ合う。

 

 

「ふむ・・・。それは考える必要がありそうだがエレン・イェーガーの言う通り、この審議はエレン・イェーガーの動向について決めるものだ。カエデ・サクライの件はまたの機会に審議すればよい」

 

「いえ、この件はこの場で決めていただきたい」

 

「それは何故だ?」

 

「カエデ・サクライの存在自体が明確でないからです。身元調査したところ、彼女はだいたい6年前に壁外調査に出ていた調査兵団の隊長だったクラウスによって外で拾われたと記述があります。身元が詳しく判明していない、何をするかも分からないという不安要素に何もしないというのはどうかと」

 

 

 ナイルの言葉によって審議所にいる兵士達や有権者達はざわめき出す。

 

 

 

「身元が判明してないだと!?」

 

「外で発見されただと・・・。巨人がいる外で生身の人間が生活をしていたなんて考えられん・・・」

 

 

 

 

「続けます。彼女は外に出る前は北にある巨大樹の森の中で住んでいたと言っていますが、それを見たものは誰もおらず、証言できるものは誰もおりません。そして、エレン・イェーガーが巨人化できると判明し、駐屯兵団に囲まれたあとから言動と行動が過剰になっています」

 

 

――それはテメェらのせいだろ!!

 

 

 リヴァイはそう言いかけたが、カエデに手を握られたことで口を閉じる。

 

 

「よって私は彼女が危険だと判断し、逃げられる可能性もあるのでここで拘束と監視を決定していただきたいと思います」

 

 

「エレン・イェーガーのことは大体分かっているが・・・彼女は何者なんだ!?」

 

「化物だ・・・彼女は巨人を瞬殺するというぞ・・?」

 

「外で拾われたということは巨人に送り込まれたのかもしれないぞ!!」

「そ・・そうだな!!今までの行動も人類を油断させるための作戦かもしれんぞ」

 

「彼女も拘束と言わず、解剖するべきだ!!」

 

 

 ダンダンダン

 

「・・・静粛に」

 

 

 ダリスは机を叩き騒いでいる人たちを静め、ナイルの方を見た。

 

 

「ナイル・ドーク師団長の言うことも分からなくはない・・・が、まずはエレン・イェーガーの動向を決める。調査兵団に任されるとなればお主が言う拘束と監視は必要ないはずだ」

 

「・・・はい」

 

 

 周りは騒がしいが、渋々とナイルは首を縦に振った。

 

 そしてダリスは調査兵団団長のエルヴィンの方を向き案を聞く。

 

 

「次は調査兵団の案を聞こう」

 

 

 エルヴィンはダリスの方を向く。

 

「調査兵団からは私エルヴィン・スミスから提案をさせていただきます。我々調査兵団はエレンを正式な調査兵団の団員として迎え入れ、彼の巨人の力を利用してウォールマリアの奪還を行います。それとカエデ・サクライは今まで通り、調査兵団の一員として行動を共にさせていただきたい。以上です」

 

「ん? それだけでいいのか?」

 

 

 憲兵団の提案と比べ、エルヴィン提案が短かったためかダリスは聞きなおす。

 

 

「はい。彼の力があればマリア・ウォールの奪還はできます。何を優先すべきかは明確かと」

 

「・・・そうか」

 

 

 ダリスはエルヴィンの提案が終わったのを確認した後、手元にある書類を手に取るとエレンへと顔を向けた。

 

 

「エレン・イェーガーくん。君はその巨人の力を制御し、調査兵団と協力してウォールマリアを奪還できるか?」

 

「はい!!」

 

「君はその力を本当に制御できるのか?・・・作戦時、壁の上から見ていた者たちからの報告だと、君が巨人化して雄叫びをあげたあと、巨人達は引きつけ役の兵士達を無視して君の方へ向かっていったと」

 

「えっ・!?」

 

 

 エレンはミカサとアルミンの方を向く。そのことが事実であるために2人はエレンから目をそらしてしまう。エレンはそれを肯定だと感じ取り、俯いた。

 

 

「君は自分のことをよく理解していないみたいだ・・・。巨人化を制御できたのも、たまたまかもしれない。そんな君がウォールマリア奪還時に制御ができず、雄叫び1つあげただけでヘタをすれば調査兵団は全滅するかもしれない」

 

「それならば問題ありません」

 

 

 ダリスの言葉を遮るようにカエデが声をあげた。

 

 

「カエデ・サクライ・・・君はなぜそんなことが言える?」

 

「制御できておらずエレンが暴れたら私が手足を切りましょう。雄叫びを上げて巨人達を呼ぶのならばそのまえに私が喉を切りましょう。エレンにウォールマリアの奪還の意志さえあれば問題ありません」

 

「君は・・・エレンを切れるのか?」

 

「エレンの意志が反映されていない巨人ならば問題ありません。不安ならば私がここで披露して差し上げてもよろしいですが?」

 

 

 カエデの揺るぎない自信と威圧がダリスを黙らせた。しかし、有権者たちはカエデの威圧に震えながらも黙ってはいなかった。

 

 

「お・・おい!俺たちが恐れている巨人を瞬殺できる、あの化物は誰が制御するんだ!?」

 

「リ・・リヴァイ兵長はこの化物に勝てるのか!?」

 

 

「はっ・・・。お前らのその化物発言にはいろいろ文句を言いてぇが。カエデを大人しくさせる方法なんてそこの巨人化できるエレンより簡単だぞ」

 

 もはやエレンにではなくカエデに怯える有権者達の問いにリヴァイは鼻で笑ってそう言ったあと、周りに聞こえないようにカエデの耳元で囁く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カエデ・・・。お前って本当に可愛いな」

 

 

 さらにカエデの頭の上に手を乗せ、髪の流れに沿って優しく撫でてとどめをさす。

 

 

「・・・・・ぷしゅー」

 

「「「はっ・・・?」」」

 

 

 リヴァイの行動にカエデが耐えられるはずがなく耳まで真っ赤に染め、目を細めながらリヴァイにされるがままになる。カエデから発せられていた威圧が審議所からフッとなくなり、騒いでいた連中は唖然とする。

 

 それもそうだろう、先程まで自分達を殺すと言わんばかりの威圧を垂れながしていた女性が、彼らから見ればリヴァイに頭を撫でられただけで威圧がなくなり、まるで無害で可愛いらしい女性になってしまったのだから。

 

 

「これで文句ないか・・・?」

 

「・・・・・」

 

 

 リヴァイは無言になった彼らを見たあとに、睨みつけてくるミカサの方を見て、勝ち誇った顔をしたあと前を向いた。

 

 ここでこの瞬間を待っていましたというようにエルヴィンがダリスに提案を持ちかけた。

 

 

「ダリス総統、提案があります。我々にエレンが引き渡された暁にはカエデかリヴァイ兵長と共に行動をしてもらい何かあった時には対処してもらいます。そして憲兵団が懸念する内地の問題の沈静化を図るために、次の遠征でエレンが人類にとって有意義であることを証明します。その結果で判断していただきたい」

 

 

「ふむ・・・。意義があるものはおるか?」

 

「・・・・・」

 

 

 ダリスはエルヴィンの提案を聞いたあと、周りの沈黙を調査兵団の提案を了承したとみた。

 

 

「決まりだな。次回の遠征が終了するまでエレン・イェーガーを調査兵団に託す。そしてカエデ・サクライの存在意義も遠征で示せ。次回の審議ではカエデ・サクライの審議もさせてもらうとする」

 

 

 

 こうして審議は一旦は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 リヴァイはいまだに思考が何処かへ行っているカエデをお姫様抱っこしながら調査兵団に割り当てられている部屋へと入り、その部屋に置いてあるソファーの上にカエデを座らせた。

 

 それから数分の間、リヴァイはぶつぶつ言っているカエデを眺めていると部屋の扉からエルヴィン、エレン、ハンジ、ミケが入ってきた。

 

 

「まずはエレンが調査兵団に入れてよかったよ。これからよろしく頼むねエレン」

 

「は・・はい!!」

 

 

 エレンとエルヴィンが握手を交わす。その後、エレンはカエデにそーっと手をわきわきさせながら近づいているハンジを見て不安になる。

 

 

「あ・・あの・・・。あれは大丈夫なんですか?」

 

「あはは・・・。調査兵団にいればこれからも何回か見ることになると思うよ・・・」

 

 

 エルヴィンはエレンの指差した方向を見て、またかと頭に手をやりながらエレンに答えた。

 

 

ワキワキ

 

ワキワキ

 

モミモミ

 

「・・・・」

 

モミモミ

 

「・・・・・!」

 

モミモミ

 

「にゃぁあああ!?!?」

 

「ふへへへ・・・」

 

モミモミ

 

「あっ・・・にゃっ・・・ハンジさ・・・あっ・・・。だめっ!!・・・あぁああ!!たんま!!・・・・ぷしゅー」

 

 

 そこでハンジはエレンに向かって親指を立てると、エレンもそれに応えるかのように親指を立てた。

 

 

「このアホどもめ・・・。おいクソガキ・・・鼻血ふけ」

 

「え・・・」

 

 

 リヴァイの言葉で鼻血が出ていると気づいたエレンは、しまったという様な顔をして必死で拭き取った。

 

 

 




キースがなぜ団長を辞めたかというご指摘をいただきまして修正させていただきました。
・クラウスの小隊は元々はキースの部隊の1つ。
・キースの部隊は死者は出ている。ただし、キースの部隊の死者も原作よりは多く出ていない。
 これらの設定を1話に付け加えさせてもらいました。

・キースは後に死者を出さないためには隊員1人1人の能力とチームワークが必要だと感じ、訓練兵を担当する教官へと転職する。 
 これがキースの団長を辞めた理由として書かせていただきます。

次回は 間章をいれます。
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