「キャアァァァァッッ!!?」
「ッッ!!」「え、何!?悲鳴!?」
その朝、ストロングゼロとバーボンの二人は、女性の悲鳴で目を覚ました。
二人の対応は目に見えて異なり、バーボンは即座に跳ね起きて、浴衣のまま悲鳴のもとへ駆け出し、ストロングゼロは突然の悲鳴に体を起こしてキョロキョロと周囲を見渡し、駆け出すバーボンを見て咄嗟に追いかける。
「どうしました!!?」
「あ……あぁ……あ……」
悲鳴のもとである客室へ辿り着くや否や、中にいたへたりこむ女性へ駆け寄り声をかけるバーボン。
しかし、その女性は一点を見つめ、指さしたまま震えるだけ。
その視線の先、指の先にあるもの。それは――――――
「……おいおい、旅館で首吊りとか……勘弁してくれよ…………」
――――――遅れて来たストロングゼロの言葉の通り、首を吊った男性の死体だった。
「落ち着いて。ゆっくり、まずはこの場を離れましょう」
「は、はい……」
バーボンが女性の肩に手を添え、介抱しながら部屋の外へと移動する。
そしていくつか質問をすると、以下の事が分かった。
1.死んでいたのはこの客室に宿泊していた男性客。『笹部 育人』28歳、IT企業社長。
2.この時間に起こして欲しいと言われ、モーニングコールもしたが出なかったため、部屋に来たら首を吊っていた。
3.深夜に何か倒れる音がしたが、もしやあれは彼が首を吊るために、踏み台代わりの椅子を倒した音だったかもしれない。
震える声で、たどたどしく答える彼女から根気強く、優しい声色で聞き出したバーボンがほほ笑む。
「ありがとうございます。後は僕に任せてください。ご安心を。僕は眠りの小五郎の弟子…………探偵ですから」
「は……はい……」
イケメンがほほ笑み、自身を気遣ってくれている状況に、思わず頬を染めてしまう仲居。
その仲居に頬を染めさせたイケメンの背後から、聞き慣れた声が投げかけられる。
「そして毛利小五郎の友人であるこの俺が、ワトソン君を務めよう」
「あ、ティムさん。ちょっと現場の保存のために、封鎖……を………?」
バーボンが振り向きながら依頼をしようとするも、その声は徐々に尻すぼみになっていく。
その理由は明快。バーボンの背後に立っていたストロングゼロは、先ほどまでの浴衣姿ではなかったから。
黒のソフト帽にベストとスラックス。赤いシャツに黒いネクタイという、お洒落な姿。
「え……と……?」
「どうしたホームズ?ここに優秀なワトソン君がいるぞ?さあ、捜査と推理を始めてくれ。警察が来る前に、この事件を片付けようじゃないか」
「一つお聞きしますけど……。もしかして、僕が事情聴取している間に、着替えに行っていました……?」
「うん。ほら、こういう時にはキメとかないとだろう?一度こういうのしてみたかったんだ」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………」
ソフト帽を抓んで軽く上げ、ポーズを取りながら答える場違いな伊達男。
それに対し、白い眼を向けながらバーボンは一言伝える。
「……とりあえず、現場の保存をおねがいします。僕は現場検証をしますので」
「おーぅけーぇ、ほぉむず。ところで、手袋代わりにボンドは必要かな?」
「……なんで持っているのかは聞きませんが、今は使わせていただきます」
余りにも特殊極まる、即席のホームズとワトソンのコンビが、ここに結成された。