書いてる途中に起きた閃きを優先してしまうのは自分の悪い癖ですが、直る気がありません。直そうと思ってしっかりプロット書いてるつもりなんですけどねー。
そんな訳で、一応守られてたプロットからガバガバプロットモードへと移行しました。展開に違和感があったらそのせいです。
こんな事ばっかしてるから低評価爆撃くらうハメになるんですよ...
母の出現に驚いて、咄嗟にポケットから手鏡を取りだし、自分に平常心を保てと催眠をかけた。自分が彼女の息子だと決してバレてはいけない。
こちらを見かけるなり、ヒーロースーツの男性はヒカルに抱きついてきた。
「ヒカル、心配したんだぞ!」
「ごめん、お父さん。でも、このお兄ちゃんが助けてくれたんだ!...どうしたのお兄ちゃん、顔真っ青だよ?」
「大丈夫、なんでもない、ちょっと疲れただけだよ。」
こちらは良く知っている、けれど向こうは何も知らない、そんな彼女は自分の困惑に構わず声をかけてきた。
「そうですか...わざわざ息子を連れて着てくださってありがとうございます。1年A組の団扇君。」
「1年の、見てくれていたんですか。」
「ええ、何故だか君の事が気になってしまって、騎馬戦の時なんか年甲斐にも無く頑張れ!なんて叫んじゃって。」
「ハハハ、多分その声聞こえてました。レディの声に応えるのはヒーローの条件ですからね。」
「あらお上手こんなおばさんを捕まえてレディなんて...でも、本当に顔色が悪いわよ?控え室に戻った方が良いんじゃない?」
困惑を隠し、それでもこの少年の未来のためにこの質問を投げかけた。
「..,ヒカル君から、あなたの中に子供がいると聞きました。ヒカルくんが実の子でもない事も。それでもあなたは、これからもヒカル君をちゃんと愛せますか?家族として。」
「...愛せるわ。だって家族だもの。血の繋がりなんて些細な事よ。」
「それを聞いて安心しました。」
自分を捨てた母親が、自分を捨てさせた母親が、新しい地で新しい幸せを掴んでいる。
複雑ながら、それでも思う。あのときの選択はきっと正しくはなかったけれど、間違いでもなかったのだと。
「それでは、うずまきさん方、あなた方に幸せな未来があることを祈っています!」
そう言い残し、自分はこの場から走り去っていった。
母だった人は、その言葉に何かを感じたようで、咄嗟に叫んだ
「メグル!」
その言葉に、自分は写輪眼を発動しながら、振り返り小声でこう答えた。
「幸せでいてくれてありがとう、母さん。」
その瞳に車輪の回る赤い眼を見せて、団扇巡が自分の子だと忘れるように洗脳をかけた。
何度もかけた洗脳だから、簡単だった。
その事が、今は少し苦しい。
「どうして俺の名前を呼んだんだ?善子。」
「え、なんでだったかしら...忘れちゃったわ!」
「善子って意外とそういうところ適当だよな。」
「あら、あそこに落ちている携帯ってもしかして団扇くんのじゃないかしら。」
「そうみたいだな、俺が届けに行くよ。」
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走った。
走った。
走った。
正直、自己催眠がなかったらボロを出していた自信はある。
でも、しっかり乗り切れた。
自分が壊した母は、幸せを掴んだ。
それでハッピーエンドではないか。
それなのに、一体何が自分をこうさせるのかわからない。
だが、走った。
とにかく走った。
遮二無二走った。
その途中で、悲鳴のような声が聞こえた気がした。
踵を返す、行き先は悲鳴のした方だ。自分の精神状態が良く分からないのは今は置いておいて、ひとまず助けを求める人の元へ向かうべきだと理性が言う。
本能が何を言っているのか良く分からない今、従うべきは理性の方だろう。
この胸を焦がす思いがどこから来ているのかわからない。
そんな思いを振り切りたくて走った。
...人助けをすれば、いつもの自分に戻れる気がして。
途中、警備のヒーローに呼び止められた。
「君、ここで止まるんだ!この先を見ちゃいけない!」
「悲鳴が聞こえました!何かあったなら助けに行かないと!」
「ヴィランが出たんだ!でもこの先にいるのはプロヒーローとヴィランだけ、君が行く必要は無い!俺と一緒に逃げるんだ!」
「悲鳴が、助けてって声が聞こえたんです!」
「それを子供の君がどうこうする必要なんてどこにもない!いいから俺と逃げるぞ!」
引き止める警備のヒーローを振り切って奥を見た。
そこには、暴虐があった。
人気の少ないスタジアム裏の雑木林。
黒い巨体に剥き出しの脳みそ。
怪人脳無がそこにいた。
倒れている6人のヒーロー達。
その内の1人を踏みつけているのは顔面を手で覆った男、死柄木弔だ。
「ああ、またこのガキだ。脳無、目を閉じろ。」
そのあんまりにも唐突な展開に、自分は軽くパニックに陥っていた。
「え、は、え、死柄木?何でお前がこんな所にいる⁉︎一体何の目的でこの警備の厳重な体育祭にやってきたッ!」
死柄木は悪意を煮詰めたような顔で答えて来た。
「理由?簡単だよ、お前たちへの嫌がらせ。」
「は?」
「だってせっかく作った対平和の象徴の怪人脳無だ、ヒーローを誰も殺せないまま腐らせるってのも勿体ないだろ?そんな訳でだから10人くらいは殺しておいて雄英の信頼を地に落とそうって算段さ。だってよ、5倍の警備でも被害者が出たなんて事になったらさぞ面白い事になるだろ?」
「そんな理由で...ふざけてる。」
死柄木は懐からゴーグルのようなものを取り出して脳無の目へと装着した。
「さぁ目を開けろ脳無、この前のお返しの始まりだ!」
写輪眼を発動し脳無と目を合わせる。
「そんなゴーグル程度で...ッ!鏡だと⁉︎」
「そうさ、お前対策のマジックミラーゴーグルだ。この狭い学校じゃお前と会う可能性はあったからな、今度は瞬殺できないぜ?さぁ行け脳無!あのガキを殺せ!」
警備のヒーローが増強型と思われる個性を発動しながら言う
「俺がいる事を忘れるな!」
「何言ってんですか!逃げてたんでしょうに!」
「子供を置いて逃げた奴が、二度とヒーローを名乗れるか!うおおおおおお!」
「じゃあお前から死ね、筋肉バカ。」
脳無のスピードに、警備のヒーローは反応できなかった。一撃で後ろの林に叩きつけられて気を失ったようだ。生体エネルギーから、生きているのはわかる。
「...相変わらず頭おかしいスピードしてやがる...でもおかしいな、そいつのパワーなら一撃で頭を粉砕できる筈だ、なのに手加減して殺してない。腹いせに10人くらい殺すんじゃなかったのか?」
死柄木は相変わらず悪意しかない言葉を紡ぐ。
「だって俺たちの仕業だって言いふらすキャラが必要だろ?...そうだいい事思いついた、目のガキ、お前に選ばせてやるよ。」
「何をだ?」
「生かしておく1人をだよ。ほら、ここに倒れている7人のヒーロー達の中から1人だけ生かしてやるって言ってるんだよ。それもお前が選んだ1人をな。お前が選ばなかったら全員殺す、どうだ?」
その邪悪な提案に、答える言葉は一つだ。
「ヒーローならこういう時、全員助けるって言うのが最近のトレンドらしいぜ?」
そうして、腰を落とし戦闘体勢をとる。戦闘目的は応援のヒーローが来るまで倒れているヒーロー達を殺させないように俺が囮になる事だ。
「そうか、ならまずはお前が死ね。行け、脳無!」
高速でやってくる黒い巨体のヴィラン。右の大振りのパンチだ。写輪眼のおかげで見えはする。最小の動きで、回避はできた。
まあ、パンチによる風圧で吹っ飛ばされてしまう訳だが。
「躱した?脳無のスピードだぞ。一体どんな反射神経してやがる。」
しっかり受け身をとり衝撃を逃す。距離が空いた。脳無は追撃してこない、おそらく死柄木からの指示待ちだろう。この隙に連絡をと思ったら携帯が無かった、きっと何処かで落としたのだろう。最悪だ。
連絡は不可能、あそこで倒れたプロヒーローが連絡してくれている事を祈って時間稼ぎがこの場で唯一出来ることだ。脳無は自分より圧倒的に速い、背を向ければ死ぬのは自分だ。
そうして、先の見えない地獄の鬼ごっこが始まった。
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躱す、吹っ飛ばされる、躱す、吹っ飛ばされる、躱す、吹っ飛ばされる。
何度目の交錯だろうか、正直覚えていない。
ただ一つ分かるのは、今自分が生きているのは死柄木の気まぐれのおかげだということ。脳無のスピードなら吹っ飛ばされている自分に追撃を叩き込むなんて簡単なことだ。それをしてこないのは、遊んでいるからだ。一体何度避けられるかのゲームなのだろう、向こうにしてみれば。
実際自分はボロボロだった、吹き飛ばされたダメージは少しづつだが、着実に自分へと加わっていった。
それでも、今は悩みとか迷いとかを考えないで済むこの命懸けの瞬間が少しだけありがたかった。
「はぁ、もう飽きた。脳無、殴りまくって終わりにしよう。」
その言葉を聞いた瞬間、自分の命が終わる音が聞こえた気がした。
超スピードの脳無のパンチ。
一発目をギリギリで躱す、風圧で体勢が崩れる
二発目をガードする、メキャリとの音と共に右腕が使い物にならなくなった。
吹っ飛ばされた自分への追撃、脳無の三発めパンチは打ち下ろしだった。意味があるかは分からないが、空中でも左腕でガードした。左腕もバキバキに壊れた。
衝撃は消えないため、当然背中から地面へと叩きつけられた。口から血を吐くなんて始めての経験だった。下がコンクリートだったら流石に死んでいただろう。
だが、まだ生きている。
死柄木は相変わらずの悪意で、こんな事をのたまった。
「すごいなぁこのガキ、まだ生きてるよ。プロヒーローよりよっぽど根性あるんじゃないか?さて脳無、殺す前にせっかくだ、こいつの両目を抉り取ろう。先生への土産になるかも知らない。」
そうして、倒れ伏した自分の頭を脳無は鷲掴みにして、もう片方の手で目を抉り取ろうとしてきた。
もう終わりかと思ったその時、螺旋のような力に吹き飛ばされて自分と脳無は離された。
...天啓とはこの瞬間のことを言うんだろう、後から考えるとそう思った。力の正体もわからぬまま自分はその勢いに乗り右足で脳無の顔面を、その顔についてるゴーグルを蹴り飛ばした。
そうして、回転する中脳無の目と自分の写輪眼を合わせ、『動くな』の命令を刷り込んだ。
「大丈夫かい団扇くん!安心しろ、この螺旋ヒーロースクリューがやってきたからにはもう君に指一本触れさせない!」
両腕と背中の痛みで正直どうにかなりそうだったが言うべき事は言わねば。
「うずまきさん、黒いのは止めました。あの手の男の他に、どこかに転送系個性の霧の男がいます。」
「団扇くん!そんなダメージで喋ってはいけない!あとは大人に任せるんだ!」
痛みを押して立ち上がる。あとは死柄木の目を見れば終わりだ。
そんな死柄木は自分と目を合わせないようにしながら飽きたような声で自分たちに言った。
「はぁ、せっかく脳無で暴れられると思ったのに結局またこのガキかよ、まったくついてない。
まぁ、でも次は殺すって言ったし、ちゃんと言った事は守らないとな。脳無、
その瞬間、脳無の身体エネルギーが自分のコントロールから外れたのが見えた。
「な⁉︎トリガーワードによる再洗脳⁉︎そんな事が可能なのか⁉︎」
「可能だよ、だって出来てるんだから。洗脳対策その2さ。さぁ行け脳無、あの死にかけの目のガキは俺が殺す、お前はあのぐるぐる野郎を殺せ!」
「殺されない!俺たちはヒーローだ!ヴィランには屈しな」
うずまきさんは、セリフを言い終わる前に超スピードの脳無に殴り飛ばされ、木に叩きつけられてた。
「うずまきさん⁉︎」
「さぁ、次はお前が死ぬ番だ。覚悟はいいか?目のガキ。」
「...死ぬ覚悟なんてあるかよクソッタレ、何が何でも生き延びてやる。」
「口の減らないガキだ。」
両腕と背中の痛みで正直泣きそうだ。でも目だけは背けない。目線から察するに、こちらの両足から死柄木は俺の位置を逆算している。だから攻撃は大雑把になる、カウンターのチャンスだ。
写輪眼による予測で死柄木の右手を躱す、左手は蹴り上げて体勢を崩す、そして蹴り上げた足で脳天に向けてかかと落としを決めようとした。
...蹴り上げた時点で背中の傷が痛み、動きを止めてしまった。その結果掴まれた自分の右足は、死柄木の個性により皮膚が崩壊していった。
最後の希望である足が使えなくなった。あとはもう天に祈るしかない。
「さぁ、ゲームオーバーだ目のガキ。...そういえばお前の名前なんだっけ?まぁ、殺した後でニュース見れば良いか。」
そう言って死柄木は自分の頭に手を触れようとしてきた。もう回避するための足が無い、どうすることも出来ない。
それでも、あと一瞬でも長く生きようと残された左足で逃げようと試みた、自分の体勢を崩すだけだった。
その一瞬が生死を分けた。
どこからか炎が飛んできて、死柄木の両手のみを正確に焼いた。
「フン、雄英のセキュリティも地に落ちたものだな、こんな下賤の輩に侵入されるとは。」
そうしてやってきた炎のNO.2ヒーローエンデヴァー、その姿は、とても頼もしいものだった。
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死柄木は自分から、というかエンデヴァーからバックステップで距離をとりながら言った。
「ああ畜生、こんな所でNO.2ヒーローとか聞いてないぞ...まあいい、脳無、エンデヴァーを殺せ。」
エンデヴァーへ伝えるべき事がある。倒れたまま痛みを堪え、エンデヴァーへと叫ぶ。
「その黒いのは超再生、ショック吸収、超パワーの対オールマイト兵器です!まともにやり合ったら...!」
エンデヴァーは鼻を鳴らしてこう答えた。
「フン、調書は読んでいる。安心しろ少年、このエンデヴァーに負けはない!」
エンデヴァーはその言葉と共に脳無へと炎を放った、脳無はその炎をいとも容易く振り払いエンデヴァーへと目標を定めた。
が、振り払ったはずの炎が渦のように巻き上がり、脳無を閉じ込めた。
脳無はその炎を何度も振り払おうとするが、その度に炎は巻き上がり脳無を閉じ込めていった。
「脳無、何ちんたらしてるんだ、早くエンデヴァーを殺せ!」
「フン、状況の分からぬ小物め。教えてやる、もうあの怪物が動き出す事はない。怪物であろうと生き物である以上呼吸という行為からは逃れられん。俺の炎は今あの化け物の吸う酸素を軒並み焼き尽くしている。もう動き出す力すらない筈だ。」
「何⁉︎対平和の象徴用怪人だぞ⁉︎それがたかがNO.2相手に⁉︎」
「相性が悪かったな、あれではオールマイトを殺せたかもしれんが俺は殺せん。まぁ、あの様ではオールマイトを殺せるというのも怪しいモノだがな。」
そして、エンデヴァーは死柄木へと指を指して宣言した。
「さぁ、次は貴様だ。」
その言葉に対して死柄木の反応は速かった。
「クソ、黒霧!撤収だ!」
何処かにいる黒霧は死柄木と脳無の足元にワープゲートを作り出した。
その隙だらけの逃走に、エンデヴァーは追撃をしなかった。
「...逃すんですね、エンデヴァー。」
「今日は非番だ。故にあまり無茶はできんのだ。プライベートで下手に攻撃して殺しでもしたらヒーロー資格が剥奪されかねん。それより貴様、傷は大丈夫か。」
「正直クソ痛いです。けど、ちょっと前にやった平常心を保つ自己催眠のお陰で多少はなんとかなってます。」
首を回して周囲の倒れているヒーローを見る、身体エネルギーの流れから見るに、すぐ死ぬような深手を負った者はいなさそうだ。
うずまきさんを見る、何故俺の元に来てくれたのかは分からないがその傷は浅そうだ。
あの時の螺旋がなければ自分は両目を失っていただろう。そうじゃなくても母親の再婚相手だ、生きていてもらわねば困る。
そういえば気になる事が一つある。なぜ、こんな辺鄙な場所にNO.2ヒーローがやって来たのだろうか。頭に浮かんだのはここ以外にもヴィランが出てるという最悪の可能性。
「そういえばこんな所でNO.2ヒーローが何してたんですか...もしかして他にもヴィランが⁉︎」
気絶しているヒーロー達の触診をしながらエンデヴァーは答えた。
「フン、答えは簡単だ。あそこに倒れているヒーロースーツの男が向かった先に忌々しいオールマイトのパンチ音のようなものが聞こえてきてな、てっきり奴が暴漢とやりあっているのかと思い見物しに来たのだ。結果は敵連合の襲撃だったがな。...あぁ安心しろ、他にヴィランはいないし、本部の方に連絡は入れてある。じきに救助のヒーローが来る筈だ。お前はもう疲れた頭を回す必要はない、眠っていろ。」
「...有難い申し出ですが、正直痛みのせいで寝れません。」
「フン、軽く調べた所どうやら貴様が一番の重症のようだ。まったく、プロヒーローが情けない。とりあえず右足を出せ、消毒液を少量だが持っている、化膿したら事だ。」
エンデヴァーの手つきは意外にも優しかった、これが救助に慣れたプロヒーローの手つきなのだろう。
「ありがとうございます。...体育祭、中止になりますかね。」
「さぁな、被害者がヒーローとその卵だけな以上、敵連合絡みの大事だとは隠そうと思えば隠せる筈だ。暴漢による負傷者が出たので警備の関係上今日は一時終了、そして残りは予備日にやるというのが用意される筋書きだろうな。」
「...生徒が被害者になっててもその日に続けるって事はないと信じたいですね、一応本戦まで残った参加者なので。」
「そうか...貴様名は何という?」
「団扇巡です、あおぐ団扇に巡り合わせの巡で。」
「そうか、覚えておく。貴様はあのオールマイト殺し相手にして救助が来るまで持ちこたえた有能な生徒だ。貴様がいなければあそこに倒れているヒーローの何人かは死んでいただろう。...体育祭のあと、覚えておくと良い。」
そんな話をしていると、9台の搬送ロボを連れたスナイプ先生と13号先生が警備のヒーローを引き連れてやって来た。
「エンデヴァー!救助者は⁉︎」
「連絡した通りあそこの林で倒れている8名とこの生徒だけだ、幸いにもすぐに命に別状のある負傷者はいない。早くリカバリーガールの元へ連れて行くと良い。」
「生徒...⁉︎団扇くん!大丈夫ですか!」
「なんとか生きてますよ、13号先生。」
そうして、自分を含めた9人は搬送ロボによりリカバリーガールの元へと連れていかれ治療を受けた。
自分の傷はリカバリーガールの個性では全てを一気に直すには体力が足りないという理由で、うずまきさんは単純に目が覚めないというの理由で、2人して近くの病院に入院する事となった。
尚、体育祭はエンデヴァーの言った通り暴漢による負傷者が出たため残りの競技は予備日の明日へと延期されるというシナリオで事が運ぶこととなった。
そうして、病室が同室となった団扇巡とうずまきメグル、奇妙な縁の2人の夜が始まった。
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夜の10時、見舞いに来ていたうずまきさん一家はホテルへと帰り、病室を静寂が支配していた。
そんな病室の中、なんとなく寝ていなかった自分が見たのは遅い目覚めをした恩人の姿だった。
「ううん、ここは?」
「うずまきさん、起きたんですか。ならナースコールどうぞ。」
「ナースコール...⁉︎そうだ、あの黒いヴィランは⁉︎」
「エンデヴァーが丸焼きにしてくれました。凄いですねNO.2ヒーローって。あと、うずまきさんを追いかけたお陰で現場に辿り着けたらしいですよ?」
「そうか、エンデヴァーがやってくれたのか...何かお礼の品でも送らないとな。」
「そんな事は後でいいので、意識が戻ったならナースコールですよ、脳無の攻撃で多分頭打ってるんですからちゃんと検査してもらわないと。」
「...そうだな、...とその前に、君への落し物だ。」
うずまきさんは、ポケットから自分が落とした携帯電話を取り出し、自分に渡してきた。画面は割れていたが、特に壊れているとかはないようだ。
「...うずまきさんが俺の元に来てくれたのは落とした携帯届けに来てくれてたからだったんですね。納得しました。」
「君が携帯を落としたから僕は君の危機に間に合った。君は運が良いな、団扇くん。」
「それを言うならうずまきさんの運が悪いのでは?」
「いいや、僕は運が良い。ヒーローが誰かの危機に間に合わないというのは絶対にしてはいけないことだからな!」
「一瞬でノされてましたけどね。」
その言葉にちょっと傷ついたのか、うずまきさんは目を逸らしながら
「あんな超スピードであの巨体が動くとは思わなかった。が、次は無い!次はきちんと対処してみせるさ!」
「あんな化け物とまた戦う気でいるんですかうずまきさんは。」
「必要とあればね!ヒーローとはそういう仕事さ!」
そんな言葉を交わしながら、うずまきさんはナースコールを押した。
当直の先生方に簡単な検査をされたあと、今日は遅いので細かな手続きは明日にしましょうと言われていた。
「どうやら大した異常はないようだ、やはり僕は運が良い!」
「普通なら入院している人が運が良いとか言わないと思いますけどね。」
そんな軽口を叩き合っていると、不意にうずまきさんが真剣な声で聞いて来た。
「なぁ団扇くん、君はあの時...いや、善子を見てから明らかに動揺していた。その理由は聞いても良いかい?」
「どうしてそんな事を聞くんですか?」
「病院で見てもらったところ、善子には何者かの洗脳を受けた痕跡があったんだ。そして、そのキーワードとなるのは息子とメグルという名前という事。
団扇くん、偶然としか思えないが君もメグルという名前だ。もし君が何かを知っているなら教えて欲しい。」
「その質問には答えるには一つ条件があります。」
「なんだい?僕にできる事ならなんでもしよう。」
「母を、うずまき善子さんを嫌わないでください。悪いのは、母の心を捻じ曲げた奴なんです。」
「...約束する、善子は私の妻だ。どんな事を聞こうが嫌いになどなる訳がない。」
「わかりました、それでは話しましょう、自分こと団扇巡の真実って奴を。」
自分の悲しみを誤魔化すように、ちょっと茶化して言葉を始めた。
話す内容は以前親父と要の爺さんに話した事と同じだ。
団扇巡4歳から8歳にかけての拭えない罪の話。
実の母の心を捻じ曲げた、とある悪鬼がいたという事だ。
「そんな...事が...」
「ええ、だからうずまきさんの探している母の心を捻じ曲げた洗脳を行った人物は、ここにいる俺です。」
「...正直そんな事は予想してはいなかった。てっきり善子の前の夫が善子を洗脳したとばかり思っていた。」
「父は無個性ですよ、母と同じくね。だから8年前母に洗脳を行えたのは自分だけです。ああ、黒幕とかもいませんよ。全部自分一人でやった事です。
どうです?軽蔑しますか?」
正直口汚く罵られる覚悟はしていた。が、帰ってきたのは自分の予想だにしていない言葉だった。
「そうか...辛かっただろうに。だから善子を見たときあんな迷子みたいな顔をしていたんだな、君は。」
「え?」
その予想だにしていなかった言葉に、自分は一瞬我を忘れた。
「俺が辛いとか冗談はよして下さいよ、俺は母の心を捻じ曲げた悪鬼ですよ?辛いなんて思っていません。」
「いいや、君の目を見ればわかる。善子への洗脳は善子の事を思えばこそできた善行だ。君は個性で人ひとりの運命を救ったんだ。君は善子のヒーローなんだ。」
「人の心を捻じ曲げるヒーローなんかいるものかよッ!」
「君は人の心を、善子の心を正しい方へと導いたんだ!そこに嘘はありえない!君は一つ勘違いをしているようだから言っておく、僕が善子を洗脳した人物を探していたのは、お礼を言う為だ!善子の心を守ってくれてありがとうと!
...少し大声で話しすぎたね、一旦落ち着こう。」
「...そうですね、わかりました。」
そうして落ち着いたあと、うずまきさんが言った言葉は信じがたい言葉だった。その表情から嘘が無いとわかるあたりも本当に。
「なぁ団扇くん、色々すっ飛ばして君に聞きたい。うずまき巡になる気はないか?」
死柄木は原作と違い、スナイプ先生に両手両足撃ち抜かれていません。しかも脳無というおもちゃも強いのが一体生きている。なら遊びに来ない訳無いだろうとの閃きが、プロット死亡の原因です。
その後の展開が御都合主義?言わないでください、知ってます。