もう一度、愛しき人達と   作:ユータボウ

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お久しぶりです。色々あってモチベーションが低下していましたが、孫呉の血脈のおかげもあって復活します。蓮華と思春、亞莎が可愛い。


来訪の報せ

「北郷さま、いらっしゃいますか?」

 

 自室で柳琳から預かった竹簡に目を通していると、不意に部屋の外から自分の名を呼ぶ声が聞こえた。一体誰だと首を傾げながらも「どうぞ」と一声を掛けると、一人の女性が恭しい態度で以て部屋に入ってきた。

 

「曹操さまがお呼びです。至急、謁見の間までお向かいください」

 

「華琳が……? 分かりました、ありがとう」

 

 礼を告げると女性は頭を下げ、入ってきた時と同じようにして部屋を後にしていった。それを見送ってから、俺もすぐに身嗜みを整えて謁見の間へ向かう。万が一にも遅れてはいけないため、やや早足だ。

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「ん、香風」

 

 その途中、曲がり角で偶然にも香風と出会(でくわ)した。聞けば彼女も侍女の人に謁見の間に来るよう言われたらしい。そんな訳で、そのまま二人で一緒に行くことになった。

 

 そういえば、香風は華琳が俺達を呼び出した理由を知っているのだろうか。俺達でなく香風まで声が掛かったということは、恐らく他の面子も同じと見ていいだろう。気なった俺は足を止めずに隣の眠そうな香風に尋ねてみる。

 

「香風は何か聞いてないか? 華琳が俺達を呼び出したことについて」

 

「うんん……。シャンもご飯を食べて城に帰ってきたばかりだから、全然」

 

「そっか……」

 

 残念ながら香風もこのことについては何も知らないようだ。主要な臣を集めるくらいなのだから、重要なことに間違いはない筈だが。と、そんなことを考えながら歩くこと数分、俺達は何事もなく謁見の間に到着した。

 

「あら、あなた達が最初に来るなんて意外ね。春蘭あたりだとばかり思っていたのに」

 

 到着した俺達に、玉座に座っていた華琳は楽しげに微笑んだ。その傍には既に我らが猫耳軍師、桂花が控えている。

 

「華琳、一体どうし──」

 

「慌てずとも皆が揃えば話すわ。少し待っていなさい」

 

 一体どうしたんだ、と尋ねようとした矢先に言葉を遮られ、俺は大人しく皆が集まるのを待つことにした。初めに来たのはやはりというべきか、春蘭だ。彼女は俺に遅れを取ったと気付くや否や、声を大にして悔しがり、続いてやって来た秋蘭に慰められている。秋蘭は秋蘭でぐずる春蘭を頭を撫でつつ、「ふふ、姉者は可愛いなぁ……」と満足そうにしていた。なんというか、平常運転である。

 

「申し訳ありません、ただいま参上しましたわ」

 

「ほら姉さん、着いたわよ。しっかりして?」

 

「ふぁ~……ご飯食べた後は眠いっすよ……」

 

 やがて最後に現れたのは華侖、柳琳、栄華の三人だった。柳琳と栄華の少し疲れた様子を見るに、華侖を引っ張ってくるのに苦労したのだろう。華琳もそれは見てとれたようで、特に何も言うことなく三人が並ぶのを見送っていた。そして、整列した俺達を軽く一瞥してから、彼女はゆっくりとその口を開いた。

 

「つい先程、燈からの手紙が届いたわ。桂花」

 

「御意」 

 

 華琳の声に短く応え、どこからか一つの書簡を取り出した桂花は、そこに書き記されていた内容を淀みなく読み上げ始めた。

 堅苦しい挨拶や難しい説明を省略すれば、『こちらの都合がつきそうなので、近々そちらへ伺わせてもらう』というものだ。沛国の相という高い地位にある彼女が自らこの陳留へ出向く理由があるとすれば、恐らくは俺が戻ってきた時に出会った三人組の賊のことだろう。兗州の賊が州境を越えて豫州の沛国に入ったともなれば、その沛国を治める燈が出てきても不思議ではない。

 

「──かつての臣でも今の燈は沛国の相。そんな人物を迎えるともなれば相応の支度が必要よ。全員、心して準備に取り掛かりなさい。あまり悠長にしている暇もない上、一片の粗相も許されないわ」

 

『はっ!!』

 

 皆の力強い返事が謁見の間に響く。かつての戦友とはいえ隣国のお偉いさんがやって来るのだ。小さな失敗であっても、それは華琳の顔に泥を塗るにも等しいのだから、この緊張感も当然と言えよう。

 

「柳琳、少々付き合ってもらえますか? 至急、用意しなければならないものがありますので」

 

「勿論だよ、栄華ちゃん」

 

「秋蘭、現状で動かせる兵はどのくらい? 警備の配置の参考にするから聞かせてほしいわ」

 

「そうだな……今使える人数となると──」

 

 謁見の間から解散するとほとんど同時に、早速来るべき日に備えて話し合いを始めた栄華と柳琳、そして桂花と秋蘭。対してまだ動きを見せていないのが俺と香風、そして春蘭と華侖だ。語るまでもなく武力寄りのメンバーである。

 

「お兄ちゃん、どうするの?」

 

 袖を軽く引かれて視線を落とすと、香風がじっと俺の目を見つめていた。そんな彼女に「どうしようかなぁ……」とこぼした俺は、自分に出来そうなことを脳内で順に挙げていき──、

 

「……うん、やっぱり警邏かな」

 

「? 警邏?」

 

「そう。こういう時って何か普段しないような特別なことをしなくちゃって気になるけど、俺ってそういうの空回りして全然出来ないから。いつもしてることで、一番俺らしい仕事って言われたら、やっぱり警邏なんだ」

 

 そうだ、何も気負うことはない。燈と喜雨の二人が来るからといって、変に力んで格好をつける必要はないのだ。俺は俺に出来ることを精一杯する、それでいいではないか。

 

「それにさ、街の治安が悪いと燈と喜雨に笑われちゃうだろ? それは流石に嫌だしな」

 

「うん。じゃあシャンも、お兄ちゃんを手伝う」

 

「面白そうなことを話しているではないか、北郷。私も混ぜろ」

 

「あたしも手伝うっすよ! こういうのは皆で協力した方が絶対いいっす!」

 

 春蘭と華侖のありがたい申し出に頬が緩むのを感じる。体の底からやる気がどんどんと溢れてきて、俺は「よしっ!」と拳を天へ突き上げた。

 

「それじゃあ、皆で頑張ろう!!」

 

「「「おー!!」」」

 

 

 

 それから俺達四人は現陳留警備隊と協力し、きびきびと不正を働く輩を取り締まった。俺以外の三人は調練や他の仕事のために来れない日もあったが、暇を見つけては街を歩いて目を光らせており、何度も助けられることとなった。そんな三人に負けていられないと、俺自身も今まで以上に真剣に取り組んだ。

 

 朝起きてから警備隊と街を練り歩き、夜は飯屋で皆を(ねぎら)ってから床に就く。日によって差異はあれど、おおよそ似たような日々を十日程度繰り返し──、

 

 いよいよ、その日を迎えることとなった。

 

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