盾の少女の手記   作:mn_ver2

9 / 59
今回は官能編とグロ編で逝きます。

分量はそこまで多くないから、早めにグロ編も投稿できそう。


堪忍な?

 魚を捌いたことがある。

 ずっと昔の話だ。カルデアにやってくる前の話。具体的な時期は、記憶が焼け落ちて、もう覚えていない。ただ、その日が初めて包丁を手に持った日だったような気がする。小さな小魚だった。こちらに腹を向け、胸のあたりに刃をすべり込ませてプツリと刺す。あとはススス、と腹に沿ってなぞれば終わりだ。

 指を腹の中に入れ、贓物を掻き出す。色々なものが出てきた。これらはこの小魚を生かしたらしめるもの。やがてほぼ全てを取り出したが、何か小さな粒のようなものが指に触れる。いくら取り出そうとしてもうまくいかず、ついに爪でひっかくようにすることでなんとか腹から姿を現させた。

 しかし。

 

「ーーあ」

 

 それは、爪のせいでつぶれてしまった。

 その小魚は元々死んでいたから特に何も思わなかったが、これは心臓だ、となんとなく理解できた。

 

 ◆

 

「あんま動かへんほうがええで?」

 

 衆合地獄にマスターは隆起した岩に抑えてつけられた。本来なら大けがを負っていたところを彼女が救ってくれた。だがそれでも痛むものは痛むわけで、マスターに抵抗する余裕などあるはずもなかった。

 

「な、何をする気?」

 

 ゴツゴツした岩肌が背中に擦れて痛い。

 腕を動かすことはできるのだが、サーヴァントに上に乗られ、ただの人間という致命的な汚点がそれは無意味だと諭す。ここに味方はひとりとしていない。誰もマスターを守ることができない。最悪の状況だ。

 

「そないに怖がりはって……可愛いなぁ」

 

 妖しく微笑む。

 パチパチと爆ぜるたき火。時を刻むように規則的に落ちる水滴の音。心をも凍えるような冷たい風。それらすべてが敏感に感じられる。なぜならそれだけしかないから。気を紛らわせてくれるものは何もないから。

 そう、彼女は敵なのだ。人を惨殺し、それを悦ぶ鬼なのだ。

 

「ちょっとな? 一か八かで試したいことがあってな?」

 

 衆合地獄がマスターの礼装を紙のようにたやすく破る。

 年頃の少女らしいすべすべな肌。触れると張り付きそうな透き通った健康的な肌に、彼女は頬をほのかに赤く染め、熱い息を吐いた。

 マスターは恥じらうことなく彼女を睨みつける。だが、それは子犬の可愛い威嚇のようなものだ。ライオンには効くはずもない。

 鋭い爪でブラジャーを切る。

 これでマスターは、衆合地獄に跨がられ、上半身が裸の状態を晒すこととなった。長い時間彼女はマスターを見下ろす。ごくりと喉を鳴らす。

 

「思った以上に綺麗な体やなぁ。……つい汚したくなってしまうわ」

 

 手を伸ばし、マスターの腹、子宮の上あたりに指を置く。いやらしく大きく円を描くように何周も何周もなぞる。しだいに聞こえてくる「はッ、あ……」と小さく喘ぐ声が衆合地獄の欲情をそそる。上へ上へと、わざとらしく長い時間をかけて指が北上する。マスターの顔が赤く火照る。しだいにとろんとした表情になり、呂律のまわらない口で彼女の名前を呼ぶ。

 

「酒てん、どうじぃ……」

 

「そんな人の名前は知らへんなぁ」

 

 指が鎖骨あたりに到達した。

 衆合地獄の指は冷たく、マスターの熱い体はその冷感に感覚が集中する。呼吸が乱れる。視界が定まらない。

 彼女の愉しそうに微笑む顔がおぼろげに映る。この鬼は何が目的なのだ。ただマスターを辱め、犯すことだけが目的なわけがないだろう。

 こんなところで、誰にも知られずに死ぬのか。マスターは荒い呼吸を繰り返しながら思った。敵に凌辱されて死ぬだなんて屈辱にもほどがある。ではなく、ある種の諦めだった。死はいつでも覚悟している。もちろん今回も、している。別におかしなことではない。死は突然訪れるのだから。みんなの前で大々的に死ぬだなんてかけらも思っていない。小者だろうと、大物だろうと、死ぬときはあっけなく死ぬのだ。

 遺言は絶対に書かない。そんなもの、あったところで意味はないのだ。

 衆合地獄がマスターの首をひっかいた。

 

「う……あ?」

 

 性的に興奮しているからか、痛みは全く感じない。傷口から血が流れる。

 すると、衆合地獄があいているほうの手でマスターの口をふさいだ。顔を首元に近づけ、じゅるッ! とマスターの血を吸い尽くすように舐めとった。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 それは少なくとも快感とも言えた。

 だらしなく嬌声をあげて激しく身体を震わせ、逃避からか、腰を高く上げて快感の波から逃れようとした。だが力が入らない。なにより衆合地獄が上に乗っかっているから何もできない。

 甘い甘い蜜のような時間がどろりどろりと流れるように続く。

 いったい何分経ったのだろう。いや何時間だ? 思考ができない。何も考えられない。手足の感覚がなくなり、衆合地獄が抱きついている感触、首元に感じる僅かな痛み……を遥かに上回る快感しかわからない。

 これは人間が味わっていいものではない。甘美。実に甘美。しかして死に至る快楽。

 脳が悲鳴をあげている。やめてくれと血の涙を流しながら訴えている。だがマスターにはどうすることもできない。全ては衆合地獄の気分しだい。

 とても惨めである。これぞ被征服感。これまでに知ることのなかった未知の感覚。

 衆合地獄がうふふと笑う。するとマスターも、鼻水が垂れ、涎が垂れた不細工な顔であははと砂漠のようにワラウ。

 

「……あんまりにもあんたはんが可愛いから遊びすぎてしまったわぁ。堪忍な? ……ほないくで?」

 

 にっこりと衆合地獄は微笑みながらそう言った。その表情はどこか慈愛を感じ、マスターは安堵に意識を捨てようとした。

 ……瞬間、衆合地獄が手刀のように手を曲げ、音も無く振り上げた。

 それが何をしているのはマスターには分からなかった。

 だが、すぐに自分の腹部が生暖かいことに気づいた。ずっと冷たかった腹。この暖かいものの正体は何なのだろう、とカスほどの力を振り絞り、マスターは首をあげ、自分の腹部を見下ろした。

 

 赤、だった。

 いや違う。そこにあるはずの空間はなく、赤が広がっている。ヌチョ、ヌチョ、と普通ならば晒されることのないモノが光を浴びてテカテカと光る。

 

「ーーあ、え?」

 

 ぼんやりしていた視界が急にクリアになる。

 わかる。これがなんだか、わかる。だがわかりたくない。頭が事実を受け入れられず、ただ自分の、狂気の外へと出ていくほどの落ち着いた呼吸音が聞こえる。

 でもおかしい。痛くない。不思議だ。ゆっくりと衆合地獄を見る。彼女はマスターに跨ったまま、こちらを見返している。

 数秒は経った。

 なんだ、そこまで痛くなーー。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




普通こんなことされたらまずショック死でしょ笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。