己の世界を守る楓   作:ふぁむな

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遠征に行きますー。


奇行種現る

 シガンシナ区中央付近に作られた白の建物―調査兵団シガンシナ支部の中の会議室のドアがバタンと大きな音と共に開かれ、そこからカエデが少し嬉しそうな顔で飛び込んできた。

 

 

「遅れてすみません! カエデ・サクライ到着でしゅっ!!」

 

「....本当は少し怒らなければならないのだろうが、そんな嬉しそうな顔しながら入ってきて、ついでに噛まれたとなっちゃ....な。怒る気持ちもどこかにいっちゃったよ」

 

「えへへ」

 

「それでなにかいいことでもあったのか?」

 

「私にですね、なんと!!」

 

「なんと?」

 

「同い年くらいの友達ができましたぁ!!」

 

 

 笑顔でカエデからでた言葉。それは普通の人ならばいて当然なことだけれどもカエデにとっては初めてのことだった。そのことを知っている小隊の皆は一瞬静かになったあと、カエデのように笑顔になってカエデをもみくしゃにする。

 

 

「おぅおぅ! ついに我らがエースのカエデちゃんにもお友達ができたのか!」

 

「そのお友達は男か?女か? 男だったら.....ふふふ」

 

「みんな、ありがとうございます!! お友達は男の子と女の子どっちもできました!」

 

「おおおー! 今度紹介してくれよ!」

 

「男の子はきっちりお話をするとして。女の子とは仲良くねカエデちゃん!」

 

「うん!(お話ってなんだろ?)」

 

「はぁ~」

 

 

 

 小隊のリーダーであるクラウスは隊員の過保護っぷりに呆れながら次の調査へ行くための指示を出す。

 

「そこまでにしておけー。カエデも来たところだし今日からの調査の説明をするぞ?それで今回のルートは―――」

 

 先程の賑やかの雰囲気から一変、隊員たちは隊長の指示をきっちりと聞いてルートの内容等頭に叩き込む。

 

 

 普通、自分達人間の天敵である巨人を倒しながらの調査が続くことは精神的疲労、身体的疲労が重なって行きたくない...そんな雰囲気ができるところだがこの小隊は巨人に対する恐怖は確かにあるけれども、それ以上に外の調査をしようという欲が表に出るほどの余裕があった。

それもカエデの的確なサポートに加えてクラウスの的確な指示、滅多に欠けることがなくなっている小隊の面々その安心できる現実があるからだった。

 

 

 隊長の話が終わり、普段から付けなれた整備がすでに終えている立体起動装置を装着し、支部の外へと出る。

 外には既に、これからの長い調査に向けての物資が馬に乗っけられており、隊員達はそれぞれ物資の中身を軽く確認したあと自分がいつも乗っている愛馬を探し、そして乗る。

 

 

 

 

◆◆◆

 

「調査兵団がまた調査へ行くぞー!」

 

「昨日の今日で大丈夫なのだろうか?」

 

「カエデちゃんがんばってねー!」

 

「お前らカエデちゃんを守れよー!」

 

 

 まだ朝7時で、これから起きようと思う時間のはずなのだが、シガンシナ区の住民は再び調査にでる調査兵団の見送りをしようと集まっている。

よくみるとほとんどの人が寝癖をそのままにしていることから、慌てて着替えだけしたのだろうと思われる。

 

 

「カエデちゃん よかったらこれをもらってくださいっ!」

 

 

 そんな住民の間をぬってカエデの前に、小さな女の子が期待した顔で手に持っていたヘアピンを渡してくるのでそれを笑顔で受け取とる。そして前髪に、今もらったばかりのヘアピンをパシッと付ける。

 

「どお? 似合ってる?」

 

「うん! カエデちゃん頑張ってね!」

 

「ありがと! 今回もがんばるよー!」

 

 

 小さい女の子とそんな会話をしていると、先ほどまで合っていた2人がちらりと見えた。その様子からして、あれからまた訓練をしたのだろうか、汗を額からたらしているエレンと涼しい顔をしたミカサが「カエデ!」と住民の間をぬってカエデの前へと飛び出してきた。

 

 

「カエデいってらっしゃい! また調査の内容聞かせてくれよ?」

 

「カエデ....また今度お話しよう」

 

「うん!! あっ! クラウス隊長! この2人がお友達です!」

 

「.....ほぉー」

 

 

 先程までいろいろ歓声を送っていた住民のほとんどが一斉にこちらを向く。男の嫉妬のような強烈な視線を喰らうエレンは先程までの運動によって出てきた汗の他に、冷や汗をダラダラとたらす。

 

 支部の中ではやれやれといった感じで隊員を見ていたクラウスだったが、やはり自分の小隊の小動物みたいな存在であるカエデには過保護になるのだろう。エレンを観察するようにジッと見た。 

一方でミカサに対しては、住民も隊長も隊員も優しい目で見ていたのは言うまでもない。

 

 

「エ、エレン....イェーガーでしゅ!」

 

「ミカサ・アッカーマンです」

 

「ぶっ.....ぷあはっはっはっは!! でしゅ!! だってよ!!」

 

 

 精神的にいっぱいいっぱいなエレンは思わずかんでしまう。その様子に先程までジッと見ていたことが馬鹿らしく思ったのか、クラウスは大声で笑い出す。そのことに住民は少し驚くがそのあとには軽い笑い声が聞こえるのだった。

 

 

「あっ! そうだ!」

 

「「......?」」

 

 

 突然カエデが何かを思い出したかのように手をぽんっと叩き馬に載せておいたカバンの中から赤色のリストバンドを2つ取り出しエレンをミカサに渡す。

 

 

「これ私の手作りなんだ!! ミカサにその...付けて欲しくてさ! おそろいっ!! まぁエレンはおまけだけどね!」

 

 

 リストバンドをもらったミカサは照れくさそうにありがとうと、エレンはちょっとふてくさながらお礼をカエデに言った。

 リストバンドを右腕につけた3人、それはまるでずっと前からの友達だと思わせた。

 

 

「カエデ、もうそろそろ行くぞ」

 

「了解です隊長!! じゃあエレン、ミカサまた今度会おうね!! 行ってきます!」

 

「「いってらっしゃい!」」

 

 

 カエデは2人とハイタッチしたあとマリアウォールの門をくぐるまでエレンとミカサに手を振り続けた。住民達が羨ましそうにその光景を見ていたことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 数日経ち、シガンシナ区から数十キロ南に離れた平原、直径1m未満の細い木々がぽつんぽつんと生えたこの場所でカエデ達小隊は巨人と戦いながら調査していた。

 

 巨大樹の森とは違い、巨人に対しての戦い方は巨人にワイヤーを指すことでしかうなじの部分に自身を到達させるのは難しい。そのため死亡率が高く、普通ならばその事実に恐怖し体が硬直し、正確な判断ができなかったりという理由で、ほどんどの人が自分の持っている本当の実力を出せずに無駄な死を迎える。

 だが、この小隊は欠けることのないメンバーのおかげで、絶対的なチームワークと信頼がお互いにあり、なによりカエデによって戦いやすい環境になっていて、より自分達の実力を存分に出せるようになっていた。そして最後にクラウスによって考え出されたアイディアがカエデにも余裕を与える理由になっていた。

 

 そして今、小隊は再び巨人の存在を確認し、戦闘になろうとしていた。

 

 

「総員戦闘準備!! 前方約500m先に10m級の巨人。さらに斜め右300m先にもう一体の10m級の巨人だ!! 作戦Eによる攻撃をするぞ!! A班10名は馬に自らの馬に積んである武器を取り出せ!」

 

 クラウスの指示に従ってA班である10名は、最小限積んである荷物からボウガンを取り出す。

普通のボウガンでは確実に矢を目に当てて潰すことは相当な腕と運が必要になっていることから、このA班が取り出したのは15本一気に取り付けることができる特注のボウガンで、A班10人が一斉に目の付近を狙うことで150本もの矢が目の付近を射ることになるので、ほぼ確実に目を潰すことが可能になった。ちなみに散弾銃という手もあるのかもしれないが、散弾銃では飛距離が見込めなかったために、その案は使えなかった。

 

 A班を隊の先頭にして馬を走らせ、準備が出来たのを見てクラウスが指示を出す。

 

 

「A班構えっ!! 残りはカエデを先頭に陣隊を作り作戦通りに!!」

 

「「「了解!!」」」

 

「......A班はなてぇぇ!!」

 

 

こちらの馬のスピード、巨人のスピードを見計らい、ちょうど良い位置にきたと思った隊長の支持によってA班はいっせいにボウガンによって矢を放つ。

矢が目に当たると思った瞬間に、カエデは馬から飛び降りて巨人まで全力で駆け出す。その際自分についてくるように馬を叩き指示を出しておく。そして残りの隊員15名もカエデに続くように馬を走らせる。

目にボウガンによって放たれた多くの矢が刺さり、うろたえている巨人の溝内にカエデはワイヤーを放ち、刺さった瞬間に力いっぱい地面を踏みしめて巨人の股を駆け抜ける。スピードのつけた体はそのまま溝に刺し込まれたアンカーから繋がっているワイヤーによって、グンッと浮いた体を円の軌道を描きながら、いっきに巨人のうなじの部分に到達する。

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 

その勢いのまま、カエデはうなじの部分をを剣でそぎ落とした。その際、残りの隊員はもしもの時のために立体起動装置をいつでも起動させられる状態のまま巨人の左右に馬を走らせていた。

 

見事に巨人を倒したカエデが地面に着地したときには、最初の巨人に矢を放ったA班がすでに新しく矢を補充し次の巨人に狙いを定めていた。

 

 

「......A班 次の巨人に矢をはなてぇえ!!」

 

 

 クラウスの指示によってA班の隊員達は一斉に矢を放つ―――

 

 

「なっ...!!」

 

「こいつっ!! 奇行種だぁ!!」

 

 

 目に向けて放たれた矢を、大きく横に走ることで避けていく巨人を見て、隊員達は普段の頭の悪い、人間を喰うことだけしか考えていない巨人とは違って異常な行動と取る巨人――奇行種だと隊員達は感じ取った。

 

ドシン ドシン ドシン

 

 

 奇行種は、この中で確実に最初に潰すべき存在をA班の面々と判断したのだろう。奇行種は大回りだが確実にA班の隊員に近づいていく。

 

 

「みんなが危ないっ!!」

 

 

 A班に近づく奇行種を見たカエデは危険を感じとり、自分に追いついてきた自分の愛馬の脇に付けておいた、自分の身長ほどある大型の刀を鞘から引き抜き、奇行種に向けて走り出す。

 

 横に陣形を作っていたA班の横にたどり着いた奇行種は、A班の隊員を蹴り殺そうと左足を軸として右足を後ろに大きく引いた。

 

 

「っ!!!(やばいっ! これは死ぬ!)」

 

 

 

A班の隊員達はそう思い、僅かだが生き残れるかもしれないと、これから繰り出されるであろう右足の軌道を予測し、その軌道から逸れるように馬を飛び降りようとする。

 

 

 

 

 

「絶対殺させない!!!」

 

 

 カエデはそう大声を上げながら、縮地によって軸としている左足の真横に行くとともに、先程鞘から抜いた大型の刀を振る。縮地と共に刀を振ることにより凄まじいスピードがつけられた刀は、奇行種の左足首の肉と硬い骨を綺麗に切った。さらにカエデは信じられないほどの脚力で切り離された左足を蹴り飛ばす。

左足首を切り飛ばされたことによって、奇行種はバランスを崩して右から地面に倒れ、そのままうつ伏せに倒れこんだ。

 カエデはそのまま倒れた奇行種の右足首に大型の刀を思い切り刺し込み、地面と足が固定するようにする。カエデに追いついたA班と隊長以外の隊員で倒れている奇行種の腕を切り刻む。そうして切り落とした左足は再生しつつあるが、再生する前に残った隊長が奇行種のうなじまで立体起動で飛び乗った。

 

 

「これで終わりだ!!」

 

 

そう言いながらクラウスは奇行種のうなじ部分確実にを削ぎ取った。

うなじを切り落とされた奇行種は再生能力を失ったことで体は蒸発していき、やがて消滅した。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「はぁぁー 今回ばかりは死ぬかと思ったぜ!! カエデいつもながらありがとよぉ!! これでまだ皆と共に調査できるぜ!!」

 

「ほんまに ありがとうなー!」

 

「ふぅー」

 

 

 つい数十秒前まで死にそうだったA班の隊員は馬から降り、大の字になって仰向けで寝っ転がる。

こうして大の字で寝て大きく息を吸うことで生きてることを実感し、次も頑張ろうと意気込むのだ。

先程のような死にそうな場面はこれが初めてではなく、カエデがこの小隊に入る前はもちろんのこと、入ったあとも多くの巨人と遭遇したり、先程の様な奇行種と会ったときに隊員達は味わってきた。昔は死んでしまったり、ギリギリ避けたりしていが、今ではカエデが援護している。

 

カエデは隊員たちにお礼を言われることに笑顔で返しつつ、蒸発した奇行種の右足があった場所まで歩いていく。そして地面に刺さっている大型の刀を抜きとり、刀を1回降ったあと、鞘にしまった。

 

 

この大型の刀は巨人を殺すために使うより、援護のために使われることが多い。それは巨人を殺すために使われる刀身は巨人のうなじを削ぐために作られたため、よくしなる超硬化スチールという素材で作られている。それに対してこの刀は、切れ味と長さに重点を置かれていて、隊員を襲う巨人の足や腕を切り落とすためにカエデは使っている。この刀はカエデの願いで、壁の中にいる職人に特別に作ってもらったものである。

 

 

「ふぅー よしゃっ! このあと一杯やるか!! いいよな隊長!??」

 

「まあ、いいだろう。今回の調査はここまでにして明日の早朝から戻るぞ。まぁ、途中で吐くまで飲んだやつは...帰ったらしごいてやるから覚悟しておけよ?」

 

「そりゃ怖い!! それじゃあさっさと一番近い駐屯地に行って準備するぞ!」

 

「「「おおー!!」」」

 

「わ・・私はジュースで!」

 

「そりゃそーだ!! でもカエデちゃんにお酒飲ませたらどうなるか気になるけどな・・・」

 

「「「ゴクリ....」」」

 

 

ジュースを希望するカエデに向かって一人のお調子者の隊員―イェルクが想像しながら言った言葉に隊員達が想像してつばを飲み込む。そんな隊員たちにクラウスはギロリとイェルクを睨みつけた。

 

 

「じょ、冗談だって!!はは...はははは....」

 

「「「ぷっ あっはっはっは」」」

 

 

本気で殺されると思ったイェルクは後ずさり、少し離れた後は走って逃げていった。

そんな光景に小隊の雰囲気は賑やかになり、近くの駐屯地に向かうべく皆は馬を歩かせ、賑やかなまま歩き出す。

 

 

 

 

ちなみにイェルクは心細くなったのか、すぐに小隊にもどってきたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 




無駄に頭の良い奇行種の登場でしたー。
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