魔法少女まどか☆マギカ異編 <proof of humanity> 作:石清水テラ
更新遅れてすいません。
そして多分次回も遅れます。
学業キツイや…。
あと、スマホの機種変をしたので、行開けがなんか上手くいってないっぽいです。
「なんだこの、死屍累々は…?」
薄暗い通路で一人、目の前に転がる無数の死骸を見て俺は呆然と呟く。
その反応に見合うほど、それは理解不能に過ぎる光景だった。
「生、物なの、か?これ…」
足元に倒れていた手近な一体に近づき、恐る恐るその白い体表をつっついてみる。
ふにゃ。
「…柔っこい」
猫のものによく似た独特のモフモフとした感触が優しく手の平を包み込む。
中々気持ちのいい感覚ではあるが、温もりが無いので心は癒されずむしろ冷えるばかりだ。
「でもこれ、犬猫じゃあねえよなぁ…」
死体の損傷が激しいので正確なフォルムは不明だが、こいつの身体からは犬猫狐、狸や兎のどれにも似つかぬ特徴が確認できた。
馬鹿に長い耳とか、ぶっとい尻尾とか、よく分からん輪っかみたいなものとか。
動物的でありながら、明らかに通常の生態系から逸脱しているように見える。
それこそファンタジーに出てくる架空の精霊とか、子供用に作ったオリジナルデザインのぬいぐるみにでもありそうな格好だ。
というか、やっぱりこいつ生物じゃないのでは?
「血も内臓も見当たんないし、阿保みたいに柔らかいし…」
死体特有の生理的嫌悪が皆無だったのもあり、思いきって丸々一体をつまみ上げてじっくり観察してみる。
指にかかる力はやたらと軽く、驚くほど柔らかい肉の感触は臓器どころか骨格の存在すら怪しくさせた。
イベント用のグッズがなんかの拍子で散乱したってオチかもしれない。
「ん」
調べていると、ふと小動物の顔とおぼしき部位に目が合う。
他の死体は大抵頭部が潰れていたり全体的に破裂しているので、これほど顔面が残っているのは珍しい。
じっくり見てみると、これまた現実感の無い作りの顔である事が分かった。
顔全体のシルエットが餅みたいに丸々としており、鼻や眉に相当する起伏に乏しい。
だがそれ以上にこいつの真っ赤な瞳が大きく目を引く。
兎なんて目じゃないくらい朱に染まった円形の目。
瞼も睫毛もなく、まるで粘土にビー玉を埋め込んで作ったみたいな無機質さを感じる。
だが、しかし。
「…瞳、だこれ。間違いなく」
光を失い、どこも見てなさそうな虚の瞳。
しかしそれでいて確かに確認できる目の光沢や潤みの名残は、この無機質な球体がかつては水晶体として機能していた事を無言で訴えてくる。
作りもののようだが、コイツは間違いなく生物だ。
「……」
その事を認識した瞬間急速に頭が冷え、手の上から滑り落ちた死体がポトリとマヌケな音を響かせた。
今頃になって自分がどうにも異常な事態に足を突っ込んでいる事に気づかされる。
もしかして俺は何か見てはいけないものを目撃してしまったんじゃないのか。
そんな不安を覚えて少しばかり後ずさった。
頭が痛い。
色々な事が起こり過ぎている。
脳味噌の中が混乱して物事の整理がつかない。
自分はただ、友達と一緒に遊んでみたかった。
それだけの筈だった。
なのにどうして今、こんな暗い場所で、こんな死骸に囲まれて独り立ち尽くしているのか。
解せない。
何故自分はこんなことを?
その答えは実に単純。
呼ばれたからに決まっている。
誰に?
あの、おぞましい呪いの囁きに。
「…!」
そこまで思い出したとき、それまで考えもしなかったある事に気付いた。
しまった、という喉まで出かかった叫びを全力で飲み込み息を潜める。
目の前にある死体どもに注意を割きすぎて、完全に忘却していた。
俺は、あの気持ち悪い感覚を追って来た。
だが今、自分の周囲には命だったモノが転がるばかりで、悪意の出処と呼べる存在はいまだ見つけられていない。
つまり、まだアレはこの近くにいるという事…!
"__!__!!___!!!"
「…ッ!そこかよっ!!」
再度押し寄せてきた胸を突く不快感を察知し、その方向へとこの身を転身させる。
今度こそ間違いない。
さっきから自分が追い求めていた何者かがすぐ後ろにいる。
足元の生物達の事が引っかかったが、その疑問を振り切って前へと歩を進める。
本当はただここから逃げ出したかっただけなのかもしれないが、この際どうだっていい。
今はこの感覚を逃さぬように足を早めた。
「んにゃろっ何処にいやがる…!?」
右へ左へ、たまに後ろに行ったり少し下ったり。
再開される鬼ごっこに半ば呆れつつジワジワと相手との距離を詰めていく。
後ろへと流れていく灰色の景色を尻目に走っていると、一瞬気になるモノが目に映る。
(傷痕…?)
暗がりの中、仄かな灯に照らされた壁に擦過したような焦げ跡や、何かの衝突したような小さな穴がいくつも確認できた。
まるで誰かが銃器でも乱射して暴れたような有様だ。
これまさか、さっきの生物を惨殺した奴の仕業なんじゃ…。
そんな事を考えて、足元を疎かにしたのが間違いだった。
ボコッ
唐突に足場の感覚が喪失し、踏み込んだ脚が虚しく宙を掻く。
「…へ?」
もつれた足を何とか踏み止まらせようとしたが、生憎止まるべき大地というものが今、下に存在していない。
反射的に地面を見ると、自分が足を踏み込んだ丁度その位置、その部分にぽっかりと空洞が空いているのが見えた。
床の脆い部分を踏み抜いたのか、何かの拍子に板がズレでもしたのか。
まあ、そんな事は今更どうでもいいだろう。
重要なのは、その床の穴が自分の脚をずっぽりと飲み込み、そのまま身体全体が通り抜けられるくらいデカかった、という事だ。
「ホワアアアアアアアアアッッ!?」
そんな訳で、俺は意図せず眼下の暗闇に飛び込む羽目となった。
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「ほむらちゃん…?!」
薄暗い通路の中、目の前に立つ彼女を見て私は驚きを隠せなかった。
人の事は言えないけれど、本来ここは普通人が簡単に立ち寄っていい場所じゃない。
そんな場所に彼女は悪びれる事無く 、平然と立ち塞がっている。
それだけでも十分に異常だというのに、それ以上に目を引くものが彼女にはあった。
彼女の衣装だ。
ほむらちゃんは見滝原の制服を着てはいなかった。
今彼女が身に纏っているのは、全体を灰や白で纏められた昏い色彩の衣服。
黒い襟に白いシャツ、胸元の紫のリボンや短めのスカートと、セーラー服を思わせるような構成だ。
でも、服の襟や裾に悉く鋭角的な尖った造形がされ、至る所に紫色の装飾が取り入れられたそれは、パッと見で学生の着る制服では無いと分かる。
そんな変な恰好でどうしてこんな場所に現れたのか。
「……」
そして、どうしてそんな怖い目で私を見るのか。
疑問は尽きない。
けれどそれを直接質問するだけの勇気が出ない。
この暗闇において、黒い髪をなびかせてスクっとこちらを見据える彼女の姿はどこか厳かな雰囲気を醸し出していて。
身に付けた華美な衣装もそのシックな色合いと相まって、どこか死神の纏うコートのような恐ろしげなものに見えてならなかった。
でも、ほむらちゃんの方は沈黙し続ける事を許してくれなかった。
「そいつから離れて」
機械的な、冷たい一言が彼女の口から放たれた。
その言葉で、彼女が何を目的としてここにいるかに気付く。
ほむらちゃんは、私には何の敵意も向けていない。
彼女が狙っているのはたった一つだけ。
今、私の腕の中にいるこの小さな動物だ。
「だ、だって、この子、怪我してる…」
腕の中のものを守るように、ジリジリと後ずさる。
彼女がこの子に何の恨みを持っているのかは知らないけれど、今は命を奪われそうになっているものを守る事が先決だった。
そんな私の行動を見た彼女は、僅かに顔をしかめるとこれまた機械的な無機質の動きで私の方へと向かってくる。
一歩一歩はゆっくりだけれど、寸分の狂いも無い足取りでこちらを目指す彼女の姿には、見る者を圧倒する重い気迫と明確な殺意が感じられた。
「ダ、ダメだよ、ひどいことしないで!」
思わず大声を上げ、小さな動物を守るように胸に抱きしめる。
「あなたには関係無い」
私の制止の声を彼女は一蹴し、足を僅かにも遅めることなく歩みを続ける。
今の台詞を否定しなかった、それは彼女が間違いなくこの子の命を狙っている事の証明だった。
「だってこの子、私を呼んでた。聞こえたんだもん!助けてって!」
「そう」
必死で叫んで呼びかけても彼女はまるで取り合わない。
ただどうでもいいと言った風に相槌を返してそのまま私の目と鼻の先まで接近してくる。
「……っ!」
あわやこれまで。
せめてこの子だけでも守り抜かなくては。
そう覚悟したその時。
「…ォォォォワアアアアアアアアッッ!?」
唐突に、天井から人間が一人がボトッと落下ししてきた。
「え?」
最初に頭上から、何かが踏み抜かれるようなボコっというような音が聞こえ、次の瞬間仰々しい叫び声と共に私と同じくらいのサイズの人影が見えた。
と思ったら、もう地面に鈍い音を響き渡らせ打ち付けられた後だった。
「あいったぁ!?」
謎の人影がどこか気の抜けた間抜けな悲鳴を上げる。
何とも気の抜ける声だ。
あれ?
この声、ついさっき聞いたような覚えが…。
「あいったぁ…うっそ…何で穴あいてんのマジ…いっったぁ…」
私の眼前、つまり私とほむらちゃんの間に丁度割り込む形で落ちてきた人影が、心底痛そうな声でぶつくさ言いつつヨロヨロと上半身を起こす。
周囲の非常灯に照らされて見滝原の男子制服が浮かび上がり、記憶に新しい背格好と髪形がその正体を思い起こさせた。
「テツヤ、くん!?」
私の驚愕の叫びにビクッと人影が反応し、一拍遅れてその見知った顔をこちらに向けて来る。
「…ぇ?まどか!?」
素っ頓狂な声を上げながら打ち付けた腰をさする彼。
その姿は紛れも無く暦海テツヤくんのものだった。
「どしてこんな場所いんの君…」
「テツヤくんこそ、どうして…っていうかなんで上から…?」
互いにここにいる理由が理解できずに混乱する私達。
けれど、一先ず信頼出来る人間がこの場に現れてくれた事に少しだけ安心する。
そう思った矢先、彼の表情が急激に険しい顔付きへと変化する。
「待て、お前、その腕の中の奴は…!?」
彼の視線は一点、私が腕に抱いている動物に向けられていた。
いささか表情がキツすぎるような気もするけれど、その驚きは最もだ。
誰だってこんなよく分からない生物を見せられたら驚く。
でも今は説明している時間が無い。
早急に彼を説得してこの場を離れなければ。
「_うして」
「え?」
そう思った時、誰かの掠れるような小さな声が聞こえた。
ほむらちゃんだ。
ほむらちゃんが、目を見開きワナワナと震えながら何事かを呟いていた。
「どうして、あなたまでここにいるの…」
彼女はジッとテツヤくんの方を凝視していた。
さっきまでとは打って変わって大きく動揺したような表情で呆然と立ち尽くしている。
単純な驚愕とは違う、もっと理不尽な事態に打ちすえられているような痛々しさがある。
「は…?え?あ、あっけぇーみぃ、ほむ、ら、サン?」
彼女の存在にようやく気付いたらしいテツヤくんが、ギクシャクと後ろを振り返る。
イマイチ状況を飲み込めない顔の彼は、彼女の立ち姿を視認すると、そのままポカンと大口を開けてそれきり沈黙する。
目の前の光景に理解が追いつかずひたすら呆けるテツヤくんと、何かに驚愕したまま行動を起こせないでいるほむらちゃんの視線が交差し、しばし何とも言えない空気が流れた。
気まずい静寂だ。
やがてほむらちゃんの視線がみるみる鋭くなり、彼に対して一歩踏み出し接近しようとする。
それと同時に金縛りが解けたように少しずつ動き始めたテツヤくんも恐る恐るその口を開き、
何かを問いただそうとして、
「あんた、何そのカッコ……ゔぅぉおおおおおおっっ!?」
言い終わらない内に横から吹きつけられたガスのようなものを浴びてその全身を覆い隠された。
「…っ!?」
思いも寄らぬ方向からの攻撃にほむらちゃんも顔を背けて怯み立ち止まっている。
「えっ?…え?」
何が起こったのか分からず、あたふたする私の後ろから、馴染み深い人物の声が届く。
「まどか、こっち!」
さやかちゃんが、私の後ろから消火器を片手に鎮火ガスを吹きつけていた。
私が何処かへ抜け出すのを見て、すかさず追いかけて来たのだろう。
彼女は肩で息をしながらも私を守るために悠然とほむらちゃんに立ち塞がっていた。
「さやかちゃん!」
急いで彼女の方へと駆け寄ると、すかさず彼女は私の前に出て、空になった消火器を相手に向かって放り投げる。
「そぉれっ!」
大きな筒が何かに激突してけたましい音を通路に響かせるのを確認し、私達はそのまま後ろを振り返らず一目散に反対方向へと駆け出した。
こんな目眩しが相手に通用するかは分からないけれど、今はただこの場から逃げ出す事が重要だ。
「ハッ…んっ…ハァッ…!」
「はぁ…っはぁ…はぁっ…!」
暗闇の中、今まで来た道を全力で逆走する。
2人分の荒い息遣いと足音が通路に響き渡っていた。
走りながら一度だけ後ろを見ても、今のところ誰かが付いてきている様子は無い。
ここは人通りが少ないとはいえ、一応はデパートの中。
人のいる方へと辿りつければそれだけで安心できる。
道に注意せずにここまで来てしまったから迷いそうではあるけど、私を追ってきたさやかちゃんの方は道を知ってるかもしれない。
ともかくこのまま上手く走り続ければ、三人揃って逃げ切れ…
…三人?
「あっ…!」
そうだ、私とさやかちゃんと、あともう一人。
「待って、さやかちゃん!」
立ち止まってさやかちゃんを呼び止める。
立ち止まるのをためらったせいか若干躓きながらも彼女は停止し、即座に私の方へ振り返った。
「どうしたのっ!?なんかあった!?」
息を切らしながら深刻な口調で私に聞いてくるさやかちゃん。
止まれば後ろから誰か追ってくるかもしれないという恐怖が止まっているのを躊躇させるけれど、それでも今気付いたこの事は無下に出来ない話だ。
「どうしよう…」
その場の流れで、ただ逃げる事に必死で気付くのが遅れてしまった。
まだそんなに馴染み深くなかったとか、ガスで見えなかったとか、理由はいくらでもあるけれど全て言い訳にしかならない。
私達は置いてきてしまったのだ。
友達の一人を、あの場所に。
「テツヤくんが…いない…」
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「…ぁいった!いだだだだ、かお、顔がメキョッつった!いってぇ…何すんのぉ…!?」
なんかぶっとい筒的な物を顔面に投げつけられたので、しばし顔を押さえて悶絶する。
グラグラする頭をブンブン振ってどうにかして立ち上がると、ぼやけた視界の中、周囲に立ち込める煙みたいなものに紛れて、床に捨てられ転がる消火器が見えた。
確かガスみたいなので視界を塞がれて慌てふためいている時にさやかっぽい声が聞こえて直後に頭にガツンとなんかぶち当てられたのは覚えている。
そして今自分の足元には空になった消火器が。
…つまりこれ投げつけられたのか俺。よく生きてたな。
流れからしてさやかが暁美の足止めに放ったんだろうが、見事にフレンドリィなファイアを喰らわされたようだ。
お陰で逃げ損ねてるし。
まあ、暁美の方は俺に特に敵意は無さそうなので別にいいか……って、あ。
(そうだ、暁美ほむら…!)
まだふらつく頭を無理に振って、自分のすぐ後ろにいた筈の少女の姿を探す。
薄っすらと残留するガスの中で目を凝らすと、さっきまでと寸分違わぬ位置に暁美ほむらの姿が見つかった。
「また、邪魔をして…!」
今まで見た事も無いような苦い顔で立ち尽くしている彼女は、忌々しげにそう呟くとその場から走り出そうとしている。
「おいっ待てあんた、どこ行く気だ」
すかさず一歩踏み出した彼女の腕を掴んで引き寄せ、行く道を遮った。
「っ…触らないで」
キッと鋭い目で睨みつけられるがそれで引く気はない。
現状は全く分からないが彼女の向かう先がまどか達の方であるのは間違いないだろう。
何が目的であれ、まどかに危害を加える可能性があるのならむざむざ見過ごす訳にはいかない。
それに、個人的に聞き出したい事も山ほどあるのだ。
「さっきの奴、あんたがやったのか?それにその格好…」
道中で見つけた死骸、さっきまで感じていたあの気配、まどかの抱えていたモノ。
積み重なった疑問の答えを求めて手に力を込め問いただす。
「邪魔よ、離しなさ…」
相変わらず答えるつもの無いらしい暁美は、その細腕に似つかわしくない力でこの手を振りほどこうとして、
「…ッ!」
唐突にその動きを止め、後ろを振り返った。
「?おい、どうし…」
急に態度を変えた彼女を不審に思い、追及しようと顔を近づける。
「…ぁッ!?」
その瞬間、再びあの嫌な感覚が脳裏に突き刺さった。
"_ミィ_ツケ_ タ_…!_"
声が聞こえた。
今までとは比較にならないほど明瞭に。
それは、今まで追っていたモノの正体が今や手の届く距離にまで近づいてきている事を意味している。
思えば当然の事ではあった。
ここに落ちてきたのは、あの気配を追ってきたからだ。
なら、落ちたその先に自分の探していたモノがいるのも十分あり得る事ではある。
ただ、実際にそれと対応するにあたってし何の準備も出来ていなかったのが致命的だ。
「…こんな時に」
暁美はそう呟くと、さっきまで向かおうとしていたのと反対方向に歩き始める。
彼女の方も俺と同じ様に何かの気配を感じている、のか。
だとすればそれは、まどかよりも優先される程の対象だという事なのだろうか?
「暁美、何を…」
その真意を図りかねながらも彼女を追って自分もその方向へと足を向ける。
そこで、
「ぇ」
とても、
名状しがたい光景を、見た。
目に見える風景が、大きく歪む。
脳を酔わせる勢いで世界の形が大きく崩れ、抽象画のように大雑把な色彩へと変質していく。
絵画めいたアレンジのなされた薄暗い通路は、やがて引き裂かれるようにその内奥を曝け出し、さっきまでとはまるで違う風景を映し出した。
「なんすか、あれ」
ページをめくるみたいに目ぐるましく移り変わる背景。
差し替えられる度、世界は幻想色に侵されゆく。
蝶
庭
髭
花
蟲
毛
園
鋏
薔薇
雑多なモチーフが塗り重ねられ、元の景色は見る影もない。
今、眼前の風景の一部が目の前で貼り替えられたかのように異空間へと変わり果てていた。
大きく在り方を変えた世界は、そのままみるみると膨れ上がって、自分達を呑み込まんとする。
「__ちょ、待っ……」
いきなり書き変えられた周囲一帯に対して何も分からぬまま立ち尽くしていた俺は。
急速に広がる異空間へと為す術もなく取り込まれていった。
滅茶苦茶久しぶりの更新になりました。
ただでさえ展開遅いのにこんなペースで完結できんのか、という話ですが、一応エタらせるつもりは無いので不定期でも更新は続けて行こうと思っています。
(完結に何年かかるかは言っていない)
ともあれようやく魔法少女やら魔女やら出てきて、やっと物語が始まる感じで嬉しいです。
次回、みんな大好きな頼れる先輩が…!
出る、と、いいなァ…。
スンマセンまだ書いてないです。