盾の少女の手記   作:mn_ver2

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感想でアンケート的なのはアウトだなんて全く知らなかったです……。せっかくたくさん考えてくれて送ってくれたものが消えていて、送ってくれた人にはとても申し訳ないです。ごめんなさい。自分の無知でした。
これを読んでる? かは知りませんが、運営さんもすみませんでした。


では切り替えて。
グロ編、逝きますっ!


小魚の小さな小さな心臓

 今まで生きてきた中で、これ以上の痛みを味わったことはないと断言できた。

 数多の特異点を巡り、軽い擦傷などいつものこと。打ち身や打撲、骨にヒビが入る一歩手前の怪我なんてザラにある。

 果たしてあの時の小魚はどんな気持ちだったのだろうか。

 焼けた記憶。灰と化したそれは舞い上がり、どこかに消えてしまった。

 

「ア、ア゛アッーー……」

 

 死ぬ。

 死ぬ。

 死ぬ。

 敵に腹を綺麗に裂かれ、晒される。

 目を見開き、足りなくなった酸素を剥き出しの肺が求めて激しく暴れる。白い炎に炙られるような、静かで猛烈な熱がマスターの全身を灼く。

 

「ほな、いくで?」

 

 呑気に衆合地獄が言うと、腕をマスターの中に突っ込んだ。

 

「ウッ、ッ! ……ボおっッ!!」

 

 気持ちの悪さに、咄嗟にマスターは顔を横にして吐いた。

 いやに生々しい音が聞こえる。

 

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 

「カ、ハ……!」

 

 触れられている。その感覚がとても鮮明に感じてしまう。

 嫌なのに。嫌なのに遮断できない。その信号を遮断できない。

 

「ゲロまみれの顔で……可愛い顔が台無しやわぁ。おっと、あまり動いたあかんで? 臓物傷つくのはさすがにキツイからな?」

 

 そんなことを言いながらも、衆合地獄は愉しそうにマスターの腹を搔きまわす。

 

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 

 マスターは苦しみに空気を吐くことしかできない。口の端から血が溢れる。それでもマスターは弱々しくも足掻いた。

 ビクンビクンと死んだ体に電気を流されたような微弱な運動を繰り返し、しかし意識は決して手放さず、虚ろな瞳で衆合地獄を見ている。

 激痛の時間は続く。

 突如、ゴリッ、という固形物に触れた音。それだけでも、身体を剥がされるような痛みに襲われ、血が噴き出した。

 

「あ」

 

「コッ、カフッ!!」

 

「だから言うたのに。少し骨を掠めてしもうたわ」

 

 いったん腕を抜き、やれやれと衆合地獄は肩をすくめた。

 その腕は真っ赤に染まっていて、それが自分の血だと悟るのは容易かった。

 霞がかる視界でもよくわかる。

 自分を中心に夥しい血の池が形成されている。

 それを認識した瞬間、ふと力が抜け、ついに指先ひとつ動けなくなる。

 

「頑張りはるなぁ。たぶんもう、血ぃ半分はきってるやろなぁ。これ以上下手に動けばホンマに死ぬで? コツは掴んだ。あとはそこを弄るだけ。……これで最後。いくで」

 

 衆合地獄が再び腕をマスターの腹に沈める。

 

「泣いてもええんやで? それほど痛いことしてるさかい、しょうがないしょうがない」

 

 衆合地獄が優しくマスターに語りかける。

 だが、そんな彼女の言葉はマスターには届かなかった。届くわけがなかった。

 身体の構成を弄られる感覚がする。強引に破られ、壊され、引き離され。それらを衆合地獄によって再び繋ぎ合わされる。どのような仕組み。どのような方法。そんなことはどうでもよかった。

 ただマスターは、4回ほど死ぬのに十分すぎる激痛に耐えればいいのだ。

 

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 ぐじゅ。ぬぽ。ぐじゅ。ぐじゅ。ぬぽ。

 

「あ゛ぎッッ!! ぶ、ぶ……!」

 

 口から血の霧を吐く。

 それが衆合地獄の顔に吹きかかるも、顔色ひとつ変えずになおも腕を動かし続けた。

 

「泣かへんの? 変やなぁ」

 

 臓物のひとつを掴むと、それに反応して面白いようにマスターが血を吐く。

 繋ぎ合わせると激しく咳き込み、気管に血が流れ込んできて呼吸ができず、肺が極限まで収縮するのがよくわかる。

 ……最後の仕上げだ。

 心臓を裏から優しく持ち上げ、後ろに隠れる目当てのものに触れる。

 衆合地獄がマスターの容態を確認してみると、すでに虫の息になっていた。血を失いすぎた。もしこのまま放置すれば、10分もせずに死ぬだろう。

 ひとつまみ分ほどのか弱い呼吸をゆっくりと繰り返している。もはや何をしても反応はない。だが目は確かに衆合地獄を見ている。見ているのだ。偶然そう見えるのか、それとも意志のこもった目なのか、彼女にはわからなかった。

 時間を数秒無駄にした。その間にも、この非力な少女は命の炎は消えそうになっている。こんなところで死んでもらっては困るのだ。

 お目当ての部分と少女の魔術回路を強引に接合する。

 ……完了。これでこの異質な世界を生き抜くことができるだろう。

 衆合地獄は少し安堵した。

 

「よう耐えた。今からあんたはんの綺麗なお腹を元にーー」

 

 戻すで、と言いかけて、衆合地獄は力強いナニカで腕を掴まれたのを感じた。

 瞬時にわかる。ナニが掴んだのかはわかる。だがありえない。ありえて良いわけがない。

 衆合地獄は恐る恐る少女の顔を覗いた。

 

「フーーーーッ!! フーーッッ!」

 

 必死に歯を食いしばり、血を吐くことをさらに助長する愚かな行為だとわかっているはずなのに、少女は衆合地獄を見つめた。口の端の血の泡が膨らみ、爆ぜる。その目は虚ろではなく、煉獄のような業火の炎が宿っているように衆合地獄には見えた。

 

「あ、あんたはん、どうして……」

 

 マスターは何も言わないが、衆合地獄の腕を掴む力にさらに力がこもった。

 

「……ひっ」

 

 ……恐怖した。ただの人間相手に、恐怖した。

 振り払おうとすれば簡単にできる。だが、できなかった。その目が衆合地獄に何よりの恐怖を与えた。

 何を伝えたいのか、衆合地獄にはわからない。

 掴む手が激しく痙攣しているのはわかる。自ら命の炎を燃え尽くそうとする行動の理由が、衆合地獄には全くわからなかった。

 

 そして衆合地獄はプツリと何かを刺した音を耳に聞いた。

 まさかと思い、バッ! とその音のしたところを見ると、自分の爪が少女の心臓に深々と刺さっていた。

 

「ああ……あかん……これはあかん」

 

 風に吹かれて消えそうな声で衆合地獄が呟く。

 掴む手を強引に引き離し、早急に心臓から刺さった爪を抜き、腹に沈めていた腹から腕を抜き、ちぐはぐな魔術で傷ついた箇所を修復していく。

 だが、また少女に衆合地獄の腕を掴まれた。今度こそ彼女は心の底から恐怖した。

 

「なんなんや、あんたは……人間やないわ……」

 

 少女は声もなく笑っていた。

 ゲロと、血で醜悪な顔をを歪ませながら笑っていた。

 応急処置完了。絶対安静にしていれば、数日で万全の状態に戻るだろう。

 やがて、ついに少女は意識を失い、死んだように倒れた。

 さっきまであんなに性的に興奮し、色顔だったのに、今は死相を晒して、血の海に沈んでいる。

 とりあえず血の海を綺麗にしてやる。

 サーヴァントたちに発見された時、主人が血まみれだったら顔面蒼白間違いないだろう。

 衆合地獄は洞窟を出た。

 あれこそがマスターの真性なのだろう。

 でも、もう『あれ』に関わることはない。そう思うとなぜか安堵してしまう。次に会うときは、『みんなの』マスターだ。そうあることを望む。そうであってほしい。お願いだ。

 空はマスターの苦しみなど知らず、今日も元気に太陽の光を降りそそぐ。

 

「……あんなん、鬼よりも遥かに恐ろしいわぁ」

 

 ◆

 

「ダイジョブダイジョブ! 夢の中で何かされたような気がするけど、ほら、どこも怪我してないでしょ? うん! よし、じゃあ行こうか!」

 

 マスターはサーヴァントたちを連れて山頂を目指す。

 先を急がせる。

 血の唾を吐き、マスターは歩き出した。




あれは夢か。それとも現実か。


活動報告のところでネタを募集することにします。一応募集用の投稿も済ませているので、いいネタがあればぜひ教えてください。むしろネタがないとこの小説はいい感じに機能しないので苦笑。
メッセージでも全然ダイジョブです。
お手を煩わせて本当にすみません。
もしこれもアウトなら、指摘してください。
イヴァン雷帝戦のサリエリもいいなと思ってます。
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