魔法少女まどか☆マギカ異編 <proof of humanity> 作:石清水テラ
夏休みだから更新早くなるとか言っておきながら2週間近くお待たせしてしまい、いやぁ、スイマテーン。
今回は言い訳の余地なく私の遅筆が原因であります。
その分丹精込めて書いたマミさんの大活躍を、楽しんで頂けたら幸いです。
少女は手にした宝石を光らせ、その輝きに包まれながら高らかに叫んだ。
「ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら!」
その光が止み、視界に色が戻った時。
目の前に立っていた少女の姿は、先ほどまでと大きく異なる姿に変わっていた。
「え…?」
白い布地に金色のアクセントが付けられたブラウス。
裾の大きく広がったスカート。
腰に纏った華美なコルセット。
さっきまで身に付けていた筈の見滝原中の制服はどこへともなく消え去り、ヨーロッパ風の華やかな衣装に様変わりしている。
頭には羽飾りの付いた小さなベレー帽を被り、厚いブーツを装備したその姿は、中世の砲撃手を思わせる厳格さを持ちながらも、同時にクローバー型の髪飾りや胸元にあしらわれたリボン等、貴婦人のような雅さも感じさせる。
そしてその髪飾りには、さっきまで手にもっていたのと同じ輝きを放つ宝石が嵌め込まれていた。
(すごい…まるで、変身したみたい…!)
私が思った感想は、その実かなり的を射たものだった。
その衣装を大きく替えた少女に対して、小人達は雪崩れ込むように襲い掛かろうとするが、その瞬間には既に彼女の姿は彼らの前から消えていた。
「ハッ!」
少女は軽く地面を蹴ると、まるで重力に逆らっているかのように身体が宙に跳び上がり、瞬く間に小人達の真上まで達していた。
その常軌を逸した脚力に私達は唖然とする。
ただのひとっ跳びであれだけの高さまで行くのは勿論のこと、まるで空気の抵抗を感じさせない動きで空中に舞う姿は、否応なしに彼女もまた超常の存在である事を実感させた。
空中で最大まで飛び上がった少女が、おもむろにその手を一振りすると、その動きに合わせたように彼女の周囲で光が瞬き、同時に長い筒のようなものが何本も中空に出現した。
(あれは……銃?)
長い筒のように見えたそれは、注意深く見ると、大ぶりの砲身と太い銃床を持った古めかしい小銃である事が分かる。
少女の衣装と合わせたように、白いボディと金のアクセントを取り入れた美しい銃。確か中世で活躍した…マスケット銃だっけ。
何本も、いや何十本も召喚されたそれらは中空に有りながらまるで誰かに支えられているかのように真っ直ぐにその砲身を揃え、銃口を真下の小人達へと向けている。
まるで隊長の号令を待つ一個師団のような大仰さ。
そして少女がその手をもう一振りし、ついに号令が放たれる。
瞬間、銃の大軍は一斉に火を吹いた。
火薬の弾ける爆音が鳴り響き、擊鉄の落ちる金属音が鼓膜を破るような轟音に混ざって二重奏を奏でる。
その勢いで放たれた銃弾は、他の何十発もの同類と共に燃え立つ火の豪雨と化して小人達に降り注いだ。
咽び泣くような断末魔の声が上がり、小人達の集まっていた周囲一帯が炎と煙に覆い隠され消える。
やがて全ての弾丸が地に届いた時、地上からは彼らの姿が綺麗さっぱりと消え去っていた。
彼らは、倒されたのだ。
「す、すごい…」
目の前で繰り広げられた鮮烈な光景に、助かったという実感を飲み込めずにいると、小人達を殲滅しきったその少女が丁度私の正面に着地してきた。
衝撃を感じさせないゆったりとした所作で地面に降り立った彼女の姿に、思わず目を奪われる。
華やかな衣服に身を包み、超人的な身体能力で宙を舞い、魔法みたいにどこからともなく銃を出して華麗に戦う。
まるでテレビの中から抜け出してきたような、理想のヒーローの姿が、そこにはあった。
「あっ…」
そんな恥ずかしい感想を抱きながら少女の姿に見とれていると、不意に目に写る景色がぐにゃりと歪みだした。
不気味な色彩の背景が揺らめいたかと思うと、水の濁りが取り除かれるみたいに急激に背景が薄まりはじめ、やがて見覚えのある暗い通路へと戻っていく。
「も、戻った!」
さやかちゃんが驚きと安心の混じったような声を上げ、私も自分が元いた空間に回帰したのを悟った。
「っ…よかったぁ…」
ようやく訪れた平穏に思わず安堵の息を吐く。
何がなんだかさっぱり分からないけれど、とにかく謎の少女さんのお陰で無事私達は助かったのだ。
聞きたい事は山々だけど、今はひとまず落ち着きたい。
そんな事を思った矢先に、少女が未だに警戒を解ききらない張り詰めた表情をしているのに気づいた。
彼女の視線は私達に向けられている。
いや、でも私の目を見てはいない。
むしろ自分よりもややずれた、もっと後ろの方を見据えているような…。
「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい」
彼女のその声が向けられたのは、私ではなかった。
振り向けば、それは私達のすぐ後ろ。
影のように佇むその人物は、少女の言葉に反応せず、無言でこちらを見つめていた。
「……」
暁美ほむらが、そこに立っていた。
以前と変わらぬ黒と紫の格好で、無表情のまま私を見ている。
その表情からは、何の感情も読み取る事ができない。
思わず身体が固まり、威圧感に何も言えなくなった。
「今回はあなたに譲ってあげる」
そんなほむらちゃんに対して臆する様子もなく、少女は挑発ぎみに言い放った。
何を譲り、何を追わせようとしているのかはよく分からないが、彼女がほむらちゃんを引かせようとしているのは感じとれた。
でもほむらちゃんの方が動く様子はない。
彼女の視線が下がり、一瞬だけ私の顔から外れる。
その先にあるのは、私の胸とそこに抱えられたこの白い獣だ。
「私が用があるのは……」
ほむらちゃんが口を開く。
でも、それを遮るように少女が畳み掛けた。
「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの」
彼女の口調は至って穏やかだ。
しかし、その台詞と声色からは、明確にほむらちゃんを牽制する意思と、聞くものをおののかせるような威圧感が感じられた。
「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
言外に、敵対行為も辞さないという意思を匂わせつつ、彼女は言い放った。
ほむらちゃんは黙って彼女を見つめ返している。
その表情からは、敵対も撤退、どちらの選択を選んでいるのか判断がつかない。
彼女の次の行動次第で、ここはさっきのような戦場になり得る。
そんな一触即発の雰囲気にこの場にいる誰もが動けずにいた。
と、思われたその時。
「……いこら、待てよ待てったら!ホントにすばしっこいんだからもう全く…あれ?」
空気をぶち壊すような間抜けな声が鳴り響き、ドタドタという足音と共に誰かがほむらちゃんの後ろから走ってきた。
暗闇の中、彼女の後ろにゼエゼエと息を上ながら走り寄るその姿は、見覚えのある見滝原の男子制服を着た少年だった。
「テツヤくん!?」
「あいつ、無事だったんだ!」
ほむらちゃんと一緒に置いていかれたまま、あの変な空間に巻き込まれて離れ離れになっていた彼。
私達と同じように襲われたりしていなかったか、心配だったけれど、見たところ大きな怪我もなく元気そうな姿で一安心した。
やがて彼の方も私達に気付いたのか、目を見開いてこちらを向いている。
「まどかに、さやか…?、ぇあれ何か増えてる」
私とさやかちゃん、そして後ろの少女へ順に目線を動かすテツヤくん。
戸惑った声には何の異常も感じられず、彼が本当に五体満足である事が実感できた。
「とにかく、無事だったんだな良かった良かった」
何がなんだか分からないながらも、とりあえずホッとした様子でテツヤくんがこちらに駆け寄ってくる。
「あなたのお友達?」
「はい、はぐれてて…」
後ろから尋ねてくる少女に答えつつ、私も彼の方に駆け寄ろうとする。
だが、それをある人物の声が遮った。
「…あなた」
「ん?」
ほむらちゃんが、静かにテツヤくんを呼び止めた。
彼が立ち止まり、彼女の方へと向き直る。
両者が視線を交錯させ、静かな沈黙が流れた。
やがてほむらちゃんが、第二声を放つ。
「鹿目まどかの友人、と言ったかしら?」
「……そのつもりだし、そうでありたいけど」
質問の意味を図りかねた様子で、戸惑いがちに彼が答えた。
「……」
その台詞を聞いたほむらちゃん自身は、まるで値踏みするような目で彼をじっと見つめている。
何かを言おうとして、それを躊躇っているかのように、彼に目線を合わせたまま動こうとしない。
「おい、何なんだよ転校生。黙ってないで早くどっかに…」
「暦海テツヤ、だったかしら」
しびれを切らして彼女に食ってかかろうとするさやかちゃんの台詞を制し、ほむらちゃんが口を開く。
「なんだ、一体」
テツヤくんが、彼女に答える。
それまでの間の抜けたような口調とはかけ離れた、真剣な声色だった。
「貴方はこれ以上、鹿目まどかに関わらない方がいい」
「…何?」
ほむらちゃんの口から放たれた予想外の言葉に、テツヤくんが思わず聞き返す。
心なしか、少し怒ったような低い声に聞こえたのは気のせいか。
「さもなければ、いずれ必ず後悔する時が訪れる」
彼女は有無を言わさぬ様子でそう畳み掛けた。
その言葉の意味が理解できず、ただ衝撃と疑念に打ちのめされて私達は立ち竦む。
私と関われば、テツヤくんが後悔する。
一体、どうしてそんな事が言えるの?
それに、なんで私なの?
そんな疑問が言葉となって出るより先に、ほむらちゃんの方が踵を返してこの場から立ち去り始めた。
「ほ、ほむらちゃ…」
「警告、したわよ」
首だけを後ろに向けてテツヤくんを見据えながら、彼女が小さく呟く。
「…貴女にもね」
それに続けられた一言は、私に向けて言われていた。
"…今とは違う自分になろうだなんて思わないことね…"
今朝に聞いた、彼女からの言葉が思い起こされた。
あれは…警告、だったの?
「おい待てっ!まだ話は終わっていない」
用は済んだとばかりに背を向ける彼女をテツヤくんが呼び止める。
それに足を止めながらも、ほむらちゃんは振り向かずこちらに背を向けたままでいる。
「…貴方は何も知る必要はないし、私も貴方に何も説明するつもりはないわ」
彼からの追及を頑なに拒絶し、彼女は冷たく言い放った。
「貴方には、私達の世界に関わる義務も理由も無いのだから」
これまでにも私達に幾度となく見せた拒絶の意思。
だけれど、何故かテツヤくんへのそれは他の誰に対してよりも当たりの強いように感じられた。
「そうでしょう?……巴マミ」
同意を求めるように彼女が語りかけたのは、私でもさやかちゃんでも無い知らない人の名前だ。
「私の、名前…!?」
後ろで、少女が息を呑む。
彼女、巴マミさんっていうんだ…、初めて知った。
なんて呑気な事を頭の隅で考える私を他所に、テツヤくんがとっとと去ろうとするほむらちゃんに向けて、もう一度言葉を投げ掛ける。
「じゃあ、一つだけ、言わせてくれ」
ほむらちゃんは何の反応も見せず、そのまま立ち去っていく。
どうやら彼女の方はさっきの言葉通り、彼に何も答えるつもりは無いらしい。
その意思を知った上で尚、彼は意を決して息を吸い、彼女へ最も伝えたかった言葉を吐き出す。
それは_
「……助けてくれて、ありがとう」
_それは、感謝の言葉だった。
「………」
ほむらちゃんの歩みが、一瞬だけ止まった。
「えっ、転校生が…転校生を助けたって…マジで?」
さやかちゃんから、混乱したような呟きが漏れる。
私も少なからず驚いた。
彼女が悪い人間だと心の底から思っていた訳では無いけど、同時に小さな動物の命を狙う危険な部分も彼女にはあるのだと思っていた。
だから彼女の所にテツヤくんを置いていった時にはとても心配したし、最悪ひどい目に合わされるかもしれないとすら思った。
でも、実際彼は無事な状態で帰ってきて、それどころか彼女に助けられたのだという。
彼もまた、私と同じように変な空間に呑まれて襲われ、それを巴マミさんと同じようにほむらちゃんが助けたって事だろうか?
それではますます彼女の事が分からなくなる。
彼女は一体、私達に対する何なんだろう。
「……」
そのほむらちゃんは、彼の言葉をどう思ったのか、しばしその場で足を止めていたけど、やがて再び歩き出し私達から離れていく。
「…貴方のためじゃないわ」
そんな捨て台詞を残して、彼女は今度こそ闇の向こうへと消えていった。
「ふぅ…」
「…はぁ」
緊迫していた空気が一気に弛緩し、私達は同時に息を吐いた。
「暁美、ほむら…」
テツヤくんだけは、未だに彼女の去った方を見つめ続けている。
その物憂げな表情が、ただ彼女に対する疑念によるものだけではないように見えたのが、少し気になった。
「まあ、何か色々あったけどとりあえず皆無事で良かったってことで…」
「そ、そうだね…。テツヤくんも、元気そうで良かったよ」
「…ああ。うん、そうだな」
場の雰囲気を落ち着かせるように振る舞うさやかちゃんに、テツヤくんが我に返ったように振り向く。
彼もまだ自分の身に起こったこれまでの事態を整理できずにいるのか、やや飲み込みの悪そうな面持ちをしている。
私達だってそうなのだ。
今日転校してきて、いきなりこんな状況に放り込まれた彼の混乱は、察するに余りある。
「ところで、さっきから気になってたんだけどさ」
私の方に向き直ったテツヤくんが、急に微妙な表情で顔をしかめて、やや歯切れ悪く聞いてきた。
「まどかの持ってるそれ、ナニモノだ?」
私の胸元を見つめ、その中で踞るボロボロの動物を指さす。
そうだった。この子の事を失念していた。
元はといえばこの子を探して私はこんなところにまで来てしまった訳で。
この動物だかぬいぐるみだか分からないような変なモノは、私を呼び、ほむらちゃんに狙われ、巴マミさんに助けられている。
言ってしまえばここで起こった事全ての元凶だ。
だというのに、結局これが何であるのか、まだ私は誰にも教えてもらっていなかった。
「えっと、私もよく知らないんだけど、この子が私をここに呼んで…」
そういってひとまず彼に一応私が知ってる範囲の説明をしようとした、その矢先に。
「あなた…!」
後ろから、少女…巴マミさんの上ずった声が割り込んできた。
3人の視線が、一斉に彼女へと集まる。
それを意に返さず、マミさんは驚愕の表情を浮かべたまま氷付いていた。
彼女の見ている先は、ただ一点。
怪訝そうな顔を浮かべて手持ちぶさたにしている、暦海テツヤくん。
「キュウべえが、見えてるの……!?」
そう、マミさんは震えた声で呟いた。
「?」
テツヤくんは、より一層眉を潜めて首を捻った。
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かくして、謎の髭もじゃ集団やコスプレ転校生、謎の黄色お姉さんとの衝撃的な邂逅を果たした俺は、何か色々と有りながらも再びまどか達に合流する事が出来た。
思えば今日1日、色々な事が起こり過ぎたと思う。
朝っぱらから不気味な転校生に絡まれ、自己紹介で滑って、授業で怪我をしつつ、何だかんだ優しくしてくれる友人に出会った。
かと思えば、帰り道にへんちくりな格好の転校生や白ちびなUMAに遭遇し、ついには奇々怪々な謎空間に取り込まれ、正気を疑う容姿の怪物共に襲われ命を失いかけた。
それから…。
…なんというか、色々と衝撃的なものを目撃してしまった。
これについてはまた後で語るとして、我ながら濃ゆい24時間を送ったものだ。
そんでもって今は、まどか、さやか、これまた派手な衣装を着込んだ黄色いねーちゃん…巴マミ、と呼ばれていたか?
と、一目に付かない場所であるものを囲って身を寄せあっている。
その、あるものというのが…。
「ありがとうマミ、助かったよ!」
「うぇぁ、喋るのかコイツ!?」
「あはは…」
白くて丸い謎の小動物から発せられた、えらく澄みきった声を聞いて、驚愕とともに若干引いた。
まどかが訳知り顔で笑っているのを見ると、この子はコイツが喋る事を知っていたらしい。
まあ、当然か。これに呼ばれた、とか本人が言っていたし。
「お礼はこの子たちに。私は通りかかっただけだから」
巴マミさんが、優しくコイツに微笑みかける。
それに従ってか、それはクルッと振り向いてまどかとさやかの方を向くと、真っ赤な硝子球みたいな瞳で二人を見据えた。
あれ、俺は無視か。
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ!」
やたら甲高い声で、そいつは自分の名を名乗った。
白い体表に、長い耳、赤い目と太い尻尾。
犬猫兎のトリニティフュージョンみたいな愛くるしい容姿をしたキュウべえとやらだが、これより数分前までは、今とはうって変わって見るも無残なズタボロの状態で倒れていた。
それを今の状態まで治療してみせたのが巴マミさんその人。
手に持っていた卵型の宝石をキュウべえにかざすと、その宝石部分が綺麗な光を放ち、途端にそのズタボロな傷を治して見せた。
まさしく、魔法を目の前で見せられたようなビックリ体験だったが、正直そこまで驚く事は無かった。
なんせ二度目なんだ。
魔法を見るのは。
なんでもコイツをボロ雑巾にしたのは暁美ほむらの仕業らしいと聞いたが、何か恨みを買うような事でもやらかしたんだろうか。
しかしそうだとするなら、ここに来る道中で見つけた死体の山は一体何だったのだろう。
あれも暁美の仕業だとするなら、お仲間か何かなのか。
「あなたが、私を呼んだの?」
「そうだよ、鹿目まどか、それと美樹さやか」
まどかの質問に、キュウべえは肯定で返す。
やけにフレンドリーな感じのフルネーム呼びと共に。
「何で、私たちの名前を?」
「あ、俺は無視なのね」
なんかちょっと傷付いた。
さっきから目も合わせてくれないし、何だろう、自分の興味あるものしか見えないタイプなのだろうか。
そういうの良くないと、ボク思います。
「僕は、君たちにお願いがあって来たんだ」
「お…おねがい?」
さやかの質問にも、俺の愚痴にも耳を傾けぬまま、キュウべえは自分の言葉だけを述べてくる。
何か本当に人の話を聞いてくれない奴だな。表情動かなくて正直不気味だし。
そんな事を思いながら、二人の会話を聞いていた、その時。
"…_なら_命を_え__る…"
「_…ッ!?」
ドクッと、胸で奇妙な鼓動が響き、不思議な既視感に襲われた。
自分の中にいる何かが蠢き、これを知っているぞ、と囁く。
知っている。
自分は知っている。
知らない筈の事を、知っている。
この次に何が起こるか。
この次に語られる言葉は何なのか。
そして、こいつの願いが何であるのか、その答えを。
"…_くと__約して、魔__女に___…"
「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」
その言葉を聞いた時にはもう、引き返せない場所に自分達はいた。
10話にしてようやく一話分が終わるという事実。
道のりは長し。