己の世界を守る楓   作:ふぁむな

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こんばんわ。今回もお読みいただきありがとうございます。
アニメ22話まで見ました。リヴァイいい人!! (o-`ω-)b

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帰還そして・・・

◆◆◆

 

 

 

 調査兵団による壁外遠征は、知能をもった巨人――女型の巨人の出現とカエデの行方不明なおかつ生死不明という状況になり、普段なら帰還するところだった。しかし、今回の遠征ではエレンの存在価値を示さなければならなく、9日間の遠征を行い、予定より早いがカラネス区へと帰還した。

 その9日間の間、エルヴィンはアルミンの班にカエデに何があったかを口止めをし、調査兵団の兵士達にはカエデは事情により先に帰還したと伝えたが、兵士達はなにかを感じ取って不安になりながら戦闘を行った。

 

 

 

 今回の遠征で知能の持った巨人の存在を知ることができたが、カエデが帰還しなかったという結果は人々にとってかなりの衝撃だった。そしてカエデが帰還していないことを知った調査兵団の兵士達はなんとなく感じ取っていた不安が現実のものになり衝撃を受けた。

 それもそうだろう、彼らが心の中では恐れるほどの力を持っており、彼女は人類最強の矛であり、人類最大の盾だったのだから。そして人類の窮地には必ずといっていいほど助けてくれた存在がいない・・・その事実は人類全体に不安をもたらした。

 

 

 

 

 

 そして今、女型の巨人を目撃した中でカエデの友達ということでアルミン、ミカサ、エレン、リヴァイ、エルヴィンが集まり、先に帰還したというカエデがどうしていないのか、そしてこれからのことを話そうとしていた。

 

 

 

「アルミン・・・今なんて?」

 

 

 ガタっと音をたてながらミカサは立ち上がった。

 

 

「カエデさんが女型の巨人に蹴られて・・・。

 それで地面に頭を打ったあと女型の巨人に拾われて連れて行かれた・・・。

 あの様子だと・・・・・・」

 

「そ・・んな・・・。カエデが・・・」

 

 

 それを聞いてミカサは崩れ落ちた。

 

 

 そこで不機嫌そうなリヴァイが視線をアルミンに向けた。

 

 

「おい・・アルミン?」

 

「は・・はい!」

 

「その女型の巨人は無傷だったか?」

 

「そういえば・・・はい。無傷でした。でもなんでわかったんですか?」

 

 

「あいつが負けるなんてありえない。・・・そうなると女型の巨人が誰なのか気づいて攻撃しなかった可能性が高い」

 

 

「そんな・・・。女型の巨人がカエデさん以上に強かったという考えはないですか? ・・・それも考えたくはないですけど」

 

「ないな。報告だと女型の巨人のうしろにいた巨人は見えただけで20体はいたらしいが、その巨人をどの班も見ていないことを考えるとカエデがすべて倒したのだろう。

 つまりカエデは女型の巨人との戦闘をしつつ奴らを倒す余裕があった」

 

 

 リヴァイの話しを聞き、エレンは目を見開きながら右手で髪をかきあげた。

 

 

「・・・そんな・・・。カエデの特別仲の良い友達で女性といったらミカサとアニしか・・・」

 

「そうなるとおそらくそのアニが女型の巨人の可能性が高いな。彼女は調査兵団には入っていないだろう?」

 

 

 エレンはリヴァイの言葉にカエデとアニの日頃の仲を思い出してみるが、アニがカエデに何かをするということは考えられなかった。

 

 

「そんな・・・。アニはカエデを誰よりも大切にしていただろ・・・。どうしてカエデを殺そうとなんて・・・」

 

 

「私がアニに今からでも聞きに行く」

 

 

 すぐにでもアニのいるであろう憲兵団の支部に行こうとするミカサの腕をエルヴィンが掴む。

 

 

「待てミカサ!!」

 

「どうしてですか!? カエデは・・・カエデはまだ死んでいないかもしれない! いや、死んでいません!! アニに居場所を聞き出して助けないと・・・」

 

「カエデを蹴り飛ばしたんだ。ミカサが行っても危険なだけだ・・・。巨人化されたら仮に殺せたとしても生かして居場所を聞き出すことはできない。それに確定したわけじゃない」

 

 

「今はエレンの立場も危ないんだ。

 今回の遠征でカエデは存在価値を示したかもしれないが、今この場にいない。

 となるとカエデとリヴァイでエレンの監視をするということで通された案がこの場合危うくなるし、今回の遠征で確実に上を説得できるほどの成果は残せていない。

 それに明後日にはエレンを再び審議所まで連れて行かなければならない。そうなるとエレンを審議所に預けた場合、壁を壊すほどの力を持った巨人になれる人間を捉えられる機会がなくなるかもしれない」

 

「クッ・・・」

 

「明後日、エレンを護送する時に・・・作戦を実行する。そこでアニを拘束し、アニが女型の巨人であればカエデの居場所を聞き出す。これが成功すればエレンの護送が取り敢えずはなくなる可能性が高い。そして運がよければ・・・カエデの居場所がわかる」

 

 

「運がよければ・・・」

 

「すまない・・・。

 調査兵団の団長として人類のため、今はエレンのためにできることする」

 

「わかり・・・ました・・・」

 

 

 ミカサは歯を食いしばりながら俯いた。

 

 

「作戦にはエレン、アルミンが必要だ。協力してくれ」

 

「「・・・はい」」

 

 

 エルヴィンの言葉に2人は小さな声で返事をした。

 ただ、エレンは未だにアニが女型の巨人であることを信じきれなかった。しかし、カエデの行動から既にアニが女型の巨人であるという根拠があるために渋々ながらに返事をしたのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 怪我をしてから10日目の朝――

 壁外南方の巨大樹の森のカエデが暮らしていた木の枝の二本目で、カエデは戻るための準備をしていた。

 

 カエデの立体機動装置についている小さいガスボンベはここにはなかったために、シガンシナ区が陥落する前に置いていた数個の立体起動装置の内の1つを取り付けた。

 カエデは3本の刀身を入れてある鞘の重みに、久しぶりだと思いながらいつもつけている立体起動装置と鞘はリュックに詰めた。

 

 いまのカエデは皆と同じ立体起動装置をつけ、フードのついたマントをいつもの服の上から羽織り、左腕には固定するための薄い板と包帯が巻かれていた。

 アニがここを去って9日、カエデの怪我は異常なほどの回復力をみせ、左足は完治し、特に酷かった左腕もほぼ完治というところまでになっていた。5年前の怪我も比較的早く回復したが、今回の怪我はそれよりも早く回復し、本人でさえも驚いた。

 

 

 

「よし!! 行こうか!!」

 

ピィィィイイイイ―――――

 

 

 自分に喝をいれた後、指笛を吹いてから木の枝から飛び降り、下にいる巨人のうなじ部分にアンカーを射出して近づき、そのまま削ぎ落とす。その巨人を右足で蹴り、指笛を吹いたことでこちらに走ってきた、元々近くで放し飼いしていた五頭の馬の中から乗りやすい一頭にそのまま飛び乗って馬を走らせた。

 

 

 

 カエデは馬を走らせ北上し、途中で出会った足の速い奇行種は、右腕はまだ完治していないため右側のアンカーをなるべく使わないようにして倒していった。 

 

 

 

 

 

 

 

 馬を走らせてから数時間後――

 

 

――シガンシナ区の壁が見えてきたね。

 

 

 馬を走らせているカエデの目にはシガンシナ区の壁が見えた。そしてさらに馬を走らせてシガンシナ区の門があった超大型巨人によって壊された場所から入った。

 

 

――このまま北に行ってトロスト区の壁を立体機動で登っていこう。

 

 

 そう思い、さらにまっすぐと馬を走らせ、5年経って全体的に少し古びたシガンシナ区の旧市街地へと入る。

 

 

 

 ウォールマリアの壁が近くなってきたとき、壁の上から人が飛び降りていくのがカエデの視界に入った。

 

 

 

――え・・・・? なんで人があんなところに!? それより大変!! あのままじゃ・・・

 

 

 

 

 カエデの心配は、飛び降りた人が爆発音とともに黄色い光を放ち、煙をまといながら巨人になったことによって無意味になった。

 

 

 

 

ドォォォォオオオオオン!!

 

 巨人は地面にクレーターを作りながら、片膝と片手を地面につける形で着地をする。そして足から蒸気をだしながらスラリと立ち上がった巨人は、ウォールマリアの門があった鎧の巨人によって壊された場所に立ち、カエデの行く手を塞いだ。

 

 

――もしかして・・・アニやエレンの様に巨人化できる人間!?

 

 

 

 そう思ったカエデは右側のアンカーを家へ射出し、ガスを噴射させながら引き戻すことで乗っていた馬から離れて屋根の上へと登った。

 

 カエデの行く手に立ち塞がった巨人は、今まで出会ったどの巨人とも違っていた。

15m級で引き締まった筋肉で男型という点は一緒だった。しかし、この巨人には肩まで伸びた茶髪で後ろ髪は少し外にはねている、そして体を薄く覆うほどの毛が生えているという点が違った。

 

 壊れた壁の前で立っていた巨人は腰を落としたあと、突然屋根の上で観察していたカエデの方向へと走り出した。

 

 

――アニよりは早くないね。

 

 

 冷静に分析したカエデはリュックを降ろし、中から素早くいつも使っている鞘を取り出して刀を操作装置につけて引き抜く。そして、向かってくる巨人に刀を向けた。

 

 

「手加減はしないからね」

 

 

 そう言ったカエデの言葉が聞こえたのか巨人は不気味にニヤリと笑う。そしてカエデの50m手前で急に止まると、巨人は右側に建っている石造りの建物を、右拳をカエデの方向へと振り抜きながら壊した。

 

 

「なっ!?」

 

 

 カエデの方向へと振り抜かれたことで、多量の岩がものすごいスピードで次々とカエデを襲う。

 

 

――量が多すぎる!!

 

 

 そう思ったカエデは屋根の上を駆け、道を挟んで右隣にある建物へと跳躍することで避ける。しかし、それをよんでいたのか、巨人はカエデが助走を着け始めた時点で走り出しており、空中にいるカエデへと右拳をまっすぐと放った。

 

 

「ふっ!!」

 

 

 カエデはすぐさま体を地面と平行になるように体を捻り、ガスを噴射させて体をさらに上空へと飛ぶ。巨人の拳はカエデの体のあった場所を通り過ぎ、石造りの家を破壊する。カエデは巨人の腕に着地し、そのままうなじへと駆け出した。

 手首から肩へと駆け出し、肩の上に乗ったカエデはそこからうなじへと飛び、削ぎ落とすために刀を振る。

 今回の巨人もカエデ相手ではすぐに決着がついたように見えた。

 

 

 

――この巨人・・・うなじ部分を守らない?ならこのまま――っっ!?!

 

 

 

 

 カエデは直感的に身の危険を感じ、体をひねったままガスを噴射させた。

 

 

 

 その直後、巨人の外にはねた髪が硬化されて針のように尖り、削ぎ落とすために体を捻っていたカエデの体を左側から突き刺した。ガスを噴射させて体を遠ざけていたが、その間合いより長く、そして速いスピードだったために避けきれなかったのだ。

 

 

 

「くぁぁああああっ!!」

 

 

 カエデは激痛に耐えながら、体を突き刺している巨人の髪を切り落としてその場から離脱し、家の上に着地した。

 

 

「ゴフッ・・・あぅぅっ」

 

 

 カエデは口から出た血を手の甲で拭きながら、突き刺さった髪を引き抜いた。そして傷口を右手で抑えながらその場から離脱するために屋根の上を走り出した。

 髪を硬化し、針のようにできる巨人―――針の巨人は今のカエデの体の状況が予定通りだったのか不気味にニヤリと笑い、さらに追い討ちをかけるためにカエデを追いかけてゆく。

 

 

 

――このままじゃ・・・。こうなったら・・。

 

ピィィィイイイイ―――――。

 

ピィィ――――――――――。

 

 

 カエデは走りながら指笛を吹いた。その音は澄んでいて遠くまで鳴り響くようだった。

 

 

 

 

 

 傷口を右手で抑えながらもさらにスピードを上げ、指笛を吹いたことで戻ってきた馬に屋根の上から飛び降りながら乗る。そしてお礼を言いながら手綱を引いて走らせ、市街地の複雑な細い道へと入っていった。

 

 

 

 市街地の複雑な細い道へと入っていったことによりカエデを見失った針の巨人は立ち止まって目をつむった。そして10秒後、何かを感じ取ったのか突然目を開いて左側へと建物を壊しながらゆっくりとだが着実に目的の場所へと進んでいった。

 

 

 針の巨人は目的の場所へと着いたのか建物を壊すのをやめ、目の前の建物に手を乗せて細い道を上からのぞき見た。

 

 

 

 

パカラッ パカラッ パカラッ―――

 

 針の巨人が見た細い道にはただ先ほどのカエデが呼んだ馬が走っており、その上には誰も乗っていなかった。どうやらこの巨人は馬の蹄の音を聞いてきたようだ。

 

 

「グゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 

 針の巨人はグッと歯を食いしばりながら唸り、悔しさからか手を乗せていた建物を思い切り殴りつけて粉砕した。

 

 

 

 

 

 

 馬に乗っていたはずのカエデはというと、旧市街地に入ってすぐ馬からそっと飛び降り、馬の行く道をは違う細い道へと進み、3度道を曲がった後、巨人が建物を壊し始めた音を聞いてから家の中へと入った。そして家の中をあさって救急箱を見つけ出し、先ほど受けた傷を痛みに耐えながら縫い合わせ、その後の処置も素早く行ったのだ。

 すべて行うことができたのは市街地特有の細い道と馬の足の速さによって針の巨人が追いつくのが遅れ、30分ほど時間を稼げたからだった。

 そして巨人の建物を粉砕する音が耳に入り、針の巨人が馬のもとへとついた事を確信した。

 

 

 ――あの巨人が馬のところまでついたようだね・・・。あの馬も無事だといいけど。

 

 

 

 処置を終え、そう思ったところで、突然5m級の巨人が家の窓ガラスを突き破りながら上半身を家の中へと入れて手を伸ばしてきた。そう、カエデが戦っているのは陥落したシガンシナ区であり、当然他の巨人がうろついているのだ。

 

 

――まずいっ!! この音であの巨人に見つかる!!

 

 

 そう思ったカエデは5m級の巨人の手を避けながら家のドアから細い道へとでた。

 

 

 

 

ドシン ドシン ドシン

 

 

 針の巨人は先ほどの音で居場所がわかったのか、カエデの方へと走り出した。

 その音を聞いたカエデは隠れるのは無理だと判断し、自分の脚力と少しのガスの噴射で家の屋根へと上がった。

 

 

 

「戦うしかないみたいだね・・・。全力であなたを倒す!!」

 

 

 カエデはそう言いながら、戦いやすい大通りに出るために家の屋根を次々と飛び移っていく。それを見た巨人も大通りの方へと出て、カエデの方へと走り出した。

 

 

 

 

 カエデは大通りへと飛び降りてすぐ縮地を行い、針の巨人の10m手前へと着地する。カエデが鋭い目つきで近づいてきたことに危機感を感じた巨人は急に止まり、全身の毛を立たせて硬化させ、針のように尖った毛が全身を守る。その見た目は、まるでハリネズミのようで、人型がやると見た目は悪いが、しっかりと身を守る役割をしていた。

 それを瞬時に感じとったカエデは大きくバックステップをして距離をとる。

 

 

――最初、腕の毛を立たせなかったのは・・・うなじ付近の上空で避けられない私に重症を負わせるためだったんだね。

 

 

 カエデは傷口から血が出てくるのを感じながら、腕をクロスしながら腰を落とし、地面を抉れるほど踏みしめる。そしてガスを爆発的に噴射しながら縮地を行う『瞬速』を行い、立ち止まっている針の巨人の両足の間へと急接近した。

 

 

「シッ!!!」

 

 

 カエデは針のように尖った毛が体に迫ってきたところで、クロスさせていた腕を戻しながら思い切り刀を振り抜いた。瞬速のスピードを生かして振り抜かれた刀は針のように尖った毛を切り飛ばし、さらに弧状の真空状態を作り出して巨人の左足を切断し、怪我の影響で威力が出しきれなかったため右足は骨を切るだけにとどまった。

 刀を振り切ったカエデは、腰を落としながら足を地面に着けることで、地面を抉りながら数mで止まった。右腕と完治したばかりの左足、そして先ほど受けた傷が開いたことで体中に痛みが走り、思わず声が出る。そして巨人もまた足を切断されたことで、痛みによる叫び声を上げた。

 

 

「くぅぅぁぁっ」

 

 

「グァァァアアアアア」

 

 

 足を切断された巨人は声を上げながら地面に膝を着き、そしてうつ伏せに倒れ込んだ。

 追い討ちをかけるようにカエデは大通りを駆け出し、うなじ近くまで来たところで跳躍する。針の巨人は髪を硬化させて防御体制に移りつつ、右手でカエデがいるであろう場所を払う。それを体をひねりながらガスを噴射させて避ける。そして髪が近くなったところで、うなじをそぎ落とす時と同じように横に一回転しながら硬化された髪をそぎ落とす。さらに、削ぎ落とされていない髪に当たらないように膝曲げながら、もう一度横に回転しながら今度はうなじ部分を切り落とすように刀を振った。

 

 

 

 

――ダメ・・・。左手に力が入らなくて削ぎ落としきれていない。

 

 

 巨人のうなじはそぎ落とすための下の切れ込みは深く入っていたが、左手によって振るわれた上の切り込みは浅く、うなじを切り落とすまでには至っていなかった。そのため巨人のうなじ部分は蒸気を上げながら修復されてしまった。

 カエデはすぐさま近くの家にアンカーを射出し、屋根の上へと上がる。そして開いてしまった傷口を右手で抑えながら巨人の行動をよく観察していつでも行動できるように心の準備をした。

 

 

 

 

 巨人はこのカエデの一連の攻撃を受け、勝てる可能性が低いと感じ取ったのか突然体を丸め、全身の毛と皮膚を硬化した。

 

 

――いったいなにを・・・?

 

 

 

「ぎぃやああああああああああああ!!!!」

 

「っ!?」

 

 

 突然巨人は壁の向こうまで聞こえるのではないかというほど大きな叫び声を上げた。あまりの大きさにカエデは両手で耳を塞ぎ、座り込んだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 カラネス区の壁の上――

 

 

「な・・・なんだったんだ今の音は」

 

 

 壁の上に居た駐屯兵は人間とは少し違った叫び声が聞こえたことに戸惑った。なぜなら、聞こえた方面は南の方からでどう考えても壁の外からの声で、壁の外には人間は住んでいない、つまり巨人によって出された声という可能性が高かったからだ。

 

 さらに、駐屯兵は壁の外で大きな変化が起きたことに目を見開いた。

 突然壁の近くをうろついていた巨人達が南へと方向転換し、奇行種のように走り出したのだ。

 

 

「巨人が・・・巨人が南の方へと走り出したぞ!?

 伝令を出せ!! 三兵団のトップと南領土を束ねるピクシス司令にだ!! 早く!!」

 

「は・・はいっ!!」

 

 

 最初に外の変化を見つけた兵士が、自分より階級の低い兵士へ伝令を出すように指示を出した。

 

 

「南の方でいったい何が起きている・・・」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 カエデは針の巨人の叫び声が止まると立ち上がり、あたりを見回した。

 

 

――なっ!?!? これはエレンの時より・・・!!

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッ―――

 

 

 巨人の叫び声によってなのか、突然全方位から巨人が走って向かってきた。エレンの時と違ったのは向かってくる巨人の数だった。カエデが戦っていたのはシガンシナ区。つまり壁の外からもウォールマリアの方からも多くの巨人がシガンシナ区へと入り込み、次々と入ってくる巨人の数は数えきれないほどだった。

 高さ50mもある壁に囲まれ、2つある出入り口からは次々と巨人が入ってきており、さらにカエデは負傷していた。この光景は誰が見ても『絶望』の2文字が最も当てはまることだろう。ただ、1つだけ希望があるといえば、巨人達は針の巨人へと向かって行っていることだった。

 

 

 

――こんな数・・・。倒しきれない・・・。

 

 

 カエデは冷や汗を掻きながら操作装置を握り直した。

 

 巨人達は叫び声を上げた針の巨人に噛み付こうとするが、硬化された毛によって体を貫かれていく。そして数十秒で巨人達の塊が出来上がり、針の巨人の姿は見えなくなった。

 

 すると、針の巨人へ向かっていたはずのこの場にいるすべての巨人は、突然カエデを標的にして走り出した。この瞬間、ただ1つの希望がなくなった。

 

 

 

「えっ!? や、やばい!!」

 

 

 

 屋根の上にいるカエデに15m級の巨人が手を伸ばしてくる。それをジャンプして避け、そのまま頭の上へと乗った。そのカエデに近くの高い建物に登っていた奇行種が飛びついてくる。それを近くにいた10m級の巨人の頭に飛び降りたことで避ける。

 カエデはもっとも良い進路を探そうとするが、どこを見ても巨人、巨人、巨人、とどこの進路をたどっても同じに見えた。

 

 

――このままじゃ体力がなくなるだけだ・・・。壁まで走っていって登ろう。

 

 

 その判断に至ったカエデは再び屋根の上へ跳躍し、着地すると同時に迫ってきたいくつもの手をその場で回転しながら刀を振ることで切り飛ばした。そして2回回った後、地面を蹴り飛ばして走り出す。

 

 

――道はもうほとんど巨人だらけだ・・・。もうまっすぐ屋根の上を駆け抜けよう。

 

 

 針の巨人との戦闘で壁から離れてしまい、カエデと壁との距離は2kmほどある。なにもない道で2km走るだけならすぐ着くのだが、普通の市街地の建物より高い巨人が多く向かってきている状態で、なおかつ怪我をしているため2kmという距離はあまりに長かった。

 

 まっすぐ進むことを決意したカエデはさらにスピードを上げながら、建物の両サイドから繰り出される手をチェンジ・オブ・ペースによってうまく避けていく。

そしてカエデの目の前に、家の上に正座を少し崩した状態で股がってカエデを待ち構える奇行種が入った。奇行種はカエデが走って近づいてきたところを見計らって、カエデを押しつぶそうと両手を前にしながら、覆いかぶさるように体を家に倒す。カエデは縮地を行い、正座を崩した状態で座っているために家と巨人の股とのわずかな隙間の前へと着地し、そのスピードのままスライディングをしてわずかな隙間をくぐり抜けた。

 

 

「はぁ・・はぁ・・・は・・あと500m。立体機動装置の入っているリュックを回収しよう」

 

 

 カエデはリュックのある道を3つ右側にはさんだ家の列へ行くため、さっそく家の屋根から道を挟んだ先にある家へと高く跳躍する。すると、道にいた10m級の奇行種が口を開けたままカエデの方へと飛んできた。10級が10mもの高さを飛んできたことに驚き、カエデの反応が遅れた。

 

 

――噛まれる!!

 

 

 カエデの体は10m級の口に入り込む。10m級の巨人はすぐさまカエデを噛みちぎろうと口を閉じようとした。

 しかし、カエデは口が閉じられる前に刀を思い切り振り、下顎を切り飛ばしたことによって危機一髪のところで噛まれずにすんだ。そして歯をつかんで口の外へとよじ登り、自由落下をし始めている10級の顔を踏み台にして大きく跳躍した。

 

 

 上空20mから大きく跳躍したことにより、一気に目的地まで飛ぶことができたカエデはリュックを掴み取りながら建物の両サイドから迫ってきた巨人の手を前方に転がることで避けた。そして立ち上がりながらリュックを背負って再び走り出した。

 

 

「ガフッ・・・。はぁ・・はぁ・・。あと少し・・・」

 

 

 アクロバットな動きのせいで出血の量が先ほどより少し多くなり、口からも少量の血を吐いた。カエデと壁との距離はのこり150mほど。自分に喝を入れると再びチェンジ・オブ・ペースで巨人の攻撃を避けながら市街地の最後の建物まで走った。

 

 

 

 最後の建物についたカエデはそこから跳躍しながらアンカーを壁に射出し、ガスを噴射させながらワイヤーを引き戻す。

 

 

 

 

 

 

 いや、引き戻せなかった。

 

 

――な・・・なんで!?

 

 

 いつもの立体機動装置をは違い、ガスはいつもの2倍あるはずで、ほとんど自分の足で移動していたのでガス切れはありえないと思いつつ、カエデは大きな鞘へと目を向けた。

 

 

――そんな・・・。まさか足を切り飛ばしたとき!?

 

 

 カエデが見た先には、穴が空いている左側のガスボンベがあった。おそらく針の巨人の足を切り落とそうとしたときに、左足から伸びた硬化された毛がガスボンベに穴を開けたのだろう。そこからの戦闘をすべて右側のガスの噴射を右側のボンベのガスだけ使用していたようだ。そのことにより、いつもより多くのガスが失われてガス切れを起こしたようだった。

 

 

 

 

――「この世は残酷だ」・・・こんな時にミカサの言葉を思い出すなんて・・・

 

 

 壁に突き刺さっていたアンカーが外れ、下に群がっている巨人のもとへと落ちるところを刀を壁に突き刺すことでなんとか落ちないように耐えた。

 

 

「痛い・・・。どうしよう・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォォォォオオオオン!!

 

「あっ・・・」

 

 

 カエデは懐かしい遠吠えを壁に空いた穴の方から聞こえてきたことにふわりと笑うと、壁に突き刺していた刀を引き抜き、自由落下を始めた。

 

 

 

モフッ

 

「ありがとう、ウルフ」

 

「ウォン!!」

 

 

 遠吠えをしたのはウルフだった。ウルフは3m級、5m級、8m級、10m級と足場にしながら次々と飛び移り、そこから大きく飛び、タイミングよく自由落下によって落ちていくカエデを背に乗せて家の屋根へと着地したのだ。

 ウルフはカエデの2つ目の澄んだ指笛によって、ウォールマリア北東の森から走ってきたのだった。

 ウルフは狼であるため巨人の標的になることはなく、ここまですんなりと来ることができたのだ。

 

 

 ウルフはカエデを1度舐めると、鋭い目つきになり、家の上から大通りへと飛び降りたあと壁にあいた穴へと駆け出した。

 カエデを乗せたことで巨人の標的になったのだが、4本足だからこそできる細かい動きによって巨人共から次々と繰り出される攻撃を軽々と避けながら穴をくぐり、ウォールマリアへと入った。

 

 

 

「ウルフー。本当に助かったよ。このまま北東の巨大樹の森まで戻ってもらっていいかな?」

 

「ウォン!!」

 

「あははっ。くすぐったいよウルフ」

 

 

 ウルフは久しぶりにカエデに会えたことが嬉しいのか、カエデの頬を何度も舐める。そんなウルフにカエデも嬉しくなって笑った。

 

 

 

 先ほど通ってきた穴は元々そんなに大きなものではなかったため、少しずつカエデたちを追おうとする巨人がいたが、ウルフの速さについてくることはできず諦めたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 針の巨人の登場でした。
 カエデとの戦闘になると友達じゃない限りすぐに終わってしまうので、強そうな巨人を考えたところ毛の硬化でした。
 恐らく普通はできないことな気がするのですが・・・(;´x`)

 アニメの21話を見て思ったのですが、刀身はレバーじゃないみたいですね。かと言ってどうやって外したのか分からなかったのですが。親指でスっと刀身の下の部分を撫でただけで外れちゃいました。
 レバーがガス噴射かワイヤーの射出だと扱いづらいと思うのですが、どうゆう仕組みだったんでしょうか。


 1話目から「・・・」は「…」に、「!」と「?」の後に1スペース開けることを教えてもらったので修正中です。
あと3話ほどで漫画の11巻までいきそうです。・x・)

今週と来週は忙しいので更新が遅くなるかもしれません(´;ω;`)
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