【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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主人公のコスチュームに装備が少なかったのは要所要所でパワーアップをしていくためです。
というわけでコスチューム強化編第1弾です。


期末テスト編
コスチュームβ慣熟訓練


職場体験を終えたその翌日

生徒たちは一週間の職場体験の話で持ちきりだった。

 

まぁ爆豪が8:2になっていたり、麗日が格闘に目覚めていたり、峰田がMt.レディの所でトラウマを得ていたりが大きな変化だったが注目を集めたのはある1人であった。誰だって?言わせんな畜生。

 

「よ、ヴィラン潰し!」

「畜生、やっぱり教室でもそう呼ばれるのかい。」

「動画見たよー!凄い動きだったよー、最後はアレだったけど。」

「最後アレ言うな、アレしかなかったんだよ。」

「でも凄かったぜ団扇!戦ってたのUSJに来てた奴の仲間だろ?そんな奴を倒すとか大金星じゃねぇか!」

「切島...ありがとう。なんか初めてヴィラン潰しとか嫌な枕言葉つけられずに褒められた気がする。」

「まぁ最後グロかったのは同意だけどな。」

「上げて落とすタイプかこの野郎。」

「まぁ団扇が妙な目に合うのはいつもの事だし。」

「畜生、言い返せねぇ。」

 

そんな会話をしながら自分の席に荷物を置き、皆に宣言する。

 

「さて...東京土産だ!東京ばな奈持ってきたぞー!」

 

「ウェーイ!」

「私好きなんだよねー。ありがとー!」

「メルシィ☆ま、僕のキラメキにはちょっと似合わないけどね☆」

 

「俺と轟に感謝しろよー、これ轟と割り勘だから。」

 

「ありがとー轟!」

「感謝する。」

「ありがとよ、轟!」

「おう。」

 

「そう轟!お前ら大変だったよなヒーロー殺しの件!」

「命があって何よりだぜマジでさ。」

「エンデヴァーが救けてくれたんだってな!流石NO.2だぜ!」

「...そうだな、救けられた。」

「うん。」

 

尾白は言った。ヒーロー殺しへの恐怖を押し殺しながら。

 

「俺ニュースとかで見たけどさ。ヒーロー殺し敵連合ともつながってたんだろ?もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ。」

 

そんな尾白に上鳴は軽率に言ってしまった。

 

「でもさあ、確かに怖えけどさ尾白動画見た?アレ見ると一本気っつーか信念っつーか、かっこよくね?とか思っちゃわね?」

「上鳴くん...!」

 

緑谷の声で自分が軽率な事を言ったと自覚した上鳴は

 

「あっ...飯...ワリ!」

 

と素直に謝った。

それに対して飯田は、傷の残った左腕を眺めながら言った。

 

「いや...いいさ。確かに信念の男ではあった...クールだと思う人がいるのも、わかる。

ただ奴は信念の果てに"粛清"という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ。」

 

飯田は掲げた右手をビシッと伸ばすいつもの動きをしながら宣言した。まるで暗いものを吹っ切るかのように。

 

「俺のような者をもうこれ以上出さぬためにも!!改めてヒーローへの道を俺は歩む!!!

さぁそろそろ始業だ、席につきたまえ!!」

 

その姿は格好いいと素直に思えるものだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一週間ぶりのヒーロー基礎学の時間、ヒーローコスチュームへと着替えた自分達は運動場γへと集められていた。

今日の訓練は救助訓練レースだ。この迷路のような訓練場のどこかにいるオールマイトが出した救難信号を辿って助けに行く順位を競う遊びの要素を含んだ訓練である。

 

自分は1組目の緑谷、尾白、飯田、芦戸、瀬呂との組み合わせであった。

個性の強さだけを考えると瀬呂、緑谷、飯田の3人に勝つのは難しいだろうがこの会場は迷路となっている。ならば救難信号から最適なルートを選択できれば勝機はあるだろう。

まぁ、この運動場の地図など把握している訳もないので机上の空論な訳だが。

さて、ほぼ負け確のレースだとしても頑張らない理由にはならない。こういう時の校訓、Plus Ultraだ。

 

「START!」

 

とりあえずダッシュで救難信号の元へ駆ける。上空を飛ぶように動く緑谷と瀬呂は羨ましいが無視だ。

前を走る飯田からどんどん離されていく、上への機動力を持つ尾白や芦戸にも離されていく。

どうするべきかと焦りを感じ始めた時、上から緑谷が落ちて来た。

受け止めようと咄嗟に体が動くも緑谷とはかなり距離が離されているため手は届かなかった。

 

「大丈夫か?緑谷。」

「大、丈夫ッ!」

 

緑谷は痛みを無視して再び立ち上がり、救難信号へ向けて跳んで行った。

 

ちなみに大幅にタイムロスした緑谷にさえ離された結果、自分の順位は当然の最下位であった。

 

 

「フィニーッシュ!」

 

地面にうつ伏せに倒れる俺と緑谷。緑谷は落下のダメージから、自分は体力を出し切った疲労からだが。

 

「一番は瀬呂少年だったが、皆入学時に比べて個性の使い方に幅が出てきたぞ!!個性がこのレースに向かなかった団扇少年は...ドンマイ!」

「...課題と思って精進します。ドントマインドなんて言ってられる結果じゃないので。」

「タイムだけ見れば結構良かったから気にする必要は本当にないんだぜ?だがその考え方はグッドだ!団扇少年に限らずその調子で期末テストへ向けて準備を始めてくれ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

更衣室にて。

 

「なぁ焦凍、お前コスチュームの改良ってパワーローダー先生のとこ行ったんだよな?」

「ああ、そうだ。なんかコスチューム変えんのか?」

「身につけられる鏡が欲しかったってのと、今回の件で身に染みた機動力を確保できるサポートアイテムがないかを相談してみる感じだわ。」

「お前タイムは悪くなかったんだからそんなに気にする必要はねぇと思うぞ?マジで。」

「んー、そうなんだけどさ。」

 

思い出すのは二つの事。

今日の訓練で目に見えるところに落ちて来た緑谷を助ける事ができなかった事。

もう一つは、入試の時麗日を救けるために走り出しても結局何も出来なかったという事。

どちらも原因は明らかだ。自分にはスピードが足りないのだ。

 

「助けを求める誰かの元へ駆けつけようとして"間に合いませんでした"じゃすまないだろ。」

「...確かにそうだな。」

「そういう訳でアイテムでなんとかなりそうならなんとかしたいと思う訳よ。」

「そうか、頑張れよ。」

「おう。」

 

そんなしんみりムードをぶち壊したのはクラス1の性欲魔人、峰田実の悲鳴だった。

 

「あああ!!!!目から爆音がああああ」

「ちょっと目を離した隙に妙な事になってるッ!」

「自業自得だ、言わんこっちゃない!」

 

「ちなみにどんな状況?」

「峰田が女子更衣室への覗き穴を見つけたのだが、そこに耳郎のイヤホンジャックが飛んで来たようだ。」

「容赦ねぇな耳郎の奴、なるべく怒らせないようにしよう。」

「同感だ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

帰りのホームルームで林間合宿が告知されるも、期末テストで赤点取ったものは学校で補習地獄という通告がなされた。

 

とはいえ期末試験までにはまだまだ時間がある訳なので、今のうちにからしっかり勉強していれば筆記で赤点を取ることはないだろう。

ちなみに実技試験は、ボランティア仲間だった中学の先輩で今は雄英の普通科に通っている丸藤先輩に聞いてみたところ、ロボ相手の実践演習だとのことである。大問題だよ畜生。

クラスの皆にその情報を拡散したところ喜び10割だった。皆あの入試を突破している訳だしそらそうよね。

 

そんな訳で対ロボ用の装備も必要かなーなどと思いながら鉄の扉の前に立つ。パワーローダー先生の工房だ。ノックしてみたところ「やめろ、今は入るな!」と言われた。え?

 

ドンジャララ、ズゴーン、ドギャーン、バキバキバキ、ドジャーン

 

多種多様な物が壊れる音がした。これ中に入って止めるの手伝うべきだろう。そう思いもう一度ノックをしてみたところ

 

ドアが、こちらに倒れて来た。

 

とはいえ自分はヒーロー科、この程度のアクシデントはいつもの事である。ドアを支えるように力を入れ、声をかける。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

「おう、なんとか収まった。この馬鹿、また妙な失敗作を作りやがって。」

「フフフフフ、失敗は発明の母ですよパワーローダー先生。」

「とりあえずこの扉戻して良いですか?」

「おう、頼むわ。」

 

扉を戻し、ぐちゃぐちゃに散らばっている様々なアイテムを棚とかに戻してから名乗る。

 

「ヒーロー科の団扇巡です。コスチューム改良の相談があって来ました。」

「もうコスチューム改良か、随分と性急だな。」

「そうなんですか?友達にもう改良した奴がいるのでそう早くはないと思うんですが。」

「ああ、轟くんだね。成る程、彼からここの事を聞いたのか。」

「はい、それで改良の件なんですけど、相談しても良いですか?」

「ああ、かけてくれ。」

 

そうして差し出された椅子に座る自分。自分の椅子に座るパワーローダー先生、そしてデスク近くの机にかける発目。

 

「おい発目、何しれっと参加してる。」

「フフフフフ、コスチューム改良気になりますので!」

「良いですよ自分は、三人寄れば文殊の知恵って言いますし。」

「君が良いなら良いんだけどね。それじゃあコスチュームの説明書だして、細かい点ならちゃちゃっと修正できちゃうから。」

「どうぞ。あ、それなら砂鉄入りのグローブに鏡をつけたものとか追加出来ますか?とりあえず期末試験には必要な装備なんでこっちは急ぎでお願いします。」

「そのくらいなら大丈夫。でも鏡ってのは何のために?」

「自己催眠で脳のリミッター解除って技を持っているんで、その発動のためですね。」

「成る程、ならそんなに大きく無くて良いのね。」

「お願いします。とはいえこっちは前座みたいなものなんですけどね。」

「前座?」

「お、ようやく本題ですか、待ちくたびれましたよ!」

 

こほんと一度咳払いを挟む。

 

「機動力を得るためのサポートアイテムが欲しいんです。自分の個性だと機動力はどう頑張っても鍛えられない訳なんで。でもサポートアイテムでどんな事が出来るのかはわからないのでこっちは相談レベルなんですけどね。」

「成る程機動力か、よくある話だね。」

「あ、やっぱ先輩がたにも悩んでる人はいるんですね。」

「そらそうよ、ヒーローの永遠の課題だもの。」

「それならば!良いベイビーがありますよ!」

「ベイビー?」

「コイツは発明の事をそう呼ぶのさ。」

「ええ、体育祭で使ったベイビーを改良したものに、ピッタリなものがあります!ザ・ワイヤーアロウです!」

「お、格好いい名前だ!」

「はぁ、それかぁ。」

「ええ、体育祭の時よりも巻き取り速度やコントロール性能を強化してホバーソールの補助なしでも目的地まで行けるように改良したのです!」

「おお!」

「ただ、巻き取り速度を速くしすぎて並みの反射神経では扱いきれないじゃじゃ馬とかしてしまったんですけどね!」

「...ちょっと試してみたいな。反射神経には自信があるんだ。」

「おお、流石ヒーロー科!是非ともテストをお願いします!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

やってきたのはサポート科が試験の為に使っている森である。

 

「さあ、私のドッ可愛いベイビーを使いこなして見せて下さいな!」

「とりあえずそこの木を的にして、発射!」

 

ワイヤーアロウは問題なく木に刺さった。

 

「さあ次は巻き取りです!」

「おうとも!」

 

肩についてる巻き取りスイッチをオンにする。すると結構なGとともに自分は木に向けて高速で近づいていった。とはいえまだ対応圏内のスピードだ。

木にぶつかる寸前に巻き取りスイッチをオフにして足でクッションを作る。着地成功。

振り返ると10メートル近くを一瞬で移動していた、凄まじいぞこのワイヤーアロウ。

 

「凄え、思った以上のスピードだった。これを使いこなせれば俺は一段上に行ける気がする!」

「私も私のベイビーを初見で完璧に使いこなされるとは思いませんでした!やりますねヒーロー科の人!」

「団扇巡だよ!まぁ俺の名前はどうでも良い、このワイヤーアロウについてだ!操作系統を腰に纏めるとか出来ないか?射出したワイヤーアロウを引っ掛けてから肩の巻き取りスイッチに触るってのは咄嗟の操作では難しそうだ。」

「射出と巻き取りを同じコントローラで行いたいという事ですね!分かりました!」

「とりあえず俺はもうちょいこのワイヤーアロウのGに慣れるために数こなしてみる。なんか気になる点が出てきたらすぐ止めてくれ。」

「分かりました!」

 

2人だけの特訓の世界に入り始めた巡と発目。パワーローダー先生は思わず

 

「団扇巡...あの発目のピーキーな発明をあそこまで使いこなすとは...流石ヴィラン潰しと呼ばれるだけはある実力者だということかな。」

 

と呟いたとか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから3日後

 

「完成しましたよ!新コスチュームが!」

 

との発目からのメッセージを受けて向かったのは運動場γ。

新コスチュームのテストにはうってつけの試験場である。パワーローダー先生に立ち会いをお願いしたのでコスチューム着用も問題なし。

 

新コスチュームの装備を確認する。

いつも通りの黒コート。

砂鉄入りグローブ、手の甲に丸く鏡が付いている。

肘、膝、脛を守るプロテクター

そして新コスチュームの目玉ワイヤーアロウ。

 

前の黒コート以外殆ど何もないコスチュームと比べたら雲泥の差である。要望って大事だわ。

 

「さあさあさあ!我がベイビーを内蔵したその新コスチュームの力を!見せてください私に!」

「ああ!つってもその位置からじゃ見えなくねぇか?」

「安心してください、監視用のドローンを配置してますからここからでもきちんと見れますよ!」

「それなら安心だ、始めるぞ!」

 

先日の訓練の時と同じスタート地点に着く。

目的地も同じビルの屋上だ。

 

腕時計のストップウォッチ機能を起動させ計測をスタートする。

訓練の個人的リベンジを始めよう。

 

地上からビルの屋上へとワイヤーアロウを打ち込み全速で巻き取る。

壁に足がついた時点で巻き取りを停止させ、その慣性を使って上へと駆け上った。

ビルの登頂までかかった時間は5秒、良いタイムだ。

 

次の目的地のビルまでは距離がある。このワイヤーアロウの射程距離25メートルでは単発では届かないと踏んだので某蜘蛛男的な移動を試してみる。

 

右のワイヤーアロウを右前方に打ち付けてビルから飛ぶ。

振り子運動で大きく距離を稼いでから左のワイヤーアロウを射出し右のアロウを回収。再び振り子運動で距離を稼いだのち右アロウを射出しビルの屋上へと登る。

 

タイムは合わせて20秒、地べたを走っていた時とは比べ物にならない。

 

オールマイトがいたビルまではあとひとっ飛びだ。

 

なので試していなかった両方のワイヤーアロウの同時射出をやってみる。

速度は変わらないが力が両側に分散するので負担は軽くなった。が、片側射出でも大して負担はなかったので使う事はあまりないだろう。

 

着地成功。タイムは合計で25秒、瀬呂の出した35秒というタイムを余裕で超えた大記録だ。

 

ちょっと感動してたら発目から電話がかかってきた。

 

「ヒーロー科の人、ナイスでした!私のドッ可愛いベイビーの使用感はどうでしたか⁉︎」

「今のところは問題なし、腰にまとめた操作系も扱いやすくてグッドだ。ただ耐久性が心配だな。初使用だから機械に負担をかけない飛び方がイマイチ分からん。」

「そのベイビーに使われてる素材は強化炭素繊維です、人1人の重さ程度ではどんな使い方してもビクともしませんよ!」

「いやワイヤー自体は丈夫なのはわかるんだけどアロウの引っ掛かりの部分とかワイヤーの巻き上げする部分とか荷重かかるだろ、その辺がちょっと不安でさ。」

「そのベイビーは人を抱えた状態での試験も4時間連続稼働可能という結果を示しました!本体部分、ウィンチ部分、アンカー部分ともに耐久性に問題はノーですよ!」

「そうか、それは心強いな。とりあえず慣らし運転感覚でもうちょい試してみる。なんかテストのオーダーはあるか?」

「それなら両方のワイヤーアロウの巻き上げ速度を調整しての空中機動をお願いします。理論上可能だってのはわかっているんですがテスターの方が匙を投げた難しさだそうで。」

「了解だ、発目。」

「お願いしますね、ヒーロー科の人!」

 

屈伸とアキレス腱伸ばしで軽くストレッチ。

 

「さて、行きますか!」

 

次の目的地は決めていない。時間制限ギリギリまでこの運動場γを自由に飛び回ってみよう。

 

差し当たっては発目から依頼されていた両方のワイヤーアロウの巻き上げスピードを変更しての立体機動だ。

 

できれば相当格好良いぞ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「正直もっとバカスカ落ちるだろうなと予測していたんですがなかなかやりますねヒーロー科の人、一度も落ちていませんよ。...おや、空中機動を若干ですが行えてますね、」

「物凄く器用なんだね、あの子は。サポートアイテムのテスターとして見ても相当優秀だよ。...発目、これからの3年間でお前の作ったアイテムを一段上に上げてくれるのはああいう子だ。仲良くしておけ。」

「ええ、分かりましたパワーローダー先生!あの...団扇マグロさんとはしっかり仲良くさせてもらいますとも!」

 

左のワイヤーアロウを使った振り子の要領で発目たちの元へと着地する。

そして文句を一言。

 

「巡だよ!誰がマグロだ!死ぬまで泳ぎ続けたりはしねぇよ!」

「おや、マグロさん。お早いお帰りですね。」

「...あれ、これもうマグロで定着した奴ですか?」

「...諦めろ、コイツはそういう奴だ。んでどうしたんだ?」

「右のから異音がし始めました。立体機動試してからです。チェック頼みます。」

「おや、本当に良いテスターだね。ちょっと見せてみな。」

「お願いします、パワーローダー先生。」

「私も見ます、ベイビーの問題は私の問題でもありますので!」

 

まずは異音の確認。射出したワイヤーアロウを巻き取るときに何かが削れるような音がしたのだ。

 

「うん、何かがウィンチ部分に入り込んじゃったのかな。分解清掃で直る程度のモノだと思うから心配はしなくて良いよ。」

「その状態で稼働させ続けるとどうなります?」

「うーん、ウィンチ部分に入り込んだモノの大きさや硬さによるね。小石とかなら巻いてるうちに擦り潰れるから大丈夫、でも金属みたいな硬いモノだったらウィンチ部分に深刻なダメージになるかもって感じ。」

「つまり異音がし始めたら緊急使用以外は使わない方がベターってかんじですか。」

「そうだね。んじゃ、パパッとやっちゃうから一旦本体外してね。」

「はい。」

 

取り出した本体に飛びついたのは当然ように発目であった。

 

「さぁ、私の可愛いベイビー、故障箇所を見せて下さいね!」

「凄い手際の良さ⁉︎」

「サポート科をコイツ基準で考えないでくれよ?コイツはある種のアレだから。」

「そこ素直に褒めて良いんじゃないですか?」

「いやだってコイツ調子乗るし。」

「...見つかりましたよマグロさん!この服のボタンが異音の原因だったようです!」

「メグルな、てかこのボタンって...コートのボタンが一個取れてたわ。」

「巻き取りの際に引っかかってしまったのですかね?とはいえボタン程度でどうにかなるベイビーではありません。同じ異音でも今度は無視して大丈夫ですよ!さあさあさあ!テストを再開して下さいな!」

「了解だ。」

 

再び始めるコスチューム慣熟訓練

運動場γを借りている訓練時間はあと30分だ、1秒たりとも無駄にはできない。

 

そう思い、再び飛ぶ。周囲の景色が凄いスピードで後ろに流れていく。自分が風になったかのような気さえする。

瀬呂っていつもこんな風景を見ていたんだろうか、ちょっと気になったので明日にでも聞いてみよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

帰り際、携帯に扉さんから連絡が入った。

なんでも、起訴中に別件起訴を食らって裁判が長引いていた我が親父の判決が下ったのだそうだ。

判決は禁固3年、前科があるので執行猶予はなし。予定していた最良の結果である。流石敏腕弁護士の綾里さんだ、当分足を向けて寝れそうにない。

禁固3年ということは仮釈放は2年で済む筈なので高3の時には一緒に暮らせるだろう。

そう思うとかなり嬉しくなって、思わずガッツポーズをしてしまった。

 

 

 




裁判フェイズはカットです。何故って?司法関係の設定が本編でまだ出てないからです。独自設定で裁判ネタやるのは危険すぎるとの判断です。日和ってすみません。

それだけではアレなのでウルトラアーカイブ的設定

団扇巡
HERO NAME メグル

数奇な運命の果てに雄英に入学した倍率300を超えられなかった少年。
成績も良く運動もできる優等生の筈なのだがとにかく運が悪い。この短期間でヴィランに遭遇しまくる様は何か持ってるとは職場体験で一緒だったヒーローの談。お祓いに行くべきか真剣に悩んでいる。

個性 写輪眼

目を合わせた相手への催眠と身体エネルギーの流れを見る能力の複合個性。8年もの間磨き続けた催眠の腕は超一流だ!

PERSONAL DATA

所属:雄英高等学校ヒーロー科1年A組
出身:私立落花生中学
Birthday:4月2日
Height:172cm
血液型:AB型
出身地:千葉県
好きなもの:MAXコーヒー、チョコレート
戦闘スタイル:近接格闘

HERO’S STATUS

パワー C
スピード B(コスチューム装着時A)
テクニック A
知力 B
協調性 A

ウルトラアーカイブ特有のガバガバステータスなので信用はしないように。

団扇巡のヒーロー適正

過剰にすらなりがちな人助け精神
職場体験学習という学校行事の中でさえも困った人を見ると体が自然と動くタイプ。だがその人助けがあまり報われる事はない。

ヴィラン潰しという異名
敵に対して全く容赦をしない残虐ファイトっぷりから付けられた異名、本人的には気にしまくってるが残虐ファイト癖はおそらく直す気はない。だって手加減とかできるほど強くないし...

知人の声 発目明
私のドッ可愛いベイビーを十二分に使いこなしてくれる良いテスターさんです!実はマグロさんに試してほしいベイビーがあるので後でご連絡しますね!

プロヒーローの声 エンデヴァー
フン、馬鹿なガキだが見所はある。広い視野と観察力で助けを求める人を見つけ駆けつける様はどこぞのヒーローを思い出すので不快だがな。だが焦凍の成長を促すにはああいったタイプの人間との付き合いも必要だろう。期待しているぞメグル。

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