職場体験4日目
その幕開けは昨夜のパトロール、及び戦闘の報告書を提出した後の徹夜明けの会議であった。
「ヒーロー殺しステインは確保された、だが模倣犯の可能性を考慮し、今週いっぱいまでバブルビーム、メグルの2人はパトロール先を保須市のままとする。
俺がいない間に起こった大きな事件は無いのは報告書で分かっているが、なにか気になった点があるものはいるか?
...いないようだな、それでは会議を終了する。各自持ち場へと向かえ。
ああ、あと1つ。警察から正式に情報がでるまでヒーロー殺し確保の件は外に漏らさないよう注意しておけ。今度こそ以上だ、解散。」
会議を取り仕切るエンデヴァーは、昨日までと比べると、覇気が感じられなかった。
保須へと向かう車内でその事をバブルビームさんに突っ込むと。
「いや、いつもはあんな感じだよ。職場体験でショートが来てて張り切っていたのが切れたんじゃないかな。」
「それでいいのかNO.2ヒーロー。まだ職場体験の学生いるんですけど。」
「いいんじゃない?前にも言ったけど力を適度に抜くのも仕事だよ。」
「なんか俺はオマケだって言われてるようで釈然としないんですけれど。」
「そりゃ実の息子とただ唾つけただけの学生なら感情的にはそうでしょ。エンデヴァーさんだって人間なんだから。」
「そんなもんですか。」
「そんなもんだよ。」
そんなものだと言われても納得がいかないのは俺だけだろうか。
そんな自分の考えを読んだのか、バブルビームさんは空気を変えるように少し声を張り上げて言った。
「さて、徹夜明けでのパトロールだけど大丈夫かい?こういうバッドコンディションでもいつも通りのパフォーマンスを求められるのがプロだけど、君はまだ学生だ。無理ならちゃんと無理って言うように。」
ここは強がる所だろう。コンディション悪い日のプロの動きなど見たくても見れないのだから。
「正直眠いですけどまだなんとでもなります。MAXコーヒー飲みたい気分ですけどね。」
「あの糖分を飲みたくなる気分とか想像できないんだけど。」
「...MAXコーヒーに辛辣すぎません?」
「だって僕辛党だし。」
「別に辛党と甘党は敵対してないでしょうに。...してないですよね?」
「...さぁパトロールを始めようか!」
「え、そこ誤魔化す所なんですか⁉︎」
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午前中のパトロールは、昨夜の事件の事など感じられないほど穏やかなものだった。大きな事案といえるのはせいぜい道路が割れたことでいつもの道が使えない人に回り道を教えた程度だろう。
バブルビームさんは徹夜の疲れを感じさせない様子で、背筋を伸ばして歩いていた。
何かコツでもあるのかと聞いた所その答えは単純だった。
「いいや、コツとかじゃなくてただの空元気。でもヒーローが背筋伸ばしていないと犯罪抑止にならないからね、ちょっとの無理で仕事が減るなら安いものっていう計算もあるかな。」
「市民の安全のためなら背筋伸ばすくらい訳ないってことですか。」
「格好いい言い方するとそうなるね。ちなみにそれを言われないで行えてる君には結構驚いてるよ、そのプロ根性どこで培ったのさ。」
「中学の時色々なボランティアに参加してたんで、その辺で学んだんだと思います。」
「流石雄英生徒、中学のボランティアとか普通参加しないでしょうに...んで、どんなのやってたの?」
「ゴミ拾いとか、老人ホームの手伝いとか、保育園の手伝いとかですね。変わり種だとチャリティのヒーローショーの手伝いもやってました。」
「うわ、この子思った以上に凄い子かも。ナチュラルボーン人助けマン?」
「人助けマンって何ですか、変な造語作らないでくださいよ。」
「意味は伝わるしいいでしょ別に。」
そんな会話をしながらパトロールをしていると、バブルビームさんのスマホのアラームが鳴った。
「さて、午前10時半、お仕事タイム終了っと。だけど事務所に戻るまでかパトロールだからまだ気を抜かないように。とは言いつつも今日は寄り道して行くんだけどね。」
「どこにですか?」
「保須総合病院にだよ。ヒーロー殺しに襲われた友達が心配だろ?短期入院とは聞いてるけど僕もショートが心配だし。一緒に行くよ。」
「バブルビームさん...ありがとうございます!それじゃあ入院してる奴らに欲しいものあるかメッセするんでちょっと待ってて下さい。」
焦凍、緑谷、飯田へとメッセージ、パトロール終わったからこれからお見舞い行くけど、何か欲しいものあるかと。
緑谷からの返信が来た。
飯田が両腕を負傷しているので、果物とかより飲み物の方が嬉しいとの事だ。
そんな時たまたま目に入った自動販売機にMAXコーヒーが売ってあった。これは布教のチャンスだろう。
バブルビームさんからは
「君、正気?それは飲み物じゃないって。」
と言われたが気にしない。
道中の100均でストロー1袋とウエットティッシュ1箱を買い、保須総合病院に赴いた。
受付に行って確認した病室に行くと、ちょうど誰かが来客中だったようだ。ドアが半開きとなっており知らない誰かの後ろ姿が見えた。
ドアをノックして言った。
「焦凍、緑谷、飯田、今入って大丈夫かー。」
「団扇くん?」
「巡か。」
聞き覚えの無いダンディな声が自分たちを招き入れた。
「もう話は終わったよ、入って構わないワン。」
「ワン?」
病室の中に入ると、そこにはベッドの上の焦凍、緑谷、飯田の他にヒーロースーツの老人が1人、魚を模したヘルメットの男性が1人、顔が犬のスーツの男性が1人いた。
「千客万来ですね。どういう状況だったか聞いても良いですか?」
スーツの犬の人が答えた。
「昨日の事件のお小言だよ。エンデヴァーヒーロー事務所に職場体験に来ているメグルだね?」
「はい、そうです。」
「君も昨日はよく頑張ってくれた。目なしの敵による被害があれほど軽微で済んだのは君のお陰だろう。ありがとう。」
「それは...どういたしまして。でもバブルビームさんが居なければ翼の脳無にやられて何もできずに自分は死んでいたと思います。だからそのありがとうの半分はバブルビームさんにお願いします。」
「だ、そうだバブルビームくん。いい子達をエンデヴァー事務所は指名したな。」
「同感です。面構署長。」
「...署長?」
「この人は面構犬嗣さん。保須警察所の署長さんだよ。」
「署長⁉︎...焦凍、なんでそんなお偉いさんが来てるんだよ、何かやらかしたのか?」
「ああ、ちょっとな。」
「やらかしたのかよ⁉︎」
面構署長はそんな自分の混乱を見かねたのか、簡潔に事情を説明してくれた。
焦凍、緑谷、飯田の三名は保護管理者の指示なくヒーロー殺しに個性を使ってしまったため、それを揉み消すために面構署長たちがこれから尽力して下さるのだそうだ。
その一見ハッピーエンドへと向かう話にどこか納得がいかないのは、自分が前科者だからだろうか。そのモヤモヤからついキツイ言い方で文句を言ってしまった。
「焦凍たちが無罪放免になるのは嬉しいです。けれど警察として、法の番人としてそれでいいんですか?どんな理由があろうと罪は罪でしょう。それは罰せられるべきではないんですか?」
そのモヤモヤからの言いがかりに対して、面構署長は大人として真摯に対応してくれた。
「それは...時と場合によるのだワン。彼らが悪意から罪を犯したのなら法の番人は決して許しはしなかったが、今回の件は善意でルールから外れてしまった"偉大なる誤ち"だワン。故に彼らの未来を守るべきだと、1人の大人として判断した、それが今回のズルの理由だワン。」
その大人の姿に、以前受けた警察からの取り調べを思い出した。
長きに渡って罪を犯していた自分の事でさえ子供だというだけで大人達は守ろうとしてくれていた。親父達も、根津校長も、そして警察の人達も。
年齢の差だけではない何かが暖かくも大きな差が自分と大人達との間にはある。そう感じられた。
子供扱いを嫌がるだけでは駄目だ、大人になるにはその暖かいものを1つずつ自分の中に積み重ねていかなくてはならない。
その先にいるのが面構署長であり、これまで会ってきた大人達であり、親父なのだ。
そう考えると、大人に対する見方が少し変わった気がした。
「...大人って、凄いですね。」
「君たちより少しばかり経験を積んでいるだけのことさ、子供と大人の違いなどそれだけの事なのだワン。
さて、彼らを庇うためのカバーストーリーを広報部に通達せねばならないので、私はこれにて失礼させてもらうワン。」
そう言って面構署長は病室から去っていった。良い大人の手本だと、掛け値なしにそう思った。
その背中を見ていると、いつのまにかモヤモヤは晴れていた。モヤモヤの正体はきっとズルを許容する大人への不信によるものだったのだろう。
その会話の中で時計で時間を確認していたバブルビームさんは言った。
「メグル、時間が押してるからちゃちゃっとお見舞い済ませちゃってね。見たところショートも大事なさそうだし僕は車取ってくる。それじゃあショートにお2人さん、お大事に!」
「それじゃ用も済んだ事だし、儂も帰るかの!」
「じゃあ俺も帰って事務所の電話待ちでもするかな。天哉くん達、お大事ね。」
そう言ってバブルビームさんたちは病室から去っていった。
その後ろ姿を見た緑谷は言った。
「団扇くん、今の人ってもしかしてバブルビーム?」
「流石ヒーロー博士、正解だ。...有名なのか?」
「うん、バブルビームはエンデヴァーヒーロー事務所の若手サイドキックだよ。必殺技バブル光線が格好いいから印象に残ってたんだ。まだこれ!といった活躍はまだ無いけど堅実な仕事ぶりで地元からの評価も良いみたいだよ。」
「へぇー。」
本当に流石のヒーロー博士っぷりである。もっと聞きたい所ではあるが、今はお見舞いを先にしなくては。時間はあまり無いのだ。
「っとそれはそれで気になるけど今はお見舞いが先だ!お三方にプレゼントだ。」
そう言って、3人にMAXコーヒーを手渡した。3人とも腕を怪我しているため蓋を開けて、ついでに飯田の分にはストローを通す事を忘れないで。
「これは、団扇くんの愛飲している謎のコーヒーではないか!」
「そういえば僕も初めて飲むかも。売ってないんだよね、地元にも雄英にも。」
「押し付けられて一回飲んだ事があるが、ある意味凄えぞこのコーヒー擬き。」
「さぁさ皆さん御賞味あれ!」
3人は同時に飲んだ。
リアクションも同時だった。
「「甘い!」」
「相変わらず甘すぎだろ、コレ」
「団扇くんからの贈り物にケチをつけるようで悪いが、物凄く甘い、甘すぎるくらいだ。が、決して飲めないという訳では無い。不思議なコーヒーだ。」
「でも、僕この味割と好きかもしれない。」
「蕎麦には合わなかったが、単品で飲む分には悪くは無いかもな。」
「オイ焦凍、蕎麦とマッ缶合わせるとか勇者かお前。...まぁ、意外と好評で何よりだ。でもお見舞いの本命はこっちのウエットティッシュとストローだから実は無理そうだってなら引き取るぞ。」
3人は首を横に振った。どうやら本当に受けが悪いという事ではなかったようだ。
「そうか、じゃ、ストローは飯田の所の棚に入れとくから好きに使えよ。ウェットティッシュは緑谷のとこ置いとくな。短期入院だろ?なら多分これで足りるはずだ。」
「ありがとう、団扇くん。」
携帯が振動した、内容を確認すると、どうやらバブルビームさんが病院近くまで来たらしい。
「それじゃあバブルビームさんもうすぐ来るみたいだから俺はこの辺で。3人とも、お大事にな!」
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病院の近くでバブルビームさんに拾ってもらい事務所まで戻る帰り道。エンデヴァーさんからメールが来た。
自分とバブルビームさんにヒーロー殺しの件で話があるとのことだ。おそらく焦凍たちの件だろう。
その事をバブルビームさんに話すと
「アハハ、多分エンデヴァーさん超不機嫌だよ、普段ならそういう大事な連絡は電話でするもん。これはもう一徹コースかな?」
「怖い事言わないで下さいよ...冗談ですよね?」
「ごめん、エンデヴァーさんたまに滅茶苦茶子供みたいな事するから無いとは言い切れないや。」
「ビジネスライクはどこいったんですか⁉︎」
「ビジネスライクはエンデヴァーさんが通常運転のときだけなのさ...」
「哀愁漂わせないで下さいよ...」
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エンデヴァーヒーロー事務所の所長室へと、徹夜明けなのか顔が怖く見えるエンデヴァーから呼び出された。
「バブルビーム、メグル、先日の戦闘報告書は読ませて貰った。雄英襲撃犯の対処、目なしの確保と翼への応戦、どれも見事だった。」
「「ありがとうございます、エンデヴァーさん。」
褒められても内心ビックビクである。
「フン、焦凍の病室で警察から聞いたらしいが改めて説明しておく。今回の事件においてヒーロー殺しを確保したのは俺という事になった。今後マスコミが押し寄せるだろうがそういう事にしておけ。
詳しいカバーストーリーはこの書面に書いてある通りだ。明日からのパトロール中にもマスコミが来る可能性はある。熟読しておけ。」
その、普通の言動に混乱したのはバブルビームさんと自分である。
思わず小声でバブルビームに言ってしまった。
「ちょっと、なんか何事も無いように終わりそうなんですけど⁉︎もう一徹コースって何ですかビビらせるだけの嘘ですか⁉︎」
「僕だって想定外だよ⁉︎」
「聞こえているぞ馬鹿ども、本当にもう一徹させてやろうか。」
「「すみません、エンデヴァーさん。」」
「フン、すっかり息が合ったようで何よりだ。それでは次の伝達事項を伝える。喜べメグル、貴様には明日から朝のパトロールのあと特殊訓練に参加してもらう。」
「特殊訓練?」
「そうだ、ウチで教えてる近接格闘術の基礎の基礎くらいは教えてやる。貴様の戦闘報告書を読ませて貰った。敵の体勢を崩した後のストンプは確かに有効だがヒーローのやる事では無い。再生の個性の奴でなかったら殺していたレベルの行為だろうが。」
その言葉で、自分がどれだけ残虐ファイトをしていたか気付かされた。動画とか撮られてないだろうか...
「でもあの状況で他に手ってあります?他いるのは負傷者だらけで手錠も無し。ついでに言うなら上空におかわりの敵がいる。ノックアウト狙い以外手はなかったと思うんですが。」
「上空の敵はバブルビームが迎撃できる以上無視できる。ならそのうちに絞め落とせば良いだろうが。」
「絞め技ですか...」
「そうだ。雄英からの資料によるとお前は我流だそうだな。どうやって学んだ?」
「格闘技の動画とかを見て見様見真似でです。」
「なるほど、単独で学んだが故に使える絞め技や投げ技を持っていないのか。なら良い機会と思って精進しろ。通達事項はこれで全てだ。持ち場に戻れ。」
「「承知しました、エンデヴァーさん。」」
戻る前に1つ思い出した。エンデヴァーとて人間だというバブルビームさんの言葉を。
「...あと1つだけ良いですか?」
「何だ?メグル。」
「パトロール帰りに見舞いに行ったんですが、焦凍は大丈夫そうでした。傷も大した事ありませんし、ヒーロー殺しとの戦いがトラウマになっていたりは特にしてなさそうです。」
「...フン、当然だ。貴様が思っているような柔な鍛え方はしていない。」
「それだけです。失礼しました。」
エンデヴァーの顔は入った時より少しだけ穏やかなものになっているように見えた。
「さて、思ってたよりお小言は少なかった訳だし、ちゃちゃっと報告書書き上げて仮眠といこうか。」
「そうですね。明日からの訓練は怖いですけど、その前に夜のパトロールの分の体力回復させないとヤバイですからね。」
そんな会話をしながら事務室へと向かうと、何だかサイドキックの皆さんの視線が自分に集まってきていた。若干引かれてる感じの視線だった。
「バブルビームさん、俺なんかやっちゃいました?」
「さぁ、知らないよ。」
その注目の答えは、クラスの連中からのメッセージが教えてくれた。
「"ヴィラン潰し"?」
「何それ、新手の自警団?」
「なんかクラスメイトからネットニュースとか動画とかのアドレスが山のように送られて来たんですけど、そのタイトルがどれもヴィラン潰しとかいう奴についてらしいんです、けど...」
「思い当たる節はあるね、物凄く。誰かに動画でも撮られていたかな?」
「いやいやまさか、いたいけな少年にそんな残虐ファイターみたいな渾名がつく訳ないじゃないですかー。」
「ならネットニュース見てみなよ。僕は君がヴィラン潰しだって方に暴君ハバネロ賭けるけど。」
「学生に賭けを持ち込まないで下さいよ、貯金と奨学金で暮らしてるんであんまり余裕があるって訳じゃないんですよ?」
「へー、意外と苦学生なんだメグルって。なら当たりなら僕が奢るよ、ハバネロ。」
「それじゃあ見ますね。」
ネットニュースの内容はこうだ。
先日のヒーロー殺し一派の確保騒動の際、NO.2ヒーローエンデヴァー事務所に職場体験学習中の学生がヴィランと格闘を行い勝利するという事件があった。
その生徒の名前は団扇巡、ヒーロー名はメグル。雄英体育祭1年の部3位の好成績を残す有望なヒーローの卵である。
その捕物の様子が動画として添付されていた。
ヴィランに対し執拗に顔面を攻める戦闘スタイル、体勢を崩した相手へのストンプ連打で顔面を潰すという容赦のなさ、そしてヒーロー殺しとの対比から誰が呼んだかヴィラン潰しと呼ばれ始めたのだそうだ。
「マジで俺でした...まだ16のガキにそんな悪名つけるとかちょっとマスコミさんがたアレ過ぎやしませんかね。」
「悪名は無名に勝る、そう思うと気が楽だよ。さて、賭けは賭けだし外のコンビニでハバネロ買ってくるねー。」
「ゴチになりまーす。」
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報告書を書き終えた自分とバブルビームさんは仮眠を終え、夜のパトロールの準備を始めていたところ、テレビでエンデヴァーさんのヒーロー殺し確保についての記者会見が始まった。
「そういやまだカバーストーリー読んでないんですけど、どんな内容だったんですか?」
「ああ、エンデヴァーさんの戦った順番がヒーロー殺し、灰色の肌の敵、翼の奴の順番になったくらいかな。僕らの戦いには何も影響はないからマスコミ対応は自分の知らないところは知らないでオーケーだよ。」
「ありがとうございます。さて、記者会見どうなりますかねー。」
「ま、僕らは見てる時間は無いんだけどね、夜のパトロール行くよー。」
「はーい。」
車の中でSNSを確認する。トレンドはエンデヴァー、ヒーロー殺し、ステインなどの順当な言葉の中に入り込んでいるヴィラン潰しの文字。何故だ。
「やったねメグル、時の人だ!」
「コイツ、楽しんでやがる...!」
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夜のパトロールも大事は無く終了した。ヒーロー殺しが出た地域は犯罪率が低下するというネットニュースで見かけた内容が頭をよぎった。
まぁヒーローの仕事がないのは良いことだ、そうプラス思考で行きたいところだがパトロールの途中から自分達が、というか自分が地味に避けられている感じがしてきた。
「ヒッ、ヴィラン潰し⁉︎」
とか露骨にビビった人もいたくらいである。
「時の人は辛いね、メグル。」
「畜生、職場体験でこんな貴重な体験をするとは思いませんでしたよ!ありがとうございました!」
そんなふざけた会話ができる程度には、今日の保須の夜は平和であった。
オリジナルのプロット進まないからついついヒロアカに逃げて来てしまうという甘え。思いついた時はいける!という感じだったのにうまくいかないものですねー。