―――翌日。朝4時30分の普通の人なら寝ている時間に起きたカエデは、トレーニングをするべく町の中を、時にはものすごいスピードで走り、時にはジグザクに走り、時には音を立てないように膝のバネを存分に使いながら家の壁、屋根をつかって飛び回り、時には縮地をしたりしていた。
そんなときカエデの視界に、川の近くで昨日みた少年とミカサと呼ばれた少女がどうやら対人格闘の練習をしていたのが見えた。動きからして基礎はしっかりできているようでなれているようだ。カエデは足を止めてそっと2人を見学をしながら近づいていった。
「ぐぁっ」
アヒルが鳴く様な声を出しながら少年はミカサに足を払われて倒される。倒れる際、受身がうまくとれずに背中を強く打ったみたいだ。
ミカサはそんな倒れたエレンを見下ろしながら不機嫌そうな悲しそうな目をする。
「エレン。調査兵団にはいるならもっと強くならなきゃだめだよ?」
「わかって―「へぇ! 君調査兵団にはいるの!??」るぅ!?!?」
「っ!?」
エレンはミカサに対しいつもの受け答えをしようとしたところで、エレンが調査兵団に入ろうとしていることを知ったカエデが会話に割り込んできた。
急に現れたカエデにエレンはもちろんのことミカサでさえも驚く。そのことから、どれほど周りに同化して気配を消すのがうまかったかが伺えた。
エレンは心を落ち着かせたあとカエデに質問を投げかける。
「カ、カエデさん!?!?どうしてここに?」
「私はトレーニング中だよ!! 君は昨日手を振ってくれた子だよね!! そうだよね!! 子っていっても私も子供なんだけどね。」
「そ、そうです!! あの、俺エレン!エレン・イェーガーって言います!」
「私はカエデ・サクライ!よろしくねエレン!!それでそちらの美少女はミカサさんだよね!」
「え...なんで私の名前を?」
ミカサがそう思うのも当然だろう。彼女にしてみればカエデと話したことなど今までいし、自分は別に有名というわけではないからだ。
「エレンが...。ミカサ!! ミカサ!! って大声で叫んでたから覚えちゃったんだよ。」
「......エレン」
「うっ」
美少女と呼ばれたこととエレンが恥ずかしいことをしてくれたせいで顔が赤くなるが、顔はエレンをジト目で見る。そんなミカサの顔を見て、申し訳なさそうにエレンが俯いた。
俯いているエレンをよそに、カエデはまじまじとミカサを観察する。そして確信が持てたのか、ミカサの肩に手を置いて確信をもったことを聞き始める。
「ミカサ! ミカサ! その腕に巻いてある包帯にその顔立ち。もしかして東洋人なのかな?そうなのかな?」
「!!!」
母親がつけた一族に受け継がれる印。それを知っているのは今は亡き父親と母親だけ――さらに両親を殺した賊は他の東洋人は絶滅したと言っていた…つまり、この少女は賊の仲間?―そうミカサが思ったときには殺気を放ちながら殺そうと襲いかかった。
「ま....まて!!ミカサ!!ぇ....?」
エレンがミカサを止めようと叫び終えたときには、ミカサはカエデによって組伏せられていた。エレンはミカサの強さを十分に理解していたため、ミカサが一瞬で組み伏せられている状況を見て、理解が追いつかなかった。
「落ち着いてミカサ! 私の右腕と顔をよく見て!」
「......っ!?」
ミカサはカエデに言われたとおりに右腕をみると、なにかを隠すかのように赤いリストバンドが付けられており、さらにカエデの顔を見ると自分と似た、東洋人の特徴をもっていたのでミカサは、はっとなり落ち着きを取り戻した。
「カエデ、あなたも東洋人?」
「うん! そうだよミカサ!! 私はミカサと同じ東洋人だよ!」
「で、でも 私が最後の東洋人なんじゃ....?」
「私は最北端の森の中の誰も入ってこなさそうなところに暮らしてたから情報があまりいかなかったのかもしれないね。それでも情報をもっている輩はいたけどね。それで、ミカサ、ミカサのご両親はいまどこに?」
「カエデさん!!」
エレンは過去を蒸し返されてミカサが傷つくと思い、カエデにそれ以上言わせないように叫んだ。ミカサはエレンにありがたいと思いながら、カエデも東洋人ならいいかなと決心して話す。
「...殺された。」
「....そっか。じゃあミカサも....私と同じなんだね」
「そう...なんだ」
3人とも俯いてしまったことで沈黙が続いてしまい、暗い雰囲気になったのでカエデは顔をぶるぶると振る。そのあとには先程の暗い顔はなかったことにするような笑顔になって喋り始めた。
「あー!! 暗い話は終わり!! って私からしたようなものか!! ごめんねミカサ!エレン!あと、よかったらエレンも私のことカエデって呼んでくれるかな?」
エレンは顔をあげてカエデの名前を呼び捨てで呼ぼうとするが、カエデに目をまっすぐと見られていることでドキドキしてしまい、なかなか言葉が出てこない。
「え、えと....。カ、カエデ...さん」
「カエデ!」
「うっ。カエデ...これでいい?」
「うん! よろしい! なんってね」
真っ赤になったエレンの頭をぽんぽんっと2回軽く叩く。するとミカサが少し頬を膨らませながら不機嫌そうにしていたのを見たカエデは、自分もして欲しいのだと勘違いしてミカサに正面から抱きつき、自分の頬をミカサの頬にすりすりさせた。
「ミッカサー!! かわいいぃ~!!」
「カ、カエデ!! くすぐったい!」
ミカサもまたエレンほどではないが、少し顔を真っ赤にしながらカエデを引き離そうとする。しかし、想像以上の力によって抱きしめられていて、離すことができなかったのかため息を吐いて諦めた。
「なにかお話しよ! そうしようよ!」
ミカサの後ろに回り込んだ後、後ろからギュッと抱きつき彼女の肩に顎の乗っける形で今度は後ろからそう言ったカエデにエレンは思い出したかのように興奮しながらカエデに聞きはじめる。
「カエデは調査兵団なんだよね!! アルミンが外についてとても面白い話をしていたんだ!」
「うん! アルミン....?」
「アルミンは俺たちの幼馴染でいろいろなことを知っているんだ!! 今度カエデにも紹介するよ!」
「ありがとぉー!! それで面白い話って?」
カエデはまた新しい友達ができると目をキラキラとさせながらエレンに続きを即す。
「壁の向こうの外の世界には広く水で覆われた海があるって!! そしてそこからはここでは貴重な塩が無限のようにとれるって!」
「海....海かぁ! まだ遠くまで調査はしてないから見たことはないけど。もし、もしそんな素晴らしいところがあって、私が見ることができたら絶対に報告するね!」
「うん! 俺も絶対に調査兵団に入って壁の外の世界を見るんだ!」
「一緒に見れたらいいね!! ミカサも一緒にね!!」
「私は...エレンが調査兵団に入るなら入る」
「そっかぁ! じゃあエレンは強制だね!」
その後もカエデ、ミカサ、エレンの3人は調査兵団での調査のこと、エレンがアルミンから聞いた外の環境このと、カエデのトレーニング内容、エレンをほっておいてガールズトークなどをした。ミカサのカエデに対する印象はどんどん良くなっていき、最後の方ではエレンがなかなか会話に入れず不貞腐れるほど2人で盛り上がった。
◆◆◆
ゴーン ゴーン ゴーン
6時を報告する鐘がシガンシナ区に鳴り響く。
「あっ...。いけない6時だ!支部に戻らなくちゃ!!
エレン! ミサカ!ばいばい!」
そう言って、台風のように去っていくカエデに、エレンもミカサも言葉を返すことができず見送っていると急にその台風がとまり振り返った。
「エレン! ミカサ!私と友達になってくれないかな?」
「「うん!!」」
「ありがとう!!また調査が終わったら会いに来るから!!」
いまさらと言うような感じでエレンとミカサが即答で了承すると、カエデが満面の笑みでお礼を言う。そしてまた台風のように調査兵団の支部へと去っていった。
残されたエレンとミカサは頬を少し赤く染めていたとか染めていなかったとか…。
友達(σ・∀・)σゲッツ!!