己の世界を守る楓   作:ふぁむな

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ここまで読んで下さり・・・本当にありがとうございます!!



喪失・支え・決意

「う・・・うぅーん」

「目を覚ましたかカエデ・・・」

 

 カエデが目を覚ますと、イェルクがカエデの寝ているベットの横に置いてある椅子に座っていた。

 イェルクはいつもの様にカエデのことを弄ることはせず、ただカエデを見ていた。

 

 

カエデはイェルクのいつもの様子と違うことに不思議に思いながらあたりを見回した。

その部屋は真っ白な壁、大きめの窓の横にベットが備え付けてあった。そのことからここが病室だということが分かった。

 

「イェルクさん・・・

 ここは・・・病室?」

 

 

「あぁ・・・

ここはウォールローゼの食料庫だった場所に備え付けられている医院だ

 現状を話すと・・・言いにくいんだが・・・班別でのB班は全滅、C班は行方不明だ・・・

 まだ帰ってきてないことからおそらくは・・・」

 

 昨日まで1人として欠けることがなかった隊員たち。

 誰もがカエデに対して優しく、いつも笑顔をくれた。

 たった1日で彼らがもう戻ってこない・・・

 夢であって欲しかったが、A班の女性は死に、B班の10人も死んでしまった・・・これは現実だと。

 そのことが目覚めたばかりのカエデの頭に入り込んでくる。

 カエデの目から大粒の涙が頬を通って顎から落ちた。

 

「みんな・・・みんな死んじゃった・・・」

 

「おそらく・・・な・・・

 取り敢えずカエデは休めよ?

 応急処置をしたとはいえ、かなりの大怪我だったからな」

 

「怪我・・・ はっ!!

 隊長は・・・どこですか・・?」

 

――隊長は・・・大怪我だから違う部屋にいるんだよね・・・?

  そう・・・そうに決まってる

 

 

「カエデ・・・

 隊長は亡くなった・・・」

「隊長も怪我をしてたから・・・

 この近くの部屋にいるのかなー?」

 

 カエデは全身に痛みが走るが、それを耐えながらベットから抜け出す。

 そして暗い表情で言ったイェルクの言葉を遮ってそう言った。

 

 

「カエデ!!」

「隊長が死ぬわけないじゃん!!」

 

「現実を見ろカエデ!!」

 

「なんで死んだなんていうの・・イェルクさん・・・

 だって私が小隊に加わったとき隊長は俺は死なないっていったよ!!」

 

「カエデだって見ただろう!お前をかばって巨人にやられたのを!!」

 

――そっか・・・そうだった

  私をかばって隊長は巨人に・・・

  きっと大怪我してるよね

 

「そっか・・・そっか・・・私のせいで・・・

 謝らなきゃ・・・ 隊長に・・・あやまらなきゃ・・

 隊長を探してきます・・・」

 

「待てカエデ!!」

 

 カエデは虚ろな目でイェルクが掴もうと伸ばした手を払い除け、廊下へと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

「――隊長?」

 

ガチャッ

「隊長・・・」

 

ガチャッ

「・・・・・」

 

 いくつものドアを開けてはクラウスがいるかを見ては閉じる。その行動を医院にあるすべての部屋を確かめた後、違う場所にいると考えて外に出た。

 

 すると、ドガッという人を殴ったときに出る音がしたあと、知っている声が聞こえた。

 

「エレン・・・アルミンが弱虫ならエレンと私も同じ

 私たちは巨人から逃げるのも、街から逃げるのも何一つ自分たちでやっていない

 船のとき、カエデがもし助けてくれなかったら・・・既に私たちはこの世にいない・・・

 それに今日食べるものでさえ助けてもらった・・・

 そんな力のない人間があの巨人を一匹だって倒せるわけない!」

「クッ・・・」

「大切なのは生き延びること・・・

 エレンのお母さんが言っていた通り」

 

 そう言ってミカサは、エレンがアルミンに投げつけた貰い物のパンをエレンの口に突っ込み、続けて言う。

 

「むぐっ・・・・!?」

「ミカサ・・・!」

 

 知っている声の主はミカサでその近くにはエレンとその友人のアルミンだった。

 

 

「食べて・・・ちゃんと生き残るの!!」

 

「うぅ・・・うぅぅっ」

 

「そうだよ・・・エレン・・・死んじゃだめだよ・・・?」

 

 カエデは泣いているエレンの後ろからそっと近づき、ミカサが言ったように自分もエレンに言い聞かすように言った。

 

「っ!? カエデ!!

 その怪我はどうしたの?大丈夫なの?」

「もごもごごっ!!

 もぐもぐ・・ごくん

 大丈夫なのかカエデ!??」

 

 ミカサはカエデを見たとたん一瞬うれしそうな顔をするが、体のいたるところに包帯が巻かれているのをみて心配そうな顔に代わり、カエデに怪我のことを追求する。エレンもカエデに気づき口に突っ込まれたパンを飲み込んだあと、カエデに問いかけた。

 

「うん・・・大丈夫・・・

 ミカサも、エレンも、アルミン君も無事でよかった・・・

 それで・・・私のいる小隊の隊長見なかったかな・・?」

 

「見てない・・・エレンとアルミンは?」

「俺も見てない・・・」

「僕も・・・」

 

 3人は首を横に振って知らないと言う。

 カエデは再びクラウスを探しに行こうと歩き出す。

 

「カエデ、隊長はここにいるの?」

 

 ミカサに聞かれてカエデは歩みを止めてミカサの方へ振り返った。

 そして虚ろな目で少しずつ話し出す。

 

「いるはず・・・大怪我・・してたから・・・ここに運ばれたはず・・・

 ここに運んだイェルクさんに聞いたら、死んだって・・・

 そんなはずないのに・・・」

 

「「「え・・・?」」」

 

 カエデの様子、イェルクがカエデに言ったという情報から3人は分かってしまった。

 カエデも本当はクラウスが死んでしまったということを分かっていて、そしてそれを認めたくないのだと。

 

 

「探さなきゃ・・・探して謝らなきゃ・・・

 小隊のみんなもイェルクさん以外みんな・・・みんな死んじゃった・・・

 私の家だったシガンシナ区の支部ももう行けない・・・

隊長がいないと・・・隊長がいないと小隊という私のつながりがなくなってしまう・・・

そしたら・・そしたらイェルクさんとのつながりもなくなってしまう・・・

そしたら私にはもうなにも・・・・

また1人ぼっちになっちゃうよぉ」

 

 ミカサは泣きそうなカエデをそっと正面から抱きしめる。

 そして背中をトントンと一定のリズムで軽く叩いてカエデを落ち着かせる。

 

「カエデ・・・私たちがいる・・・

 私たちがカエデの支えになる」

 

「ミカサ・・・」

 

 その様子をみてエレンはカエデの横まで歩き、ニカッと笑ってミカサに続く。

 

「カエデ、家は俺たちも今はないけど・・・だけど帰る居場所にはなれる

 つながりは問題ないだろう?

 だって俺たちもう友達じゃないかよ」

 

「エレン・・・」

 

 アルミンは頬をぽりぽりと掻いたあと、カエデの方を見て2人に続く。

 

「僕はカエデさんのことよく知らないけど・・・力になりたい!」

 

「アルミン君・・・」

 

「俺は・・・俺は巨人をこの世から駆逐する!!

 だから絶対に死なないし、カエデを守れるほど強くなってやる!!」

 

「エレン・・・それは無理・・・」

 

「なんだとミカサ!!」

 

「ごめんエレン・・・僕も無理だと思う・・・」

 

「アルミンまで・・・」

 

「お前みたいな泣き虫クソガキには一生無理だな」

 

「っ!?? 誰だよお前!!」

 

 任務を終えたリヴァイがすっとエレン達の話に加わってきて、座っているエレンの背中を足のつま先つつきながら言った。リヴァイのことを知らないエレンは、初対面からこんなことをされる筋合いはないと、リヴァイに対して怒鳴った。

 

「ぁあ?

 泣き虫にたして生意気とはどうしようもねえな

 俺は今年訓練兵を卒業するリヴァイだ

 そこのおちび少女を連れてきたのは俺だ」

 

 

 調査兵団に前々から入ろうと思っていたエレンは、今年から調査兵団に入ろうとしている凄腕の訓練兵の情報を持っていた。その情報の名前と一致していたため、ハッとしたあとリヴァイに先ほどとは違って小さめの声で話す。

 

「調査兵団に入団しようとしている凄腕の訓練兵・・・

 ま・・・まあ カエデを連れて帰ってきてくれて・・ありがとうございます・・

 それよりあなたもそんなに大きく――グハッ」

 

「あぁ? なんか言ったか?」

 

「ナンデモアリマセン・・・」

 

 リヴァイに蹴られた腹を抑えながらエレンはそっぽ向いてそう言った。

 

「そうか・・・そりゃよかった

 一応知ってるが・・・おちび少女・・・名前は?」

 

「カエデ・・・カエデ・サクライ」

 

「カエデ・・・

 俺はお前よりは弱いが、それでも死なない実力はある

 これから俺は調査兵団に入ってより実力をつけるつもりだ

 だから俺がおまえにとって死なない存在になってやる」

 

「ありがとう・・リヴァイさん・・・」

 

「あ・・あぁ!」

 

 ふにゃりと笑ったカエデにリヴァイは頬を掻きながら空を見上げた。

 

 

 そんなカエデとリヴァイをそっちのけでミカサはエレンの方へ歩き、コソコソを話し始めた。

「エレン・・・なんかこの男むかつく・・・

 いきなり出てきてカエデを取られそうでヤダ」

「おぅミカサ・・・気が合うじゃねえか」

 

 

 みんなの言葉を胸に深くしまうように、ぎゅっと自分の胸に両手を当て、目からすっと涙を流したカエデは、先程より心が楽になっていた。そこにイェルクが医院から出てきて、カエデを見つけると歩いて向かって行った。

 

「お前ら何したかわからんが、ありがとな・・・

 おかげでカエデが随分落ち着いたようだ」

 

「いえ! 俺達は友達なので!!

 そいつは知らないけどなッ!」

「うん・・・当然」

「僕も役にたてたのならうれしいです」

「俺は別に・・・

 なんかほっとけなかっただけだ・・」

 

 イェルクがカエデの頭をぽんぽんと軽く叩きながらお礼を言った。それに間をあけずエレン、ミカサ、アルミン、リヴァイが続けて言った。

 

「そうか・・・これからもよろしくしてやってくれ

 カエデ・・・ついて来てくれ」

 

「・・・はい」

 

「俺たちもいいですか・・?」

 

「・・・あぁ、こっちだ」

 

 エレンの問に少し悩んだあと了承したイェルクは、カエデ達をつれて医院の裏側にある建物に入り、一番手前の部屋へと入った。

 

「隊長・・・?

 隊長!!!」

 

 そこには木で作られた台の上にクラウスが眠るように目を閉じて横たわっていた。それを見つけたカエデはクラウスの元へと駆け寄った。

 

「っ・・?!?

 冷たい・・・」

「カエデ・・・

 お前と出会ってから数ヶ月した後、隊長がもし俺に何かあればと、隊長がカエデに伝えて欲しいと俺に言ってきた」

 

◆◆◆

 

 カエデと小隊が出会ってから数ヶ月後――調査からシガンシナ区へ帰ってきた小隊は各自解散し、支部にはイェルクとクラウスが2人だけが部屋にいた。

 

 

「なあ、イェルク」

 

「なんです隊長―?」

 

「もし、俺らが死んでしまったら・・・

 カエデは大丈夫だろうか?」

 

「取り乱すと思うな・・・

 最近のカエデは本当に俺らに懐いてくれているしな」

 

「だよな・・・

 なぁ、イェルク・・・

 もし・・・もし俺が死んでしまったらカエデに伝言を頼む」

 

「隊長それ・・死亡フラグって言うんだぞ?」

 

「そ・・・そうかもな!

 でも聞いてくれ」

 

「おぅ!」

 

「俺はカエデと出会えてよかった

 カエデのおかげで小隊に笑顔と余裕ができ、とても楽しかった・・・

 この言葉を聞く時、カエデはまだ子供かもしれないし、大人かもしれない

 その時、きっとお前のことを支えてくれる人がいる・・・

 俺がいなくても1人じゃない・・・

 その人たちを大事にして精一杯生きるんだ

 それにもし、俺が死んだ理由がカエデ関係だったら満足だ・・・と伝えてくれ」

 

「隊長・・・俺・・・久しぶりに隊長のことかっこいいと思いました」

 

「いつもかっこよければいいんだがな!」

 

「冗談・・冗談ですよ隊長!! いつもかっこいいですよ!」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「だからカエデ・・・現実を受け入れて隊長を安らかに逝かせてやれ」

 

「うん・・・うん・・・

 うぅぅっ・・・

 隊長・・私もっと強くなるよ!強くなって大切な人は絶対に死なせないように・・!」

 

 カエデは両手を胸の前で握り締め、決意の篭った目でそう言った。

 

「おうおう!その調子だカエデ!!

 俺たちはまだ家族だ!!いつでも支えてやる!!」

 

「っ!!!

ありがとうございますイェルクさん

これからもよろしくお願いします」

 

 

「カエデ!!俺もいつかカエデの隣で戦えるようになる!!」

「うん・・・」

 

 

「エレンに任せるのは心配・・・私も一緒に戦う」

「ありがとうミカサ・・・」

 

「そこのクソガキはいつ調査兵団に入るのか知らないが

 少なくとも卒業したらすぐにでも俺がカエデを支えてやる」

「ありがとう・・・リヴァイさん」

 

「リヴァイでいい・・・」

「うん・・ありがとうリヴァイ」

「・・・あぁ」

 

 

「エレン・・・やっぱり私このちっちゃいの嫌い」

「俺もだ・・・いつか見返してやる」

「エレン、ミカサ・・・その仲間に僕も入れてよ」

「「もちろん!!」」

 

 

 コソコソ3人が話しているあいだにカエデは涙を袖で拭き、がばっと顔を上げた時には吹っ切れた顔になっていた。

 それからカエデはエレン、ミカサ、アルミン、リヴァイの順で少しずつ抱きついたあと、こういった。

 

「みんな大好き!! これからよろしくお願いします!!」

 

「お・・おぅ!!

 

「カエデは友達・・・当然!」

 

「僕・・はじめて女の子に抱きつかれたよ・・・

 ぁ・・ 僕でよければ!!」

 

「ぁ・・ぁあ!」

 

「ねぇねぇ・・俺には?カエデー?」

 

「イェルクさん・・・改めてよろしくです!」

 

「あいよ!」

 

 それから一同はクラウスの亡骸にお辞儀をしてから部屋をでた。

 その後は、カエデは完治してない体を休ませるために病室へ、エレン達3人は座れる場所へ、リヴァイは訓練兵が集まる場所へ、イェルクは適当にぶらぶらして避難してきている女性に話しかけていたとか・・・。

 

 

 

 

 次の日の早朝、カエデは外が騒がしかったので外に出てみると、避難してきていた住民たちが駐屯兵によって何処かへ移動させられていた。その中からエレンとカエデ、アルミンを見つけたカエデは彼らの方へ走っていく。

 

「みんな!! どこへいくの・・・?」

 

「あっ!カエデさん!

荒地の未開発の土地へ行かされるみたいだよ

 昨日で食料庫にある避難民への食料が尽きてしまったみたいなんだ」

 

 昨日のこともあり寂しそうに3人に尋ねると、状況をよく理解しているアルミンがそれに答えた。

 

「そう・・・なんだ

 寂しくなるね・・・

 それで・・・未開発の土地に行けば食べ物はあるの?」

 

「そうだな・・・

 でも俺らはずっと友達だ!!またすぐに会える!!

 それよりどうなんだアルミン?」

 

「正直難しいと思う

 ただでさえ食料がないのに未開発の土地へいって開拓しながら食物を植えるとなると・・

 食物が実る前にみんな餓死しちゃう・・・

 ただでさえ行く場所が北の寒くて作物ができにくい場所なのに・・・」

 

「そんな・・・

 餓死しちゃうなんて・・・

 あ・・・アルミン!!今どこへ行くって言ったの?!」

 

「ぇ・・?えっと、北にある未開発の土地だけど・・?」

 

「なら私も一度ついていく!!」

 

「「「え・・?」」」

 

 カエデがついていくといった意味が理解できず3人は首をかしげた。

 

「私、出身地が北東にあるの! 私の家族が作った作物は無駄に寒くても繁殖力がすごかったから4年も放置していた今ならすごい量になっていると思う!!

ちょうど種が取れる時期だからそれを新しく開発した土地に植えればなんとかなるかもしれないよ!」

 

「そんなすごい作物の種が取れるんだね・・・

 それならホントにいけるかもしれない!!

 でも・・・それだけならカエデさんが来る必要は・・」

 

「それが・・・その場所が北東にある巨大樹の森の中の危険地区だとしたら・・?

 それにウォールマリアの最北端だからね・・・あそこらへんは人の気配がまるでないから巨人はいないとおもうけど・・・」

 

「うん! 来てもらおう!」

 

 それを聞いたアルミンはすぐに考えを改めたようだ。

 

「そこがカエデの強さの秘訣・・・

 俺もそこで生活すれば強くなれるかも・・・?」

 

「エレン・・・だめ

 強くなる前にエレンが死ぬと思う」

 

「ええ!?

 ミカサ!そんな危険な場所なのか・・!?」

 

「かなり凶暴な獣が多く住んでいるって聞いたことがある・・・

 だよね・・?カエデ」

 

「う・・・うん(私の家族にとってはそんなこともなかったけどね・・・)

 という訳で私も参加しますっ!!

 イェルクさんにほうこ―――

「いいぞ カエデ!

 いってこーい!!」

くをして・・こなくてもいいみたい!」

「ただし20日以内には戻ってきてくれー

 俺が寂しいからな!!」

 

 驚くエレンを尻目に、イェルクに許可を取りに行こうとカエデはイェルクのいる場所へと駆け出そうとしたが、すぐ近くにカエデの荷物をもったイェルクがいた。そしてイェルクはカエデの言葉を遮り、行ってもいいと許可を出した。

元々カエデは正式なルートで調査兵団の小隊に入っていなかったので兵団の進行に縛られることがない。イェルクが許可を出した理由は、友達と少しでも長くいれるように配慮してのことだった。

 

「ほれ カエデ荷物だ」

 

 放り投げるようにカエデの荷物をカエデに向けて投げた。

 それを受け取ったカエデは手を頭の前にもっていき、敬礼をする。

 

「ありがとうございますイェルクさん!

 では行ってまいります!」

 

「おう! 行ってこい!」

 

「ほらみんなれっつごーだよ!」

 

 

 カエデはこれから遠足に行くようなワクワクした笑顔で3人にそう言うと、ミカサの手をとって歩き出した。

 ミカサは少し驚いたが、マフラーを口元まであげてエレンたちに嬉しそうな顔を見せないようにする。

 

 

「ミカサなんか・・なんかずるいぞ!

 おれも・・!」

 

「・・・ヤダ

 カエデ・・・いこ?」

 

「うん!」

 

「ミカサのカエデに対する独占欲がすごいことに・・・」

 

 

 エレンを今までなかった拒否することなんてなかったミカサの行動を見てエレンとアルミンは口を開けながら驚く。そんな2人をほっておいてミカサはカエデの手を握り返すとずんずんと歩いて行った。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 それからカエデ達は数日掛けて未開発の土地へ、さらにそこにいた憲兵団に事情を話し、さらに1日掛けてマリアウォール北東の巨大樹の森の前まで来ていた。

 

「ここが・・・

 大きな木のせいで普通は植物は育ちにくいはずなんだけど・・・」

 

 4人の前には大きい大木がいくつも立っており、さらに大木の周りも様々な草が生い茂っていた。それをみたアルミンは驚きの声をあげた。

 

「これはすごい・・・」

 

「・・・・」

 

「エレンぼーっとしてないで行くよー?」

 

 カエデは口の空いているエレンの頬を人差し指でつつく。

 

「お・・おぅ!」

 

「それじゃぁ・・・

 ピィィ――――――――――」

 

 みんなが準備が出来たのを確認すると、カエデは右手の右手の人差し指と親指を近づけて口へと持っていき、大きく息を吹くとピィーっと大きな音が出た。

 

「カ・・カエデさん!?

 いったいなにを!?」

 

「まぁ 見てなさいって!!」

 

 1分くらいじっと待っていると、突然ガサガサガサと音がしたと思ったら、生い茂っている草の間から大きな黒い影がカエデに向かって飛び出してきた。

 

「がぅがぅがぅっ!!」

 

「カエデ!!!」

 

 3人は大きな黒い影の正体・・・ふさふさ毛が生えた白い狼がカエデに飛びかかったので慌てて持っていた小刀を取り出す。

 そしてすぐさまその狼をカエデから離そうとするが、カエデの声によって行動は止められた。

 

「みんな落ち着いてー!

 大丈夫!この子は私のお友達だから!!

 ねっ! ウルフ!」

 

「がぅっ!」

 

カエデの言葉によって一旦冷静になった3人はよくその狼を見てみると、尻尾をすばやく左右に振っていてカエデによくなついていることに気づいた。

 

「にしても狼でウルフって・・・そのまんまじゃ――」

「ウルフ!!エレンのこと食べていいよ!」

 

 ビシッとカエデがエレンを指差してウルフにそう命令したことにエレンは慌てふためく。

 

「ちょっ!まった! いやっ ウルフっていい名前だね!!」

 

「だよねー! さすがエレンわかってるじゃん!」

 

「ウン・・・」

 

「エレン最低・・・」

 

「ミカサ・・・」

 

ウルフに食べられることをなんとか回避したエレンはミカサにジト目で見られる

 

「じゃあ エレンとアルミンはウルフの上に乗って!

 私とミカサは走るから!」

 

「なっ!

 俺も走る!!少しでも早く強くなるんだ!!」

 

「ミカサー

 エレンのお墓ってどんなのがいいかな?」

 

「猛獣のお腹の中で十分・・・」

 

 ミカサはお腹を指差すジェスチャーをして提案する。

 そんな2人を見て危険を感じたエレンは大人しくなった。

 

「あ・・・はい・・・走らせていただきます

 アルミン・・・ミカサが怖いぞ」

 

「今までエレン以外にはこんな感じだったよ?」

 

「まじか・・・」

 

「エレン?何か言った?」

 

「なんにも!! アルミン乗らしてもらおうぜ!」

 

「うん! よろしくねウルフ!」

 

「がぅっ!」

 

 

「それじゃあミカサ、走るよぉー!」

 

「うん」

 

 その途端にカエデは走り出した。その後ろを頑張って置いていかれないように走るミカサと久しぶりにカエデという友達と走ることができるからか、とても楽しそうにウルフがついていった。

 

「くぅっ・・(カエデは全然本気で走ってない・・・

 ウルフも全力ではなさそう・・・

 私はまだ弱い・・・もっと強くなろう)」

 

「(なんて速さだ・・・ミカサでさえついていくので精一杯だなんて・・・

 にしても・・・ウルフの毛の触り心地がすごくいい・・・)」

 

「みんなだまっちゃって・・!

 なんかしゃべろうよ!!」

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 みんながみんな考え事をしている顔だと思ったカエデは突然後ろを向いて、バック走で先ほどのスピードを保っていた。その際障害物になるものは背中で風を感じとってうまく避けていたのをみて、3人は驚いた顔になった。

後ろを見た際、ミカサが少し辛そうな顔をしていたのですぐに少しスピード落とした。

 

「・・・?

 ミカサ!ミカサ!」

 

「・・・うん?」

 

「ミカサって料理とかできるの?」

 

「おばさん・・・エレンのお母さんの手伝いをしていたから作れる」

 

「そっかー!

 さすがミカサだね!

 エレンは全くできないとして、アルミンは?」

 

「僕は作れないことはないけど、少し不得意かな」

 

「カエデ!!俺が料理できないって決め付けるなよ!!」

 

「そっかぁー!

 え!?!? エレン料理できるの?」

 

「そんなに驚かなくても・・・

 りょ・・料理くらい・・・で・・・できるぞ!!」

 

「おおー!」

 

「エレン・・・嘘はよくない」

 

「嘘なんだ・・・ 

 しくしく・・・」

 

 エレンの嘘にミカサが指摘すると、カエデは嘘泣きをする。

 

「あ・・・いやっ カエデごめん」

 

「うん!いいよ!」

 

「嘘泣きかい!?

 なんか最近いじられることが多い気がする・・・」

 

 カエデの嘘泣きにエレンはちょっといじけた。それをみたカエデ、ミカサ、アルミンは少し笑った。

 

「あっ・・・もう着くよ!」

 

 

 そういってただの雑草だった草むらが急に終わり、そこに広がっていたのはかなり大きな野菜が育っている畑・・・というより草むらだった。さらに遠くには小さな小屋があった。

 

「わーっ!

 やっぱりすごく繁殖してるね!!

 雑草とかはやっぱり抜いてないからすごい生い茂ってるけど・・・」

 

「すごい・・・これだけあればきっと大丈夫だよカエデさん!」

 

「そう!それはよかった!!」

 

「それにしてもカエデ・・・?

 話に聞いていた猛獣とは一回も鉢合わせなかったけどなんでだ?」

 

「エレンくん!いい質問ですよ!!先生は嬉しいです!!」

 

「誰が先生!?」

 

 胸を張るカエデにエレンがビシッと手を出して突っ込んだ。

 

「それでねー鉢合わせなかった理由は、ウルフがここ一帯の弱肉強食のトップだからなのです!!」

 

「華麗にスルー・・・

 あぁーなるほど!つまりウルフがいれば猛獣は襲ってこないんだな!!

 じゃあカエデはやっぱり別に来なくても良かったんじゃ・・・」

 

 そう言われたカエデは悲しそうな顔をしてしゃがみこんだ。

 

「も・・もう嘘泣きは通じないぞ!!」

 

「うぅっ・・ みんなと一緒にいたかったんだもん!!

 ミカサぁ~~」

 

 カエデはとうとうミカサを正面から抱きしめ、泣き出してしまった。

 

「エレン・・・最低」

 

「僕もそう思う・・・エレン・・・」

 

「ごめん・・・

 カエデ・・・」

 

「ごめんで許されたら兵士はいりません!!

 エレンなんてだいっきらい!!」

 

「グハッ!」

 

 

 ミカサは泣いているカエデの代わりにエレンを殴り飛ばした。

 

「ミカサ・・・アルミンくん 種をたくさんとって持って帰ろう?

 次からもウルフと行けば襲われることもないとおもうから」

 

「カエデ・・・俺は・・?」

 

 

 そう言うエレンを無視してカエデは小屋へと向かっていく。

カエデのあとを3人は追った。

 

 小屋にはいるとあの当時のまま荒れていた。父のツカサの亡骸は既になくなっていて、誰かが埋葬したことを願いながらカエデは手を合わせた。

 

「お父さん・・・お母さん・・・」

 

「カエデ・・・ここでカエデの両親は・・・」

 

「うん・・・賊に殺されちゃた。」

 

「そう・・・なんだ

 今度、よかったら両親のお話聞かせて欲しい

 私も話すから」

 

「・・うん!」

 

 それから4人で手を合わせたあと小屋の外へと出た。

 

「それじゃあ今回は種だけとって戻ろっか!

 私は悪いのだけどそのままトロイア地区へと戻るね!」

 

「うん・・・わかった」

 

「僕たちがこれからここに来るときに注意したほうがいいこととかあるかな?」

 

「できればシガンシナ区の人だちだけでやってほしい

 あの人達ならきっとこの場所を荒らさないとおもうから・・・

 もし荒らしたら採るのはやめさせてね

 もしものときは・・・ミカサよろしくね!」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

 それからは4人で時期がすぎ、枯れて種をつけているものから種を取り、袋に入れて来た時と同じようにまずは避難民がいる所へ、それからカエデはトロイア地区の調査兵団トロイア支部へと戻った。

 

 

 

 

 

――結局、無視し続けちゃったけど・・・嘘泣き最初した私も悪かったよね

  エレンに手紙書こう・・・

 

 戻ったカエデは自分に与えられた部屋へと入り、エレンを無視し続けたことを少し泣きそうになりながら後悔してすぐさま手紙を描いて送った。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 翌日――コンコンとドアを叩かれることで起きたカエデは眠そうに目をこすりながらドアを開けた。

 

「にゃ・・?

 リヴァイがいるー?」

 

 ドアを開けたのは調査兵団のマントを来ているリヴァイだった。

 

「あぁ 朝だぞ?昨日戻ったと聞いて来た

 イェルクに起こしてこいと言われたからきたんだが・・?」

 

「あーうー?

 リヴァイが調査兵団の服きてるー

 あーわかったー!

 これは夢かー! もういっかい寝よっと」

 

「っ! おい!まてカエデ!!」

 

「ふぎゃっ!」

 

 待てと言ってリヴァイが手を伸ばした結果、カエデの服の襟を掴んでしまい首がしまったカエデはへんな声を出して止まった。

 

「これは夢じゃない!

 俺が調査兵団の服を着ているのは、先週卒業して調査兵団に入団したからだ!!」

 

 首がしまったことで目をパッチリと覚ましたカエデはリヴァイだと認識して丁寧にお辞儀をする。

 

「そ・・・そうなんだ!

 これからよろしく!リヴァイ!

 それとおはよう!」

 

「あぁ・・・

 おはよう」

 

 やっと夢じゃないと理解したカエデに笑顔で朝の挨拶をされ、顔を少し赤らめながらそっけなくリヴァイは返した。

 

 それからすぐに着替えたカエデはリヴァイと共にイェルクの部屋へ入った。

 

 

 

 

「おぅおぅカエデ! おはようさん!」

 

「おはようございます イェルクさん!」

 

「リヴァイ・・・なんかムカつく」

 

「おい・・・

 起こしに行けっていったのお前じゃ・・」

 

「そうだけどよー」

 

「・・・?」

 

 2人の会話の意味がわからず首をかしげるカエデ。それを見たイェルクは本題に入る。

 

「いまから一週間後・・・

 ウォールマリア奪還作戦がある

 そこで東西南北それぞれに、調査兵団の小隊がそれぞれ向かうみたいだ

 南側にあるこのトロイア地区からは俺達を含めた20名だ

 まあ少人数の理由はこの3人でかなりの戦力があることと、さらに他の17名も実力はある方みたいだ、そしてなによりカエデがこの人数がなれているためだ」

 

「そうですか・・・

 壁に穴があいているのに巨人を倒して意味はあるんですか・・?」

 

 

「ちょっとは考えろ・・・おちびカエデ」

 

「むむむ!この年齢ではそんなにちっちゃいほうじゃないもん! たぶん!

 それでなんでなの?

 

「考えたのか・・?

 はぁ・・・まあいいか

 これから行うのは今から奪還しようという作戦ではない

 来るべき時に備えて、シガンシナ区へ大部隊が向かえるように途中に点在する廃墟と化した町に、補給物資をあらかじめ設置させるための作戦だ」

 

「なるほどなるほど

 分かりましたリヴァイ先生!!」

 

「それはよかった」

 

 説明したリヴァイに敬礼を取るようにビシッと手を頭に持ってきたカエデはリヴァイにそう言うと、リヴァイはまんざらでもなさそうな表情で頬を人差し指で掻いた。

 

 

「まあ そうゆうことだカエデ

 なんか準備してほしい装備とかあるか?」

 

「私だけでいいので服装をちょっと変えて欲しいです

 あの上着は移動したときに風の抵抗が強くて体に負担がかかるのと速度が落ちてしまうので・・・」

 

「わかった。上の人間に言ってみる

 理由がまともだからきっと了承されるだろう

 調査兵団の証は外せないと思うけどな」

 

「はい!!ありがとうございます!!」

 

「リヴァイは・・・ないよな?

 あっても俺に言わないでくれ!」

 

「あぁ・・・特にない」

 

「そうか・・・

少しは敬語がんばってみたらどうだ?」

 

 リヴァイは口をヒクヒクさせながら初めてかもしれない敬語で話してみる。

 

「あぁ・・・ が・・・がんばってみます」

 

「ぷぷっ!リヴァイが敬語ってヘンなの~!」

 

 どっからどう見ても敬語が似合わないリヴァイにカエデは口を抑えながら笑う。

 そんなカエデをみてリヴァイは不機嫌になった。

 

「おい!

 ・・・やっぱり敬語はやめる」

 

「そ・・そうか・・・」

 

 

 

 一週間後、カエデ、リヴァイ、イェルクの3人を含めた調査兵団の小隊20名は、マリアウォール奪還作戦という名の、物資を設置するための作戦に出た。

 リヴァイはほとんど自分が思うままに行動して巨人を狩っていた。その動きは、ついこの間卒業したばかりとは思わせないほど圧倒的だった。

 だがそれ以上にすごかったのがカエデだった。リヴァイ以上の敵を1人で倒しながら、かつ他の隊員たちの援護を行っていたからだった。

カエデの実力はほぼクラウスが隊長だったときの小隊の隊員しか見てこなかったために、想像以上の動きをしているカエデに調査兵団の隊員達は少し見惚れていた。その見惚れている間の隙すらもカエデはうまく立ち回ることで、隊員達は巨人に殺されることはなかった。

イェルクはイェルクで2人ほどは目立たないものの、2人についでの実力を持っていた。アンカーの出すタイミング、ガスを噴射させる出力など、操作装置の細かい操作によって巨人たちを翻弄させていた。

 

 これら3人のおかげもあり、巨人を見て発狂して勝手な行動をした1人名を除いた19名は、ほぼ無傷でトロイア地区に帰還することが出来た。

 帰還した際、トロイア地区が希望に満ち溢れ、お祭り騒ぎになったのは言うまでもない。

 北の荒地の未開発の土地へいるエレンたち3人をふくめたシガンシナ区の人々も、いつもの少ない量の食事だが、盛り上がるだけ盛り上がった。

 

 

 翌年――荒地の未開発の土地へ送られた避難民の食料の状態は、土地へ送った時点で勝手に悪くなる一方だと決め付けていた中央政府は避難民をウォールマリア奪還という名で人口を減らそうとした。

 しかし、異常な早さで育つ作物と開拓されてどんどん広くなる土地のおかげで十分な食事をとることが既にできていた避難民たちは暴動を起こした。

 そのことで避難民たちの現状を理解した中央政府は発表を取り下げ、開拓をより進めるようにという発表がされた。

 それから時をあまり待たずに、開拓された土地の一部には町が出来上がっていた。その町の町長となったアルミンのおじいさんはその町の名前をカエデの苗字の一部からとってサクラ町と名づけ、町のあらゆるとこに埋められた改良のされた桜の木が年に一回咲く、食料に困らない豊かな町となっていた。

 

 

 

 

 




次回、カエデとアニの出会い・・・?

 サクラ町は今後あまり出てこないかもしれないです・・・
 ただ避難民達の住むところを考えると開拓した場所しかないと思ったのと、多く食料がとれるならそこに自然と町ができるのでは・・・と思ったので作ってみました。
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