【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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林間合宿編本番その二、調子に乗った結果の地獄のボスラッシュです。


林間合宿襲撃事件

回収地点へとマスキュラーの肩に乗りのんびり移動する俺たち。

暇なのでちょっと気になった事をマスキュラーに聞いてみた。こんな機会でなければ(ヴィラン)と話などできないのだから。

 

「なぁ、マスキュラー。お前なんで(ヴィラン)なんてやってんの?」

「なんだよご主人、藪から棒に。」

「ちょっと気になってな。お前の個性凄え強いのになんで誰かを傷つける側に回ったのかって。」

「単純な話さ、俺はやりてぇ事をやってるだけだ。そしたら世間が俺を(ヴィラン)って呼ぶようになった、それだけさ。」

「なるほどなー、ちなみにやりたい事ってのは?」

「気に食わねえ奴をぶち殺す事だよ。」

「あー、うん。お前生粋の(ヴィラン)だわ。一瞬でも理解できるかもって思った俺の同情を返せ。」

「ははは、そいつは無理だぜご主人、勝手に同情したご主人が悪い。」

「でも、(ヴィラン)だって人間なんだから分かり合えない事はないと思うんだがなぁ。」

「...(ヴィラン)とわかり合うってのは無理だぜご主人。」

「なんでさ。」

「わかり合おうとしてねぇからさ、こっち側が。そんな連中に手を差し伸べての払われるだけだぜ?」

「...そんなもんかね。」

「そんなもんさ。さて、そろそろ回収地点だ。ご主人。」

「初動は任せる。回収地点にいる奴に違和感があったらそれとなく言えよ?」

「おうさ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「オイオイオイ!せっかくお仕事終わらせてやったってのになんだそのゴーグルは、目を見せろやツギハギ野郎。」

「阿呆か、目を見せるわきゃあねぇだろうが。お前みたく馬鹿じゃねぇよ。」

 

気になるワードが出たのでマスキュラーの肩から薄目を開けて回収地点の2人を見る。ツギハギの男と黒タイツの男はそれぞれ鏡のゴーグルを掛けていた。

 

「うん、分かったバレてるわ。」

 

そう言ってマスキュラーの肩から降りる。いきなり計画が破綻したぞオイ。マスキュラーの肩からこっそり全員催眠するというパーフェクトプランが。

 

「なぁ教えてくれないか?なんで作戦がバレたのか。」

「マスキュラーは脳筋だ。」

「そう褒めるなよツギハギ野郎。」

「褒められてねぇよ。」

「仲間に対してもっと優しくしようぜ!マスキュラーはクソ野郎だけどな。」

 

この時点で思った、濃いぞコイツら。(ヴィラン)連合はキャラの濃さとか採用基準にしてるのだらろうか。

 

「んで、なんで脳筋なのが操られてる事に繋がるんだ?」

「マスキュラーなら任務達成しても暴れ足りないとか理由つけて遊ぶだろ。それをしないで素直に任務達成報告をするなんざどう考えてもおかしい。んで回収したのは目標B、写輪眼の団扇巡だ。それなら洗脳されてるって考える方が自然だろ。」

「...うん、信用されてんなマスキュラー。」

「そうか?」

「皮肉だよ畜生。」

「にしてもマスキュラーを洗脳しちまうなんて凄え個性だなこのガキ!ゴミ個性だよ。」

「うん、俺正直黒タイツのお前に物凄いツッコミたい。なんで1人ノリツッコミ連打してくるんだよお前。」

「黒タイツじゃねぇよトゥワイスだ!お前に名乗る名はねぇよ。」

 

そんな会話をしているとツギハギの男がちゃっかりと仲間への連絡を終わらせてしまった。

 

「開闢行動隊総員に連絡、マスキュラーの流した目標B捕獲はデマだ各自行動を続けろ。尚、回収地点はβへと変更する。連絡終わり。」

 

「ちゃっかりしてんなツギハギくん。」

「荼毘だ。さて、やる気はあるのか?」

「回収地点のお前らを制圧すれば爆豪が拐われた場合のケアはできる。予定とは違うが目的は変わらない。荼毘、トゥワイス、お前らをぶちのめす。行くぞマスキュラー!」

「おうさご主人!」

 

返答は荼毘の蒼炎であった。

 

「マスキュラー、トゥワイスを頼む!ただし、殺すなよ!」

「おうよご主人!」

「どうでもいいがマスキュラーがご主人呼びとかキモいな!似合ってるよ。」

 

写輪眼で蒼炎の軌道は見えている。木を背にする形で回避だ。奴もこの山で蒸し焼きにされるつもりは無いだろうしこの位置なら蒼炎は飛ばせない筈だ。

 

「チッ、面倒だな。」

「森の中で炎はさぞ使い辛いだろうさ、殴り合うか?」

「ならトゥワイスの方を援護させて貰うだけ...ッ!」

 

意識が他に向いた瞬間に走り出す。

 

「舐めるな!」

 

荼毘は俺に向けて蒼炎を放ってきた。だがそれは悪手だ。蒼炎によって荼毘自身の視界も塞がれてしまうのだから。

 

急停止して会話の最中取り出して握っておいた石を投げる。当然顔面のゴーグルに向けて。

 

「ッ⁉︎」と荼毘の驚きが蒼炎の向こう側から聞こえてくる。炎を出すのは止まったため投げた勢いを止めずにダッシュで荼毘に近づく。

炎に直に当たらずとも蒼炎の余熱でかなり熱いがそこは無視だ。

 

石の当たった左目を抑えている荼毘を射程圏に入れた、が向こうも名だたる(ヴィラン)、反射で右手から蒼炎を放ってきた。

だが、写輪眼でその動きは見えている。ダッキングで蒼炎を回避してボディに全体重を込めたボディブローを叩き込む。

手ごたえあり、クリーンヒットだ。

 

ダメージから膝をつく荼毘、すかさず顔面を掴み催眠を叩き込もうとするも咄嗟に目を閉じ、全身から炎を出そうと身体エネルギーを回しているのが見えた。

戦力が増えないのは残念だがここは諦めよう。そう思い掴んだ顔を引っ張り顎を膝に叩きつける。

 

蒼炎は止まった。うまく気絶してくれたようだ。

 

「ご主人、無事か?」

「おうマスキュラー、そっちはどうだった?」

「余裕さ、ワンパンで終わっちまった。」

「とりあえず2人は纏めておこう。これで回収地点の制圧完了だ。他に注意すべき個性の奴はいるか?」

「知らねぇ!興味無かったからな!」

「脳筋め...」

「褒めるなよご主人。」

「だから褒めてねぇよ。」

 

マスキュラーは荼毘を運んでトゥワイスの元へと移動し始めた。ふと、何処かから木の枝を踏む音が聞こえた。音の発生源は近かったッ!そう認識した瞬間前に転がり抜けた。後ろを振り返るとシルクハットに仮面の人物が掌に身体エネルギーを集中させて自分を触ろうとしている寸前であった。

 

「マスキュラー、コイツは⁉︎」

「ん?名前は忘れた!」

「忘れんなよ仕事仲間だろ!」

「...私のミスはあれどあの奇襲を躱しますか、中々にやりますね団扇巡。荼毘とトゥワイス、そしてマスキュラーを倒している時点で油断はしていないつもりでいたのですがなかなかどうして。」

「さて、名乗れよマジシャン仮面。マスキュラーけしかけんぞ。」

「ふふふ、良いですねマジシャン仮面とは、気に入りましたよ。ですけど私の名前はMr.コンプレス、コンプレスとお呼びください。」

 

そう言ってコンプレスは礼儀正しくお辞儀してきた。

 

「んで、コンプレス。11人中2人は倒され1人は寝返り2人はプロと戦闘中。残り6人だな。居場所を吐いて貰いたいものなんだが?」

「フフフ、それではまず1人の居場所をお教えしましょう。脳無!」

「⁉︎」

 

地を蹴る音とそいつが着地する音はほぼ同時だった。

黒い巨体、鏡のゴーグル、むき出しの脳みそ。

 

怪人脳無がそこにいた。

 

「何度ネタだよ!事あるごとにそいつと対面してるぞ俺!」

「んー、愉快ですねぇ、一方的に相手が苦しむ状況というのは。」

「マスキュラー、全開で行くぞ!その黒いのはお前より強い!」

「そいつは楽しみだなぁ!ご主人についてきて良かったぜ!」

 

「フフフ、気に入って貰えて何よりです。ですがこちらの方も忘れては困りますねぇ。やりなさい、二号!」

「ご主人!」

 

マスキュラーに抱えられ飛び退いた。何事かとさっきまで自分のいた場所を見るとそこにはチェーンソーやドリルなどの工具を腕から生やした8本腕の脳無が現れた。

 

「オイオイオイちょっと待て、脳無ってそんなポンポンで出てきて良い化け物じゃあないだろうに!」

「ご主人、喋るな舌噛むぞ!」

 

そう言ってマスキュラーは再び8本腕の脳無から距離を取った。

 

「さてさてどうしますヒーローの卵さん。強力無比な怪人脳無二体を相手にして!」

 

「マスキュラー、足の筋肉マックスで動けよ?」

「了解だご主人、どうするつもりだ?」

「決まってんだろ!逃げるんだよぉぉ!」

「マジかご主人⁉︎了解だがな!」

「何と⁉︎ここで逃走を選びますか、ですがマスキュラーのスピードとて一号のスピードには敵わないッ!行きなさい一号!」

 

黒い脳無が迫る。写輪眼が後ろに迫る脳無の動きを見切れば、マスキュラーの最速で回避するくらいは出来る!

 

「右、ダッシュ、左、ジャンプ、木を蹴って、屈んで、ダッシュ!」

「りょう、かい、だ!」

「なんと、一号のスピードを完全に見切っている⁉︎凄まじいですね写輪眼とは!」

 

よし、一号と二号との距離は離れた、これで擬似的に1対2の状況が作り上げられた!

 

「マスキュラー、下ろせ!もう十分だ、脳無のゴーグルを破壊するぞ!」

「待ってたぞその指示を!」

 

マスキュラーは自分を下ろして左右に分かれて挟撃する。脳無の思考ルーチンは単純だ、近い方にいるマスキュラーを狙うだろう。つまり後ろがガラ空きだと言うこと!

 

「筋肉MAX!パワー勝負だぜ黒いの!」

 

マスキュラーはこっちの意図を汲んでくれたのか一号の抑えにかかってくれた。この隙に背後からゴーグルを掠め取り!

 

「動くな、主人は俺だ!脳無!」

 

洗脳解除からの再洗脳、かかった時間は一瞬だった。限界突破訓練様々である。無事に帰れたらこの特訓を考えてくれた先生方にお礼のお菓子でも渡しておこうと心に決めた。

 

「フフフ、洗脳対策はしてあるのですよ!一号、再起動(リブート)!」

「無駄だよ、その洗脳は解除してある。トリガーワードによる再洗脳だろ?それはもう対策済みって事さ!」

「まさか、洗脳を一度解除する事で仕込まれた命令を無力化したのですか⁉︎」

「その通り!さぁ形成逆転だ!行くぞ脳無、マスキュラー!まずは二号を片付ける!」

「ク、ここは引くべきですね!二号、足止めをしなさい!」

 

二号脳無の必死の抵抗虚しく、マスキュラーと一号のダブルパンチによりノックアウトに成功した。顔面のゴーグルを砕いても目が見えなかったのでこの脳無は目が無いタイプなのだろう。仲間は増えなかったか...

 

「ヒュー、逃げてた時も思ったが良いな、この黒いの!ガチでやり合いたいぜ!」

「するなよ、貴重な味方なんだから。」

「しねぇよ、今はな!」

「さて、マスキュラー、回収地点βってのは何処だ?コンプレスを追いかけるぞ。」

「おう、地図出してくれ...ここだな。」

「ありがとよ、取り敢えずこの情報を皆に拡散して、と。...オイ、荼毘とトゥワイスは何処いった?」

「んあ?あれ、いねぇぞ何処いった?」

「お前も知らないって事はコンプレスの個性だな。名前的に触った人を圧縮する個性か?」

「さぁな、俺は知らねえ!」

「もうお前に何かを聞くこと自体が無駄な気がしてきたぞマスキュラー。でもお前以外相談できる奴いないしなぁ...」

「さて、ご主人、回収地点の制圧に行くのか?」

「ああ、俺たち3人ならどんなヴィランも対処できる。戦闘続行だ。」

 

その会話の僅かな時間で回復したのだろう、二号は再び立ち上がりチェーンソーをブンブンと回し始めた。

 

「どうするご主人、多分何度倒しても起き上がってくるぞ。傷が治ってる。」

「んー...一号!二号をボコり続けろ!」

 

その言葉と共に一号は二号を殴り飛ばした。

 

「さて、仕方ないが行くぞマスキュラー。一号は犠牲になったのだ...」

「いや、犠牲にはなってないだろご主人。今も元気に8本腕をボコり続けてるぞ。」

「ハァ、脳無のパワーで後は無双ゲーだと思ったんだがなぁ...」

「そう上手くはいかないって事だ。まぁいいだろ?俺がいるんだから。」

「確かに、頼りにしてるぜ?マスキュラー。」

「了解だぜ、ご主人。」

 

歩いて回収地点βへと向かう。

なんだかマスキュラーと並んで歩くのは妙な気分だ。コイツは(ヴィラン)で俺はヒーローの卵。普通なら相容れない宿敵なれど共に歩く事ができる。催眠とは業の深い個性だとばかり思っていたが、こういう(ヴィラン)更生に使えると考えればなかなか悪くないのではないかと思えてきた。

 

「なあマスキュラー、お前(ヴィラン)辞める気とかあるか?」

「ねぇな!好き勝手に生きれないなんて死んでるのと同じだぜ!」

「あー、うん。コイツはこういう奴だもんな、ノスタルジーに染まった俺が馬鹿だった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

回収地点βへとたどり着いた。

 

「フ、早かったですねぇヴィラン潰し。ですが来るのは予想通りです。」

「へぇ、捕まる気って事か?」

「いいえ、待ち構えていたという事です!」

「ご主人!」

 

マスキュラーに背中を押されて前に倒れる、するとそこには目の前にいるはずのコンプレスが居た。

 

2人目のコンプレスによりマスキュラーは玉へと圧縮されてしまった。

 

「分身⁉︎...いいや、トゥワイスの個性か!」

「ええ、その通り。」

「幸いにもトゥワイスは目を覚ましてくれたのですよ。」

「そのおかげ厄介なマスキュラーを確保することができた。」

「「さぁ、次はあなたの番です。」」

 

前後から迫って来るコンプレス触られればそこで終わりだ。

 

幸いにもどちらが偽物かは分かっている、身体エネルギーに他人の色が混ざっているマスキュラーを玉にした奴が偽物だ。まずは本体を倒す!

 

触りにくる分身コンプレスの手を掴み背中に倒れながら体を蹴り上げる。巴投げである。

これで邪魔な方との距離は取れた。

 

「ほう、見事な投げ技ですね。ですがそんな体勢を崩す技を使ってもよろしかったので?」

「よろしかったの、さ!」

 

抜き打ちである。切り札のテイザーガン、ここで使わねばいつ使うのか。

 

「が⁉︎」

「大の大人も悶絶して倒れるスタンガンだ、動けねぇだろコンプレス。」

「こんな、もの、を、用意しているとは⁉︎」

「さて、タイマンだなコンプレス分身版。」

「ク、ここまでですか!...なんてね。」

 

森を何かが切り裂いて行く音が後ろから聞こえた、まだなんかあるのかよ⁉︎

 

背後から襲いかかってくる刃を前に飛ぶことで回避だがまだ安全ではない、刃が動いてくるッ⁉︎

 

「肉面〜」

 

もう一歩前に飛ぶことで回避、刃が雨のように降り注いでくるその様は悪夢のようだった。捕まったら殺されるッ!

ダッシュでコンプレス本体の元へとたどり着き、首根っこを掴んで刃の雨の傘にする。頼むから仲間意識とか持っててくれよ⁉︎

 

一瞬の静寂のあと、刃の雨は止まった。

 

「ありがとよ、傘になってくれて。」

 

コンプレスは舌がうまく動かないために俺に対する文句の一つも言えないようだ。

 

「さて、ムーンフィッシュ。歯刃で檻を作りなさい。私の本体は私が取り戻します。」

「仕事〜」

 

歯刃の男ムーンフィッシュは自分の上空に陣取り、刃で自分とコンプレスたちを囲む檻を作り上げた。

 

「絶体絶命ですね、ヴィラン潰し団扇巡。」

「いいや?まだまだこれからさ。」

 

そう言って傘にしていたコンプレスの本体を刃の檻に向けて放り投げる。

 

「な⁉︎」

「その動揺が命取り!」

 

自分の行動を止めようと左右から刃が伸びてくる。だが写輪眼には見えている、刃がどう伸びて来るのかが。

回避しつつ分身コンプレスを蹴り飛ばす、刃の檻に衝突した分身は泥のように消えていった。

 

「ラストォ!」

 

刃を躱しながらテイザーガンのリロード、檻の真上へ向けて放つ。外しようが無くムーンフィッシュへと命中し、その身体を麻痺させた。

 

「にく、めん〜」

 

刃を伸ばす力も麻痺して入らなくなってしまったのかムーンフィッシュは落ちてきた。

 

「終わりだ!」

 

上から落ちて来るムーンフィッシュの頭部に合わせるように蹴りを放つ。ダメージと麻痺でこれでもう動けないだろう。

 

「...ハァ、なんとかなった。」

 

マスキュラー、荼毘、トゥワイス、脳無二体、コンプレス、ムーンフィッシュ、7タテだ。残りの(ヴィラン)はあと4人、話に聞いたガスの個性の奴、広間でワイプシが戦っている2人、あと1人誰かわからない奴がいる。まだ油断はできない。

 

「マスキュラーがいなくなったのが痛いな...さて、トゥワイスを見つけてぶちのめさないと。 」

「その前にいいです?」

 

声をかけてきたのは鏡のゴーグルに刺々しいマスクを被った女子だった。

 

「よくないです(ヴィラン)さん。最後の1人が可愛い子ちゃんとかやり辛いなぁ。」

「トガヒミコです。なんか思ってたより血流してないですね。つまんないです。」

「サイコってるなぁオイ。」

「でもでも!私たち仲良くなれると思うんです!だがら、血見せて?」

「い、や、だ!」

 

ナイフの突きを半身で躱して腹に膝を叩き込む。そして崩れた体勢に追撃を加えるように肘打ちを頭に叩き込む。すると案の定泥となり消えた。身体エネルギーにトゥワイスの色が混ざっていたため分身だと気付けたのだ。

 

とはいえ何故戦闘力の高い荼毘やコンプレスでなく個性不明なトガヒミコを分身させたのかは謎だ。そう思って振り向くとそこにはトガヒミコがいた。一瞬思考が停止した。その一瞬で全ては終わってしまった。

 

「刺せないのが残念です。ですがお仕事なので。」

 

そう言って彼女は自分にスタンガンを当ててきた。

 

「カハッ!」

 

身体が痺れて動かない、こんな敵地でそれは捕まったと同じだ。

 

旗色が変わった途中から覚悟はしていた、自分が捕まることで他の皆への危険は無くなるのだから悪いオチではないとも理解はしている。

だが甘かった。ここから先どうなるかは運次第、最悪だ。

 

「お仕事終わりです。とはいえ皆さん大丈夫でしょうかねー。」

 

トガヒミコのその言葉と共に、現れたものは俺にとって吉報となるものだった。

 

「広間の2人はすでに確保した。あとはその馬鹿を連れて戻れば終わりだ。お前を確保してな。」

「来ちゃいましたかー、プロヒーロー。」

「俺の生徒を返してもらうぞ、(ヴィラン)!」

 

「団扇くん!」

「団扇!」

「クソ目ェ!」

 

「おま、えら⁉︎」

 

やってきたのは緑谷、焦凍、爆豪、障子、常闇の5人だった。

 

「んー、千客万来ですねー。でもごめん、出久くん、またね!」

 

そう言って現れたワープゲートからトガヒミコは去って行った。

自分に向けて走り出す相澤先生、しかしその歩みは止まることとなった。ワープゲートから溢れ出る白い肌の脳無の群れによって。

 

「団扇!」

 

その言葉と共に投げられた捕縛布は白い脳無に阻まれて届かなかった。

 

「先生、白いのは俺らがなんとかします。団扇を!」

「頼むぞ、轟!」

 

轟の大氷結にて白い脳無の大半を無力化し、常闇が闇で強化された黒影(ダークシャドウ)にて取りこぼしを倒す

 

そして走り出した相澤先生が脳無の群れの上を超えて見たのは

 

シルクハットに仮面の男が荷物もなくワープゲートを通る所であった。

 

「さようならプロヒーロー、団扇少年は貰っていきます。彼が自由に個性を使える世界へと。」

 

そう言って手の球体をひけらかすコンプレス、その手を撃ち抜いたのは茂みに隠れていた青山のネビルレーザーであった。

 

「青山、よくやった!」

 

そう言って飛び出した球を掴み取った相澤先生。

 

「ハァ、俺のショーが台無しだよ。せっかく気絶してた奴らを拾い集めて完全大勝利っとなる筈だったのに。ま、」

 

ゲートに入りかけたコンプレスは指を鳴らした

 

相澤先生が掴み取っていた球から現れたのは拘束服の男、ムーンフィッシュであった。

 

俺は、コンプレスの手に首根っこを掴まれていた。

 

「本命は持って帰れたので良しとしましょう。それでは今度こそさようなら、ヒーロー。」

 

「みん、な...」

 

「団扇くん!」

「団扇!」

 

黒い霧の中へとコンプレスと俺は消えて行った。

 

雄英高校の完全敗北で、林間合宿襲撃事件は幕を下ろした。




というわけでこれにて林間合宿編終了。賛否両論あるでしょうけどこれで通します。書きたい神野編の為にッ!

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