エレン、ミカサ、アルミン15歳
カエデ17歳
リヴァイ22歳
5年後――
―――ウォールマリア陥落から5年後・・・。
5年前から定期的に行っている作戦の前日の、日が沈む頃。
トロスト区の町並みは夕日で赤く染まっている。
トロスト区の商店街を、すっかり大人になったカエデは歩いていた。
「あっ!こんばんは!!」
「あら、カエデちゃんこんばんは」
「おじさん、こんばんわー」
「あぁ、カエデちゃん いつもかわいいねー!」
「あははっ! ありがとうございます!! あっ そこのおばあちゃん途中まで荷物を持つのを手伝いますよ!!」
「あら、いつもありがとうねカエデちゃん。それじゃあお願いしようかしら」
「はいっ!」
カエデは通りかかった年寄りに話しかけ、年寄りの持っていた荷物を受け取り再び歩き出した。
「おぅカエデのねーちゃん。今日は店これで閉めるし、売り残りだけど野菜いるかい?ところで今回、トロスト地区にはどれくらいいるんだい?」
「いつもありがとお兄さん!明日また作戦へ行ったあと、サクラ町に滞在する予定です!」
「そうかそうかー。明日からまた作戦だったか!しばらく寂しくなるな~」
「また帰ってきたら面倒見てきださい~!」
「おう!もちろんだぜ!」
「カエデちゃんはろー」
「はろー お姉さん!」
5年もの間、毎回の作戦で死人をほとんど出さないカエデは、壁の中で英雄視されていた。
元々シガンシナ区とは違い、トロスト区の住民達とは初めて会う人が多くかった。そのため少し遠慮していたトロスト区の住民達と仲良くなるため、カエデは自分から積極的に挨拶をしたり、人助けをしていた。その結果、数人の人たちからは挨拶されたり、野菜などを貰うようになるまでになった。
ウォールマリア陥落から5年・・・カエデは17歳になっていた。
5年経ったカエデは絹のようなさらさらで美しい、セミロングに伸ばした黒髪。身長は急激に成長して170cm。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる引き締まった誰もが羨む完璧なスタイル。そして10人中9人が美しいと思う容姿をしていた。
今のカエデはたしかに美しい部類の容姿だが、人々に振りまく笑顔には幼さがまだ残っているためにカエデちゃんと呼ばれている。
「ごめん、おばあちゃん 荷物持ちはここまでなんだー」
「いえいえ いつもありがとうね」
支部の前まできたカエデはおばあちゃんに謝りながら荷物を返すと、おばあちゃんのお礼に振り向き、軽く右手を振りながら支部の中へと入る。
支部に入ったカエデはロビーに向かうと、椅子をいくつも並べて寝転んでいるイェルクと、椅子に座り足を組んでいるリヴァイがいた。
イェルクは5年経っても容姿は変わるところは特になかった。まぁ強いて言えばやんちゃな兄さんから大人な雰囲気になったお兄さんくらいか。
リヴァイは1cm伸びたらしいがやはり小さい。5年前より顔立ちと体つきは大人になっていて、イケメンに入る部類だ。
2人の調査兵団での地位はイェルクが副団長、リヴァイは兵士長となっている。ちなみに団長はエルヴィン・スミスという男性だ。
「たっだいまー!!」
「おぅカエデおかえりだ!」
「あぁ・・・おかえり。カエデ・・・やっぱりその格好はなかなかどうかと思うぞ」
「え?そお?」
「あぁ・・・。前まではまだ良かったんだが・・・今のカエデだとちょっとな・・・」
「うーん?」
カエデの服装は5年前に変えてもらった自分用の服装だった。
上着は革で作られたチャックのついている黒いへそ出しのノースリーブ、そのノースリーブは体にしっかりとフィットしており、カエデの胸が主張している。履いているものは他の調査兵団と一緒で腰巻に白いズボンだ。靴は膝下まであるロングブーツで、しっかりと足にフィットさせるためにベルトがいくつも付けられている。
リヴァイは、5年前はまだ小さかったので特になんとも思わなかったが、5年経った今では大人びた体型のおかげで意識してしまうのだ。そしてその服装がカエデにとても似合っているということもあった。
「やっぱりみんなと同じ服装にしないか?」
「この服装・・・似合わない?」
「いやっ! 似合ってるぞ!!似合っているんだがその・・・な」
ショボーンと聞こえるようなカエデにすぐにリヴァイは即答する。
「ならいいじゃん!!それに今更変えるのは嫌だよー?みんなと同じの服装じゃ、風の抵抗が大きくて早く動けないしね。そうだ!リヴァイもこの服装にしようよ!」
――同じ服装・・・。お揃いか・・・悪くないな。いやいや・・・男用になったとしても俺があれを着るとなると恥ずかしいな・・
右手を口元にやり、考えるリヴァイ。正直なところ、リヴァイがへそ出しではなく、普通のチャック付きの革のノースリーブを来たら似合っていると思うのだが。
「いや・・・俺はいい」
「そっかー。残念!!」
「それよりカエデ」
「うんー?」
「あの生意気なガキとゆかいな仲間たちの訓練兵の卒団式今日だぞ?」
「あぁぁああ!!忘れてた!!どうしよ、どうしよ!」
大事なことを思い出したことにより慌てふためき、意味もなく歩き回るカエデ。その近くでカエデのことを見て――まだまだ子供だなぁと思うリヴァイ。
「はぁ・・・。集合場所があるならカエデが走ればどうせすぐに着くだろう?」
「あぁ!なるほど!!楽しみだなぁ!!3年ぶりだ!!」
「楽しみにするのはいいがすぐに行ってやったらどうだ?」
「やばっ!!じゃあ行ってくるよリヴァイ!!お留守番よろしくぅ!」
「支部には他に10人ほどいるんだが・・・。いってこい・・・」
カエデはロビーのドアから出て、目にも止まらぬ速さで支部を後にする。支部を出た頃には日が沈んでいたこともあり、もう帰っていたらどうしようと思いながら、近くの家の屋根の上に登る。
カエデは商店街の建物の屋根の上を次々と飛び移り、公園まで最短距離で向かう。
「えっとえっと・・・トロスト区の中央公園だよね。あと少しっ!!
・・・はい到着!!」
トロスト区中央公園についたカエデは、入口からズサーっと足を地面につけ勢いを殺し、止まる。そして、きょろきょろしながら公園の中を見回す。すると近くの木の下でミカサが待っているのが見えた。このトロスト区中央公園には灯りがあり、なかなか明るさだ。
「ミッカサ~!!」
「はぅっ!?カ・・・カエデ!??」
ミカサを見つけたカエデは思いっきりミカサの胸に抱きついた。あまりの衝撃にミカサは2歩さがった後、胸に飛び込んできた女性?に今まで待っていた人物かどうかの確認をとった。
「そうだよミカサ~!!ミカサは見ないうちに綺麗になったね!!前から綺麗な方だったけどグレードアップしてるよ!!」
「あ・・・ありがとう。私よりカエデの方が変わった!!身長と胸の成長が・・・特にね。顔はすごく美人になったね」
「あはは!ありがとミカサー!!この4年間は女性にとっては遅い成長期でさ!それよりエレンとアルミン君は?」
ミカサに褒められたことに心底嬉しそうに笑うと、あたりを見回してエレンとアルミンがいなかったので、ミカサに聞いてみる。
「連れてきてない。カエデに最初に会うのは私!」
「そっかぁ!また今度会えばいっか!!」
独占欲まるだしのミカサを簡単に受け止めたカエデは、次からはいつでも会えると思い、ミカサにこれからどうするか聞く。
「ミカサミカサ?これからなにしよっか?明日また作戦だから少し早めに帰らなきゃ行けないんだけどね」
「そう・・・明日作戦だったんだ。じゃあ2人も連れてきたほうがよかった」
「ううん!気にしないで!死ぬわけじゃないんだしね!また直ぐに会えるよー!それでどーする?」
「ありがとうカエデ。手紙でこれまでのことはいろいろ話したから・・・。じゃあ対人格闘術をやろう!」
「おお!いいよいいよ!!訓練兵はならず者とか作るらしいけど、今回は最後に立っていた人が勝ちでいいかな?」
「うん それで構わない」
「じゃあやろっか!」
そう言って5mほどお互いに距離をとってから構えを取る。カエデは幼い頃からの構えで、右手を前に、左手を胸のところ置く構えだ。
「ミカサ、いつでもいいよ!」
「うん!」
最初に動き出したのはミカサだ。ミカサは一気に体制を低くしてカエデの懐に入ろうとする。カエデはそれより深くしゃがみこみながらミカサの右手首を掴む。そしてミカサの胸に背中を当て、突き上げることでミカサの体を浮かせる。そして掴んだ右手首を引っ張って背負投げのように放り投げた。
「くっ・・・」
放り投げられたミカサは苦い顔をしながらなんとか空中で態勢を整えて地面に着地し、すぐに地面を踏み込んでカエデへと向かっていく。
戦法を変えたミカサは速い連撃でカエデに攻撃を仕掛ける。その連撃の1つ1つにカエデは腕を垂直にするように構え、動きに合わせて右で攻撃してきたら右腕で、左で攻撃してきたら左腕で、内側から外側に向かうようミカサの腕に当てて攻撃を捌いていく。
「まだ・・まだ!!」
「うん!!」
ミカサは連撃をやめ、対人格闘技の訓練の途中でアニがエレンに向かって最初にやっていたことを思い出し、カエデの足に強烈な右足のローキックを繰り出した。
しかし、そろそろ足が来るとよんでいたカエデは、右足の太ももに左足を添えたことにより、ミカサの右足の勢いはなくなり、カエデに当たることなくカエデの右側にそれた。
さらにカエデはミカサの右足が地面に着く前に、自分の左足をつかって右足を内側に反らせることによって、ミカサは自分の右足と左足が絡み合う形になって体勢が崩れる。
体勢を立て直してくるかもしれないと思ったカエデは、右足を軸にしゃがみ込みながら左足でミカサの足を払う。足を払われたミカサは、受身が取れないまま地面にうつ伏せに倒れた。
「うぅ・・・。やっぱりカエデは強い」
「私もこうゆう訓練しているからね!」
「なんでカエデは素手でやる訓練をしてるの?エレン達は言ってた。巨人相手に素手で挑むのはバカのすることだって。立体起動によって巨人を倒す今、対人格闘術をやる意味なんてないと」
「うーん。たしかに巨人相手に素手で挑むのは馬鹿だと思うし、そんな人はいないと思う。でも5年前、私が相手をした巨人は普通じゃなかったんだよ――ミカサも見たでしょ?そんな食べることより殺すことをしようとする巨人を相手にしたとき、倒すことよりまず避けることを最初にしなきゃ近づくことすらできないと思うんだ」
「つまり・・?」
「確実に避けるためには経験が絶対に必要だと私は思うんだ。巨人は人型なわけだから人と同じように地面を踏み込んで、人と同じように拳を打ち出してくる。それならば人と対戦すること経験を積めばいい。巨人がいろいろな攻撃をしてきたとしても、あらゆる避け方、対処法が経験によって分かっていれば冷静に避けられると思うんだ」
カエデの説明に何度か頷くと、ミカサは顔を上げて決意のこもった目でカエデの顔を見た。
「なるほど・・・。私もこれからは今まで以上に頑張る。だからカエデも手伝って欲しい!」
「もちろんだよミカサ!!なんていったってミカサは私の親友だからね!!」
「・・・うん!!」
カエデの笑顔と言葉に、いつもはあまり表情に出さないミカサは少し照れながらカエデの手を握った。
それから30分ほどカエデとミカサは木の下で、今までのことやこれからのことなどを話した。
その光景を見ていた人は2人を姉妹なんじゃないかと思ったとか。当然姉はミカサで妹はカエデである。
「それじゃあ、私は早いけどもう戻るね!!エレンとアルミン君によろしく!!」
「うん。また今度・・・」
手を小さく降っているミカサに手を大きく振りながらカエデは公園を出る。そして既に真っ暗な道を所々にある灯りを頼りに、駆け足でトロスト地区にある支部に戻っていった。
「みんなただいまー!!」
バタンと勢いよく支部のロビーのドアを開け、カエデは元気よく帰ってきたことを知らせた。
「おかえりカエデちゃん!!今日も可愛いね~!!」
「はぅっ!??」
野獣のようにカエデに飛び込んで抱きつき、頬をスリスリしているのは調査兵団でダントツの変人―ハンジ・ゾエである。
趣味はカエデのこと全般、巨人のこと全般である。ちなみに割合はカエデ>巨人。茶色の髪をポニーテールにしていて、戦闘時はゴーグル、普段はメガネのお姉さんである。
「ハンジさんただいまっ!!にゃっ!?!?」
もみもみもみ
「っぁ!!ハンジさんやっめっ・・・にゃっ!?」
もみもみもみ
「ぷしゅー」
もみも――― ガシッ
「もうやめとけ・・・
カエデが顔を真っ赤にして機能停止してるぞ」
カエデが抵抗すらしなくなったのでリヴァイがハンジの腕を掴んでやめさせる。
しかしハンジにはそこでやめるという思考を持っていなかった。
「なら・・・なら今がアタックチャーンス!!ぐひゃっ!!」
リヴァイの左足を軸にした右足の回し蹴りが腹部に決まり、吹き飛ぶハンジ。壁にぶつかることで止まったハンジの顔は、カエデの胸をもめて満足だったのか幸せそうな顔をしていた。決してマゾだからという理由ではない・・・・はず。
「おい、カエデ戻ってこい。おい・・・こら!!」
リヴァイは呼んでも戻ってこないカエデの頭の頭の上に少し強めに拳を落とした。
「いたっ!!はっ!! ハンジさんいつもいつもやめてくださいよ!!」
「またやらせてね!!いいでしょ!??いいよね!???減るもんじゃないし!!」
「まるで聞いてない・・・。ハンジさんなんてキライ!!」
「はっ!?!?」
カエデが言った途端にハンジはズーンと聞こえるように四つん這いになった。その光景をみたカエデはなんだが自分が悪いと思ってしまう。
「えっと・・・。ハンジさん・・・?あれだよ! 冗談だよ!!ほんとは大好きだよ!!」
「だよね!!いやー!カエデちゃんに嫌われたら私生きていけないしな!!」
「なんて復活の早さ・・・」
「はぁ・・・この変人は見てるだけで疲れる」
「ん! リヴァイなんか言った?」
「なんにも・・・」
これ以上はめんどくさいのかリヴァイはそっけなく返すと、近くにあった椅子に座った。
その後、あたふたしているカエデを見る。
「カエデ・・・明日の準備終わらせておけよ?」
「あっ!そうだった!!リヴァイありがと! 行ってくる!」
そう言ってカエデはロビーのドアを開け、風のように自分の部屋のある2階へと向かって行った。
自室へと戻ってきたカエデはベットに座りながら自分用の装備の確認をしていく。
まずは特注のノースリーブ、腰巻、ズボン、下着を確認した。
次に立体起動装置だ。これは一昨年変えてもらったものだった。あの大きな鞘はなくなり、2本の日本刀のさやが置いてあった。そのなかに納められている刀身は、一昨年の夏に誕生日プレゼントとしてイェルク貰った物だった。
その刀身はどう見ても凄腕の職人が作ったもので、イェルクにどこで作ってもらったかを聞いたが、「秘密~!」と答えるだけだったとか。自分で刀身を研ぐことのできるカエデは無理して聞くことないかと思い、結局誰が作ったかは分かっていない。
この日本刀の刀身は従来の使い捨てではなく、切れ味がなかなか落ちず、なおかつ頑丈であるために、いままで毎回合計6本を持ってた刀身が2本だけで良くなった。
それで、調査兵団みんなにその刀身をつけさせればいいではないかという話しをしたのだが、その刀身はかなりの手間がかかり、なおかつ超硬質スチールとは別に珍しい鉱物も合金させているのでかなりの高額だとか。そのために他の調査兵団は、カエデのように常にスピードを出すわけでもないのでそのままの形ということになった。
鞘についていたガスボンベは、カエデが隊員達より使う量が少ないので、従来の半分の大きさにして立体起動装置に邪魔にならないように2本ついていた。
そして最後に足に巻くベルトを改良して装着することができるようになった本来の長さの3分の1の長さの刀身だ。
今までは着脱式ということを利用して、2本の刀身を投げて目潰しをしていたが、合わせて2本になったことによりできなくなったので、代わりに短くした刀身を投擲すればいいということになり、カエデだけベルトを改良して片足4枚の計8枚つけている。
その立体起動装置と2本の日本刀の鞘を確認して、ほっとしたカエデはお風呂に入り、まだ時間的に寝る時間にしては早いのだが、ふかふかのベットに入り込んで眠りについた。
余談だがカエデのここ一年の趣味は就寝具である。抱き枕ともふもふのぬいぐるみをベットの上に置いて寝るときに使う。
特に冬のときのふかふかな毛布の中で、ぬくぬくするのが堪らないとか・・・。
朝6時、コンコンというノック音でカエデは目を覚ました。
「カエデはいるぞー」
「ふぁーい」
カエデは目をゴシゴシとしながら体を起こす。声からしてまだ眠いのだろう。
ドアからはドアを叩いた本人、イェルクが頭をガシガシと掻きながら入ってくる。
「カエデ・・・毎回言うけど・・・寝坊だ!!」
「うーん・・・あと5分」
「いやいや!!起きる時間過ぎてるのにあと5分っておかしいだろ!」
「じゃあ・・・あと10分」
「増えてる!?取り敢えず起きろカエデ!!起きないと・・・くすぐり地獄の刑に処してやろう!!」
「おはようございます イェルクです!」
カエデは余程くすぐられるのが苦手なのだろう――がばっと起きて敬礼をしながらイェルクに挨拶をしたが、内容からして明らかに頭は起きていないことがわかる。
「俺がイェルクだ・・・。まだ寝ぼけてるな・・・。すぐ顔洗って来い」
「うん」
体は起きたのだが、今にも再び瞑りそうな目をゴシゴシしているカエデに指示を出すと、イェルクはカエデの部屋から出て行った。
それからカエデはパパッと朝食を取り、準備していたものを部屋から取り出すと隊員達が次々と集まってきている外へと出て行った。
「ぎりぎりセーフっ!!」
そう言ってカエデは支部の前にいる馬のなかから自分の愛馬を見つけて跨ろうとする。
しかしそれは変人―ハンジによって妨げられた。
「カッエデちゃぁぁあーん!!」
ビクッ
後ろからいきなり手をわきわきとさせたハンジに声をかけられて、ビクッっとしたカエデはちょうど支部から出てきたリヴァイに後ろから抱きつくような形で隠れた。
「リヴァイ助けて!!」
「カ・・カエデ。当たってるぞ!分かったから一旦離れろ!」
「・・・?ありがとうリヴァイ!!」
滅多に焦ることがないリヴァイが顔を少し赤らめながら焦っているので、首をかしげたカエデだったが、助けてくれるというリヴァイの言葉を信じて離れた。
「リヴァイむかつく・・・」
「ハンジ・・・これは不可抗力というやつだろう・・・」
「でも顔がちょっとうれしそうだった」
「そんなことは・・・。おい、ハンジ!団長が呼んでるからいくぞ!」
「あーっ!!話しをそらしたな!!」
ちょっと怒り気味のハンジを無視して自分の愛馬へと股がるリヴァイ。とりあえずは助かったカエデもほっと息を吐きながら自分の愛馬に股がった。
◆◆◆
朝、トロスト区前方の門の前の大通りにエレン、ミカサ、アルミンの3人は住民達と同じように調査兵団の見送りに来ていた。実は3人ともトロスト区で調査兵団を見送りは初めてである。それは、シガンシナ区が陥落してからすぐに北にある荒地の未開発の土地へ送られ、その後はすぐに訓練兵として訓練場にいたからである。
「なぁなぁミカサ。お前昨日卒団式終えて抜け出した後からやけに機嫌いいぞ。なにかあったのか?」
「別に・・・。エレンには関係ない」
「関係ないって言ってもなあ・・・。いつも時間厳守なミカサが卒団式後の集まりに遅れてくるなんて・・・。あやしい・・・」
「たしかにそれは僕も思ったよ。ミカサ・・・なんかすごく顔が緩んでる」
「あやしくない。それよりエレン、調査兵団の主力部隊が作戦に行くところを見に行くんでしょう?」
「あぁ!! カエデ元気かなぁ!!」
エレンは訓練兵になる前日にカエデに会って以降、訓練が忙しくてカエデとは会っていないのだ。
「ところでミカサはどこの兵団に入るんだ?」
「私は調査兵団にする」
「ミカサ!お前は主席だろ!?憲兵団に入れよ!!」
「関係ない。カエデが調査兵団で私たちを待ってる。もしエレンが調査兵団をやめるといっても私は調査兵団に入る。でも、エレンが違うところへ行って危険なことがあったら、私はすぐに助けに向かおう」
「そう・・か・・・そうだよな!!カエデも調査兵団にいるんだ!!なんか楽しみだよ!!」
アルミンはガッツポーズをしながら話すエレンを見て、一回頷いたあと口を開いた。
「僕も調査兵団に入る!!」
「アルミン!?お前は座学はトップだろ!それを生かせよ!」
「僕も外の世界を見てみたいんだ!! それに・・・エレン、ミカサ、カエデさんと一緒に探検できたら・・・。そう考えると怖いという気持ちより、わくわくの方が強いんだ!!」
「わかった・・!3人で調査兵団に入ろう!!入ったら主力部隊に入れるように頑張ろう!!」
「「うん!」」
そう話しているうちに3人は、調査兵団の主力部隊が大通りを歩いてくるのが見えた。
「来たぞ!! 先頭にいるのはエルヴィン団長だ!!そのすぐ後ろにいるのはイェルクさんだよ!!」
エレンが興奮気味で調査兵団の先頭から順に顔を向けていき名前を呼んだ。
「うわっ!!でたよリヴァイ・・・。その隣にいる美人は誰だよ!!なんかむかつく・・・。なぁ?ミカサ」
――あのちび・・・カエデのとなりで悠々としてる!!
「ミカサ・・?」
エレンはいつも以上に鋭い目つきでリヴァイを睨んでいるミカサを見て、少しビクビクしながらもう一度名前を呼んでみた。
「そうだね」
「ところでカエデはどこだ?」
「僕もカエデがどこにいるか・・・」
エレンとアルミンは、必死に調査兵団の隊員達の中からカエデを探そうと頑張っているみたいだ。
「エレン、アルミン カエデがどこにいるか分からないの?」
「あぁ・・・。ミカサはわかるのか・・・?ってなんだよその勝ち誇った顔は!!」
「ふっ。教えてあげない」
「なぁ!?カエデどこにいるんだよ!!それよりあの美人な人、どこかで見たことあるような・・・。え・・・なんかすごく睨まれた」
カエデと分かっていないエレンが大声で会話をしていることでカエデにエレンの声が届き、自分のことを分かっていないエレンに睨みつけるカエデ。
「ミカサー!カエデはどこだよ!トロスト区の住民からカエデコールが起きてるけど全然わかんないぞ!」
「まだわからないなんて。エレンは巨人に蹴られて死んじゃえばいい」
「なんかすごくリアル!?!?というか俺だけ!?」
「ごめんエレン・・・さすがに僕もだいたい分かったよ。それにもう行っちゃったよ?」
「え・・・・」
「エレンの声が聞こえてたみたいですごく怒ってたよ」
「ぇ・・・・・」
「エレン最低」
「・・・・・」
ミカサ、アルミンによって言葉で責められたエレンは何も言えなくなってしまい、体育座りで座り込んだ。
そんなエレンを頬っておいて2人は最後の仕事へと向かっていった。
◆◆◆
「リヴァイ兵士長ー!!がんばってくださいー!!」
「・・・・」
「エルヴィン団長だっ!!今回もよろしくお願いします!!」
2人とも人気者だなぁーと思っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あぁ・・・。ミカサはわかるのか・・・?ってなんだよその勝ち誇った顔は!!」
――あっ エレンかな!?
「ふっ。教えてあげない」
――あっ!ミカサもいる!! その隣にはアルミン君も!!
みんな大きくなったね!! むっ!エレンはちょっとイケメンになったかな!?
「なぁ!?カエデどこにいるんだよ!!それよりあの美人なひとどこかで見たことあるような・・・」
――なっ!? さっきから何回もこっち見たのに私に気づいてないとか!!
「おい・・・カエデ。あのクソガキお前のことわかってないぞ」
「リヴァイ・・・。私怒ればいいのか、悲しめばいいのかわからない!!」
「取り敢えず思いっきり睨んどけ」
「うん!!そうする!!」
そう言ってカエデはリヴァイの案の通りに思いっきりエレンを睨みつける。そのことにエレンも住民も驚くが、住民は「あのガキなにかカエデちゃんにやらかしたのか・・・」といった表情になってとりあえずは再び調査兵団への声援を始める。
「・・・なんかすごく睨まれた」
――エレンがなにか言ってるけど、知ったこっちゃない!!
会いたいと思ってたけど、しばらく口きいてやらないもんね!!
そう思いながらカエデは門をくぐっていった。
カエデが門をくぐってから5時間後――6時に門をくぐったので現在は11時である。
途中で遭遇する巨人との戦闘も短時間で終えた調査兵団の主力部隊は、ウォールマリアのシガンシナ区へ入る門の近くまで来ていた。
「うーん! 左に2体、右に1体、右の奥に2体かー。リヴァイどーする?」
「左2体は俺がやる。右側はお前らに任せる」
「りょーかい!」
リヴァイは指示を出すと左側の巨人を倒すためにアンカーを射出して左側へと向かっていった。
「それじゃあハンジさんに手前の巨人あげるよ・・・」
「よしゃっ!! じゃあ早速行ってくる!!」
「うん」
「ひゃぁぁっほぉぉおおおおい!!」
ハンジは奇妙な声をだしながら右手前の巨人へと向かっていった。
「奥はイェルクさんと私でやりましょうか!」
「おう! じゃあ行くか!!」
「はい!!」
イェルクはアンカーを射出して屋根の上へ、カエデは自分の脚力とほんの少しのガスの噴射で屋根の上に上がった。お互い屋根の上に登ったことを確認するとともに奥の巨人の方へと駆ける。
横に並んでいる奥の巨人の15m手前に来たところで屋根からジャンプし、2体の間から手前6mに来たところで、もともとつけてあった短い刀身を投擲した。
その後素早く操作装置に、ベルトにつけてある短い刀身をつけて再び投擲する。投擲された4枚の刀身はそれぞれの巨人の目に刺さり、そのことにより巨人は目を抑えて悲鳴をあげる。
「ガァァァアアアア!!」
「ウゴォオオオオ!!」
そしてカエデはちらりと巨人の後ろに回るイェルクの方を見たあと、そのまま着地へ向かった。
カエデが着地に向かっている間に、イェルクは巨人の真横の屋根の上に着いた。そしてま横に並んでいる巨人のうなじの後ろを通り過ぎるとともに一回転ずつしながらうなじを削ぎ取った。
「さすがイェルクさん!!」
「いやいや・・・。俺は止まっている的を切りつけることと同じレベルのことしかしてないんだが・・・。それよりカエデの刀身の投擲の命中率はどうなっているんだ?」
「てへっ」
「はぁ・・・。ところで手前の巨人をハンジが倒したみたいだぞ」
「なんか、ドヤ顔で意味不明なこと最後に言ってたきがする」
「そこは変人ということで納得しておこう。向こうでエルヴィン団長が呼んでるみたいだから行くぞ」
「はい!!」
エルヴィンの元へ行くとハンジとリヴァイ、栗色の髪を方まで伸ばした女性―ペトラ・ラルが既に来ており、カエデとイェルクが来たのを確認すると話しをする。
「おまえら 退却だ!」
「退却?まだ限界まで進んでねえぞ!」
「巨人が街を目指して一斉に北上し始めた」
「なっ!?」
「そんな!? じゃあもしかして!?」
「あぁ・・・。これは5年前と同じ現象だ。街に何かが起きている・・・壁が破壊されたかもしれん」
それを聞いた瞬間にカエデは愛馬の方へ向かい、自分のリュックを背負った。
「おいカエデ!!どうするつもりだ!!」
「みんなが危ない!! これから私は先に走って戻ります!!」
「おまえ・・・。そんなことしたら無事ついたとしても、そのあと戦闘する体力がもたねえぞ!」
「それでも!! それでも私は行く!!リヴァイはみんなと戻って!!みんなを安全に町まで連れてきて!!」
「くっ!!イェルクもなんか言ってやれ!!」
イェルクは手を顎に当てて少し考える素振りをした後、リヴァイの方を向いた。
「行かせてやってくれ・・・」
「なっ!?」
「カエデなら大丈夫だ・・・。町でもし何かあったときあいつは後悔をしてそのまま立ち直れないかもしれない」
「うっ・・・。エルヴィン!!」
「イェルクがそう言うならそうなのだろう。本当はなんとしてでも止めなきゃいけないんだろうがな」
「クソッ!!」
足元にあった石を蹴るリヴァイを見て、カエデはリヴァイの手をギュッと握った。
「リヴァイ・・・私を心配してくれてありがとう。必ず死なない!約束する!!だからリヴァイはこの隊をよろしくね?死者を出さないようにいつも私がやってるような援護もお願い・・・。こんなこと頼めるのはリヴァイしかいないから・・・」
「わかった・・・約束だからな!」
「うん!!それじゃあ行ってくる!!町のことは私に任せて!!」
そう言ってカエデはトロイア区へと続く元来た道を全力で走り出す。
巨人たちはトロイア区へと向かっているため、常にカエデに対し後ろを向いていた。そのため、カエデはあとで来るであろう隊の負担を軽くするため、自分の走る道にいる巨人を次々と自身の脚力と少しのガスの噴射だけでうなじまで到達すると削ぎ落とし続けた。
次回、トロスト区陥落。
時間があったらカエデの挿絵書きたいな。