立体機動装置は極秘で技術部門のみしか知らないということですが、今回はハンジも大体の仕組みは分解することで理解しているという設定です。
―――トロスト区が陥落、奪還する前
トロスト区にある、調査兵団本部として使われていた古城で話し声が聞こえた。
この旧調査兵団本部は、壁からも川からも遠いという理由で全く使われていなかったのだが、ハンジが使いたいということで清掃されて、建物自体は古いものの中は綺麗な状態になっている。
「うへへ。カエデちゃん!!」
「な・・・なんですかハンジさん!?」
ハンジとカエデが旧本部の最上階の部屋で話していた。
その部屋は20畳程の広い部屋で、様々な部品が多く整理された状態で置いてあった。
「私の発明品を見て欲しいの!!」
「発明品・・?」
「そうそう!これを見て!!」
そう言ってハンジがカエデに差し出したのは――
1m50cmほどの長さの板で、角がすべて綺麗に削られて丸みおびていた。そして中央部には足が置けるようにバインディングが付けられており、板の後ろ部分には立体起動装置が、板の両サイドにはガスボンベが1本ずつ取り付けられていた。
(スノーボードの後方部に立体起動装置、両端にガスボンベが取り付けられている状態)
「な・・・なんですかこれ!?」
「これはハンジさん特性!!ボードに立体機動装置を着けた発明品なのです!!」
「は・・・はぁ」
鼻息を荒くしながら迫ってくるハンジにカエデは後ずさる。
「カエデちゃんには是非ともこの装置を試していただきたいのですよ!!いいよね!?」
「う・・・うん」
「いぇーい!!決定!!」
了承を取れたことで喜んだハンジはカエデの両手をとってブンブンと縦に振った。
そしてそのままカエデの両手を取ったまま外へと出るために部屋を出て、階段を降り、本部の前にある芝生の生えた大きな広場へと出た。
外にでたハンジはカエデの目の前に先ほどのボードを置いた。
「よぉーし!!じゃあカエデちゃんはこのバインディングに足を着けてー!」
「うん」
ハンジに言われたとおりにボードの中央のバインディングに左足を前に、右足を後ろにして固定した。
そして少し腰を落とし、上半身は前方に向け、立体起動装置からでる操作装置を手に持ってトリガーに指をかけた。
「よし!じゃあガスを噴射させて行ってみよう!!」
「はーい」
カチカチとトリガーを引き、カエデはボードの後方に付けられているガスを噴射させる。
カエデを乗せたボードはなかなかのスピードで本部前の芝生で覆われた広場を走り出す。
「うわっ!危ない!」
想像以上の速さだったため、近くに立っていた木があっという間に目の前に迫ってきて慌てる。そして、いろいろと試行錯誤して体が木に当たらないようにしようとする。
いろいろ試行錯誤した結果、足の向きと体重移動によってうまく方向を変えられたためにすぐさま実行する。
木に髪を掠りながらもなんとか避けることに成功したカエデは、その後は次々と立っている木々を華麗に避けて進む。
そして取り敢えず広場を一周した後、ハンジの前から少し離れたところからボードを横にし、つま先を上げてボードを傾かせることで側面を地面に摩擦させて、ハンジの前でうまく止まった。
「ふぅー」
「きゃー!!カエデちゃんかっこいい!!」
「ぎゃふっ」
ガバっとハンジはカエデに抱きつき、カエデの胸に頬をスリスリさせる。その際、勢いが強すぎてカエデは数歩下がった。
「え・・・えっとー。ハンジさん?これっていつ使うんでしょうか?」
「んー?遊ぶため?」
「え!?遊ぶために立体起動装置使うんですか!?・・・というより、最初すごく危険だったんですけど!!」
「てへっ」
「はぅ・・・。それに・・・このボードもうボロボロですよ?」
そう言いわれてハンジは差し出されたボードを見てみると、板は摩擦によってボロボロになり、止まるために使った側面はところどころ欠けていた。
「あちゃぁー・・・」
ボロボロのボードを触りながら頭を抱えるハンジ。
「ハ・・・ハンジさん。もうやめとき―――」
「分かったよ!!」
「分かってくれましたか――」
「あはははははっ!!カエデちゃん、このボード改良するよ!!」
「――え?」
やめるように勧めたカエデにハンジはボードを改良することを伝え、すぐさま本部の中へと入って行ってしまった。
「ハンジさん・・・・」
まるで聞く耳持たないハンジにカエデはため息をつき、説得をすぐに諦めてその場で大の字になって寝転んだ。
「ふぁぁぁ~。・・・・zzZZZ」
―――1時間後
ダダダダッと階段を降りる音が聞こえ、広場に寝転がっていた体をガバッとお越したカエデは本部の入口の方をゆっくりと向いた。するとそこにはニンマリと笑ったハンジがおり、手には先ほどのボードより少し大きいボードを持っていた。
「あはははは!!カエデちゃん改良できたよぉ!!」
「ひぃっ!?」
まるで奇行種のような変な走り方をしながら近づいてきたハンジに思わず後ずさるカエデ。
後ずさりながらもハンジの持っているボードをよく見てみる。そのボードは180cmくらいの長さで先ほどと同じ形。違うところはボードの両サイドに前方部が丸みおびていて、後方部は尖っている、流線形の翼がついていた。さらにボードの裏にはローラーが付けられており、翼が地面に擦れないようになっていた。(さきほどのボードに飛行機の翼が付けられている)
「ハンジさん、今回の翼がついたボードはどうゆう仕組みなの?」
「あははは!教えてあげよう!!この翼はね、風の流れを利用して翼に働く揚力でボードが飛ぶようにつけたものなんだ!!」
「と・・・飛ぶんですか!?すごいですねハンジさん!」
飛ぶ乗り物。それはとても魅力的だったためにカエデは目をキラキラとさせながらハンジを褒めた。
「そうでしょう?そうでしょう?もっと褒めてくれてもいいよ?」
「う・・・うん。そ、それでこのボードはさっきと同じようにガスを噴射させればいいの?」
「そうだよ!さぁさぁカエデちゃん行ってみよー!!」
「はい!!」
元気よく返事したカエデは、先ほどと同じように足をバインディングに固定する。そして先ほどより腰を低くして、体を安定させる。後方部に取り付けられている立体起動装置から出ている操作装置を手に持って準備を完了させた。
「それじゃあ行きますね!」
カチカチとトリガーを引き、ガスを噴射させる。ガスの噴射により進むボードは裏に取り付けられているローラーによってスムーズにスピードがつき、風の流れを受ける。
「うわぁ。」
翼が取り付けられているボードは風の流れを受けて徐々に浮き上がり、空を飛び始めた。
「す・・・すごいですよハンジさん!」
「おおぉー!!空飛んだね!!」
カエデは徐々に近づいてくる木にぶつからない様に程よく体を傾かせて難なく避ける。
そしてカエデを乗せたボードはどんどん高く飛び上がっていく。
――あれ?これってどうやって水平に飛ぶんだろう・・・。それを降りるときはどうすれば・・?
「は・・・ハンジさぁ~ん!!どうしたら降りれますかぁ~?」
カエデはずいぶんと離れてしまったハンジに向けて大きな声で聞いてみる。
「あっ・・・。カエデちゃんごめーん!!飛ぶことしか考えてなかったぁー!!」
「え・・・・。え?うそ!?」
ハンジから返ってくる言葉は降りる方法だと思っていたカエデにとってこの返事は予想外で唖然とする。そうしている間にもボードの高さは上がって行き、気づいたときには30m上空にいた。
――や・・・やばいよね!?どうしよ!どうしよ!!
焦ったカエデは辺りを見回して、なにか安全に降りれる方法がないかと探す。
――そ・・・そうだ!!本部の屋根に降りよう!!
その考えに至ったカエデはすぐさま腰を落としながらボードを右側に傾けて、旧本部である古城に向けて迂回を始める。カエデは迂回をしながらバインディングを足から取り外し、手でボードを持つことによって板から体が離れないようにする。
カエデは迂回し終えて古城が近くなったことを確認すると、手をボードから離して飛んだ。
古城の高さは約20mで、迂回し終えたときにはカエデのいる場所は上空40m。その差は20mで常人には十分高いが、カエデにとってはギリギリ降りられる高さだった。
カエデは宙で3回ほど回り、確実に足から屋根へと着地する。
ズボッ
「あ・・・やばいかも?」
ガラガラガラガラ
カエデが降りたのは地面ではなく古城。そう、古くなった建物の屋根に高い位置から飛び降りた結果、カエデの体は屋根を崩しながら最上階の20畳ほどの広さの部屋へと落ちていった。
「い・・・いったぁぁ」
カエデはお尻から落ちたのか、痛そうな顔をしながらさすっていた。
その時、少し遠くの方から、何かが壊れる音がした。
「あーあ。たぶんあのボード木にぶつかったのかな?」
そんなことを思っていると、今いる部屋のドアがキィっと少し開き、その隙間からハンジはそぉーっとカエデを見ていた。
「ハンジさん!!」
「ひゃぃ!!」
カエデの怒っているような声を聞いたハンジはビクッと体を震わせて、部屋の中に入ってきた。
「ご・・・ごめんねカエデちゃん」
「もぉ。ハンジさんだからこんなことだろうと思ってたけどさ」
「じゃ・・・じゃあ許してくれる?」
チラッチラッとカエデの顔を見ながらそう言うハンジ。
「うん!許してしんぜよう!ここの壊れた天井はハンジさんが直してね?」
「ありがとうカエデちゃん!じゃあまたボードを改良するね!!」
「はぃ・・?え・・?? あれ?そうなっちゃうの!?」
「じゃぁカエデちゃんは外で待っててねー!!」
呆気にとられているカエデの背中を押してドアから外へ出したハンジは再び作業に取り掛かる。
「はぁ・・・。きっと次はボードから降りれないとかはないよね」
ため息をつきながらカエデは階段を降りて外に出る。そして広場の芝生の上先ほどの様に大の字になって寝転がった。
「ふぅー・・・日光がほかほかして気持ちぃ・・・にゃむにゃむ・・・zzzZZZ」
カエデは日光を浴びて気持ちよくなったのか、大の字から子猫の様に丸くなって眠った。
2時間後――――
モミモミモミ
「・・・・・・」
モミモミモミ
「・・・・はぅっ!?」
モミモ――
「は・・・ハンジさんやめてくださぃぃ」
「ふぅ。今日はここまででいいや。満足満足」
寝起きが悪かったカエデは胸を抑えながらハンジをジッと見た。そのハンジはと言うと、満足そうに手をグーパーしていた。
カエデは胸を抑えたままで、ハンジの横に置いてあるボードをよく見てみる。そのボードは160cmくらいの長さで最初のボードと同じ形をしていた。違うところといえば、そのボードの厚みは10cmくらいあったことだろう。
「ハンジさん・・・この厚みは?」
「よく気づいたねカエデちゃん!!これはね、ボードの裏からもガスを噴射させることができる様に改良したものなんだ!!」
「ボードの裏からもガスがでるの!?」
カエデは驚きながらボードを手に取る。そのボードの裏側を見てみると、裏前方部、中央部、後方部に穴が開いており、その穴にはガスの噴射口があった。
「見て分かるように、板の裏にガスの噴射口をつけてみたんだよー。それでギリギリ入るだけ小型のガスボンベを入れてみたんだ!それで、むき出しにするわけにもいかないから、穴を開けた板で覆ってみたんだ!!」
「へぇー!!じゃあ下のガスを噴射させて空を飛ぶのかな?」
「そうだよカエデちゃん!」
カエデはさっそく板に足をバインディングに固定し、操作装置を手に取る。この操作装置も改良してあり、普通2つなのだが、この操作装置にはトリガーは4つついていた。そのトリガーは上からボード後方部のガス噴射、裏前方部のガス噴射、裏中央部のガス噴射、裏後方部のガス噴射のトリガーとなっている。
「今回は降りるのも大丈夫そうでしょ?!」
「うん!!これなら大丈夫そうだよ!」
「一番上が後ろについてる立体起動装置のガスの噴射で、2番目が裏側の前方部分からガスが出るからね」
そこでカエデは迷わず2番目のトリガーを引いた――
バシューー
「ふぇっ!?」
ゴツンッ
「ふぎゃっ」
2番目のトリガーを引いたことで前方部分のところだけガスが出て、ボードの前方部分だけ宙に浮いた。その結果、カエデは逆さまになって思い切り頭をぶつけたのだった。
「い・・・いったぁぁ」
「えっと・・・カエデちゃん、なんかごめんね?」
「う・・・うん」
裏前方のガスだけ噴射させればこうなることをさすがのカエデでも分かっていると思ったのか、ハンジは呆気にとられていた。
「か・・カエデちゃん?裏のガスは全部調整して噴射しないとね?」
「わ、わかってたもん!!」
口を尖らせていじけるカエデ。
「じゃあカエデちゃん行ってみよう!!今度はうまくいくよ!!」
「うん!!」
カチカチカチとトリガーを引き、裏前方のガスを他より少しだけ多めに出して前方部を他より多く浮かせる。ボードが浮いてから一番上のトリガーを引いて進みだす。
「おぉー!!ハンジさんこれ楽しいですよ!!」
「それはよかったね!!じゃあ裏のガスを強めに出してもっと高く飛んでみて」
「はい!!」
カエデは元気よく返事をし、下3つのトリガーをさらに強く引いて高く飛ぶ。どうやら普通の立体機動装置よりガスの出力が強いことから改良したのだろう。
上空15mほど飛んだところで、カエデは腰に着けておいた鞘から操作装置に刀を取り付けた。
――よぉーし!!いろいろやってみよう!!
カエデは後方のガスを強く噴射させて20mほどの高い木の枝に急接近する。枝がスレスレまで近くなったところで、裏前方のガスを強く噴射させて後ろに一回転して避ける。
避け終えたカエデは体を右に大きく傾かせながらボードの前方を上げる。そうすることで木の周りを回りながら頂上まで上がることになった。そして頂上に到達したカエデは刀で木の頂上幹を切り取った。
避ける、回り込む、そして切る。それはまるで巨人との戦闘を思い描かせた。
「よぉーし!!まだまだいくぞぉー!!」
そう言ってカエデは加速をつけながら上空へさらに飛んだ。
バシューー・・・プシュ・・・・・。
「へ?・・・あれ?」
ガスが切れる音がすると、カエデの視界に映っていた風景は上昇するのをやめ、急に落ち始めた。つまり、カエデの体は落ち始めたのだ。落ち始めた体は、先ほどの木からさらに10mも上空もの高さにあった。
「ぇえ!?うそ!?」
落ち始めたことに気づいたカエデは腰を低く落とし、素早く刀身を鞘にしまった後バインディングから足を取り外す。
「えいやっ!」
カエデはボードを蹴り飛ばし、先ほどの巨人に見立てた木へ跳躍する。そして枝に掴まって止まることを試みる。
バキッ
「だ・・・だよね・・・」
掴んだ木の枝は当然折れて再びカエデは落ち始める。枝が体にぶつかりそうになるところを、体をひねることで回避し、すぐにその枝に捕まる。そして再び枝が折れる。
その作業を5回ほど行って10mほど落ちた頃、枝がなくなって地面へ向けて落ち始める。
先ほどの作業のおかげで十分勢いをなくせたことで、カエデは2回宙返りをして難なく地面に着地することができた。
そして、無事に着地することができたカエデはそのまま大きな木に背中を預けて座った。
「ふ・・・ふぅー」
「カエデちゃーん!!」
座ったカエデの目に、走って近寄ってくるハンジの姿が見えた。
「ハンジさん・・・」
「カエデちゃんごめんね。ガスの噴射の出力をあげたらガス欠がものすごく早くなっちゃったみたい!!」
「はふぅ・・・。でもさっきのボードよりも楽しかったし、実用性があったね!」
「でしょう?もっと長時間使えればすごくいい発明品になると思うんだよね!!
という訳で・・・カエデちゃん次は――――」
ビクッ
「も・・・もう嫌ですぅ~~~~!!」
カエデは身の危険を感じ、ハンジの言葉を遮りながら旧本部の古城の中へと逃げていった。
「あぁ・・・。いっちゃった。さすがにちょっとやりすぎちゃったかな?」
ハンジは少し反省しながら、先ほどのカエデが蹴り飛ばしたボードの落ちた場所へと歩いて行った。
「あーぁ。次は何を作ろうかなぁ~」
きっと次の発明品の犠牲者もカエデであるだろう・・・。
お読みいただきありがとうございました。
操作装置のトリガーがどこを押すとどうなるかは分からなかったので、レバーで刀身の付け替え。左右の1つのトリガーで左右のアンカーの射出と引き戻し。もう1つのトリガーでガスの噴射で、左右両方のトリガーを引くことでよりガスの出力を上げていると考えました。
スノーボードも飛行機もよくわからないので間違っているところもあるかもしれません。
こんな発明品があったら面白いかもしれないなどありましたら、教えてくだされば書いてみるかもしれません。
この間章は評判が悪かった場合消すかもしれません。