【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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不定期更新とか言いながら連日投稿している作者がいるらしい。こんなに更新スピードが速いのは職場体験編のプロットが全然進まない腹いせです。エンデヴァー事務所に行かせたいけど2人の指名って1年に2人とは誰も言ってないから大手事務所なら3年に唾つけるよなぁという思いが止まらないのです。
公安の犬やってるという設定のオリ事務所に行かせるか未だに悩んでるのでそもそもプロットの初期段階から先に進めないのです。
なので職場体験編で今決まったのヒーローネームくらいしかないのです。


第2種目 騎馬戦

制限時間は15分、その間に2人から4人のチームを作らなくてはならない。

騎馬戦自体は個性発動アリの残虐ファイト。騎馬を崩してもアウトにはならず、どんなことをしても最後に首から上にポイントのハチマキを巻いている者が勝者だ。ただ、一応騎馬戦なので悪質な騎馬狙いの攻撃は一発退場らしい。

 

そんなルールを聞いた緑谷は、自分、麗日、飯田のいつものメンツを集めこう作戦を切り出した。

 

「飯田くんを前騎馬に僕、麗日さんで馬を作る!そんで麗日さんの個性で僕と飯田くん、団扇くんを軽くすれば機動性は抜群!騎手はフィジカルの強い団扇くんで行く、団扇くん相手だと敵は目を合わせられないから接近された時の防御力も抜群!逃げ切りを可能とする策はこんくらい、どう?」

 

少し悩んだ後、飯田は言った

 

「...さすがだ緑谷くん。だがすまない、断る。」

 

飯田は罪悪感からか、顔に手を当てた

 

「入試の時から...君には負けてばかり。素晴らしい友人だが、だからこそ君についていくだけでは未熟者のままだ。」

 

踵を返し、歩きながら飯田は言った

 

「君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない。俺は君に挑戦する!」

 

そう言って、飯田は轟のチームへと入っていった。

 

その行動に自分が考えるのを辞めていたことを気付かされた。

勝つためには、勝ち馬に乗るためには何が必要なのか。

そう考えた時、1人の少年が頭に浮かんだ。

自分の弱点である目を逸らされたらただの案山子であるという点、それを補うことのできるかもしれない個性を持つ少年が。

 

「緑谷、要の飯田が居なくなった今お前の策はパーだ。だから、俺は別のチームに行く。仲良い奴で固めたいってのはわからないでもないが、それだけじゃ視野を狭めるだけだ。...俺は勝ち抜けたい。お前にも勝ち抜けててほしい。だから、俺たちは今一緒にいては駄目だ。

...俺は、俺の勝つ為の策で戦う。」

「団扇くん...そうだね、友達ごっこじゃいられない。飯田くんが駄目なら、他の策を考えるべき。その中で、フィジカルの強い以外に移動系、防御系個性を持たない団扇くんがチームにいると策の幅が狭まる。そういうことだね。」

「そういうことだ。ちと悔しいがな。

麗日、お前の個性は緑谷の逃げ切り作戦に向いてる機動性を上げられる個性だ。お前が緑谷に付くのは間違っていない。緑谷のこと、頼むぜ。」

 

そう言い残し、緑谷の元から去って行く。

目指す先はあの少年の元だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

前騎馬に俺、後ろ馬に尾白とB組の庄田二連撃とかいう奴。

そして騎手にはA組に宣戦布告しに来た普通科の少年、心操人使。

 

「さて、気分はどうだ心操。正直なところ俺は今でも後ろ騎馬の2人を起こした方が動けるとの考えを捨ててないぞ。」

「正直なところを言うなら俺はお前だって信用できねぇよ。でも、俺の個性が効かないお前が敵に回るよりマシだ。あと、後ろ2人はそのままで行く。造反されたら終わるのは俺たちだ。」

「だからこそ、準備時間の間にしっかり説得すべきだったと思うんだがな。」

「15分程度で人を信用できるかよ。」

「十分できると思うんだけどなぁ...見解の相違って奴だな。」

「お前...俺たちみたいな偏見持たれがちな個性の癖になんでそんな簡単に人を信じられるんだよ。」

「育ちが良いからじゃないか?知らんけど。」

「...無駄口を叩き過ぎたな、始まるぞ。」

「それじゃ、頑張りますか!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

プレゼントマイクの実況が聞こえる。

 

「よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!

行くぜ、残虐バトルロイヤルカウントダウン!!

3!!!

2!!

1...!

START!」

 

「作戦通り、残り1分までは待ちだ。ポイントの散り具合を見極めるぞ。」

「了解だ。でも、下手な演技で作戦バレたりすんなよ?」

「...とりあえずエリア端行って全体を見るぞ。」

「あ、演技に自信ありって訳じゃないのか。」

 

道中B組の奴にハチマキを奪われるも計算のうち。エリア端へとたどり着いた。

 

「障子と青山の騎馬、あれ青山何もしてないけど良いのか?」

「反則とられていないんだから良いんじゃないか?どいつの事言ってるのか分からないが。」

 

プレゼントマイクの実況が聞こえる。

「さぁ残り時間半分切ったぞ!!B組隆盛の中、1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!!!」

 

「さて、そろそろ轟が仕掛けてくる頃だ。あいつなら緑谷と1対1のフィールドを氷で作ることができる。巻き込まれないように気をつけておくぞ。」

 

「...ポイントの散り具合はわかった。鉄哲チームを狙うぞ。」

「B組の銀髪の奴だな、3位狙いか...了解だ。まずはお前の射程距離に近づくぞ。」

「頼む。」

 

 

そんな言葉を交わしている中、客席のどこかから懐かしい『頑張れ』の声が聞こえた気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

残り1分

 

「おい、お前らちょっと良いか?」

「あん?...」

前騎馬の自分を指差して心操は言った。

「コイツの目を見ろ。」

「...4人全員完全停止だ。ついでに周囲に敵影無し、勝ったな。」

 

ニヤリと笑いながら心操は答えた。

 

「ああ、そうだな。」

 

心操は残り時間10秒まで待ってから鉄哲チームのハチマキを奪った。これで完全勝利だ。

 

鉄哲チームからハチマキを取るとき、後ろ騎馬の尾白が騎馬と衝突した。

その瞬間、尾白の意識は戻った。

 

「?団扇?コレどうなってるんだ?」

「尾白が目を醒ました?まさかさっきの衝突でか⁉︎...あのレベルの衝撃で目が醒めるのは考えものだな、心操。」

「...そうだな。」

「話を聞いてくれ団扇、どうなってるんだ今⁉︎...まさかお前の催眠で⁉︎」

 

プレゼントマイクの声が響く。

 

「TIME UP!」

 

「状況は、ちょうど今、俺たちの決勝進出が決まったところだな。3位で突破だよ。あと、洗脳したのは俺じゃない。上にいる若干人間不信な普通科の心操だ。というか俺の催眠ならあんな程度の衝撃で解けるものかよ。」

「そ、そうか、ってそうじゃない!お前ら洗脳なんて卑怯な真似をして、恥ずかしくないのか⁉︎」

 

その言葉に痛みを感じなかった訳ではない。だが、言うべきことは決まっている。

 

「勝つためにやった判断だ。恥ずべき事はしていない。まぁ、若干悪いとは思ってるがな。」

「お前...もういい、競技は終わった。俺は控え室に戻るよ。...なぁ団扇、お前らの作戦、俺である必要はあったか?」

「...いや、正直心操と俺がいれば成り立った作戦だ。尾白と庄田が必要だったとは言い難いな。」

 

「そうか...正直に言ってくれてありがとう。」

 

尾白は内心を隠して控え室へと戻っていった。何かを決意した顔で。

 

「どうしたんだ、あいつ。」

「尾白は誠実な奴だからな、自分の力で勝利を掴みたかったんだろうさ。俺たちの卑怯な勝ち方に文句があったんだろ...多分だが、自分みたいな奴が出ないようにお前の個性の情報A組にばら撒くぞ、あいつ。」

「...そうか、注意しておく。」

「だから言ったんだよ俺は、余計な洗脳は自分の首を絞めるだけだって。」

「...二つ聞きたい事がある。」

「なんだ?」

「一つ目、どうしてお前には俺の個性が効かなかったんだ?お前の目は幻術を見抜くって言っても、それはお前自身を保護するってことにはならないだろ。」

「ああ、それは単純だよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

チーム決めの15分間、緑谷たちから離れた自分はあの普通科の少年へと近づいていく。

念のため、写輪眼を発動しながら。

 

近づいている自分を認識したのか、少年は自分へと声をかけてきた。

...身体エネルギーを喉へと集中させ、声により俺に向けて発しながら。

向こうがそう出るなら自分も個性を躊躇わない。効果があるか分からないが、耳を塞ぎながら目を少年と合わせ、催眠を仕掛ける。

内容は二つ、『自分を洗脳するな』と『個性の情報を吐け』

そうして、その少年が吐いたのは、自分の声かけへの返事によって相手を洗脳する個性だと言う事だ。

写輪眼により催眠をかけられたことを忘れさせ、自分はこう言った。

 

「俺の写輪眼は幻術を見抜く。お前の個性は俺に通用しない。」

「な⁉︎俺は確かに個性を使ったぞ⁉︎」

「...お前の個性は声による洗脳であっているな?」

「...ああ、そうだよ。クソ、洗脳が効かない奴がいるなんて聞いてないッ!」

「その洗脳が効かない俺からお前への取引だ。チームを組まないか?」

「...は?」

「お前のメリットは単純、個性の効かない唯一の存在である俺を敵に回さずに済む。俺のメリットも単純、お前の個性でならこの騎馬戦を余裕で勝ち上がれる。どうだ?...ちなみに断った場合お前の個性の情報を周囲のチームにばら撒く。」

「実質脅迫じゃねぇか...わかった、受ける。だがその代わり、お前の個性の詳細を教えろ。」

「俺の写輪眼は目を合わせる事による催眠と身体エネルギーを見る目の複合個性だ。お前の相互互換だな。俺は目で、お前は声で洗脳を仕掛けられる。洗脳の深度はお前のものより深い自信はあるぜ。」

「俺の個性の天敵である答えない奴への対策にもなる。...改めて受けるぞこの話、お前とならこの騎馬戦、勝てる!」

 

 

「んで、残りの2人はここで棒立ちしてる奴らで良いのか?作戦は何か考えてるだろ、お前。」

「残り1分でポイントを総取りする。俺の個性を使ってな。だから、残り2人は適当に選んである。」

「それが尾白とB組の庄田か...なぁ、こいつらの洗脳解かないか?洗脳による木偶の坊にするより、自意識を持って勝ちにいかせる方が強いと思うぞ?それに、不用意な洗脳は自分の首を絞めるだけだ。」

「それは、コイツらが俺たちに協力してくれるって言う前提があればこそだ。初対面でしかも普通科の奴の話だ、乗ると思うか?俺は思わない。」

「人間不信だなぁ、まぁ気持ちはわかるが。わかった、その2人はそのままで行こう。」

 

そんな会話が準備時間にあった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「答えは単純、あらかじめお前を洗脳していたのさ、『俺を洗脳するな』ってな。だから写輪眼は幻術を見抜くってのは半分ハッタリだよ。」

「お前...俺なんかよりよっぽど悪どい奴だなお前。」

「初手洗脳とか鬼みたいな戦法とるお前も大概だと思うぞ。...もう一つは?」

「お前、ヒーロー科一般受験だよな。」

「ああ、そうだよ。」

「お前の個性は強い、それは一緒に戦った俺だからわかる。けど、あの入試のロボ相手だとお前の個性は無力な筈だ。一体どうやって入試を突破したんだ?」

 

「鍛えた体と、武器を使った。だいたい個性なんてただの力だ。それ一本で絞ってるとどっかでしっぺ返しがくるのは自明なんだよ。だから想定すべきなんだ、俺らみたいな一発芸を個性に持つなら、個性だけじゃない戦い方を。」

「...そうか、あの日の俺に足りなかったのは、個性を使う努力じゃなくて、個性に呑まれない為の努力だったのかもしれないな。」

「お前、あの日の宣戦布告から考えるに、今はヒーロー科編入の為に頑張ってるんだろ?なら、今は過去を見るより次のトーナメントでどうするかを考えるべきだぜ?心操、お前担いだからわかるけど筋肉そんなないだろ。そんなガタイじゃ初見殺し破られたら終わりだぜ?」

「そうだな...お前みたいに個性の効かない奴もいるかもしれないし、何か策でも考えてみるよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

競技を終え、食堂へと向かう自分たち。そんな自分たちの目の前に道に迷ってしまったのかオロオロしている8歳くらいの少年が見えた。

 

「ム、迷子だろうか。」

「ちょっと行ってくるわ、食堂の席お願いして良いか?」

「構わないとも!それにしても団扇くん、君は何というか、ヒーロー志望って感じだな!」

「お人好しで構わない、言われ慣れてる。」

 

「大丈夫か?お母さん達と逸れたのか?...俺の目を見てくれ。」

写輪眼発動、軽い催眠状態にして少年を落ち着かせた。

「君の名前は?」

「うずまきヒカル」

「両親の名前は?」

「うずまきメグルとうずまき善子」

 

自分と同じ名前の父親と、実の母を思い出させる母の名前、何か奇縁じみたものを感じた。

 

「それだけ言えれば大丈夫だな、迷子センターに行くぞ、ヒカル。」

 

自分は少年を連れて、迷子センターへと歩き始めた。

 

「ヒカル、お父さんは、どんな人なんだ?」

「ヒーローをやってる、スクリューって名前で。格好良くはないけど。」

「そこは格好いいって言ってやれよ。お母さんの方はどうなんだ?」

「...お母さんは本当のお母さんじゃないんだ。本当のお母さんは僕を産んだ時に死んじゃったんだって。」

「そこはどうでも良い事だ。君を愛してくれるかどうかに血の繋がりは関係無い。実際俺は親父と血は繋がって無いしな。」

「お兄ちゃんも、フクザツな家庭で生まれたの?」

「ま、そんな所だよ。それで、今のお母さんはどんな人なんだ?」

「綺麗な人、でもご飯をちゃんと3食食べること!とか家事はちゃんとすること!とかちゃんとしてる。」

「そうか、良い人なんだな、今のお母さんは。」

「うん、でも僕お兄ちゃんになるみたいなんだ。それをお父さんもお母さんも喜んでいて、でも自分が要らない子になったみたいになって。」

「そんなモヤモヤを振り切るために歩いてたら、ご両親と逸れて迷子になった訳か。」

「ねぇ、お兄ちゃんはお父さんと血が繋がって無いんだよね。不安じゃなかったの?」

「...その人が誰かを愛するかどうかは、血の繋がりによるものじゃない、心の繋がりによるものだ。俺はそう信じている。...ちょっと難しかったか?」

「ううん、ちょっとわかる。お母さんが僕を愛してくれるのは、僕との心の繋がりのおかげって事で良いんだよね。」

「そういう事だ。賢いな、ヒカルは。だから、お前に兄弟ができたとしても、お前の両親がお前を愛さなくなるなんて事は無いよ。」

「どうして言い切れるの?」

「俺と親父が血が繋がってなくても家族になれたからだ。心が繋がっていれば人は誰とでも家族になれる。そういう事だよ。だからお前は両親の事も新しく生まれる兄弟の事も愛してやれ。それで、お前の家族はちゃんと繋がるはずだよ。」

「...うん、頑張ってみる。」

「よし、良い子だ!」

そうして、自分たちは迷子センターへとたどり着いた。そこでは、ヒーロースーツを着た中年の男性と、...とても見覚えのある女性の後ろ姿があった。

 

あの時と比べて少し太っただろうか、そんなことを考えながら女性を見た。

 

もう2度と会うことは無いと思っていた彼女、旧姓団扇善子は、自分の母はそこにいた。お腹に新しい命を宿しながら。

 

 




毎回7000字のペースをどうやって保っていたのか自分でも不思議です。そんな今回は約6000字、でもあと1000字を書き足すよりかはこのまま投稿する方が区切りが良いのでこんな形に。
平均文字数が...短くなってる!(クウガ感)

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