【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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一週間に一度の更新を目標としてましたがスマホの不調、モチベーションの出なさ、書く時間の無さなどが重なりついに週一更新失敗しました。お待たせしてしまい申し訳無い...



演習試験

ヒーローコスチュームを着て集まる1-A生徒たち。

対するは多くの先生がた、ただ何故か服装からエクトプラズム先生と思われる方が見覚えのあるヘルメットを付けている。

嫌な予感がしてきたぞー。

 

「それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたきゃみっともねぇヘマはするなよ。」

 

「先生多いな」と耳郎が呟く。集まった先生方は見えてるだけで8人もいた。確かに多い。

 

「諸君なら事前に情報を仕入れて何するか薄々と分かっているだろうが...」

 

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

「花火!カレー!肝試ーー!!」

 

上鳴と芦戸が騒ぎ出す。そんな中

 

「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

と、相澤先生の捕縛武器の中から校長が現れて宣言した。

上鳴と芦戸が固まった。俺も固まった。八百万に「この情報を使え!(ドヤ顔)」とかやっちゃったよ...

 

「それはね...(ヴィラン)活性化の恐れのある社会情勢故に、これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!

という訳で諸君らにはこれから、チームアップでここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

「先...生方と...⁉︎」

 

麗日が戦慄し言葉を零す。

 

「尚、ペア、トリオの組と対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や成績、親密度...諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表していく。まず切島と砂藤がチームで、セメントスと。蛙吹、常闇、団扇がチームで、エクトプラズムとだ。尚このチームは3人のため他チームとの格差をなくすためエクトプラズムには追加装備を渡してる。」

「コノヘルメットダ。ミオボエガアルダロウ?」

 

そこにあるのは授業参観のときに使ったAR内蔵高性能ヘルメットである。つまり俺の催眠は通じないという事だ。

 

「俺に対してガンメタすぎて笑えねえ...」

「大丈夫よ団扇ちゃん。私たちは3人、他のチームよりそれだけで有利なのよ。」

「その通りだ。催眠による一撃必殺はできなくなったがそれだけだ。お前の格闘能力なら十分な戦力になる。」

 

蛙吹のしたたかさに常闇の強力な黒影(ダークシャドウ)、確かに総戦力としてはプラスだ。ここはポジティブに考えよう。

 

「ありがとよ、蛙吹、常闇。それじゃあ頼らせて貰うわ。」

「任された。」

「ケロケロ。それと団扇ちゃん、梅雨ちゃんと呼んで?」

「恥ずかしいのでNoだ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

演習試験のルールは単純、誰か一人がステージから脱出するか、渡されたハンドカフスをかける事が出来れば生徒側の勝利。

制限時間は30分。

尚、戦闘を視野に入れさせるため、教師陣には体重の約半分の重りをつけている。

 

「受験者...我々はステージ中央スタートか。」

「逃走成功には指定のゲートを通らなきゃいけないのね。となると...先生はゲート付近で待ち伏せかしら。」

「多分な。エクトプラズム先生の個性ならゲート前からでも俺たちを攻撃する事ができる。とはいえ分身の発現は俺の目で見切れる。不意打ちの心配はしなくて大丈夫だ。」

 

『レディイイーー...ゴォ!』

 

「移動中に話した通りに行くぞ。」

「ええ、エクトプラズム先生は私たちを囲む筈だわ。なら...」

「開幕は...」

 

「「「逃げの一択」」」

 

周囲を囲むようにエクトプラズム先生の身体エネルギーが流れて来た。

「案の定囲みに来た!」

「蛙吹、投げる!」

 

常闇は黒影(ダークシャドウ)を使い蛙吹を投げ、蛙吹は壁に着地した後常闇を舌で巻き、引っ張り移動させる。その引っ張られている間常闇は黒影(ダークシャドウ)で俺のカバーリングをし、俺はワイヤーアロウを使い蛙吹の場所まで一気に移動した。

 

「全員逃亡成功、第1段階はクリアだな。」

「ああ、だが気を抜くなよ!」

 

エクトプラズム先生の作り出した分身を見る。どういう理屈かはわからないが、コスチュームは複製されているが厄介なヘルメットは分身に持たされていないようだった。好都合だ。

 

「団扇!エクトプラズム先生の動きは⁉︎」

「...流石に早い!前2体、後ろ3体来るぞ!」

「前は常闇ちゃんが突破して、後ろは私が牽制するわ。」

「いや、殿は俺がやる!常闇の黒影(ダークシャドウ)に催眠が効くのなら!」

 

振り向いて分身生成のタイミングで中央の一体と目線を合わせる。

写輪眼発動、命令は、『俺たち以外をぶちのめせ』

手応えはあった。

 

「案の定!分身にだって催眠は通る!」

「吉報だな!」

 

後ろからやって来ていた三体の分身の一人が残り2人を蹴り飛ばした。

これで後ろは無視できる。

前では常闇が一体、蛙吹が一体を通路脇に押しやり、道を開いていた。

 

「団扇ちゃん!」

「おう!」

 

3人で5人の囲いを突破した。

最初に囲んで来た分身は6体、今突破したのは5体、これで合計11体。エクトプラズム先生の分身の最大量は約30体なので残りは約20体、1/3クリアだ。

 

「前5体来るぞ!」

「キリがないわね。」

「だがやれる!俺たちならば!」

 

分身が発現する瞬間に写輪眼を合わせようとする。

だが分身たちは生成時点で目線を下に向けていた、対応が早いッ!

 

だがそれが有効なのは自分に対してのみ、蛙吹と常闇がフリーになった。

「全員目線が足元に向いた!蛙吹、常闇、チャンスタイムだ!ボコっちまえ!」

「そこは他力本願なのね団扇ちゃん。」

「無駄口を叩くな、来るぞ!」

 

5人の分身が襲いかかって来る、だがその狙いは大雑把にならざるを得ない。それは隙だ。

常闇の黒影(ダークシャドウ)が瞬く間に5人を倒していた。

 

「流石常闇、だが!」

 

写輪眼で見えていた、常闇の背後に分身が現れようとしているのが。

 

なので発現する瞬間に合わせて顔面を思いっきり蹴り飛ばした。

 

「多分あのARメットでこっちの動きを把握されてる、油断はするな!」

「感謝だ団扇!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

某日、職員会議にて

 

相澤先生が言った。

 

「蛙吹、常闇、団扇の3人組の相手はエクトプラズム先生にお願いします。また、その際は授業参観で用いたARヘルメットを使い団扇の試験前の催眠を防いで下さい。」

「ウム、了承シタ。ダガ試験前二個性ヲ仕掛ケテクルヨウナ生徒ダッタカ?団扇ハ。」

「やりますよあいつなら。パワーローダー先生に確認したところ、あいつはサポート科のツテを使って例年の試験に使っている仮想ヴィランの設計図を盗み取った痕跡があります。あいつはなんでもアリの状況で本当になんでもする奴です。」

「ナント!ソコマデヤル生徒ダッタカ、気ヲツケルトシヨウ。」

 

「それでは、肝心な試験で突くべき課題です。まずは常闇、常闇は強力無比な黒影(ダークシャドウ)という個性を持っていますがその個性に頼っているが故に個性でカバーしきれないクロスレンジが弱点です。分身による不意打ちなどでそこを突いて下さい。

次に団扇、団扇は職場体験学習の際のエンデヴァーからの報告ですが、対多数を行う際でも自分の目に頼り切るきらいがあります。囲むなどして視界外からの攻撃を加えて下さい。

最後に蛙吹、蛙吹には弱点と言った弱点はありません。なので今回の試験では弱点を突かれ動揺するであろう二人のカバーができるかどうかが課題といえば課題ですね。何か質問はありますか?」

 

「ウム、支給サレルARヘルメットデ出来ルコトハ何ガアル?3人ノハンデトシテノ装備ナラ団扇ノ個性ヲ封殺スルタメダケノ物デハナイダロウ?」

「ええ、ヘルメットは監視カメラとリンクさせて生徒の動向を把握出来るようにしています。不意打ちに役立てて下さい。」

「承知シタ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ステージの三階通路を走る3人、不意打ちは多くあったものの何とか乗り切れていた。

が、少し前から不意打ちも待ち伏せも無くなっていった。

 

「不気味ね。団扇ちゃん、何か見えない?」

「...いや、前も後ろも何も見えん。常闇、警戒しとけ、多分何かの罠だ。」

「ああ...見えたぞ2人とも、ゲートだ!予想通り先生が待ち構えている!」

 

ゲートを見ようと下を見た瞬間、膨大な量の身体エネルギーが巨人を作るかのように集まっているのが見えた。

 

エクトプラズム先生の意図を把握した自分は咄嗟に叫んだ。

 

「常闇!蛙吹!散れ!デカイのが来る!」

 

叫びながら柵を乗り越え通路から落ちる。が、叫んだのとその巨人が発現するのは同時だった。

 

「強制収容ジャイアントバイツ」

 

巨人の発現に反応しきれなかった蛙吹と常闇が食われた。幸いにも自分は何とか回避できた。

落下中に巨人の噛みつき二発目が来たので空中でワイヤーアロウを用いて回避、エクトプラズム先生の頭上に移動した。

 

エクトプラズム先生は開けていたヘルメットのバイザーを下げた。エクトプラズム先生の個性の発動は口から身体エネルギーを流す事で発現する。今出している巨人一体で自分の対処は十分という考えだろう。

三発目の噛みつきが飛んでくる。ワイヤーを外してエクトプラズム先生の元へ落下する事で回避、ついでに落下の勢いを使って踵落としを狙う。

が、相手は流石のプロ。しっかりと体重の乗った蹴りで踵落としはいなされた。

 

着地と同時にエクトプラズム先生の右上段蹴りが飛んで来た。両手を使ってのクロスブロックで衝撃を流す。

だが、蹴りの衝撃で距離が離された。巨人の噛みつきが飛んでくるッ!

 

「団扇!」

 

黒影(ダークシャドウ)が自分を後ろから押す事により噛みつきは回避できた。ナイスフォローだ常闇!

 

「ダガ隙ダラケダ!」

 

エクトプラズム先生の中段蹴りが飛んでくる。が、写輪眼でその動きは見えている!

 

中段蹴りを崩れた体勢を更に崩す両膝スライディングで躱しワイヤーアロウをゲートの両脇に放つ。そして高速で巻き取りをする事でさらに勢いをつける!

 

「ゲート貰った!」

「甘イ!」

 

エクトプラズム先生は蹴りの動きを変え自分を踏みつける事で巻き取り始めの勢いを殺し、自分の動きを封じにきた。

 

詰んだ、その言葉が頭をよぎった。謝罪の意味を込めて巨人の体に拘束されている2人を見ようと顔を向けようとした。だが右手の鏡を通して見えた蛙吹の行動から考えが変わった。あの2人はまだ、諦めていないッ!それならばッ!

 

「まだ、終わるものかッ!」

「マダ足掻クカ!」

 

右のワイヤーアロウを回収し、エクトプラズム先生に向けて発射する。当然エクトプラズム先生は回避する。だがそれは俺の拘束が外れるという事!左のワイヤーを巻き取り移動をしようとする。

 

「ソノアイテムノ動キハ大体把握シタ。止メルナラ、ココダ!」

 

エクトプラズム先生は左のワイヤーアロウを踏む事で自分の初動を止めにきた。そうだ、俺を見ろ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ク、黒影(ダークシャドウ)!団扇の援護を!」

「いいえ常闇ちゃん。私達の事を先生に意識させちゃダメ。この巨人の向きを変えられて黒影(ダークシャドウ)ちゃんが届かなくなったら本当に出来る事はなくなっちゃうわ。...タイミングは団扇ちゃんが完全にやられちゃった瞬間よ、コレを使って。」

「コレ?どれだ?」

「あんまりゲコッ...見ないでね。とっても醜いから。」

 

蛙吹は蛙の個性の一部、胃袋を出し入れできる個性を使ってハンドカフスを取り出した。

それを黒影(ダークシャドウ)に渡し確実に決められる一瞬を待つ戦いを始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

左のワイヤーアロウを踏みつけられているため自力では身体を起こす事は出来ない。なら他から力を持ってくるまで。右のアロウを巻き取り始める。エクトプラズム先生には躱されたが、右のアロウは後ろの壁に刺さっていたのだ。

 

「ム、ソウキタカ。ダガ...」

 

エクトプラズム先生は特に動揺するでもなく一歩下がり、上段蹴りを放ってきた。ワイヤーアロウに動きを依存している自分は躱す事が出来ず、側頭部に強烈な一撃を貰った。

だが巻き取りは止めない。この勢いが俺にできる最後の足掻きだッ!

 

「ム!コノ位置取リハ!」

 

そう、右のアロウが刺さったのはゲートの真上なのだ。この勢いで突っ込めばゲートを通れるッ!

 

「サセヌ!」

 

エクトプラズム先生は腹を蹴り上げる事で俺をゲートを通るルートから無理矢理外させた。その結果自分はゲート上に衝突する事となった。ワイヤーアロウが刺さっているため落下はしないが、側頭部に貰った一発と腹に貰った蹴り上げの二発の蹴りのダメージは大きく自分は動く事が出来なかった。

 

だが俺の仕事は終わりだ。エクトプラズム先生は背後から襲いかかってくる黒影(ダークシャドウ)が見えていないッ!

 

そう思った自分は浅はかだったのだろう。この試験の逆ハンデの意味を正確に理解していなかったのだから。

 

「ソノ不意打チハ見エテイルゾ。」

 

背後の黒影(ダークシャドウ)へ向けて蹴りを放つエクトプラズム先生。だが2人の個性を活かした奇襲は完全に防がれた。黒影(ダークシャドウ)の持つハンドカフスを蹴り飛ばす事によって。

 

「何⁉︎」

「そんな、失敗したの?」

「オマエタチニハ教エテナカッタガ、コノARヘルメットハ生徒3名ヲ追跡スル監視システムニリンクシテイル。オマエ達ノ行動ハ全テ筒抜ケダッタノダ。」

 

蛙吹の策は失敗に終わった。ならこの試験を突破するには俺がゲートを通るしかない。右手の甲を見て自己暗示をかける。『痛みなど無い』と。

 

「クソ、黒影(ダークシャドウ)!せめてお前だけでもゲートを通れ!」

「アト10分弱コレヲ続ケルカ?我ガ欲スハ、逆境ヲ打チ崩スヒーローノ瞬キ。」

 

ワイヤーアロウを両方回収して落下する。

 

エクトプラズム先生は黒影(ダークシャドウ)との戦いに集中している。あの巨人が俺を拘束しようとする前に事を終わらせればまだ可能性はあるッ!

 

着地と同時にダッシュしてゲートを通ろうとする。だがヘルメットで見ていたエクトプラズム先生に当然のように止められる。空中で上段蹴りを当てられて撃ち落とされた。

ここまでかと思ったところ、空中で黒影(ダークシャドウ)が自分を掴み、腕を伸ばした。

それを止めようとしたエクトプラズム先生を迎撃したのは蛙吹の舌だった。

 

「蛙吹、常闇、団扇チーム条件達成!」

 

黒影(ダークシャドウ)に押し出され自分がゲートを越えた事によって試験は終了した。

 

「最後ハゴリ押シカ、ダガ悪クナイ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「団扇、大丈夫か?エクトプラズム先生に何発かいいの貰っていたようだが。」

「頭ぐわんぐわんしてるけど大丈夫だ。多分後遺症とか残らないように手加減してくれたんだと思う。」

「でも心配ね、一応リカバリーガールに見てもらったら?」

「そーする。でもその前に、勝った後つったらコレだろ?」

 

自分は両手をあげた。

 

「確かにそうだ。」

「そうね、私たちは勝ったんだもの。」

 

蛙吹も常闇も合わせて手を上げてくれた。

右手で蛙吹の手を、左手で常闇の手を叩く。ハイタッチだ。

 

「んじゃ、戻るか。」

「そうだな。」

「ケロケロ。」




キリのいい所で区切ると6000文字程度でした。投稿遅れた挙句に分量少ないとか...
そんな訳で期末試験のお相手はエクトプラズム先生です。文中でも書いた通り分身で背後を突けるという点からです。
ブラドキング先生とタイマン貼らせるという案もあったんですが一対一でかつARヘルメット付きとかPlus Ultraでも誤魔化せないレベルの高難易度だったのであえなく没になりました。

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