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ツンツン
「ウォー ウォー」
「・・・・うーん」
ツンツン
「ウォー ウォー」
「あと10分・・・」
ガブッ
「ふぎゃっ!!」
ウルフは最初、優しくつつく事で起こそうとしたのだが、カエデが訳のわからないことを言い始めたので腕に軽く噛み付いた。噛み付かれたことで飛び起きたカエデは傷に痛みが走り、思わず右手で抑えた。
「あたたた・・・。あぁ、傷がぁー。ん?」
そこでカエデは自分がどこにいるのか気づいた。周りを見るとカエデにとって懐かしい光景で、カエデは思わずふにゃりと笑った。カエデが今いる場所はウォールマリア北東の昔住んでいた巨大樹の森の中に建っている家の中だった。カエデはどうやらウルフの上で寝てしまい、ウルフはカエデに気を使いながらこの家にまで連れてきてくれたようだ。
「ありがとねウルフ」
「ウォン!」
カエデはウルフの毛並みを撫でながらお礼を言う。その手に逆らうことなく、気持ちよさそうにウルフは目を細めた。
一通り撫で終えたあと、カエデは引き出しを引いて中から救急道具を取り出し、使いやすいように地面に並べた。
――もう一度丁寧に傷口を塞ごう・・・。
カエデの家には医療系の器具のほとんどが揃っていた。カエデは布を噛んで、痛みに耐えながらもう一度傷口を塞ぎ、包帯を巻く。それから右腕の板と包帯を替えて一通りの処置を終えた。処置を終え、近くにいたウルフの方をみると心配そうに見ていたので首下を撫でた。
「オーン・・・」
「大丈夫だよウルフ。でも、貧血気味だけどねー。じゃあご飯作ろっか?」
「ウォン!!」
「あははっ。ちょっと待っててね」
そう言ってカエデは家のドアから外に出た。朝に巨大樹の森を出て、多くの巨人との戦闘、シガンシナ区からこの家までの移動を終えたので、遠くの空は赤色に染まっていて真上には綺麗な星が見え始めていた。
「綺麗だなぁー。よしっ野菜を採ってこよう」
空を眺めながらそんなことを呟く。そして今は荒れ放題だが、しっかりと育っている野菜がある場所へと歩き出した。
「にんじん~ たまねぎ~ じゃがいも~ おに――」
「ガゥッ!!」
お肉と言いかけたところで高く生い茂った草むらの中から、狼のような毛並みに猪のような大きな体の獣がカエデに飛びついてきた。それを体を後ろに反らしてながら腕をクロスにし、その獣の首を手で掴む。そして掴んだまま腕を思い切り戻し、獣の首を折った。
決して焦ることなく、素早く倒す。これが元この森で狩る側だった者の実力だった。
「ふぅー。おにく~」
カエデは倒した獣を右手で引きずり、左手で野菜を抱えて家へと戻り、野菜をキッチンに置き、獣は外に置いた。それから家の前で素早く獣の解体を行い、適当な大きさに切り分ける。そしてそれらをキッチンへと運んだ。
「あっ・・・お米ないや」
米を使った料理を最初作ろうと思ったのだろう。それからカエデは少し考えたあと、なにか思いついたのか、ポンと手を叩き、家から少し離れた場所にある大きな柵の中で牛を放し飼いしている場所にまで走り、ミルクを絞って再び家に戻ってきた。
キッチンに立ったカエデは鍋を入念に洗い、一度火を通した。それから野菜を切り、玉ねぎをきつね色になるまで炒め、一口サイズに切った肉を入れて塩、胡椒で味をつけながら炒めた。それからにんじん、じゃがいもを入れ、ある程度炒めたところで小麦粉を少々加える。それからミルクと水を入れ、とろみがつくまで焦げないようにかき混ぜた。
「シチューの出来上がりー! なんちゃって」
続けてカエデは大きめに切った肉に切れ込みを入れて塩と胡椒で下味を付ける。それを強火で熱したフライパンに入れ、少し経ったあとワインを少量加えた。ボウッと火があがり、カエデはフライパンを火から少し離す。そうして仕上がった肉を大きめのお皿に切り分けて乗せた。その肉からはとてもいい香りがした。
「ウルフー!! ウルフー!! ご飯できたよー?」
「ウォン!!」
カエデはシチューを皿に盛り、その皿と肉の乗っている皿を持ってリビングへ行き、床に置いた。本来はテーブルで椅子に座って食べるのだろうが、この家には既にテーブルはなく、床に座って食べるしかなかった。ウルフも近寄ってきてお座りの状態でカエデのことをじっと見ている。その目は「はやくっ!はやくっ!」と言っているような気がしてカエデは笑った。
「あははっ。食べよっか! いただきます」
「ウォン!!」
1人と1匹は食べ始めた。ウルフはいつもは生肉を食べるのだが、調理されたものの方が好んで食べていた。これはきっと数年間カエデの家族と仲良くし、料理をたまに分けてもらっていたからだろう。
食べ終えたあと、カエデは食器を洗い、その後一通り家の中を掃除した。
掃除を終えたカエデは敷布団を3枚も床に敷いて寝るための準備をしていく。ちなみに今のカエデの格好は母であるサクラが来ていた薄いピンク色のパジャマだ。
カエデは敷布団の上に寝転がるとウルフの方を向いて手招きをする。
「ウルフー。一緒に寝よ?」
「ゥォーン」
ウルフはカエデがぽんぽんと叩く場所へ歩いていき、伏せの状態になった。そんなウルフにカエデは抱きつき頬をスリスリとしてふわふわの毛並みに目を細めた。
「ふぁー。ふかふか。気持ち・・・・zzZZZZ」
抱きついてから20秒ほどで眠りについてしまったカエデ。疲れがまだ残っていたのか、ウルフの毛並みが気持ちよかったからなのかは定かではない。
こうして1人と1匹は少々早いが就寝した。
◆◆◆
翌朝、怪我をしてから11日目――
朝早く起きたカエデはウルフと共に、家から壁へと進んだところにある大きな岩の前へと来ていた。
「懐かしいな・・・」
そう呟きながらウルフの上から飛び降り、目の前の高くそびえ立つ壁を見上げた。壁には数箇所アンカーの跡があり、他には銃弾の跡が多くついていた。
カエデは視線を岩の下へと移し、置きっぱなしだった大きな木箱の蓋を開け、中から残り1つの立体機動装置を取り出し、そっと撫でた。
「お父さん・・・。この立体機動装置を借りるね」
カエデは立体機動装置を腰に取り付け、カチっとベルトと締めた。そしてここまで着けてきた立体機動装置を木箱へ入れ、鞘の右側だけは自分の刀の刃を取り付けた。
「よし、ウルフ行こっか!!」
「ウォーン」
ウルフを毛並みに沿って2回撫でるとカエデはウルフの上に乗った。
そして壁の方面へと向かう。
ウォールローゼの北東の壁へ向かう理由は最も近く、壁の上の駐屯兵が少なく、身を隠しながら壁を登るには最もよい位置だった。
堂々と行けば良いという話にもなるのだが、カエデは最初にエレン達に顔を見せるためにその方法を選んだようだ。
カエデとウルフはウォールローゼ北東の壁の前に着いた。
「ウルフありがとね。今度は私が会いに行くから元気にしててね?」
「ウォン!!」
カエデは膝をつき、ギュッとウルフに抱きつきお礼を言ったあと、目の前の高い壁を見上げた。 カエデはアンカーを壁へ射出し、ガスを噴射させながらワイヤーを引き戻す。それを連続で行うことで高さ50mもある壁を登ってゆく。ウルフは登り終えたカエデを見届けたあと、巨大樹の森へと走って戻っていった。
そして現在、カエデは家にあった、父であるツカサのフード着きのマントを着ており、フードを深くかぶりながらウォールローゼ内を歩いて、東のカラネス区を目指していた。
最初に羽織っていたマントは針の巨人との戦闘で穴だらけになったので家で着替えておいたのだ。
――戻ってエレンとミカサを安心させてあげなきゃ
そう思いながら歩いていると住民たちの会話の中で気になることが聞こえてそちらに耳をすませた。
「巨人の小僧と主要幹部がウォールシーナ東城壁都市のストヘス区を通って王都に召喚されるってよ」
「そうなのか・・・召喚されるってことは憲兵団が所有するのか?」
「まぁ、カエデちゃんが遠征から帰ってこなかったのは人類にとってかつてないほど痛手だったからな。でも、審議してみないと分からないと思うぞ」
「そうか、もう一度あの巨人の小僧の存在価値を審議するんだな。となると今回の決定で決まるな」
「そうだな」
――エレンが・・・。私のせいだったら急がなきゃ!!カラネス区じゃなくてストヘス区へ行こう
カエデは住民の声を聞き、調査兵団に合流しようと考えたカエデはウォールシーナの東城壁都市であるストヘス区へ向かうために進路を王都の方へと変更した。
「そういえばさ、王族が外に出て来てるかもしれないってよ」
「はぁ!?それは嘘だろ・・・。王族が王都から出るなんて聞いたことないぞ」
「あぁ。それもそうだな」
――王族か・・・どんな人なんだろ。
そんなことを思いながらカエデは早足で市街地の中を歩いて行った。
◆◆◆
調査兵団がストヘス区を通って王都へ行くため、憲兵団が立体起動を許されてストヘス区の市街地内を調査兵団が通る間を護衛することになった。
その護衛を上司からマルロとマルコと言うなんとも似た名前の真面目な新人の青年2人が任され、護衛に向かうため集合場所に次々と憲兵団の新人兵士たちが向かう。ちなみにマルコは104期訓練兵でエレン達の同期だ。
アニは憲兵団に2日前無事に帰還したが、疲労はまだ残っていて目をこすりながら支部の門を新人兵士の中で最後に出た。
――眠い・・・。やっぱり朝は苦手だ。カエデ大丈夫かな・・・。
『私は大丈夫!アニが遅く戻ったことで何かあったらヤダからね!』って言ってたから大丈夫かな?
カエデは優しいからな・・。それより今はどうにかしてエレンを・・・。
そう思いながら顔を上げると、家の影にフードをかぶっている見知った顔が見えた。
「アルミン・・・?」
「やぁ・・・もうすっかり憲兵団だね」
見知った顔はアルミンだった。アルミンは雨具のフードを深くかぶりアニの方を見ていた。憲兵団の支部の前にいるということは待っていただのだろう。
「その格好は?」
「荷運び人さ。立体起動装置を雨具で見えないようにしているんだ」
そういってアルミンは来ていたフード付き雨具の中をアニに見せた。
そこには立体起動装置がつけられており、いつでも立体起動に移れるようになっていた。
「それで・・?アルミンは私になにか用があるの?」
そこでアルミンはフードをとってアニをしっかり見据えた。
「アニ・・・アニに頼みがあるんだ」
「頼みって?」
「エレンを・・・逃がすことに協力してくれないかな?」
「逃がす・・?」
「いったいどこに逃げようと言うの?それに王政の命令に背くなんて・・・」
「長い間逃げるわけじゃないんだ。今はまだ審議会を説得できるだけの材料がまだ足りていないんだ、今のままでは憲兵団の手に渡ってしまうかもしれない。逃げることで時間を作って、そのあいだに材料を揃える!!必ず!!」
アルミンの説得の内容に疑問を持ったアニは首をかしげる。
「そんな材料が見つかるの?」
「カエデさんが戻ってきたら一番早いんだけど・・・。もし、何にも見つけなければエレンを憲兵団に所持させることになるかもしれない。そうなるとエレンは殺されるかもしれない」
アルミンの言葉にアニの眉がピクリと動いた。多少動揺したのだろう。
「そうかもしれないね・・・。でも私の人生もかかっているんだよ?
私が成功するかもわからないのに危険をおかしてでも助ける人間に見えるかな?
このことは黙っててあげるから私じゃなくてマルコにでも頼めば?」
そう、普通に考えれば訓練兵時代、無愛想で話したこともあまりないアニに逃げる手伝いをさせるより、仲が悪くなかったマルコに頼むのが常識的なのだ。
「マルコじゃダメだ・・・。彼は王に忠実を誓った人だから僕らの命令を無視するような行動を黙認するはずがない。僕がアニに頼んだのは・・・アニは優しいから」
「優しい?私が?私がいつ優しいと思えるようなことした?
少なくとも104期生にとっては対人格闘術でエレンを容赦なく倒しているから、そうゆう風には見えないはずだけど?」
「たしかにそうかもしれない・・・。でもアニはトロスト区奪還の時に手伝ってくれた。・・・それに僕はカエデさんがアニを優しいと言ったことを信じてる」
アニはその言葉を聞いて目を見開く。
――カエデはよく私に言ってたね・・・。そんなことないと思うけど。
でも、この状況はうまくいけばエレンを連れ出すチャンスになるかもしれない。
そう思ったアニはアルミンに気づかれないように上着のポケットから大きめの指輪を取り出し、人差し指につけたあとにアルミンを見た。
「わかった。その案に乗るよ。ここで待ってるからエレンを連れてきて」
「ありがとうアニ。連れてくるよ」
そう言って足早にアルミンはエレンを呼ぶためにその場から離れた。
5分後――
もともと近くにいたのだろう。アルミンはエレン、ミカサを連れてすぐにアニの元へと来た。
2人とも雨具を着ており、アルミンと同じく荷運び人の真似をしているのだろう。
「お待たせアニ。行こう」
「・・・わかった」
アルミン、エレン、ミカサを連れてアニは先頭を歩き始めた。
アニは顔だけアルミンに向ける。
「ねぇアルミン。もし私が協力しなかったらどうするつもりだったの?」
「・・・アニが協力してくれなかったら立体起動で壁を登るつもりだった」
そう言われ、アニは高くそびえ立つ壁を見上げたあとアルミンに再び顔を向けた。
「それは無謀じゃないかな・・・。ストヘス区に入る前に逃げる作戦はなかったの?」
「それだと馬車の中身を確認された時にバレてしまうからね。アニにかけてみたんだ」
「そう・・・」
「あっ! ここだ!」
そこでアニについて来ていたアルミン達が突然進路を変えた。
「っ!?ここを・・?」
アルミン達が進路を変えた先は、市街地から繋がる地下通路の入口だった。
その入口には階段があり、その階段を下りたあとは地下道になっていた
――地下通路・・・。
そっか・・・。この3人は私が巨人化できることがわかってここに・・・。
3人が地下通路への階段を下り始めたのを見てアニは階段の前で止まった。
「アニ・・?まさかお前地下が怖いとか言わないだろうな?」
エレンが言葉に重みを持たせてアニにそう聞いた。
「そうさ・・・私は地下が怖いんだ。暗くてお化けとかでそうでしょ?もし地上で行かないというなら私は協力しないでもどるよ」
「ふじゃけんじゃねぇ!!
大男をほおり投げる奴が地下が怖いとかいうわけねえだろ!!
早くこっちへこいよ!」
「カエデもお化けとかは苦手なんだけどな。
そもそもなんで地下で行く必要があるのかな?
なぜかここら辺には人はいないみたいだから地上で問題ないよね?」
アニは自分を怖がるような目で見ていることに気づいた。
「アルミン・・・。
私でも傷つくんだけどな・・・。
いつから君は私をそんな目でみるようになったの?」
「アニ・・・。
調査兵団が遠征に行った最初の日・・・憲兵団の寮にいなかったみたいだけど・・どこにいたの?」
――私が巨人化してカエデに怪我をさせて・・・。治療をして寝た日・・。
「あの日は・・・。そう・・・。理由があって野宿したんだ」
「次の日も夜遅くまで帰ってこなかったみたいだけど?」
「・・・ずっと道に迷ってた」
「憲兵団なのに道に迷ってた?」
「私が道をよく知らないところへ行っていたんだ」
「・・・カエデと戦闘を行っていた女型の巨人はカエデとの戦闘にもかかわらず無傷だった」
「それで?」
――私だってカエデに悪いと思ってる。
アニはアルミンの言葉に眉を潜めた。
「カエデさん相手に無傷・・・。それは女型の巨人が、カエデの友達だったからじゃないかな。それでカエデの特別仲の良い友達と言ったらミカサとアニしかいないんだよ」
――あぁ・・・ここまでだね。アルミンは確信を持っている・・・。
「アルミンにここまで追い詰められるとはね。君たちを殺してたら・・・こんなことにはならなかったかもしれないね」
「アニ!!待ってくれ!!
お前が実はすごく馬鹿でそんなことを言っているんだったらまだ間に合う!!
お前が地下通路を通るだけで――」
エレンがそういったところでミカサがエレンを後ろに押しのけて刃のついた操作装置を鞘から引き抜きぬいてアニを睨みつけた。
「もう話すことはない。
ねぇアニ・・・。カエデはどこにいるの?」
――仕方ない・・・巨人化してエレンを連れ去ろう。
カエデは私にこんな目をしなかった・・・。カエデを渡したくない・・・。エレンを連れ去ってカエデが怪我して休んでいる巨大樹の森へ向かおう。
「さあね・・・。アルミン・・・私が優しくてよかったね。
ひとまずここまではアルミンが賭けに勝った。でも・・・私が賭けたのはここからだから!!」
バンッ
アニは巨人化しようと右手の親指を噛もうとしたところでアルミンから銃声がし、それを合図に物陰に隠れていた5人の男達がアニを巨人化する前に取り押さえようと出てきた。
――なっ!? いるとは思っていたけど、こんなに近くに!?
男たちの動きは精鋭と呼ぶのにふさわしく無駄のない動きでアニへと急接近する。
◆◆◆
カエデはストヘス区に入るには身分証明が必要ということを気づいたカエデはなるべく人目の少ない場所を探し、一気に立体起動で壁を登った。
そうして壁を飛び越え、大通りへと出たカエデはすぐに調査兵団に呼び止められた。
「この先一帯は一時的に通行禁止になっている。悪いがこの先を通るなら遠回りするか待機していてくれ」
「・・・はい」
フードを深くかぶったカエデは自分だとバレないために小さな声で返事すると遠回りすると見せかけ、調査兵団の視界から外れた瞬間に家の影へと隠れた。
――調査兵団が人をここから通さないようにする・・・。今日エレンが護送される・・・。
2つを考えると・・・もしかして巨人同士の戦闘の可能性が!?だとすると標的はアニ!?
その考えに至った時には市街地を駆け抜けていた。調査兵団の兵士達に見つからないように、入り組んだストヘス区の細い道をスピードを落とすことなく1kmほど進み、大通りから人の気配がしなくなったところで大通りへと出て再び走った。
――アニ・・・。
人気がないために常に今出せる全力を出した結果、比較的直ぐに遠目にアニの姿を捉えることができた。
――近くの物陰にたくさんの人が隠れてる!?
アニを囲むように物陰には男たちが腰を下ろして様子を伺っているのが見えた。アニからは恐らく見えていないだろうが、アニの方へと走っているカエデには丸見えだった。
バンッ
アニの前にある地下通路から銃声がなり、物陰から一気にアニの方へ人が向かおうとしているのがわかった。
――あの人たち精鋭だ・・・。時間がない・・・。この体の状態で使うのは不安だけど使うしかない!!
――『瞬速』――
カエデはフードを深くかぶったまま右足で地面を抉るほど踏みこみ、ガスを爆発的に噴射させるとともにスタートすることで一気にアニに急接近する。
アニに向かおうとしていた男性を3人ほど突き飛ばしながらアニを抱きしめ、さらに反対方向からきた人を突き飛ばしながらその場を離脱しようとする。
「ぐぅぅっ・・・」
「・・・!?もしかしてカエデ!?」
カエデはアニを抱きしめ離脱しようとしたところまではよかったが、恐らく針の巨人との戦闘で左足にひびが入っていたのだろう。左足が『瞬速』の減速に耐えきれず、つまずいた。
その結果、アニを前に放り投げる形になり、そしてカエデは地面をバウンドしながら20mほど転がった。
――立たなきゃ・・・。
そう思いながら前に放り投げる形になったアニを見ると、アニは泣きそうな顔でカエデの元へ駆けてきていた。
「泣かないで・・・。ここから離れよう・・・。っ!!」
なんとか立ち上がりアニにそういった瞬間、地下室から上がってきたミカサが立体機動でガスを噴射させ、スピードをつけて剣を振ってきたのでカエデはそれを鞘の左側から刀身を引き抜いて受け止める。
「あなた何者?・・・怪我しているみたいだけど手加減するつもりはない」
「ぐぅぅぅ・・・」
カエデがフードを深くかぶっているためにアニだけにしか正体を知られておらず、ミカサは振り落とした剣に体重をかけた。ミカサの鋭い攻撃に先ほどの瞬速により悪化した左足が悲鳴を上げ、そして完治していない右腕も悲鳴をあげる。さらにはせっかく処置した体の左側の傷から血が出て、ジワリと巻いた包帯を赤く染める。そのため、苦痛の声を出すことしかできなかった。
ドォォォォオオオオオン!!
カエデがこのままでは危険だと判断したアニは巨人化をし、女型の巨人になる。そして、カエデと剣を交えているミカサへと拳を振り下ろした。
「っ・・・!!」
ミカサはアニの拳を後ろに飛ぶことでなんとか避ける。
その間にアニはカエデを手の上に乗せ、壁の方へ走り出す。
カエデは手から肩に飛び移り、アニにそっと話しかける。
「アニ・・・。人は殺しちゃだめだよ・・?
殺してしまったらアニ一個人を本気で憎む人がでてきてしまう・・・。そうなったら悲しいから・・・」
アニは頷くことで了承すると壁へ向かう足をさらに速めた。
カエデは肩の上に座り、うまくバランスをとりながらあたりを見回す。
――まさか、調査兵団の人たちと戦うことになるなんてね。でも今はアニを守ろう。
◆◆◆
ミカサはアニの攻撃を避けたあと、立体機動でまだ地下の入口で立っているエレンの元へと近寄る。
「エレン!! しっかりして!!」
「あ・・・あぁ」
「一緒にアニを捕まえるのを手伝って」
「あぁ。任せろ」
エレンはミカサにそう言うと右手の拇指球に思い切り噛み付いた。エレンは目的と自傷行為によって巨人化することができる。
しかし、何も起きることはなかった。
「グァァァアアア。な、なんでなれないんだよ!!」
巨人化になれなかったことでエレンの拇指球からは血が流れ、治癒することもなく、エレンは痛みで叫んだ。
「エレン、さっきの光景を見てもまだアニが女型の巨人じゃないと思っているの?」
「クッ・・・」
ミカサは一度息を吐くと、未だ信じきれていないエレンの両肩に手を置くと、しっかりとエレンの顔を見た。
「エレン。お願い手伝って。このままじゃアニに逃げられてカエデの居場所が分からない」
「な、なんでお前は戦えるんだよ!! 相手はアニだぞ? 付き合いづらい奴ではあったけど、104期生として一緒に生活し、一緒に戦った!!」
「確かにそうかもしれない。でも、この世界は残酷だから・・・。私はカエデの居場所を知るためにアニと戦う。エレンはまだ生きてるかもしれないカエデを見殺しにするの?」
エレンは数秒俯いて目をつむったあと、ゆっくりと顔をあげてミカサを見た。
「・・・そうだな。やってやる。カエデの居場所を知るために俺はアニと戦う。ミカサ離れていてくれ」
「わかった」
エレンはミカサが離れた後、鋭い目つきをしながら拇指球に噛み付いた。
ドォォォォオオオオン!!!
エレンから黄色い光と爆音がする。そして噛み付いた右手から巨人の体が精製されてゆき、エレンは5秒もしないうちに15m級の黒髪の巨人になった。
「グオォォオオオオオオ!!」
「エレン・・・行こう」
「待て、エレン、ミカサ」
ミカサは後ろを振り返るとリヴァイがそこに立っていた。
「俺も連れていけ」
「・・・はい」
ミカサは少し考えたあと返事をした。本当ならばリヴァイと一緒に行くのは嫌なのだろうが、今は少しでも戦力が欲しかったのだ。
ミカサとリヴァイは巨人化したエレンの手のひらに乗り、そこから肩に乗せてもらって髪を掴むことでバランスを取った。
エレンは既に遠くを走っているアニを見つけると、全速力で走り始めた。
◆◆◆
カエデを肩に乗せたアニは市街地の壁へ続く道を走り続ける。
そんな2人に3人の調査兵団の兵士達が立体機動で追ってきた。
「少しでも足止めをするぞ!! 倒すことは考えなくていい!!」
「「了解!!」
カエデはフードを再び深くかぶったあと後ろを向き、操作装置を握りなおす。
「アニはこのまま走っていて?でも、足の腱を狙われたら硬化で防いでほしい」
カエデの言葉にアニは頷き、足元に注意しながら走り続ける。
「じゃあ 少し行ってくる」
カエデはまずうなじ部分に近づき、剣を振り下ろしてきた兵士の剣を剣で払ったあと、立体機動装置から操作装置につながるケーブルを剣で切った。ケーブルを切られたことで機能を失い、その兵士はそのまま地面へと落下した。
「なっ・・・!?」
「クソッ」
兵士の1人が悔しがりながら落ちてゆく兵士を救うために立体機動で近づいて抱きかかえた。それを見たあとカエデは刀身を投擲し、建物に突き刺さっているアンカーから伸びるワイヤーを切る。そのことにより、2人の兵士は地面を転がっていった。
最後の1人の兵士はアニのアキレス腱を狙うために、立体機動で地面すれすれのところを移動しながらアニの足へと近づいていく。カエデは体を少し傾けた状態でアニの髪を掴んで体を固定し、アンカーをアキレス腱に近づく兵士へと射出した。射出された2つのアンカーは空気抵抗により少し外側にずれ、兵士の体に当たることはなく、兵士のガスボンベを打ち抜いた。
「なんだと!?」
兵士は神業と言っても過言ではないカエデの技術に驚く。そしてガスボンベを壊されたことにより立体機動装置は動かなくなり、アニのアキレス腱を切るためにつけたスピードのまま地面を転がっていった。
「ふぅ。きっと3人とも死にはしないよね」
そう言ってカエデはアニの進む方向へと顔を向けた。
するとカエデの視界に、市街地のこれから横を通ろうとしている家の屋根の上に樽の上に足を乗せ、カエデとアニの方向を見ている兵士が目に入った。アニはその兵士の全く気付いていないようだ。
――っ!!まずいっ!!
カエデはこれから起こることから逃れることができる場所を探ろうと周りを一瞬で見渡すと、屋根の上から真横の家の一階まで調査兵団の兵士達が樽をアニの方向へ向け、スイッチを手に持った状態で2人の方を見ていた。
「アニ飛んで!!そして左足を硬化して!!」
そう言ったカエデを乗せたアニが飛ぶために膝を曲げた時、2人の視界に、車輪のついた樽に足を置き、手にはスイッチを持っているハンジが目に入った。その樽には7つ穴が開いており、そこからは巨大なアンカーが射出される仕組みになっていた。
アニは耳元でカエデに大声で言われた通りに大きく飛び左足を硬化する。飛んだのと同時にアニの右肩から飛び降りた。
ダダダダダダダダッ
ハンジをはじめとした調査兵団の兵士達は同時にスイッチを押し、そのことによって樽からワイヤーのついた大きなアンカーが大量に射出され、アニの全身を狙ったアンカーは跳んだアニの足へと向かっていった。
カエデはアニの右足の真横まで降りたところでその場に少しの間いるためにガスを噴射させる。その瞬間にカエデを大きなアンカーが次々と襲う。カエデは縦横斜めと体をひねりながらガスを噴射させて様々な方向へと回る。そしてその度に剣でアンカーを切るのではなく、アンカーを弾くように剣を当てた。カエデによって軌道をそらされたアンカーは他のアンカーとぶつかり、ワイヤー同士が絡まっていった。そうしてアニに向かって射出された右側のすべてのアンカーはアニに当たらないように逸れていった。
左側のアンカーはというと、アニの硬化によりあっさりと弾かれていった。
「おいおい・・・嘘だろう!?」
「なんなんだあの人間は!?」
「いや、あのフードの中は人間じゃないかもしれん」
「じゃあなんだって言うんだよ!!」
「そんなの知るか!!」
「・・・。そんな・・・まさか?」
調査兵団の兵士達は大掛かりな作戦を行ったにも関わらず、まさか無傷で終わるとは思いもしなかったのか動揺した。そんな中、ハンジだけはカエデの後ろ姿を凝視して何かに気づいたようだった。
動揺している兵士をほっとき、アニは着地すると同時にカエデを拾い上げて肩に乗せて再び壁に向けて走り出した。
「やったねアニ! 私ってなかなか凄いでしょ?」
カエデはふにゃりと笑いながらアニにそう言うと、アニは口の端を少し上げて笑った。
「ぷっ。巨人化したアニが笑うとなんだかおもしろいね」
そう言うとアニはぷぃっと顔をカエデから逸らし、いじけた。
そんなアニを見ているカエデの耳に後ろから大きな足音が聞こえ、視線を後ろへと向けた。
ドシン ドシン ドシン
カエデはものすごいスピードで近づいて来る巨人化したエレンとその肩にのるリヴァイとミカサ。
「アニ・・・。エレンを30秒ほどお願い」
カエデはフードを深くかぶり直したあとに肩から飛び降りながらエレンの上からカエデと同じように飛び降りた人物と対峙する。
――リヴァイ・・・
降りてきたのはリヴァイだけで、ミカサはエレンと共にアニの方へと行った。
そして、リヴァイとカエデはお互い巨人の肉をそぎ落とすために作られた刃を交える。
「くぅっ・・・」
ミカサより早く、重い剣を交えたカエデは傷口からさらに血が流れていくのを感じた。
リヴァイは2秒ほど交えた刃を離しながら戦う体勢を整えようと後方に跳んだ。
――後ろに飛んだ。・・・チャンスだね。
カエデ以外の相手なら後方に飛ぶ判断も間違いではなかったかもしれない。
カエデは後方に跳んだリヴァイにスピードに緩急をつけながら急接近し、リヴァイの胸部に肩を当ててバランスを崩させる。
「ごめん・・・。ごめんね・・・。許して・・・」
「おまえ・・・」
そう言って、バランスが崩れて一瞬隙ができたリヴァイの意識を手刀で刈り取った。
その時リヴァイはフードで誰だかわからない人物がそう言って涙を流していたことに驚愕しながら意識を失った。
もともと自分の足で巨人と対峙し、自分の身体能力で巨人との戦闘を日々送っていたカエデに、いくら強いといってもリヴァイがカエデとの対人戦で相手になるはずがなかったのだ。
アニの方を見てみると、エレンとの対戦も一瞬で終わったのかカエデの方へきていた。
ミカサはというとエレンの方へと立体機動で駆け寄っていた。
◆◆◆
カエデが降りたことを確認したアニは、いつもの顔の前で拳を握る構えでエレンを迎え撃つ。
「エレン。私も援護する」
ミカサはエレンの肩から飛び降りながら立体機動に移り、アニの後ろに建っている高い建物へとアンカーを射出して移動する。
エレンは走っていたスピードをそのままに、アニの腹部に向けて振り上げるように右の拳を放つ。そのエレンの拳は決して遅くはなかった・・・。だがカエデとよく組手をしていたアニにとってその拳は遅く感じた。そのことにより冷静に見ることができたアニは後ろからアンカーを射出しようとしているミカサの存在にも気づくことができた。
アニはエレンの右拳に当たらないように、その右拳にそって体を右に傾けながら右回転することで避ける。その際、ミカサがアニのうなじ部分に射出したアンカーも同時に避けた。アンカーを避けられたことにより体制を維持できなくなったミカサは、慌ててアンカーを引き戻し、体をひねりながら近くの家に再び射出することで地面に落下することを防いだ。
「クッ・・・」
ミカサは建物にアンカーを刺した状態のまま歯を食いしばりながらエレンの方を見た。
アニは大きな隙ができたエレンの頭部に向けて、避けたときの回転をそのままに足を硬化させながら回し蹴りを放った。
アニの放った回し蹴りはエレンの顎の部分に命中し、エレンの頭は吹き飛ぶ。そして頭を吹き飛ばされたエレンは大通りへ倒れ込んだ。
「エ、エレン!!」
アニはミカサがエレンの元へ駆け寄るのを見て、すぐ近くのカエデの元へと向かった。
◆◆◆
アニはカエデを肩に乗せたあと、再び壁のほうへと走った。
調査兵団の精鋭とミカサが途中でアニの近くまで迫ってきたが、壁の近くの建物のない馬を走らせる平地に差し掛かったために立体機動が使えなくなり、追うことができなくなった。
「くそっ!! 平地だ!! これじゃアンカーを刺す建物がねぇ!!」
「遠回りするしかない・・・。・・・っ!!」
ミカサが遠回りしようとした時エレンは修復が終わった後すぐに走り出し、ミカサに追いついたエレンはミカサを持ち上げて平地を駆ける。
このときのエレンの修復の早さは異常だった。しかし、アニとの距離は既に開いており、普通に走るだけでは追いつくのは不可能だった。
アニは壁にたどり着くと、指を硬化して指を壁に突き刺すようにして登り始める。
「アニ・・・。あと少し!! 頑張って! っ!!」
壁の頂上まであと少しというところでミカサがエレンに投げ飛ばされたことで一気に近づいてきた。
「アニ!!行かせない。せめてカエデの居場所を言わせる」
その言葉にカエデはフードの下で目を見開いた。
ミカサはアニの指を切って下に落とそうと剣を振う。しかし、カエデがアニの肩から飛んでミカサが振り下ろした剣を自分の剣で交えることにより攻撃は防がれた。
「あなたは何者なの」
「ミカサ・・・」
「カエデ!?」
ミカサは声で目の前のフードをかぶった人がカエデだと気づいた。気づいたミカサは壁の頂上にアンカーを打ち込んで壁の上へと登った。カエデとアニもその後を追うように壁の上に登った。そしてカエデはかぶっているフードをとってミカサに顔を見せた。
登ったアニは巨人化を解いた。うなじ部分の肉が溶け、そこからアニが飛び降りた。女型の巨人の肉は蒸発し、やがて消滅していった。
「カエデ・・・どうゆうこと?」
ミカサがカエデの胸ぐらを掴んでそう聞いた。
ミカサに胸ぐらを掴まれ、睨まれたことでカエデは顔を真っ青しながら俯いた。
「ミ・・・ミカサ・・・ごめ―――」
「私がっ!!私がどれだけ心配したと!!」
カエデが最後まで言い終わる前にミカサは掴んでいた胸ぐらを離し、抱きついた。
「ミカサ・・・。心配させてごめんね・・・。最近の私はみんなを泣かせてばっかりだ・・・」
「それでどうゆうことなのカエデ?」
「私がガスの残量に気づけなかったために怪我をした・・・。重傷だったけどアニが必死になって助けてくれたんだ。
アニは誰も殺してないし、私も許してるからミカサもアニをあまり責めないであげて欲しい・・・。アニは本当に心優しい人だから・・・」
巨人化を解いたアニは立ったまま申し訳なさそうに俯いていた。
ミカサはカエデの言葉を聞き、それを見てアニの方へと歩いて行った。
「アニ・・・。少しだけ・・・ほんの少しだけ見直した」
それだけ言うと再びカエデの方を向いた。
「カエデ・・・私の意識を刈り取って」
「え・・・?」
カエデはミカサの言った言葉を聞きなおす。
「カエデ・・はやくしないと調査兵団の精鋭が追いつく。アニを助けたいならはやく!!」
「ごめんね・・ミカサ」
ミカサの言葉で時間がないと判断し、手刀で素早く意識を刈り取る。そのミカサをゆっくりと地面に寝かすと、アニの方を向く。
「アニ・・・行こっか」
「うん」
カエデはアニにアニの服に元からついているフードをかぶせると、自分もフードを深くかぶり、壁から飛び降りる。アニもその後を追って壁から飛び降りた。
そして、2人は地面が近くなったところでアンカーを壁に射出し、ゆっくりと地面に着地した。
「アニ、情報がまわって兵士たちが来る前に人目のつかないところを通って逃げよう」
「うん。わかった」
カエデとアニは市街地のなるべく人目のつかない細い道を走り、南のトロスト区と東のカラネス区のちょうど中間の壁に向かった。
「遠くから見たけど、やっぱり壁から突出している街の間の壁の上は駐屯兵が本当にいないよね」
「そうだね、そのための突出した街だからね」
遠くから確認しながら壁の前に辿り着くと立体起動で一気に登る。
もともと壁は小さい区を東西南北それぞれに1つずつ突起させるように設置させて巨人をその場所に集めるようにできている。そしてそれはその区を囲む壁の上に駐屯兵がいるということでもある。
それを利用して東南の壁を登って脱出することで駐屯兵に見つかることなく、なおかつ巨人がいないところに出ることができるのだ。
「私が乗ってきた馬はどこにいるか分からいし、ウルフを呼ぶには指笛で居場所がバレちゃう・・・」
「大丈夫・・・。私が巨人化して行くから」
「本当に大丈夫?あまり顔色良くないよ?」
「大丈夫だから・・・」
カエデとアニは壁の上から飛び降りる。途中でアニが巨人化してカエデを手で包み込むと大きな音をたてながら地面へと着地をした。
「アニ、このまままっすぐ進んでウォールマリアの壁まで付いた後、北東の巨大樹の森に向かってもらっていい?すぐに向かうと駐屯兵に見つかる可能性もあるからさ」
アニは一度頷いたあと、ウォールマリアの壁へと走り出した。アニは途中で追ってくる奇行種よりも早く走り、一度も戦闘になることはなかった。
◆◆◆
カエデとアニは追っ手が来ないように急いで逃げたが、実際は追っ手は1人も来ることはなかった。
それはカエデとアニがウォールシーナ東城壁都市であるストヘス区の壁を離れてからすぐのこと―――
ハンジを始めとし、調査兵団の兵士、そして憲兵団の一部がアニが登った壁を見上げていた。
その壁の約40m付近の場所がパラパラと音を立てながら壁の表面が崩れていた。
その穴からは大きな右目、崩れたところから半分だけ見える大きな口が見えた。つまり、壁に空いた比較的小さな穴からは巨人の顔が見えていたのだ。
幸い、その壁の真下では目標を逃がしたことで力尽きたエレンの巨人化が溶けたことによって発生した蒸気によって一部の人間にしかその穴は見えていなかった。
「どうゆうこと・・・!?あれは・・・。なんで巨人が、巨人が壁の中にいるの。まさか・・・まさかこの壁のなかには巨人がぎっしり並んでいるとでもいうの!?」
ハンジはこの考えたこともない状況に頭が混乱し、数歩下がった。
すると突然、息を切らしながらハンジの肩をつかむ者がいた。その人は50代くらいの男性で髪は刈り上げられており、首には『ウォールマリア、ウォールローゼ、ウォールシーナ』を女神として信仰する宗教の信者の証である3つの壁のマークの付いたネックレスをつけていた。彼はエレンの審議にも出席しており、周りからはニック司祭と呼ばれている。
「はぁ、はぁ、あの巨人に・・・日光を当てるな。何でもいい・・・なにか日光を遮るものを・・・すぐに被せるんだ」
「え・・・?」
ハンジは頭が混乱したままで、あまり状況ができていなかった。ハンジは再び壁の40m付近に空いた穴を見ると、ギロリと巨人の目が動いたことで慌てる。
「あそこに空いた穴をすぐに遮光できる布で覆い被せろ!!急げ!!」
「「「は・・・はい!!」」」
ハンジの言葉に、周りの混乱していた兵士たちは指示を出されたことにより少し落ち着きを取り戻し、すぐに行動を始めた。
「ニック司祭、穴に布を覆い被せたあと話を聞くから逃げないでくださいよ?」
それだけ言葉を残し、ハンジも手伝うために走り出したのだった。
壁の中にいた巨人の存在はアニの存在よりも危険と判断されて、優先順位が変わっていたのだ。そのことにより、アニとカエデを追うはずだった兵士達は穴に布を覆いかぶせる作業を行い、2人を追うことをやめていたのだった。
◆◆◆
北東の巨大樹の森の前まで着き、カエデはアニの肩から飛び降りた。そしてアニは巨人化を解き、体を休めるために地面に寝転がった。
「お疲れ様!! 無事に逃げることができたねー」
「そうだね。カエデのおかげで助かったよ。ありがとう」
「あははっ。どういたしまして!!」
カエデは寝転がっているアニにふにゃりと笑いかけてから森の奥の方を見て、指を口元につけた。
ピィィ――――――。
「ガゥッ!!」
「えっ!?ちょっと来るの早すぎない!?」
ウルフに疲れ果てたアニを運んでもらおうと指笛を吹いたのだが、10秒もしないうちに生い茂った草むらからウルフが出てきたことに驚くカエデ。どうやら大きな足音とカエデの匂いを嗅ぎつけたことによってすぐ近くまで来ていたようだ。
ウルフはカエデに飛びつくと、犬のようにパタパタと尻尾を振っていた。
「ウ、ウルフ落ち着いて!! ね?」
カエデはウルフの頭を撫でて落ち着かせた。
「ウルフにはアニを運んで欲しいんだ。私の友達だからお願いね?」
「ウォン!!」
元気よく返事をしたウルフの背中にアニを乗せ、カエデは巨大樹の森の中の家へと走り出した。ウルフもカエデを追って走り出した。
ここから先は漫画の展開がなかなか読めないので書くのが難しそうです・・・(´;ω;`)
いつ更新できるかな・・・。
挿絵は相変わらず手書きです。なかなかうまく書けず・・・。