【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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ちょっと短いですがここ以外に切るポイントなかったので投稿します。何気に難産な話でした。この小説は1話平均7000文字をめどに書いていたのですが、書いて消してを繰り返すせいでなかなか埋まらない文字数、何かしらの展開を書き足すべきかと迷う心。本当に難産でした。結果5000文字以下での投稿です。今回は繋ぎ回として諦めました。


第1種目 障害物競走

雄英体育祭本番当日

 

時計を確認した飯田が皆に声をかけた。

 

「皆、準備は出来ているか⁉︎もうすぐ入場だ!!」

 

「コスチューム着たかったなー。」

「公平を期す為着用不可なんだよ。」

 

そんな微妙に緩い緊張の中、緑谷に轟が声をかけていた。

 

「緑谷。」

「轟くん...何?」

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う。」

「へ⁉︎うっうん。」

「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが...お前には勝つぞ。」

 

そんな轟の不敵な宣戦布告に対して、緑谷は言葉を返した。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか...はわかんないけど...そりゃ君の方が実力は上だよ...実力なんて大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても。

でも...!!皆...他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって遅れを取るわけにはいかないんだ。

僕も本気で獲りに行く!」

 

その、緑谷の強い言葉に、何となく乗り気でなかった自分も目が覚めた。ヴィランの襲撃があるかもしれない。だが今の自分たちは"守られる子供"である前に同時に"戦うべき選手"なのだ。

 

気付けのために力を込めて、自分の両頬を叩いた。

パン!と良い音がした。

 

「団扇くん、何事⁉︎」

「緑谷の言葉で俺もやる気が出た。俺も本気でやらないと失礼ってもんだって気付いた。それだけだ。」

 

ただ、力を入れすぎて、頬がちょっぴり赤くなってしまった。本番までに治るだろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

プレゼントマイクの実況が響く。

 

「雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!

ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?」

 

緑谷が人の多さに萎縮してこう零した。

 

「わあああ...人がすんごい...」

「さっきの格好いい啖呵はどうしたお前、緊張しすぎだろいくらなんでも。」

「大人数に見られている中で最大のパフォーマンスを発揮できるか...!これもまたヒーローとしての素養を身に付ける一環なんだな。」

 

壇上に上がったのは18禁ヒーローミッドナイト、1年主審として開幕の宣言を始めた。鞭でピシャンと音を立てながら。

 

「選手宣誓!!選手代表!!1-A、爆豪勝己!!」

 

ポケットに手を入れながら大胆不敵に壇上へと上がり、宣誓を始めた。

 

「せんせー、俺が一位になる。」

 

当然の大ブーイング、それに対して「せいぜい跳ねの良い踏み台になってくれ。」などとさらに煽る爆豪。

 

その様に微妙な違和感を感じた自分は、何か変だなと隣の緑谷に聞こうと思ったら、緑谷も深刻な表情をしていた。

 

「緑谷、爆豪のアレ何か変じゃなかったか?」

「いいや、変じゃない。かっちゃんは多分、自分を追い込むためにあんなパフォーマンスをやったんだ。絶対に勝つために。」

「爆豪も本気の本気って訳か。轟といい爆豪といい油断ならないな本当に。」

 

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう。いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!さて運命の第一種目!今年は...障害物競走(コレ)!!!」

 

その言葉と共に、後ろの閉じられていたゲートが開いた

その時点で、意図を察した。入試のとき同様の位置取り勝負がもう始まってるッ!

 

「緑谷、俺は動く!この競技、最初の位置取りの時点で相当に差がつくやつかもしれん!」

 

そう言葉を残し、ミッドナイトの説明から目を背け、スタート地点の最前列へ向けてこっそりと走り出した。

 

 

「こんなとこでも隣とか、本当に縁があるな轟。」

「うるせえ。」

「...目を見ちゃくれないか、やっぱ流石だわ、お前。」

 

ゲート上の3つのランプが消え始めた。

 

隣にいるのは轟、氷結を喰らったら即死だ。対策として、写輪眼を発動させておく。これなら体内エネルギーの変遷から氷結の予兆を見ることができる。

 

最後のランプは消えた瞬間、ミッドナイトの声が響いた

 

「スターート!!」

 

雄英体育祭、その多くの参加者の運命を決める1種目目の開始である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

スタートダッシュは同時、だが常に轟を目の端で捉えておくためスピードは轟に合わせて少し左後ろを走る。

 

ゲートを抜けた辺りで、轟の右側に身体エネルギーが集中していくのが見えた。それが外に発せられる瞬間に左側に強くステップ、轟の大氷結を回避する。(おまえ)ならこの辺りで仕掛けると信じてたッ!

 

回避した事で轟と少し距離が開いてしまった。被害状況を見ようと後ろを振り返ると、A組の面々は問題なく回避していたが他の普通科などの連中は氷結に引っかかって行動不能になっていた。

その中で、宣戦布告しに来てた少年が見えた。何人かの生徒に持ち上げられている状態の。

下の生徒たちは身体エネルギーが乱れている、洗脳にかかっている事から考えるにあの少年は洗脳系の個性だろう。警戒すべきだと覚えておく。

 

前を振り返り走り続ける。目の前にはロボの大群が見えてきた。

 

実況のプレゼントマイクの声が聞こえる。

 

「さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め...第一関門、ロボ・インフェルノ!!」

 

その余りにもな数に、皆は足を止めた。

自分に仮想ヴィランの相手は不利だ。0pをやり過ごす方法は自分には無い。順位を下げて周りが0pをどかしてくれるのを待とう。...とは思わない。0pヴィランは鈍重だ。自分のスピードなら道を選べば行けると信じる。

ルートは右側大回りに行く。一度に二体以上の0pヴィランに挟まれないように気をつけて走る。

 

中央では、轟により0pヴィランが氷漬けとなっていた。しかも自分が通ったあとに倒れるように0pを使うとは、本当に切れ者だ。

 

突出している自分にターゲットを決めたのか、1pヴィランが迫ってきた。

体育祭に向けて用意していたちょっとした小細工の見せ所だ。

 

1pの攻撃をしっかり回避、左足を踏み込んで軸足とし、カウンターの要領で右足による蹴りを叩き込む。

...破壊成功。

足にダメージは特になし。

多機能軽量安全靴さまさまである。

相澤先生に聞いたところ、靴に特に指定はなかったので問題はないだろう。来年から禁止になるかも知れないが、今年は有効だ。

 

進行方向0pからの攻撃が来る。当たれば大ダメージ確定だが、思った以上に0pの動きが遅い。余裕を持って外に広がり攻撃を回避、こちらから0pへの反撃手段はないので逃げの一択だ。全速のスピードで攻撃範囲から退避する。

これで、第一関門ロボ・インフェルノを突破。

 

0pヴィランの上を抜けた爆豪たちに順位を抜かされたが、上位勢をキープしたまま第一関門突破だ。

 

...自分が関門を突破した瞬間に後ろから聞こえた砲撃音から考えるに、待ってても大して順位変わらなかったんじゃないかとの考えは一先ず置いておこう。

 

第二関門に到着、プレゼントマイクの実況が再び聞こえる。

 

「オイオイ、第一関門チョロイってよ!!んじゃ第二はどうさ⁉︎落ちればアウト、それが嫌なら這いずりな!!

ザ・フォーール!!!」

 

ロープはそう太くない、スピードは出ないが上を走るよりぶら下がって進むのがベターだろう。安全に、かつ急いで行こう。

 

ロープの上を渡れる個性の連中に抜かされながらもそれでもまだいい順位、だいたい10位くらいだろうか。

 

第二関門の3/4を超えた辺りで再びプレゼントマイクの実況が聞こえてきた。

 

「先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずにつき進め!!

そして早くも最終関門!!かくしてその実態はー...一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!

地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!

ちなみに地雷!威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから失禁必死だぜ!」

 

第二関門を抜けた自分の目に付いたのは、先頭で足を引っ張り合う轟と爆豪の姿。その他には地雷を無視してスピードで突っ走る飯田、頭からのツルで地雷を探知する少女、そのあたりの個性がこの関門向けの連中だろう。

 

再びプレゼントマイクの声が聞こえる。

 

「ここで先頭がかわったー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!後続もスパートかけてきた!!!だが、引っ張り合いながらも...先頭2人がリードかあ!!!?」

 

...作戦は決まった。飯田は地雷を無視しているが故に爆発させまくっている。つまり、飯田の後ろをついていけば比較的地雷の少ないルートを走ることができる。

そう考えたのは自分だけではなく、尾白もだった。

 

「どうする?道の取り合いでもするか?」

「...いいや団扇、お前が先に行け、お前の方が足は速い。」

「んで、より安全な道をお前が行く訳か...乗ったぜ尾白、先行かせてもらう!」

「ああ、頼むぞ地雷探査役!」

 

地雷が残ってないか確認しつつ走る。後ろに付いてくる尾白からの妨害を警戒しつつ。

 

そうして、その時はやってきた。

 

背後からの大爆発。

その衝撃を利用して飛翔する者。

足の引っ張り合いをしていた2人を一気に抜き去り、その先へと飛び去るその姿。

緑谷出久が一瞬のうちに過ぎて行った。

 

正直その無茶苦茶に、内心笑いが止まらなかった。

 

「常々思っていたが、やっぱクレイジーだわあいつ。」

「喋りながらもこのスピードを落とさないってお前も何かと凄いと思うぞ。」

 

プレゼントマイクの実況が聞こえてくる。

 

「さァさァ序盤の展開から誰が予想できた⁉︎今一番にスタジアムへ還ってきたその男ー...緑谷出久の存在を!!」

 

「あいつ一位取りやがった...負けてられないな!さぁ、俺たちもスパートといきますか!」

「ああ、そうだな!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結果は11位、トップ10入りは不可能だったがまぁ個性の使えなかった身としては上々だろう。

 

第1種目も終わり、今回のMVP間違いなしである緑谷の元へ飯田、麗日と共に話を聞きに行った。

 

 

「デクくん...!すごいねぇ!」

「緑谷、お前頭おかしいだろ!走りながら腹抱えて笑いそうになったぞお前!」

「この個性で遅れをとるとは...やはりまだまだだ僕...俺は...!」

「一位すごいね!悔しいよちくしょー!」

「いやあ...てか団扇くんさりげなく頭おかしいとか酷くない?」

「あんなクレイジーやらかしといて言われない訳ないだろ。」

 

そうして人が集まっていく中、門の辺りで青山とメカニカルな女子が揉めているのが見えた。

 

「ん、なんか揉めてるな。」

「なんだろ、青山くんとサポート科の女の人だねぇ。」

 

審議が終わり壇上へと上がったミッドナイトの声がする。

 

「えー、第1種目の突破者は本来42名の筈でしたが1000分の1秒単位でも差が見られなかった為、42位を2名とし、予選突破者を43名とします!」

 

その言葉に驚いて思わず声を出してしまった。

 

「...青山だって天下の雄英ヒーロー科だ、そんなに遅い訳がない。それに追いすがるとはあのサポート科の女子なかなか凄いな。」

「せやね、第二関門もサポートアイテムでギュインって行ってて凄かったよあの子。」

 

ミッドナイトが続けて言う

 

「さて!上位42名が予選通過者ですが、残念ながら落ちちゃった人も安心なさい!まだ見せ場は用意されているわ!!

そして次からいよいよ本戦よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバりなさい!!!

さーて第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜...何かしら!!?言ってるそばから、コレよ!!!!」

 

そう言って、スクリーンに映し出された"騎馬戦"の文字をバーンと示した。

 

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが...先程の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられること!」

 

「入試みたいなポイント稼ぎ方式か、わかりやすいぜ。」

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!

ええそうよ!!そして与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5ポイント、41位が10ポイント...といった具合よ。そして...1位に与えられるポイントは1000万!!!!

上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!!!」

 

その言葉に、緑谷は目を見開いたまま固まった。

全員の視線が緑谷に集中する様は、ちょっとしたホラーであった。

 

波乱の第二種目、その始まりであった。

 

 

 

 

 

 




青山くんはギリギリセーフの男のイメージ。そのイメージがついたのは多分体育祭の順位から。
というか原作発目さんヒーロー科で訓練受けてる青山抜かすとか開発者なのに何気に凄まじい結果を残してますよねー。

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