盾の少女の手記   作:mn_ver2

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悲報
続きます。

この物語において、悪人はひとりもいない。


シャロウ

 大陸が、落ちる。

 空間維持ができなくなった時空神殿は割れ、崩壊し、地球に衝突する。それは容易く地面を深く、深く抉り、削る。脳髄に重く響く音に鼓膜が悲鳴をあげる。衝突によって刺激された地下マグマが噴き出す。ビーストも少なからず傷を負い、痛みに頬を紅潮させる。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 短く荒く息を吐き、ビーストは己の心の平常を保とうと努める。痛みを感じるなどずいぶんと久しぶりだ。ずっと前ならばそれが当たり前だったのだが、どうも過ぎた時間はビーストにかつての苦痛をある程度忘れさせてしまったようだ。

 そしてこの感覚はもう、ビーストには不要のものだ。

 見誤った。完全に『この世すべての悪(アンリマユ)』を侮っていた。最弱の英霊、最弱の宝具。その脆い牙が今になって首元に噛みつくか。

 左半身を失いながらもアンリマユたちの上空を浮くビーストはゆらりと降下し、傷口に魔神柱の欠片を用いて応急処置を施す。ぐじゅぐじゅとビーストの肉と混ざり、左半身を黒紫色の肉体で復活させる。左脚、腕を動かして動作確認は無事終了し、倒れる五人を見下ろした。

 

「はは、あれを受けて生き、てるとか……まったく、バケモノ……だぜ」

 

「私にとっては人類のほうがもっとバケモノだよ」

 

 息絶え絶えのアンリマユにビーストはとどめを刺すことにする。

 油断はしない。慢心もしない。

 悪がやられるのは当然である、と新宿で魔神バアルが教えてくれた。ならばあらゆる手を潰して、自らを排そうとする存在のことごとくを消してみせよう。

 道半ばで死ぬ悪は、悪として三流ですらない。

 頭を踏みつけ、徐々に力を加える。ぐりぐりと地面に押し付けるように。

 

「ギッ、あ……!」

 

 頭蓋にヒビが入る音が聞こえる。ビーストはそれでもさらに力を加え、本当に頭が割れるギリギリのところで一度足を上げる。そして彼の気が抜けた瞬間にもう一度力強く踏みつけ頭部を破壊した。

 グジャりッ! と脳汁がぶちまけられる。念には念を。霊核も確実に潰しておく。これでアンリマユは死んだ。

 さようなら最弱英霊。あなたはとても強かった。

 

「時空神殿は破壊された。分身の時空神殿からすり替えたことが仇になっちゃったか」

 

 破壊されたのなら、また創造し直せばいいだけ。少しばかり時間はかかるが、造作もない。しかし、少なくとも今すぐにこの世界の人類を殲滅させることはできなくなってしまった。

 脚を滴る血が気持ち悪い。衣を脱ぎ、それで血を拭うと空に投げ捨てる。裸になったビーストはまたすぐさま新たな衣を身に纏う。

 マシュはビーストの一連の行動に驚きと悲しみを隠せずにいた。

 だって殺したのだ。あれほど優しかったマスターが、顔色ひとつ変えることなくかつての仲間を殺したのだ。マシュは怒りを感じなかった。だがどうしようもない悲哀を感じた。

 

「仲間を殺すか、ビースト……!!」

 

 沖田オルタが無様に両腕で這いながらビーストに接近する。それでもそのスピードはとても遅い。これなら赤ん坊にハイハイさせたほうがまだ速い。

 待つ必要など無し。ビーストはこちらから歩み寄り、彼女に大太刀を手に取らせまいと先に取り上げる。

 葛藤も無し。

 下向きに構えると、ビーストは無言で霊核を貫き彼女を絶命させる。

 残り3人だ。

 マシュがビーストに襲いかかる。タイミングを見計らっていることなどお見通しだったビーストは一歩だけ横にズレる。たったそれだけでマシュの奇襲は失敗し、地面に飛びつくだけになってしまう。

 他愛ない。

 ビーストはうつ伏せに倒れるマシュの背中を踏みつける。

 

「ビース、ト……」

 

 マシュはもう、彼女を先輩と呼ばない。

 倒すべき敵と決めたマシュは、それでも必死にビーストの足から逃れようともがく。

 うだうだとそれを見ているつもりはない。直ちに殺す。ビーストもマシュに対して覚悟を決めたのだ。

 カルデアがビーストの軍門に下るというのならば、昔のような毎日がまた過ごせると期待していたのに。

 残念だ。

 大太刀をマシュの首を這わせる。チャキン、と角度を変えると鈍色に光る刃がマシュの表情を映す。

 

「……」

 

 まだ諦めていない表情だった。

 こういうものを、よく知っている。このあとの展開を、よく知っている。

 だから時間の猶予など一切許さない。

 大太刀を振りかぶる。勿体ぶらず、速やかに、殺す。

 さよならだ。永遠にさよならだ。マシュの旅はここで終わり、ビーストの旅はまだまだ続くのだ。お別れだ。

 振り下ろす。首を断つために。

 思い出は、もういらないのだ。

 ビーストの大太刀がマシュの首の皮に触れ、鋭利な刃が斬り裂き鮮血が噴き出すまさにその瞬間。

 視界の外から振り上げられた剣が、激しく火花を散らしながらビーストの一撃を防いだ。

 

「ーーーー!!」

 

 咄嗟にマシュから離れ、さらに二人からも距離をとる。

 いったい誰が。ビーストに飛び込んできた剣はしだいに魔力の粒になって消えてしまう。

 投影……?

 それはおかしい。エミヤと黒エミヤはこの手で殺したはずだ。それに投影魔術を使える者はこの場にはいない。

 全方向への威嚇攻撃。魔神柱の一斉射。それは周囲のマグマをさらに活性化させるだけに終わり、何の成果も得られなかった。空高く噴出したマグマが沖田オルタの身体を呑み込み、ジュワッッ!! と蒸発する。

 どこにもいない。どこにもいない。

 

「誰……?」

 

 こうしてぐだぐだしている間に、状況が一気に逆転されてしまうことは絶対に避けなければならない。

 魔神柱にマシュと岩窟王と坂本を拘束させ、指ひとつ動かせないようにする。

 これで安心。あとは乱入してきた者の登場を待つだけだ。

 その間にも空間の温度は急速に上昇し、マシュたちの滴る汗が地面に落ちた瞬間に蒸発してしまう。

 あと数分で肉をも灼くまでにいたるだろう。

 

 ……ふと、ビーストの前でいまだ圧倒的な高さまで立ち上るマグマに、無音とともに氷のカーテンが開かれた。

 

 それは上下左右から押し寄せるマグマを防ぎ、凍らせることで生じた幻想的な氷のアーチを潜り、こちらへ歩いてやってくる。氷の結晶が真っ赤に照らされ、キラキラと輝く様はなんとも言い難いもの。

 そのカーテンはマグマがそれを溶かそうとする力を遥かに超え、とてつもないスピードで侵食する。

 鬩ぎ合い、水蒸気が辺り一帯に広がる。ひんやりと冷え、ビーストの足元にまで届く。

 

「ーー凍らせて、ヴィイ」

 

 刹那。

 巨大なマグマの山は巨大な氷の山になった。

 ビーストは目を見開いた。

 しかしやってくる人物……女は腕に人の頭ほどの大きさの魔獣を抱えて歩く。

 水蒸気の霧が晴れ、その姿がしだいに明確になっていく。

 腰まで伸ばした長い長い太陽色の髪が波打ち、まるで希望の星から舞い降りたような純白のドレスを見に纏っている。

 そしてクッキリとした目元。鼻。

 あの顔は、誰も知らないはずがない。

 まさに天使、だ。

 

「ぁ……あ……」

 

 マシュが掠れた声でその人物の名前を呼ぼうとしている。

 目尻に溜めた涙が今にも溢れそうだ。

 

「ありがとう、ヴィイ」

 

 少女がヴィイの頭を優しく撫でる。

 するとヴィイと呼ばれた魔獣は満足気に消えた。

 ついにビーストの目の前に少女は立った。

 互いに視線を交わす。

 その姿は鏡写しのようなーー……。

 

「せん……ぱい……」

 

 今にも消えそうなその声はちゃんとマスターの耳に届いた。

 マスターがマシュの方に振り向くと、ビーストに背を向けて、一言。

 

「……『疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)』」

 

 緑の閃光とともに、稲妻の軌跡を描きながら三匹の馬が引く戦車がどこからともなく現れる。

 マスターが手を横に振ると、馬たちは蹄を鳴らし、高らかに前脚を上げて駆けた。

 その速さ、もはや見ること能わず。

 突然吹いた突風。その後にはマシュたちを拘束していた魔神柱たちが身体に大きな穴を開けて夥しい血を流していた。

 

「……あなたは誰?」

 

 ビーストが問いかける。

 戦車は消え、マシュたちが自力で拘束を逃れたのを見届けるのを確認すると、マシュから通信機を取り出し、一方的に連絡する。

 ザザ、ザザザ、とちゃんと通信ができずにノイズが流れるだけだったが、指先に宿した電気を流し込むと、嘘のようにクリアな音声が流れてきた。

 

『マシュ⁉︎ マシュ⁉︎ 聞こえたら返事をしてくれ……って……え?』

 

 ダ・ヴィンチのホログラムが焦りであたふたしていたのが凍りついた。

 なぜならば人類悪に堕ちたマスターと瓜二つの人物が彼女の目に映ったからだ。

 口を忙しく開閉する彼女にマスターは手短に伝える。

 

「今からマシュたちをカルデアに帰還させます。存在証明はどうですか?」

 

『問題はない、が……君は……』

 

「私のことは気にしないでください。私はあなたが知っているような『私』ではありません。マシュたちをレイシフトさせられる。そうですね?」

 

『できる……』

 

 ようやく再起動したダ・ヴィンチが下を向いて忙しそうに指を動かす。するとマシュたちの身体が透け始める。帰還の合図だ。

 ダイヤモンドダスト。

 まだ解けない氷の結晶は煌びやかにマスターを彩り、ある種の眩しさを噛み締めながらマシュは言った。

 

「ありがとうございます……先輩」

 

「残念ながら私はあなたの先輩ではありません。ですが……助けられて良かったです。この先カルデアは暗迷することになるでしょう。どうか、自分を見失わないようにしてくださいね。あの子は……私が相手をします」

 

 カルデアはもう、壊滅状態。

 一世一代の大博打が失敗に終わったのだ。魔力は尽き、命がけでそれを集める旅がすぐにでも始まるだろう。

 

「……頑張ります、私。だから先輩もどうか……!!」

 

 だから先輩ではありません、と言おうとして。とうにマシュたちがいなくなっているのに気がつく。

 誰もいなくなった。夜が雄叫びを上げ、氷で埋め尽くされた一帯が闇色に染まる。

 

「……あなたは誰?」

 

 もう一度、尋ねる。

 

「私はあなた。旅を終えた者。そして今はあなたを倒すためだけに存在する虚ろな影……シャロウです」

 

 凛としたその声色はビーストの堪忍袋の緒に手を伸ばした。

 

「ーー殺す」

 

「ーー負けません」

 

 突如シャロウの周囲に現れたのは、無数の黄金の円状の空間。そこから武器の先端が顔を覗かせている。

 あれは……英雄王ギルガメッシュの『王の財宝』だ。

 撃たせてなるものか。ビーストは全方位に光線を放ち、その全てを撃ち落とす。

 極限まで至った同一人物の戦い。1秒ですら長すぎる。コンマの世界での判断が勝敗を決する。

 ゲーティアの殻を纏う。ノーモーションシフトからの移動エネルギーの全てを込めた拳撃。

 ビーストの前方に天の鎖が何重にも重なって壁を成すが、構うものかと撃ち抜く。ガギィィィン! と鎖はたった一撃で破壊された。その奥には槍を構えるマスター。

 

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』」

 

 渦巻く因果の嵐。

 二撃目を放つためにすでに腰を深く落としていたビーストにはそれを避ける術を持たなかった。

 そもそもこの宝具は避けても意味がない。心臓を貫いたという結果が確定されているのだから。

 ……ならば受け止めるまで。

 マスターを殴るつもりだったその拳を地面に叩きつけた。ずずす、と次々召喚される魔神柱たち。それが何重、千重、万重となってあらゆる物質より硬い守りを築く。

 

「ーーは!」

 

 激突。

 その熱さはマグマを鎮めていた周りの氷を一瞬で溶かし、水になることすら許さずに昇華する。

 邪魔がなくなったマグマは歓喜に燃え、再び噴き出す。

 クーフーリンの槍は容赦なく壁を抉り、残り1メートルを切っている。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 ビーストが腹の底から吠える。

 さらにキアラの廃棄孔から無尽蔵に魔神柱の抽出。膨大な質を塗りたくり、強度が増す。これならばあの槍を防ぐことができ……。

 

「そうしてくれると思っていましたよ、私」

 

 壁の横から白いドレスの裾がひらりと踊り、ビーストの懐に侵入してきた。

 シャロウの片手に持つ剣は、エミヤの愛用していた夫婦剣。その黒い方。首を搔こうと鋭く、軽い音が迫る。

 ビーストはすんでのところでゲーティアの殻を脱ぎ捨て、高低差を利用した回避を成功させる。未だ守りを攻めるゲイ・ボルグも思考に入れなければならない。

 シャロウが着地した瞬間を狙ってその腹を膝をめり込ませる。

 命中。確かな感触。

 シャロウは吹き飛び、近くの岩に背中を激しく打ち付ける。

 このまま接近して、殺す。

 ここまで考えてから、上げていた右脚を下ろそうとする。

 ……そこでビーストは音を聞いた。何かが飛ぶ音だ。そしてそれは近づいてきている。

 すぐにその正体を悟る。シャロウの双剣、そのもう片方だ。思い返せば簡単に気づけたはずだった。姿を見せた瞬間からおかしかったのだ。

 避けようと思えば避けられる。だがその瞬間、ギリギリの攻防を続けていたゲイ・ボルグとの正面衝突に負ける。

 優先順位は、言うまでもなかった。

 だが被害をは抑える。

 アクロバティックな動きで可能な限りの動作で飛んでくる剣の攻撃範囲からできるだけ逃れる。

 そしてついに剣がビーストの腹を深く切り裂いてシャロウの手へと帰っていく。

 ぱっくり開いた傷から内臓をボトボトとこぼれ落ちる。

 

 痛い。

 

「ガあああッッ!!!」

 

 だがまだ終わらない。

 ありったけの力を使ってゲイ・ボルグを叩き落とすのだ。壁が急速に上下左右に展開し、津波が如く呑み込んだ。

 大地を揺るがさんほどの大爆発。

 シャロウの持つ力、次々に英霊たちの力を身に宿すあの力は……いったい何だ。

 あれは絶対に投影魔術ではない。なぜならさっきからビーストを襲う武器の全てが本物だからだ。エミヤの十八番のあれは本物に限りなく似た贋作を作り出すもの。

 明らかに違うのだ。

 爆発を地球の怒り……マグマの起こした熱風が吹き飛ばす。

 膝をつき、ビーストは激しく肩を上下させる。

 バアルの言った通りだ。悪は必ず負ける。

 

「……ははは」

 

 思わず笑ってしまう。

 本当だ。その通りになってしまった!

 ビーストは一本の天まで伸びる光の柱を見た。

 世界がシャロウを祝福している。悪を討てと。そのための力がとある黄金の剣に収束している。

 あの宝具にビーストはこれから打ち負かされるのだ。そして旅が潰える。

 

 潰え……させるわけにはいかない!!!

 

 第二の獣。ティアマトの権能、ケイオスタイド。

 黒の聖杯を中身を垂らす。

 それは一瞬で広がり、大地の生命力を無慈悲に吸い取る。触れたマグマはただの『固体』になる。そしてシャロウの足元まで伸びる。これであいつは死ぬ。死ね。直ちに死ね。

 

「……無意味です。それは霊基を攻撃するもの。しかし私には霊基はありません。虚ろなのです。なので効きません」

 

 絶句。

 

「私は強くありません。だからこれまで戦ってきたサーヴァントたちの力を『借りて』あなたを倒します。光ある限り影は永遠に存在する。それが私です」

 

 昔。

 輝きのようだとか、太陽のようだとか、そんなことをよく言われていたことを思い出した。悪に堕ちてもまだ光るか。その色は何色か。そして永遠に続く影との戦いを終わらせるには、太陽を落とさなければならない。

 つまり、ビーストの負けは将来的に決定づけられているというわけだ。

 人類は不要。その揺るぎない信念の下に行動してきたのに、よもや自分に殺されるとは。これでは自殺に他ならない。なんと無様な最期だろう。

 唇を噛み、血が滴る。

 

 ふひははは

 

「あそこでもし私が死んでいれば、きっと私はあなたと同じになっていたでしょう。だからあなたは何も悪くないのです」

 

「違う、私は望んで悪になったの」

 

「違います」

 

「違う! 私は! 望んだ!! 人類を!! 殺すって!!!」

 

「……私にも、こんな未来があったのですね」

 

 シャロウから哀れみの目で見られ、ビーストは萎縮してしまう。

 

 それでいいのだわたしそうだもっとじかんをかけろはははははははははは

 

 ビーストはただこれから放たれるであろう宝具を力無く見上げた。

 なんと皮肉な名前の宝具か。あんな名前にしたブリテンの王に毒舌を吐く。

 ビーストには、ひとつシャロウに確認したいことがあった。

 

「ねえ私。私が死ねばあなたも死ぬ。そういうこと?」

 

「はい。死ぬ……という表現は違いますが、あなたが死んだ瞬間、私は消えます」

 

 いいことをきいた

 

 剣の輝きが増す。

 シャロウは剣を高く掲げる。

 

「アンリマユも言っていたでしょう? 誰も悪くないのだと。誰もあなたを責める資格はないのだと」

 

 じゅんびおーけーいつでもかもーん

 

「……そう。じゃあ殺せば」

 

 ビーストは立ち上がり、おとなしくシャロウの宝具を受けるようだ。

 シャロウは安堵の息を吐き、真名を解放する。

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!」

 

 純粋な力がビーストに迫る。

 嘘つき。私は強くないだなんて、嘘つき。借りただけの武器をここまで使いこなすことなんてできないはずなのに。

 

 たがいいこれでいいこれでびーすとは『しぬ』ことができる

 

 ……この瞬間を……待っていた!!

 ビーストは死ぬ。皮肉めいた宝具に間違いなく殺される。それを待っていた。

 シャロウが現れた瞬間から用意していた最後の布石。これまであまたの逆転劇の主人公だったビーストだから展開がわかる。それゆえの『これ』だった。

 時空神殿が落ちたことによりできた超巨大クレーター。そこからとある台座が上昇する。

 

「ーーーーーーーーな」

 

 シャロウは気づかなかった。

 ビーストを倒し、これ以上の暴走を防ぐ。その一点に集中していた。だからこそビーストの最後の足掻きに気づけなかった。

 充填率200%以上といったところか。今にも爆発して自我崩壊を起こそうとしている発射台を、ビーストの命をすり減らしながら、繊細な魔力の注入ですんでのところを維持している。

 勝利の宝具は止められない。また人類破滅宝具も止められない。

 どうしようもないのだ。止まれない時間。進む時間。

 

「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!」

 

 わらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえわらえ!!!

 

 シャロウは何も悪くない。結果的にひとつの世界を犠牲にすることになってしまったが、たったひとりで人類悪を倒したのだ。

 誰もシャロウに苦言を呈する権利などないのだ。

 

 ……誰も悪くないさ♪ 誰も『マスター』を責める権利なんてないのさ♪

 

 そう言えば、誰かがそんな言葉を口ずさんでいた。

 残酷なことにエクスカリバーの光線はビーストを跡形もなく消しとばす。

 その前にビーストは一言。

 

「『終わりの時きたれり。其は人類悪を為すもの(テウルデア・ゴエティア)』」

 

 と呟いーー。

 

 ◆

 

 1771年イギリス。

 そのとある場所で、天変地異の如き異変が起こった。深く抉られた地面からマグマが噴き出し、しかしそれと氷の城が対立し合う。そしてその池では飢えたケイオスタイドがドロドロと流れる。

 明らかに激しい戦闘があったことを物語っているが、誰もいない無音はそれを全力で否定する。

 遥か空、夜空にこの世ならざる物体がある。

 正真正銘、あれこそが人類を過去と未来にわたって滅ぼす最悪の宝具。

 主はおらず、だが与えられた命令は確実に実行する。

 人類を滅せ、と。

 無音だ。オワリの前の静けさよ。

 またこれを見届ける者は誰もいない。

 

 ーー叫べ、闇の光帯。




シャドウ+ホロウ=シャロウ

通達ですが、自分、しばらくリアルが忙しくなるのでしばらくはこの『盾の少女の手記』の更新をストップします。とはいっても今月だけで、八月からまた再開しますが笑
ロストベルトNo.2クリア記念とか言って突然更新するかもしれなくもないことはないかもしれませんが。
では首を長くし……げふんげふん、愉悦に浸りながら待っていてください^_^

ネタは普通に募集しているので、ちゃんと反応は返します。活動報告に書くのがあれだったらメッセージで送るのも全然大丈夫です。むしろウェルカムな感じ。

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