でも前後編に分けられるほどには微妙に文章量が足りないのでこのまま投げます。
変化の術や水面歩行修行の修行を継続して早数日、気付けば長野黒炎大災害追悼イベントの行われる日となっていた。
「うずまきさん、雄英ってブレザーなんですけど追悼イベントってブレザーで大丈夫ですか?」
「普通の服で大丈夫だ...ってそういえば巡くんも遺族になるんだっけ、それなら一応ブレザーで来た方がいいかも。」
「わかりました。それなら制服でいきます。」
「それじゃあヒカル、善子を頼んだよ?」
「任せて!父さんと兄ちゃんの分も僕が守るよ!」
「頼もしいな。それじゃあ」
「「行ってきます」」
「「行ってらっしゃい」」
うずまきさんと自分はこれから車で追悼イベントへと向かう。
「ヒーローコスチュームでいるときはヒーロー名のスクリューで頼むよ巡くん。」
「わかりました、スクリューさん。」
「よし、それじゃあ出発だ。」
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スクリューさんに連れられて運営本部へと向かう。
「巡くん遺族側なんだから手伝うなんて言わなくて良いんだよ?」
「やりたいって言ってるんです。ボランティアは趣味みたいなもんですから。ヒーロー科忙しすぎて最近行けてないですけど。」
「雄英ヒーロー科って忙しいのが有名だからねー。」
そんなたわいもない会話をしながら腕章を受け取る。これで一端のスタッフだ。
「それじゃあ巡くんにはクリスタルアイと一緒に参加する皆さんの誘導を頼むよ。」
「はい。よろしくお願いしますクリスタルアイさん。」
「ええ、よろしくお願いします巡くん。あなたが有能な問題であることを期待します。」
「は、はい?」
「彼女のキャラ付けなんだ。そのうち慣れるよ。」
「見た目は美人なのになんでそんなキャラ付けを...」
「東京のヒーロー事情は弱肉強食な問題です。単なる美人など受けない問題なのです。」
「長野に移動したんだからそこまで拘らんでもいいんじゃないですか?」
「いいえ、マスコミは何処にでもいる問題なのです。よってこの拘りは捨てられない問題です。」
話は平行線のようだ。まぁ彼女も大人だ、色々あるのだろう。そう無理矢理納得しておく。
「それでは会場で誘導を始める問題です。」
「はい。承知しました。」
とはいえもう18年も前の事件の追悼イベントなど大して人は来ないだろうと思っていたところ、そんな予想は簡単に覆された。
人が、というかオタクっぽい人が微妙に多いッ!
まぁオタクはDQNと違いマナーを守る人種なので特に問題は起こらなかったが。
興味本位から人の良さような男性に聞いてみた。
「今日の追悼イベントってだれか有名人でも来るんですか?」
「はい、SNSの噂なんですけど、人気声優兼歌手の穂村つむじちゃんがこのイベントに参加してるって話なんです。だからこのイベントに参加したらもしかしたら見れるかもって。」
「イベントスケジュールには歌手兼ヒーローのソングアーツさんの歌しか載ってないですけど、そんなサプライズあったら楽しそうですね。」
「ええ、つむじちゃんはサプライズ好きで有名ですから。」
「引き止めてすいませんでした、イベント楽しんで下さいね。」
「ええ、ありがとうございます。」
とはいえ団扇村入り口に作られた仮設ステージだ、そうキャパシティは多くない、そろそろ立ち見になる人が出てきてしまいそうだなあと思っていると
サイドカーのついた一台のバイクが暴走して会場の入り口を掠めて通ったのち、うちは村へのバリケードを突っ切って行った。
「何事⁉︎」
「.,.やられた問題です、奴らはアンダーウェアーズ。超高速下着泥棒な問題です。」
「はぁ⁉︎今の一瞬で下着を取る⁉︎どんな個性ですか⁉︎」
「過去の犯罪歴から、1人は遠くの物を手に転移させるアポートの個性、もう1人は未来予知のような個性だと思われている問題です。」
「無駄な強個性の使い方⁉︎」
「それでは私はバリケード前で待ち伏せするので、何処かで隠れて奴らがパーティを始めていたら驚かして動かす役をやって下さいませんか?」
「わかりました、とはいえこの村でそんな昂ぶれるとは思えませんけどね。」
「ああ、それと私の黒のレースのショーツを行為に使っていたら殺しても構わない問題です。というか殺します。」
クリスタルアイさんの目はマジだった。水圧カッターのような個性と性犯罪者、嫌な予感しかしねぇ!
「
そう言って壊されたバリケードを横目に見ながら、チャクラを集中させた足でタイヤ痕を追って走り始めた。
幻の黒炎の燃え続けるこの村の中へと。
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待ち伏せの可能性を考えて写輪眼を発動しながらタイヤ痕を追っていく。全力で走って5分程で形を保った民家の前に止まったバイクを発見することができた。
「このバイク、ダブルチェイサーの一般流通モデルだ。海外製のバイク買うとか金持ってんなこのスーパー下着泥棒。」
民家の中へと入る。中からは
「やったぜ兄貴!まさかあの穂村つむじのパンツを盗れるとは今日はラッキーデイだ!」
「いいや兄弟、ソングアーツのノーパン姿も捨てがたい。訳も分からずポカンとしている表情とか最高だ!あとはガールサイトがノーパンを恥ずかしがる様を撮ってくれれば完璧だ。」
「「でもなんか今日は勃たない、あと鳥肌がする。」」
とか会話してる声が聞こえる。お前らパンツじゃなくてパンツ取られて恥ずかしがる姿を見たいが為に行動してるとかレベル高すぎて尊敬しかねないぞ。
こっそりと中を覗く。互いにもうすでに自分たちの元へたどり着いた奴がいるとは思ってもいないようで、丁寧にパンツをおりたたんで無事だった机の上に置いていた。
その机の近くには、幻の炎に焼かれ続ける男性が見えた。この村の大災害の犠牲者だろうと何となく思う。見えないとはいえ死んだ場所にパンツが供えられるのはどうかと思うので声をかけて止めにかかる。
「それはきっとお前たちのいるこの家で黒炎に焼かれて死んだ人がいたからだろうさ。」
「「何奴⁉︎」」
「ボランティアスタッフ団扇巡!この村での狼藉を許さない者だ!」
腕章をピシッと見せつけそう名乗る。
その名乗りを聞いた瞬間からその2人の動きは俊敏だった。
「兄弟!」
「おうさ!」
写輪眼には小太りの男からの身体エネルギーの流れが見える。エネルギーを対象に当ててそれを転送させる個性のようだ。それも相当に速いためよく鍛えられている事がわかる。
が、躱せない速度ではない。射線上から足をずらして回避する。
だがその隙に2人の男はダッシュで外へと出て行った。畜生、ぶん殴りたいけど手を出す事は法律違反だ。なので自分に出来ることは
「待てやこらぁぁぁぁぁ!」
とにかく追いかけて村の入り口まで追い回す事だ。
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「兄貴、なんだあのガキ!スペックダウンしてるとは言ってもダブルチェイサーだぞ⁉︎ヒーロー御用達のバイクだぞ⁉︎それを追いかけ続けるとかなんてタフネスだ!」
「畜生、メインディッシュはこの村の中だってのに...!」
その言葉を出したと共にある考えが兄貴と呼ばれた男の中に浮かんだ。
「兄弟、次の分かれ道でアレを使おう。奴は1人、どちらかは目的地へと向かえる!生き残った奴が写真に撮るんだ、俺たちの理想の女性、ノーパン着物美少女を!」
「どっちが生で見ても恨みっこなしだぜ兄貴!」
「「ダブルチェイサー、分離!」」
アンダーウェアーズは自分たちの目的を果たすために、切り札を切ってきた。
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「は、分離⁉︎何処を目指してるんだコイツらは⁉︎」
ダブルチェイサーとはアメリカのとあるコンビヒーローが愛用しているバイクだ。基本形態はサイドカーを付けた状態だが、サイドカーを分離させバイク形態に変形させることができるという機能を持っている。厄介な...!
幻の炎に触れるたびに悲しみが止まらない。だがそれを無視してひた走る。この村で眠る人たちの安寧を守るためにこのノーパン主義者たちをクリスタルアイさんの待つ村の入り口へと追い立てないとならないのだから。
あいつらの目的地が不明だが何かロクでもなく馬鹿馬鹿しい話なのはもうわかってる。こうなりゃヤケだ。
「影分身の術!」
とにかく追いかけて追い立てて追い詰めてやる!
「「ふ、増えた⁉︎」」
「「さぁ、神妙にお縄に付け!」」
「「断る!俺たちには、見たい景色があるんだぁぁ!」」
「「ノーパンの誰かを見たいだけだろうがぁぁぁ!」」
追走劇はまだ続いていくようだった。
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分身と別れて5分ほど走っただろうか、細身の男は明らかに焦燥していた。
「なんでだ、なんで俺に道を示してくれない!俺の
向こうの未来予知の個性に何か不都合でも起きているようだ。まあこちらはバイクより小回りが利く走りだ、おおかた俺を巻く手段を予知しようとして失敗しているとかだろう。
そうこうしていると、もう1人の小太りの男と影分身が合流してきた。
「兄貴、すいません巻けませんでした!」
「兄弟!コイツがおかしいだけだ、気にするな!」
「「おかしいのはお前らの頭だよ!死者を悼め!」」
「「こうなったら一目でも理想の彼女を見てやる!」」
小太りの男と細身の男は階段の前に丁寧にバイクを止めて駆け上り始めた。上を見上げると鳥居が見える。どうやら2人の目的はここの神社へ来ることだったようだ。
2人の男の階段を登るスピードは遅い。なのでその隙にうずまきさんへ電話をかける。
「あ、スクリューさんですか?スーパー下着泥棒を追い詰めました。」
「巡くん⁉︎まさか
「してません。個性は使いましたけどひたすら追いかけただけです。お陰で村中を走り回る羽目になりましたけどね。」
「なら良かった。それで、奴らの位置は?」
「うちは村にある神社です。えっと、南賀ノ神社です。」
「わかった、これから車で向かうよ。」
「ただ、この神社に人がいるっぽいことを連中は言ったので一応様子だけは見てみます。」
「君はまだヒーローの卵だ、くれぐれも無理はしないでね。」
「わかってますよ、身に染みて。」
階段を登る2人の男を見る。階段の中頃に達していた。だが、その足取りは登り始めと比べてかなり遅くなっていた。おそらくスタミナ切れだろう。ほっといてもいいんじゃないかなー。
影分身を解除してチャクラを回復、そこそこ急いで階段を登り始める。自分が登り終わるのと、2人が神社の扉を開けるのとは同時だった。
神社の扉を開けたその先には、黒い着物に赤いマフラー、長い髪に青白い肌、そして真っ赤な写輪眼を持った人形のような少女だった。
「「これが、
幻影だってオチが一番良かったのに、実際にいるとなると写輪眼使いはやばいってレベルじゃねぇんだよ!
「目を閉じろ!殺されるぞ!」
「「こんなノーパン美少女相手に目を閉じれるわけあるか!」」
「なんでそこでそんなに息が合ってるんだよお前ら!」
着物の女はアンダーウェアーズを一瞥した。その一瞬で2人は気を失ったようだ。間違いない、写輪眼の催眠眼の仕業だ。
こんな山奥の神社に1人いる奴がまともなわけがない、どうするべきか思案していると、向こうが写輪眼を合わせてきたッ!幻術ッ!
写輪眼に力を込めて幻術をレジストする。そして逆に幻術をかけ返そうとするも手ごたえがない。まるで幻に視線を合わせているようだ。
向こうだけが一方的に幻術をかけてくるこの状況を打破するために影分身を出す。向こうの視線は影分身に目もくれない、ならそれは隙だ!
そう思った影分身が少女へ蹴りかかるもその蹴りは案の定すり抜けた。見えるし、向こうから干渉できるが幻なのか?あるいはNARUTOに出てきた万華鏡写輪眼の瞳術『神威』の使い手なのか?
謎は深まるばかりだ。
影分身とアイコンタクト、とりあえず男たちだけでも回収していつでも逃げられるように体勢を立て直す。
その時、鈴の音のような声が響いてきた。写輪眼でその音を幻術だと見抜く事はできたがレジストの手段は無い。咄嗟に耳を塞ぐも意味はなくその幻術の声を受け入れてしまった。
「そんなに怯えなくて良いわ、
その声に敵意は無かった。そう信じて耳から手を離す。この声を聞いているとどこか安心できるのだ。分身の写輪眼と目を合わせて催眠状態を確認するもお互いに催眠の兆候はない。
そして目の前で幻術を使い続けていた女の姿はいつのまにか幻になっていた。彼女が泣澤女なのだろうか。
悩む事は多くあれど問われたからにはまず答えよう。
「団扇巡、雄英高校ヒーロー科1年だ。」
「巡...良い名前ね。神社の中にいらっしゃい。この神社は
とりあえず信じて神社の中へと入っていく。影分身を解除してチャクラを補充し、いつでも戦えるように体勢を整えながらも。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、何のためにこんな辺鄙な村の神社まで足を運んできたの?」
神社の境内で姿勢を正して座っているのは先程の人形のような美少女を少し大人にしたような女性の幻だった。
「女性には言いにくい事なんですが、先程あなたの
「それなら私には関係ないわね。下着は付けない派だし、それに今は幽霊みたいなものだから。」
「ちなみにそいつらノーパン着物美少女がここにいると信じて突っ込んできたみたいです。あなたの事じゃないですか?」
「...まっさかぁ。私なんかを見るためにこんな辺鄙な所に来る?普通」
「普通なら無いですけど、あいつらどう考えても普通じゃないので可能性はあるかと。」
「...世界って広いわねー。」
「本当にですよ。自分も幽霊を見たのは初めてですから。」
一瞬沈黙が流れる。お互いにそりゃそうだと納得したのだろう。
「さて、私は団扇
「それじゃあ交換条件です。先に貴方の話を聞かせて下さい。貴方は多分、長野黒炎大災害の関係者の筈だ。あの日に何があったのか、それに父さんが関わっているのか、それを教えてほしい」
「そう、私の話が気になるの。それなら場所を変えましょう。付いてきてくれる?」
「...どこへ?」
「付いてくればわかるわ。ま、ただのお気に入りの場所ってだけなんだけどね。」
そうして自分が連れられたのは、縁側であった。
「あら、今は昼だったのね。ここからだと夜は綺麗に星が見えるのに、勿体ないわ。」
「花壇があったみたいですけど、それも18年ですっかり荒れ果てちゃってますね。」
「風情がないわね、泣澤女。」
彼女がそう呟くと、花壇は蘇り綺麗な花々が咲き乱れた。
「幻術...じゃない⁉︎これが泣澤女、幻術を実体化させる瞳術ッ!」
「そんなに便利な物じゃないわ。泣澤女は記憶を空間に投影する瞳術よ。一応、力を入れれば実物を作り出す事もできたけどね。」
恐ろしい瞳術だ、記憶さえあれば何でもできるという事なのだから。
「村の入り口の黒炎も、篝さんが?」
「ええ、この村から誰も逃がさないように、それと弟がこの村に戻ってこないようにね。」
そうして篝さんは語り始めた、長野黒炎大災害、いいやうちは村に起こった大虐殺の真相を。
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「私の家系はね、この村を昔から支配している旧家の家系だったの。この村は写輪眼の力で支配されていた。だからその力を失わないために、写輪眼の血を濃くするためにいろいろあくどい事をやってたの。近親相姦の強要だったりね。」
「その事をおかしいとは思わなかったんですか?」
「全く思わなかったわ。なんだかんだで幸せだったし、そんな教育されなかったんだもの。でも、晴信さんは違った。子育ての知識を取り入れるためにインターネットで色んな知識を調べた晴信さんはこの村の風習はおかしいって一人で戦い始めたの。でも、時期が悪かった。ちょうどその時期には村の外にも写輪眼の力で支配を広げようとする急進派との戦いがあって、私の家を中心とした保守派は団結を強いられていたの。だから、不穏分子である晴信さんは投獄された。そして、あの事件が起きた。私が留守にしていた間に、急進派のものと思われる放火によって私たちの息子が殺されたの。」
ゴクリと息を飲む。あの泣澤女の黒炎の悲しみは、息子を失った篝さんの声にならない叫びだったのかと、話を聞いて思った。
「その悲しみで私と晴信さんは写輪眼を進化させたの。忌まわしき瞳、万華鏡写輪眼に。」
「万華鏡、写輪眼。」
「そう、兄さんと私は目覚めた新しい瞳術を使って急進派を皆殺しにした。でも、急進派の人間全てを尋問してもあの日放火した実行犯は判明する事は無かった。そして判断したの、あの放火の犯人は私たちに万華鏡写輪眼を開眼させるために行った保守派の仕業だと。」
「...殺す以外に選択肢はなかったんですか?」
「幽霊みたいになった今だからわかるんだけど、万華鏡写輪眼を持つと精神が不安定になってしまうの。だから殺意という単純なものに引っ張られてしまったんだと思うわ。」
「だから忌まわしき瞳なんですか...」
「ええ。そんなわけだからその次も分かるわよね?今度は保守派の虐殺を私たちは行った。でも、保守派の中にも息子を殺した犯人はいなかったの。」
「...なら一体なにが原因で息子さんは殺されたんですか⁉︎」
「それは今でもわからない。その後悔があるから私はまだ消えていないんだと思う。話を戻すわね。保守派も急進派も皆殺しにしたわけだからもう残りは一人、晴信さんは犯人が私だと思い込んでしまったわ。そして私に天照を打ち込んだ。でも、私は燃え尽きる前に自身を投影する形で泣澤女を発動したの。それが今の幻の私。」
不思議な感覚だ。愛情故に全てを殺し尽くしたという悪鬼の所業のはずなのに、悲しみしか伝わってこない。自分は、さっき会ったばかりの篝さんに、その過去に同情している。
「晴信さんは私を殺してしまった後悔から天照を暴走させた。眼に映る全てを焼き尽くして、自分に燃え移った消えない黒炎に身を焼かれて命を落とした。これがあなたの言う長野黒炎大災害の真相よ。」
「そんな、事が...」
うまく言葉にならなかった。
500人以上が死んだ大災害の結末が、何を得る事もなくただ自分の炎に焼かれて死ぬだけなどだったとは。
「さて、これで私の話はおしまい。あなたの話を聞かせてくれない?巡。」
その時、遠くから「巡くん、何処だ!」と自分を探すうずまきさんの声が聞こえた、
「あらら、時間切れみたいね。巡、あなたの話は今度でいいわ。行ってあげなさい。」
なんとなく、この人を一人にしたくはなかった。だからだろう、この場に影分身を残してチャクラ切れくらいまでは一緒にいてあげようと思ったのは。
「影分身の術!篝さん、本体じゃないのは申し訳ないですけど、ここに影分身を置いておきます。俺の話をするのが約束ですから。」
「別に今度でもいいのよ?来年も来てくれるんでしょ?」
「来年も来ます、必ず。でもそれとは別にあなたと話したいと思ったんです。」
「そういう訳なんで俺が消えるまでお話ししましょう、篝さん。」
「そう、分かったわ。巡、また来年ね。」
「はい。」
そう言って影分身を置いてうずまきさんの元へと歩いていく。楽しく談笑する分身と篝さんを横目にみながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アンダーウェアーズと会場を撮影していた最後の仲間ガールサイトは無事捕まった。車で帰る道中に民家に綺麗に畳まれているパンツを回収し、被害者皆に配り終わって仕事も無くなったとき、イベントに参加していた老人の一人に話しかけられた。
「君は、団扇巡くんかい?」
「はい、団扇巡です。雄英高校ヒーロー科1年の。」
「その顔立ち、瞳、まるで晴信様の生き写しでございます。」
そう言ってその老人は自分の手を握ってきた。
「あなたは?団扇晴信をご存知のようですが、一体何者なんです?」
「私は団扇の家に代々仕えていた使用人の遺族です。また団扇の家のお方にお会いできて光栄でございます。」
「まぁ団扇の家の教育を受けていたとかそんな事はないですから、そんなに畏まらなくて構いませんよ。今の俺はただの学生です。」
「いいえ、写輪眼こそが団扇の証、あなた様は確かに団扇の後継者なのです。」
「そういう血筋の話はいいですよ、俺は俺の努力でヒーローになります。俺の夢のために。」
「そうですか、あなた様の夢が叶う事を祈らせて貰いますよ、団扇巡様。」
そう言ってその老人は去っていった。
「あの人と知り合いだったの?巡くん。」
「スクリューさん。なんか団扇晴信って人に俺が似ているらしくて声をかけてくれました。誰なんです?」
「忍者学校の師範代だよ。実践的な忍の体術を護身術として教えているとかでそこそこ有名なの。動画とか見たことない?」
「無いです。ていうか動画出してんのかよ、忍べよ忍者...」
追悼イベントはスーパー下着泥棒が現れるというハプニングは起きたものの、それ以外に特に問題は起こらず平和に行われることができた。
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篝さんに自分の話をした。
4歳まで幸せに暮らしていたこと。
8歳までひたすらに母に催眠をかけていたこと。
それから自分を売ったこと。
その結果親父に出会えたこと。
学校に通い始めたこと。
中学校3年の時に、初めて友達が出来たこと。
雄英高校に入ってから、様々な事件があったこと。
林間合宿でヘマをして
そのおかげで父さんと再会できたこと、友達の助けがあって父さんを救出できたこと。
そんな事を、なるべく面白おかしく、楽しんで貰えるように話した。
篝さんは俺の言葉に一喜一憂してくれて、時に心配して、時に共に笑ってくれた。俺の話が、彼女の悲しみを少しでも和らげてくれる事を祈って言葉を紡いだのだ。
「そんな俺を産んでくれた人物こそ、あなたの弟団扇貞信だったんですよ!」
「うん、知ってた。生きている団扇の血筋なんて貞信だけだし。」
サプライズ失敗である。悲しみ。
「にしても貞信の子供かあ...写輪眼を開眼できなかったあの子の息子がここまで強靭な写輪眼を持つことになるなんてねー、不思議。」
「なんで俺の写輪眼が強靭だってわかるんです?」
「私の泣澤女の催眠を弾いたからよ。この神社には隠したいものがあるから昔の私に警備させていたの。見てみる?ちょっと面白いわよ?」
「面白いと聞いたら見たくなるのが人の性、見ましょう。」
神社境内に戻り右奥から七枚目の畳をめくる。するとそこには階段があった。隠し階段とか浪漫だな団扇一族。
「この奥よ、写輪眼ならエネルギーの流れで光が見えるはず、それを辿っていくの。」
「地下ダンジョンとかどんだけ浪漫わかってるんですか団扇一族は。」
足元のエネルギーの流れを辿って迷宮を歩いていく。そうしてたどり着いた先には、古びた石碑があった。
「すごい、エネルギーで文字が書かれてるッ!」
「そう、この石碑には万華鏡写輪眼のことが写輪眼所持者にしか見えないように書かれているの。」
文字を読もうと石碑に近づく、そして気付いた。
「崩し字⁉︎読めねぇよそんなもん!」
篝さんはケタケタとイタズラが成功した悪童のように意地悪く笑っていた。
「同じ事を勉強サボってた晴信さんは言ったわ、見た目だけじゃなく中身も似てるのね。顔は格好いいのにどこか三枚目なところとか。」
「会って見たかったですね、晴信さんにも。きっと話は合ったでしょうから、この謎の三枚目オーラの事とか!」
「それじゃあ読むわね、ただの写輪眼で読める範囲の分までを。」
写輪眼、悲しき別れにて万華鏡へと至る
されどその力に溺れるべからず、その邪心に飲まれるべからず
平和を祈る心の光によりその力は正道に戻る
我が子たちよ、心の光を忘れることなかれ
「昔の人が残してくれた、写輪眼を正しく使うための注意書きなのよ、コレ。私たちは守れなかったけど...」
「繋いで行きます。この言葉を、俺が。俺の次の世代まで心の光の大切さを決して忘れないように。」
その言葉を聞いて、篝さんは首のマフラーをほどき、俺へと巻きつけた。
マフラーは自分の首へと吸い込まれていった。
「その言葉を守れるようにする為のおまじないよ。幽霊からの赤いマフラーのプレゼント。幻だから体の中に入っちゃうけどね。」
「暖かいです。体温じゃなくて心が。」
「晴信さんが私に送ってくれた初めてのプレゼントなの。大切にしてね?」
「...はい。忘れません、決して。」
そんな言葉を聞いた後、篝さんはうーんと手を伸ばした
「今日は気分が良いわ、成仏しちゃっても良いくらい。」
「それなら、来世でも晴信さんと出会えると良いですね。」
「来世なんて信じてるの?意外とロマンチストなんだ。」
「だって、俺には前世の記憶がありますから。きっと来世もあります。」
「ふふふ、嘘でも嬉しいわ。そうだと良いわね。巡くん。」
「はい。」
「私のエネルギーが完全に消えるにはそう時間はかからないわ。あと2年程度で完全に成仏してしまうと思う。だから、最後に君に出会えて良かったと思うわ。心から。」
「俺も、篝さんに会えて良かったと思います。心から。」
分身のチャクラは残り僅かだ。だが、まだ言う事はある。
「最後じゃありません、来年も来ますので。なので今度は父さんの子供の頃の話でも聞かせてくださいね!」
「...そうね、また来年に!」
その言葉と共に影分身は消えた。ぼふんと謎の煙を出しながら。
「また来年か、良い言葉ね。それじゃあ警備用の泣澤女を作って、あとは省エネモードでいますか!来年まで消えないでいないと!」
長野の山中にある元忍びの隠れ里、旧うちは村。そこには1人の幽霊の美女が少年のやってくるのを待っている。
そんな、奇妙な話が一つ生まれた。
オリジナル万華鏡の瞳術とかいう古傷を晒していくスタイル
個性:万華鏡写輪眼、泣澤女
記憶にあるのもを焦点の合わせたポイントに投影する瞳術。主に天照の記憶を投影して用いていた。
投影には三段階ある。映像だけを投影する一段階目、映像に実際の性質を持たせる二段階目、投影を止める事で写輪眼保持者のみが見える幻影が残響として残る三段階目。団扇篝本人が死んだことで村の入り口を塞いでいた泣澤女の投影が止まったため、入り口には幻の黒炎が今も残り続けている。