【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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職場体験編もこれにて終了
思ったより長くなったのは間違いなくバブルビームさんのせい。このキャラ思った以上に書きやすかったです。そんなキャラともインターン編までしばらくお別れ。今まで通りのペースを保てるだろうか...



職場体験終了

職場体験6日目

 

念のため写輪眼を発動したままのパトロールを行なったが、インサートにより体内エネルギーを乱された人は発見できなかった。

やはり保須市からもう離れたのだろうか。まだ見ぬ狂気の殺人犯を思うと心が沈んでいくのが自覚できる。それはバブルビームさんも同じだろう。だからこそ今日も背筋は伸ばしてパトロールを行う。今日も街に「ヒーローはいる」と示し続る事が大切なのだ。

 

まぁたまに「ヴィラン潰し、パトロール頑張れよ!」とか声かけられるようになったのはきっとプラスである。そう思わないとやってられるか。

 

「しっかし、もうすぐ職場体験終わりかー...なんかメグルとは長年コンビを組んできたような気がするよ。」

「濃かったですもんねー、この一週間。ヒーロー殺し確保にインサート事件の発見とか。ヒーローの一週間ってこんな感じなんですか?」

「んー、ガチに忙しいときはこのくらいらしいよ。凶悪犯の捕物の日時が3日連続で続いちゃった事件とか昔はあったらしいし。」

「ええ...もしかしてこの事務所ってブラックなのでは?」

「超ホワイトだよ、今は。」

「今がホワイトなら何も問題は無いですね、働く側の俺たちからしたら。」

 

バブルビームさんのスマホのアラームが鳴った。パトロール終了の時間である。

 

「さぁ、車戻るよー。」

「はーい。」

 

もはや見慣れた保須市内をゆっくりと歩いていく。

些細なトラブルすら見つからない、今日の保須市は平和である。

 

「そういや焦凍くんたちの退院って今日だっけ?」

「はい、雄英からリカバリーガールが来て傷を塞いでくれたみたいです。あとは念のための精密検査とからしいのでもう実質治ってるって話ですよ。」

「へぇ、って事は明日の朝のパトロールくらいは参加できるかな?」

「まぁ保須に来るかはエンデヴァーさんの匙加減一つですけどね。」

「来ないだろうね。エンデヴァーさん焦凍くんを手元から離したくないだろうし。クールに見えて結構危なっかしいからね焦凍くん。」

「ですね。」

 

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エンデヴァーヒーロー事務所の事務室。

すっかり定位置と化した空きデスクにて報告書を書き終えた。今日は大事も小事もなかったのでスパッと終わったのだ。やったぜ。

まぁ人助けとかはパトロール中だと全て記録に残さないといけないので、今日はその分が無かった故に早く終わったのだろう。

 

「バブルビームさん、報告書のチェックお願いします。」

「珍しく早かったね。どれどれ...うん、問題ないね。今日の特訓まで時間あるし休憩室行ってて良いよー。」

 

そう言ったバブルビームさんは、パソコンとにらめっこを再開した。

 

「何か調べ物ですか?手伝いますよ、暇ですし。」

「んー、気持ちは嬉しいんだけどこれHNだからプロ以外には手伝えないのさ。」

「HN?」

「うん、ヒーローネットワークっていうプロ免許所有者専用の情報サービス。全国のヒーローの活動報告が見れたりとか便利な個性のヒーローに協力を求めたりできる結構便利なヤツだよ。」

「便利そうですね、気になるんで後ろで見てて良いですか?」

「駄目です。」

「即答⁉︎」

「そりゃそうだよ。何のためにプロ免許所有者専用にしてると思ってるのさ、情報漏洩を防ぐためだよ?つまり君みたいな卵が見て良いものじゃありません。さ、行った行った。」

 

帰り間際にちらっとだけPC画面を覗き見る。

そこで行われていたのは各地での不審な自殺の報告書の検索であった。何が理由でそんなものを調べていたかは言うまでもないだろう。

バブルビームさんは、自分に可能な範囲でインサートを追いかけているのだ。

 

そんな姿を見せられたら、手助けしたくなるのが人情というものである。プロでない身としては出来る事などネットニュースを詳しく読むくらいしかできないが。それでも不審自殺の起きた地点と地図を照らし合わせれば何かしらの役には立つだろう。

 

「コーヒーでも持ってきます?俺もちょっとパソコンで調べたい事が出来たのでしばらく事務室にいますから。」

「そう?それじゃあお願い。あ、当然ブラックでね。」

「はーい。」

 

尚、自分の行ったインサートの犯行現場と時期の照らし合わせは全く役に立たなかった。どこか目的地へと移動している訳ではなく、無秩序に動き回っているという事だけがわかった。が、それは要するに次の犯行現場の特定が不可能だという事である。

 

バブルビームさんにそれとなく地図を見せて見たものの、プロの視点でも地図から何かを読み取ることはできなかったようだ。

 

ちなみに、この地図を見せた事で自分が画面を盗み見た事がバレた故にバブルビームさんから一発チョップを貰った。割と痛かった。

 

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2日目の特訓を終えた感想は一つ。

 

集団戦は無理、それに尽きる。

 

特訓であのヴィラン潰し凄えらしいぞ!との情報がどこかから拡散したらしく、今日は見物人が多かった。

彼らに対して「見物するくらいなら役に立て。」とエンデヴァーさんが言った結果ノリの良い方々が自分の特訓に付き合ってくれる事となった。

そして始まる集団戦。一対一では十分な技量を持つに至った自分だが、経験がモノを言う集団戦の立ち回りは酷いものであった。

というか視界外から襲ってくるのは普通反応出来ないでしょう!とエンデヴァーさんに言ってみたところあの人は余裕で対応していた。流石NO.2ヒーローである。

 

「貴様は目が良い。が、逆にそれが足枷となって視界外からの情報を無意識に軽視する事になっているのだろうな。」

 

とはエンデヴァーさんの談である。

 

それからはひたすら集団戦の稽古である。お陰で2対1程度なら一人を瞬殺して一対一に持ち込むという戦術が取れるようにはなった。相手が格下の場合に限るが。

3人以上が相手?無理無理。

 

尚、催眠アリならなんとかなるのでは?と試してみたところ、特に関係はなかった。正面の一人には目を逸らされその隙に後ろから襲いかかられて結局催眠なしの時と同じやられ方である。

 

このままでは埒があかないと意見を募ったところ全会一致で「慣れろ」の一言である。この脳筋どもめ。

 

まぁ理屈は正しいのだ。敵の行動の把握は集団戦の基本なのだから。基本を疎かにしたヒーローの末路は明らかである。死あるのみだ。

 

故に自分の取るべき選択としては一つだ。「慣れるまで殴られ続けろ」である。己も脳筋だったのか。

 

そんな訳で今日の特訓は殴られ続ける事で終わった。

自身の弱点を知れた良い機会だったとあとで考えると思うのだが、特訓してる当時は痛みから思考が鈍化していき最終的には「全員ぶん殴る」くらいしか考えていなかった気がする。

 

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特訓も終わり、保須市の夜のパトロール。

保須の夜とはこれでお別れかと思うと感慨深いものがある。とはいえ、身体中の痛みでそれどころではないのだが。

 

「どうする、車で休んでても文句は言わないよ?流石にやり過ぎたってエンデヴァーさんの顔にも書いてあったくらいだし。」

「いいえ、休みはしません。万が一にでもインサートみたいな個性の奴が暴れてた場合俺でないと発見はできませんから。多少の無理はしますよ。」

「ヒーロー根性が根付いているねー。流石雄英生、格好いいじゃん。でも、ガチで無理って時はちゃんと言う事。良いね?」

「はい。承知しました、バブルビームさん。」

「それじゃあ、行こうか。」

「はい。」

 

そう言ってプロと卵、二人のヒーローは保須の街へと繰り出していった。

 

ちなみに今夜のパトロールの結果としては酔っ払いの喧嘩の仲裁が一件あった程度だった。保須の夜は平和である。

 

帰り道にて

 

「あ、やっぱ車で休んでおけば良かったって思ってる顔だね。」

「自分の運の無さを信じるなら何か起こると踏んだんですけどね、こうも何も無いとは思いませんでした。まぁ平和が一番なのは分かってるんですけど。」

 

そんな会話があったとか。

 

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エンデヴァーヒーロー事務所の仮眠室。

そこを占有していた筈のもう一人、轟焦凍が帰ってきていた。

 

「ただいま、ついでにお帰り、焦凍。腕の調子はどうだ?」

「おう。もう傷は塞がった、問題ねぇ。」

「そうか、何よりだ。」

 

「...ニュース見たぞ、ヴィラン潰し。」

「ありがとよ、影の英雄さん。」

「...何かこそばゆいな。」

「俺もだよ畜生。でも本当にお疲れさん。ヒーロー殺しとっ捕まえるとか大金星じゃん。」

「無かった事になったけどな。」

「それでも大金星だよ。なんたってお前ら全員生きているんだから。しかも保須警察署の署長さんとかいうでっかいコネも得た訳だろ?収支はプラスだって絶対。」

「そんなもんか。」

「そうそう、プラス思考プラス思考。そうでないとヒーローなんてやってられるかって気付いた一週間だったわ。」

 

思い返すのはパトロール中にもらった数多の声援の事だ。ただしその中でメグルと呼ばれた声は無い。

 

「何かあったのか?」

「ヴィラン潰しの名前が広がりすぎてヤバい。誰からもヴィラン潰しとしてしか呼ばれない上にちょっと引かれる。割とめげそう。」

「...まぁお前のやった事がやった事だしな、正直俺たちも若干引いた。」

「待て、お前らなら分かるだろあの黒いののヤバさは。」

「だから一方的にボコりまくった上に足蹴にしたお前がヤバイって思えんだよ。」

「マジか。戦ってる時は何も感じなかったんだけどなー。」

「それはそれでヤバイぞお前。」

「でもあの時はああするしかなかったんだって。」

「いやそれでもあの絵面はやべえだろ。ヴィランの顔面が潰れていく所とか特に。」

 

動画を見直してみた所、ガチで目なしの顔面?は潰れ血が周囲に飛び散っていたのがわかった。あれ?改めて見るとヤバくね?と聞いたところ。だからやべえって言ったろと返された。

これはヴィラン潰しの名が通る訳だわ。

 

「...そういやお前に言ってなかった事がある。」

「ん、何だ?」

「...ありがとな。お前が親父を連れてきてくれなかったら緑谷は羽の奴に連れ去られちまったかもしれねぇ。」

「それなら俺も、ありがとな。お前が緑谷のSOSに気付いてくれたお陰でみんな生きて終わる事ができた。...俺は緑谷のSOSに気付けなかったから。」

「...そこは結果オーライで良いんじゃねえか?」

「...そっか、結果オーライか。ありがとな、焦凍。」

「おう。」

 

「さて、過ぎた事はこれまで!お前、インサートってヴィランについてニュースか何かで見たか?」

「ああ、個性使って1人を自殺未遂、4人自殺に追い込んだっていうヴィランだよな?それがどうした?」

「それ関連の話だ。エンデヴァーとペアだった3日のパトロールの日、この人を見なかったか?」

 

そう言って北風読子さん、インサート事件により自殺未遂に追い込まれた彼女の写真を見せた。

 

「いいや、心当たりはねぇな。この人は?」

「インサート事件の自殺未遂の人だ。犯人の個性で3日ほど記憶が無くなってるから少しでも情報が欲しかったんだがまぁ外れだよなぁ...」

「そういやインサート事件を発覚させたのはエンデヴァー事務所ってなってたな、お前か?」

「ああ、俺とバブルビームさんの2人だ。この件に関しては本当に運が良かったとしか言いようがないけどな。さて次だ、コレを見てくれ。」

 

そう言って焦凍に今朝作った地図を見せた。

 

「インサート事件の起きた時間と場所をプロットした地図なんだが何か気付いた点とかあるか?直感でいい、意見が欲しい。」

「...いや、すまん。バラバラの時間でバラバラの場所だって事しか分からねぇ、法則性とかは見えねぇな。」

「バブルビームさんも俺も同感だ、畜生。

...犯人はさっきの北風さんの話からすると年齢は24歳以下で女。下手したら俺ら世代くらいの可能性すらある。だからまだ子供の俺たちの視点からなら何か違うものが見えてくる筈だと踏んだんだが...空振りか。」

「他の連中にも当たってみるか?緑谷とか八百万とかに。」

「そうだな...ダメ元でクラス全員に流してみるか。」

「スケール広がったな。」

「知恵は多い方が良いってな。」

 

インサートの犯行現場の情報をクラスのSNSに投げてみた。「何か気付いた事があればコメントくれ、情報が欲しい。」とメッセージを添えて。

 

「コレでよし、まぁ学生に分かる事なら警察やヒーローが気付いてるだろうけどな。」

「...いや今更それ言うのかよ。」

「だって事実だし。」

 

ちなみに結果は空振りだった。たった5件の事例では流石の八百万とてお手上げだったようで、「申し訳ありません、団扇さん。」とメッセージが返ってきた。「得にもならないのに、考えてくれてありがとう。」と返した。「当然ですわ、クラスメイトですもの!」と返ってきた。八百万はいい奴すぎると思う。

 

「ヤオモモ大先生でもお手上げだとさ...あー畜生、手詰まりだ。」

「まぁ仕方ねぇだろ、俺らはまだ卵なんだから。」

「...そうだな。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、職場体験学習最終日だ。

 

「おはようメグル、ショート。昨日はよく眠れたかい?」

「ええ、バッチリです。」

 

隣の焦凍は無言で頷いた。

 

「それじゃあ今日の予定の確認だ。早朝パトロールは僕とメグルは変わらず保須に、ショートはエンデヴァーさん達と一緒に地元に行く事。それが終わったら昼食食べて君たちは解散だね、昨日のうちにちゃんと帰り仕度は済ませたかい?」

「はい、後は東京土産を買うくらいです。」

「土産なら東京ばな奈がおススメだよー、定番だし、量もあるからクラスの皆に配れるし。」

「ただそれだと他に東京に来てる連中の土産と被りそうで怖いんですよねー。」

「気にしない気にしない、高校生の食欲なら二箱買っても一瞬で溶けるから。さ、メグル行くよ。ショートはここでちょっと待ってて、エンデヴァーさんがすぐ来る筈だから。」

「わかりました、バブルビームさん。んじゃ焦凍、先行ってるなー。」

「おう。」

 

焦凍を置いてバブルビームさんと2人で保須へと向かう。

これで保須へと訪れる機会は当分ないだろう。

 

「最後の保須市のパトロールだよ、何かやりたい事はあるかい?」

「特にありません。普通が一番ですよ。」

「そだね。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おかしい、トラブルランナーどころかダイバーなメグルがいるのに本当に普通のパトロールで終わっちゃった。」

「人のことどういう目で見てるんですか、ランもダイブもそもそもトラブルがないんですから...バブルビームさん。」

 

見えたのは一台のバイク。二人乗りで歩道よりに停めているが視線の動きが妙だ。まるで道行く人に狙いを定めているかのようだった。

 

「あのバイクだね、凄い典型的なひったくりだ...実行に移したらタイヤを撃ち抜くから拘束お願い。」

「まぁヒーローの見てる中白昼堂々とはやらないでしょうけどね。」

「...バイクが動いた、このコース間違いない!メグル、走って!」

「馬鹿じゃねぇの⁉︎」

 

道行く女性のハンドバッグをひったくったその二人乗りバイクは、走り去ろうとする前に後輪をバブルビームさんの代名詞"バブル光線"で撃ち抜かれ転倒した。

 

「大丈夫ですか!」

 

と駆け寄るついでに声をかける。

 

「ヒーロー⁉︎」

「嘘だろ、見られてたのか、よ...」

 

2人のひったくり犯は素直に駆けつけた自分の目を見てくれた。

写輪眼発動である。

そういえばこんなに簡単に写輪眼ひっかけられたの久しぶりかもしれないと思ったのは秘密だ。

 

「終わりましたー。」

「やっぱ目が合うだけで瞬殺って良いわ、楽で。」

 

ひったくりの被害者となってしまったと思ったら一瞬で解決していたという珍しい体験をした女性は混乱して。

 

「あの、一体どういう事なんでしょうか?」

 

と尋ねて来た。

なので落ちていたハンドバッグを拾い女性に渡してから

 

「貴方のバッグは無事戻ってきた、そういう事ですよ。」

 

そう返した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

事務所へと戻る車の中

 

「いやー、最後の最後でひったくり犯捕まえるとかやっぱ持ってるわメグルって。」

「ほとんどバブルビームさんの手柄でしょうに、何言っているんだか。」

「僕だけだと2人の拘束までは少し手間取っただろうからね、君がいてくれて助かった。そう思っているのは確かだよ。...しっかし最後までトラブルに突っ込んで行ったねー、メグル。」

「行けって行ったの誰ですか。」

「先に気付いたのどっちだっけ?」

「...バブルビームさんも気付いてた癖に。」

「ハハハ。」

 

相変わらず誤魔化す時は変な笑い方をする人だ。

 

「でもこのコンビも終わりかー、楽しかったよメグル。」

「自分もいい経験させて貰ったと思ってます。それに、楽しかったです。」

「ハハハ、それが一番だよ。さて、雄英って仮免取るの2年だよね。」

「?カリキュラムではそうなってますね。それがどうしたんですか?」

「仮免とった子にはインターンっていう制度があるのさ。職場体験の一歩先、ほぼプロヒーローとしての雇用って感じだね。」

「それってつまり、内々定って事ですか!」

「その通り!君がこの一週間で積み上げた実績ならまず間違いなくウチの事務所は君を受け入れる。来年の体育祭で大ポカしない限りはだけどね。」

「来年の体育祭にかかるプレッシャー!まぁ雄英的にはいつもの事ですけれども。」

「頑張ってPlus Ultraしたまえ、若人よ。」

「何様ですかバブルビームさん。」

「ヒーロー様だよメグルくん。」

「あ、その返し好きかも知れません。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昼食は、自分と焦凍、エンデヴァーにバブルビームさんと一緒に何故か出された高そうな蕎麦をつついていた。

 

「なぁ蕎麦マイスター焦凍、この蕎麦って高いヤツか?」

「なんだその称号...まぁいい、この蕎麦は雪村蕎麦っつう蕎麦粉8割小麦粉2割の本格派生蕎麦だ。生蕎麦ってのは蕎麦粉が3割入ってれば生蕎麦って言っていいんだが、この雪村蕎麦はその法律をガン無視してひたすら美味い比率に仕上げた事が特徴だな。」

「なるほどなー、つまり高い蕎麦か。いいんですかエンデヴァーさん、俺みたいなのに食わせて。」

「フン、別に構わん。貴様はこの一週間で十二分にこの事務所に貢献した。その労いのようなものだ。」

「だってさメグル。トップからのお達しだよ、存分に食べるといいさ。」

「それじゃあ遠慮なく頂きます。」

 

蕎麦は美味かった。

 

「それでエンデヴァーさん、なんだって俺たちと食事なんてしてるんです?何か俺たちに言いたい事でもあるんですか?」

「...いいや、単にこの職場体験の総括を伝えようと思っただけだ。」

「聞くのがちょっと怖いな、焦凍。」

「別に大した事言われないだろ。」

「まず焦凍、お前は良くやった。ヒーロー殺し確保の件もそうだが、どこぞの馬鹿と違い普段のパトロールではきちんと指示を守り、市民に安全を示した。及第点だ。」

 

焦凍はその言葉に舌打ちで返した。お前...

 

「そしてメグル、お前は...馬鹿だな。」

「いや、否定できませんけどもう少し言い方って奴を...」

「だがその観察力と行動力には目を見張るものがある。そして保須事件の時に見せた戦闘力の高さも合わせて考えると2流のプロとしてなら今すぐにでもやっていけるだろう。」

「よかったじゃんメグル、褒められてるよ!」

「これ褒められてるんですか⁉︎」

「フン、あとは訓練の時に露呈した集団戦に弱いという弱点をどう克服するかだ。精々精進しろ。」

「承知しました、エンデヴァーさん。」

 

ヒーロー殺しステインの影響やインサート事件など、まだ見ぬヴィランの脅威はあるもののひとまず職場体験学習はこれにて終了である。

 

「さて、帰るか焦凍。」

「ああ、そうだな。」

 




エンデヴァーはもっと面白く書きたかったですねー。蕎麦屋の貸し切り予約したのに焦凍ににべもなく断られる様とか、焦凍の前だとサイドキックの皆に一目瞭然なほど張り切る様とか。
挿入できる場面を無理に作るとなると今以上に無理矢理な展開になるのでスパッとカットしてしまいましたけどねー。

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