【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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今回も必殺技習得編かつ雄英白書編です。


修行の日々と来訪者

必殺技習得の日々は続く

 

皆それぞれのペースであるが、順調に必殺技を習得しつつあった。

そんな中自分は、新必殺技の習得に苦戦していた。

 

「自己治癒のイメージはできてるんだがなぁ。」

 

習得しようとしているのは、NARUTOに出てくる医療忍術の基本、掌仙術である。

掌仙術とは自分、または相手にチャクラを流し込み治療するという技だ。対象の治癒能力を促進する事で治療するという点からリカバリーガールの個性と似ているとも言えなくもない。

 

「リカバリーガールの個性をよく見せて貰うか...?」

 

必殺技の訓練は割と激しい。誰かしらの怪我はすぐ出るだろう。その時に一緒に見せてもらおうと決めた。

 

「にしても痛い。景気良く切り過ぎたな。」

 

そう言って掌にカッターでつけた切り傷に対して消毒し、絆創膏を貼る。桜花衝が出来たのだから掌仙術もできると思ったが、流石にそんな上手くはいかないという事だろう。

 

「さて、筋トレ筋トレと。」

 

日々これ鍛錬だ。サボらずにやろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ム、掌ニ怪我デモシタノカ?」

「多分治癒能力も使える!と思って新技試してたんですが、そう上手くはいきませんでした。」

「治癒能力?」

「はい。」

「...ソレガ真実ナラ驚クベキ万能個性ダナ、精神ヲエネルギーニ変エル個性トハ。」

「自分でも薄々この個性やばい奴なんじゃないかなーと思い始めています。まぁもう俺の力なんで好きに使いますけどね!というわけで昨日練習した新必殺技第二弾、行きます!

巳、未、申、亥、午、寅!

火遁、豪火球の術!」

 

印を練る事で変質させたチャクラを胸から吸った息へと流し込み、強化した肺の力で吐き出し炎と成す!

 

「...豪火トイウニハ小サイナ。」

「要練習ですね、ハイ。」

 

発生した火球の大きさはソフトボールが良いところだった。

うちはの家系的に得意な筈の火遁の術でこれだ。どうやらチャクラの性質変化の才能はあまりないらしい。

 

「とはいえ成功は成功!実験は成功です!」

「トコロデ、技ヲ放ツ前ノ印ハ何ナノダ?両手ヲ使ウ故ニ隙ニシカナラヌト思ウノダガ。」

「ああ、体内に流れるエネルギーの性質を変化させる...呪文の詠唱みたいなモノですね。」

「呪文カ...省略ハ出来ルノカ?」

「まだ難しいですね、体内のエネルギーの性質の変え方も、なんで印を結ぶ事でエネルギーの性質が変わるのかも分かっていませんから。」

 

そうなのだ、前世の記憶にある様々な印を結ぶのを影分身の写輪眼で観察したところ、印を結ぶことで体内に流れるチャクラの色が変わるのは観察できた。だがその原理はさっぱりなのだ。

記憶にある千鳥の印を結んで雷遁の性質変化を試してみても、体内のチャクラの色は確かに変わったが手から雷は出たりすることはなかった。それは俺のチャクラ性質が案の定火遁である事を示しているのだろう。

 

「さぁ、とりあえず出来たのなら反復練習で良いですかね。」

「ウム、シカシ炎マデ吐ケルトハ、コノ調子デ技ヲ増ヤシテイケバ技ノデパートニ化ケソウダ。」

「とはいえ今は桜花衝の反復練習ですね。まずは技を一つ仕上げるのが先ですし。」

「ソノ通リダ。サァ訓練ノ開始ダ。」

「はい!」

 

セメントス先生にターゲットを出してもらい桜花衝の訓練に入る。

 

桜花衝はチャクラを一点に集中して、インパクトの瞬間にそれを放出する技だ。だから火力を抑えるには、チャクラの集中を抑えればいい筈なのだ。理論的には。

 

「桜花衝!」

 

ターゲットには、罅しか入らなかった。チャクラを込めて普通に殴ったときと同じ結果だ。

 

「どうしてこう0か100かなんだよ俺は...」

「フム、原因ハ分カルカ?」

「さっぱりです。チャクラコントロールは修行したのでそれなりにできるようにはなった筈なんですがねー。」

 

とりあえず修行あるのみだ。反復練習していればそのうち何か掴めるだろう、とこの時はまだ楽観的に思っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー、詰まった。」

 

訓練時間は終わり、訓練中に開いた掌の傷と拳にできた傷を治して貰う為に保健室へと向かっていた。

 

今日の特訓による桜花衝の制御の成果は無しだ、むしろ威力が向上したまである。殺人拳を求めているわけじゃないんだよ俺は...

 

「ハァ、ままならないなぁ...諦めて別の技練習するか?」

 

技のイメージはいくらでもあるのだ。写輪眼で今までクラスの皆や先生方の個性の使い方を良く見てきたのだから。

 

そんな事を考えているといつのまにか保健室の前に着いていた。

 

「失礼します。」

「おやおや、保健室に怪我を治しにくるのは初めてじゃないかね?」

「そうですね、付き添いでは何度か来たことあるんですけど自分では初めてです。許可書です、治療お願いします。」

「はいよどれどれ?...この掌の傷、何が原因だい?」

「新技の練習のためにちょっと。新しい個性の応用で治癒能力もできると思ったんですが上手くいかなくて。」

「自分で自分を傷つけるのはやめときな、治せるとしてもね。」

 

そう言ったときのリカバリーガールの顔は、人を治す医者の顔になっていた。

多くの人の傷を治し命を救って来たリカバリーガールだからこそ、自傷という行為は許せなかったのだろう。

 

「はい、自分が軽率でした。」

「わかってるなら良いさね。それじゃあ掌出して。」

「あ、個性使うならなるべくゆっくりでお願いします。リカバリーガールの個性をしっかり見たいので、新技のために。」

 

そう言って写輪眼を発動する。リカバリーガールの治療術を見逃さないために。

 

「はいよ、しっかり見ときな。チユ〜〜〜〜〜。はい終わったよ。」

 

リカバリーガールの見せてくれた身体エネルギーの流れは3プロセスに分かれていた。

 

まずは唇の接触による身体エネルギーの調律

次に身体エネルギーの浸透

最後に、細胞ひとつひとつへの治癒能力の活性化だ

 

「ありがとうございます。見えてきた気がします、新技のイメージが!」

 

自分に対して掌仙術を使うには、自分のチャクラそのままでエネルギーを流し込んでもダメなのだ。そのエネルギーを身体エネルギーの色に調律する必要がある。そういう事だろう。

 

「そうかい、ハリボー食べるかい?」

「頂きます。」

 

その後しばらく保健室へと滞在し、やってきた切島と砂藤の治療を見せてもらったが、写輪眼で見たプロセスに間違いはなかった。

だが肝心なエネルギーの調律のコツなどをリカバリーガールに尋ねてみるも調律を行なっている事自体をリカバリーガールは知らなかった。これだから個性って奴は...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

画鋲で指をチクリと刺して小さな傷を作る。掌仙術の特訓マイルドモードだ。最初からカッターでズバーはやり過ぎだと今なら思う。

寅の印を結びチャクラの色を自分の身体エネルギーに合わせる。

そして指にチャクラを集中させて流し込み、細胞ひとつひとつにエネルギーを与えていく。すると指からの出血はすぐに止まり、傷は治った。

 

「成功!これをスケールアップしていけば傷の治癒はいける!」

 

掌仙術の最初の段階はクリアできた。ここからは反復練習あるのみだ。

 

「桜花衝も反復練習、掌仙術も反復練習、豪火球も反復練習。体が3つくらい欲しいな...よし、分身の数を増やす実験をしてみるか!影分身の術!」

 

3人に影分身、体のだるさが少しある。

4人に影分身、体が重くてロクに動かない。

 

「3人が今の俺の限界か...5人くらいは行きたかったがこればっかりは仕方ないか。」

 

分身を戻しチャクラを補充。少しすると体のだるさは取れた。チャクラ不足による疲労にも慣れたものだ。個性を得て始めの頃は疲れていないのに疲れているという奇妙な感覚に慣れなかったものだが今ではもう違和感を感じる事の方が少なくなっているほどだ。

 

そんな事を考えていると、不意に部屋の扉が叩かれた。

 

「どうぞー。」

 

扉を開けて入ってきたのはB組きっての大問題児、物間寧人であった。

 

「えー、ここがあの元(ヴィラン)の部屋?全部雄英の支給品とか手抜きってレベルじゃないよねぇ!」

 

相変わらずいきなりのトップギアである。恐ろしい男だ...

 

「手抜き言うな、インテリアにかける金がないんだよ。んで、なんでお前が来てんの物間、遊びに来た感じか?」

「ハッ、そんな訳でないだろう?視察だよ視察、A組がどこか贔屓されているんじゃないかとおもってねぇ!」

「...その可能性は考えてなかったわ、何か違いはあったか?」

「調査中さ!」

 

その後なんとなく物間のA組視察へとついていく。A組の連中もかなりの数が物間に振り回されているようだ。

 

同じ階の切島の部屋を視察する物間。男らしい部屋に圧倒されるかと思ったら物間は携帯を取り出して何かの画像を切島に見せた。

 

「俺の部屋...?」

「鉄哲の部屋だよ。」

「部屋まで被ってんのかよ...!」

 

切島も鉄哲も同系統の個性だ。個性によって人の嗜好が偏るという例なのだろうか。そんな事を思いつつも、後ろから接近していた拳藤に道を譲る。拳をパキポキと鳴らしながら近づくその様はB組の姉御といっても過言ではないだろう。あ、話題の鉄哲とアメリカからの留学生だとかいう角取がいる。

 

「よく見てごらんよ!鉄哲の部屋のカーテンは金属製の重いヤツだから!B組はねぇ、陰でそういう努力をしているわけ!調子乗っちゃってるA組はどうせ部屋の中で寛ぐことしか考えてないんじゃないのぉ⁉︎そういうとこだよそういうとこ!」

「調子乗ってるのはどっちだ。」

 

拳藤の容赦のない手刀が物間を襲う。手刀を食らった物間は膝から崩れ落ちた。

 

「ごめんな、A組。物間がアレで。」

 

そういった拳藤は物間の首根っこを掴み持ち上げた。力あるな拳藤。

 

その後集まった人数がなんか多くなっていたので、とりあえず談話室に行こうという話になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

A組の多くと、B組から物間、拳藤、角取、鉄哲が談話室に揃う。

 

一向に謝ろうとしない物間の代わりに拳藤が口を開く。

 

「本当に毎度、物間がごめんな。」

「...ちょっと拳藤、邪魔しないでよ。せっかくどこかにボロが出ないか偵察していたのに。」

「おい、視察じゃなかったのかよ。」

 

物間の物言いに思わず上鳴が突っ込む。偵察っておいお前...

 

「フン、せっかくB組代表として遊びに来たのにお茶も出ないのかなぁ⁉︎まったくこれだからA組は!」

「オイオイ今度は遊びに来た事にしたぜ。」

「鋼のメンタル...」

 

呆れている上鳴と感心している緑谷の声が響く。だが、そんな嫌味を間に受けてしまうピュアセレブが「あぁそうですわね!」とハッとした顔で砂藤を連れて食堂へと向かってしまった。

 

「なぁ物間、お前罪悪感とかないのか?間に受けておもてなしに走ったピュアな奴が出たんだぞ?」

「元(ヴィラン)の君が罪悪感とか言うんだぁ、皆をずっと騙していた詐欺師には罪悪感とか言われなくないんだけどなぁ!」

 

ぐうの音も出ないとはこの事だ。全て事実なのだから。

だが再び振るわれる拳藤の手刀、物間はソファにぐったりと倒された。

 

「正直、全部本当の事だから止めてくれなくても良かったんだぜ?拳藤。」

「いいや、止めるよ。団扇が元(ヴィラン)だとしてもやってきた事と団扇が良い奴だってことは変わらないよ。私は世間で言われている事よりも友達が言った事の方を信じるって決めているから。」

 

拳藤のその顔は、誰かが誰かを傷つける事を許さないヒーローの顔になっていた。

 

「格好いいな、拳藤は。俺が女なら惚れている所だ。」

「普通逆じゃないか?」

 

そんな事を話していると、八百万たちが紅茶とケーキを持ってきた。

 

「砂藤さんのケーキと私がブレンドしたお紅茶ですわ。お口に合うといいのですけれど。」

「今日のケーキはレモンシフォンケーキだぜ。ホイップクリームは蜂蜜入れてみたんだ。みんな授業で疲れているかと思ってよォ。」

 

優しい黄色の柔らかそうなケーキには、ほわっほわのホイップクリームが添えられている。来客用のティーセットに淹れられた紅茶は紅色に透き通って、余計な雑味がないのが見ただけでもわかる。

 

「これ本当に砂藤が作ったのかよ⁉︎」

「とってもオイシソウデース!」

 

と、目を丸くして驚く鉄哲とボニーの横で、拳藤が申し訳なさそうな顔をA組の面々に向けた。

 

 

「なんかごめんな、物間が勝手に言い出したことなのに...」

「いえ、本当に初めてのお客様ですもの、当然ですわ。さ、どうぞ遠慮せず。」

「そう?それじゃあ...いただきます。」

 

八百万に促され、拳藤たちがケーキを口にする。

 

「...うまっ!」

「甘いもんそんなに食わねぇけど、これはうめぇわ!」

「この紅茶もピッタリデス!」

 

砂藤のケーキと八百万の紅茶のコンボは正直金を取れるレベルだ。美味しさの虜になるのもわかる。だが物間は何故か苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「...ちゃんとしたおもてなしをしないでくれる...」

 

嫌味も言えないケーキセットを憎々しげに見つめながらも、物間の手は止まらない。美味しかったようで何よりだ。

 

だが、部屋をけなされたらしい上鳴はお返しとばかりにニヤニヤとしながら言った。

 

「砂藤のケーキの前じゃ、お前も完敗だな!」

「フン、あんな部屋の君に言われても何も悔しくないね。」

「そんなに言うくらいだから、お前の部屋はさぞかしセンスがいいんだろうな⁉︎これでだっせぇ部屋だったら大笑いしてやる!」

「ダサくなかったら何してくれる?」

「電気で茶を沸かしてやる...いいや、B組の風呂を沸かしてやるよ!」

 

あ、フラグが立った。そう思ったのは自分だけではないようで、尾白も「あーあ」と言う感じの顔をしていた。

 

物間はスッと携帯の画面を見せた。

 

「これ、僕の部屋。」

 

「...ッ⁉︎」と上鳴が言葉をなくした。気になってみたので画面をのぞいてみると、そこにはとんでもなく洒落た部屋の画像があった。

 

パステルカラーの壁にしつらえたような趣のある白いアンティーク家具。完璧に調和されていながら、どこか抜け感もある絶妙な配置とカラーコーディネート。フレンチスタイルとはこういう部屋の事を言うのだろうか。その完成度の高さに思わず声が出た。

 

「モデルルーム?」

「なに言ってるのさ元(ヴィラン)さん。れっきとした僕の部屋さ。」

「なにこれ、超オシャレ!!」

「可愛い!」

「まぁこういう部屋もステキですわね。」

 

上鳴が何かいちゃもんを付けようと画像をよく見ているが、文句の付けようの無さに逆に打ちのめされどーんと沈んでいた。そんな上鳴の向かって物間が鼻息を荒くして言う。

 

「で、いつ沸かしてくれるのかなぁ⁉︎でも勢い余って感電なんかさせないでよ⁉︎あぁ怖い怖い!!」

「いい加減にしろ。」

 

再び振るわれる拳藤の手刀。物間に対しては口で言うより物理で攻めるのが有効なのか、よく覚えておこう。

 

その後拳藤や角取のお部屋紹介などが行われ、A組B組の微笑ましい交流で幕を閉じようとしたその時、物間寧人がサッと立ち上がった。

 

「ほらもう帰ろうよ。こんなとこに長居は無用。」

 

そう言う物間のケーキセットは綺麗に空っぽだった。お前敗色濃厚だから食い終わったから帰るのな。

だが、そうすんなりは終わらない。上鳴と尾白の、部屋をけなされたらしい2人が玄関へと向かう物間の前に立ちはだかる。

 

言い合う上鳴たちと物間。A組の方から絡んでくる珍しい状況に、水を得た魚のように物間は弾け始めた。その結果何故かABクラス対抗戦をする事になった。その内容は揉めたものの、焦凍の鶴の一声により俺の部屋に封印しておきたかった発目作のあのアイテムが用いられることとなった!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目の前の樽を前に緊張する物間。物間は選んだ穴に剣を思い切って差し込んだ。すると樽の上部が開き、アームが物間の右手を掴んだ。そして人の手を模したアームが現れて物間の手にしっぺを叩き込んだ。

 

「痛っ⁉︎このアイテム本当に安全なんだろうねぇ!憎きB組の僕らを抹殺する元(ヴィラン)の策謀じゃないのぉ⁉︎」

「だったら選手に立候補なんかするか!リスクは俺もお前も同じだよ!あと、安全かどうかは知らん!すまん!」

 

やっている勝負は単純。黒髭が危機一髪するあのゲーム(発目明作)である。罰ゲーム付きの。

 

先日発目作のアイテムが散らばったのを俺、焦凍、障子の3人でなんとかした際にお礼としてもらった作品だ。物珍しさに部屋で一人でいるときに一本刺してみたところ部屋じゅうに悪臭が漂う羽目になり発目に速攻でクレームを入れた作品でもある。

 

このアイテムは黒髭が危機一髪のゲームに罰ゲームの要素を加えたものだ。その罰ゲームの数は正解以外の穴全ての数と同じだそうだ。なんでそこで頑張ったのか本気で聞きたい。

 

そんな糞ゲーの参加者はA組のからは上鳴、尾白、俺、葉隠の4人。B組からはそのまま物間、鉄哲、角取、拳藤の4人である。ゲームがゲームなので角取と拳藤と葉隠には辞退を勧めたのだがそこは雄英ヒーロー科に受かる程の胆力を持つ女子達だ。恐れずに面白そうだと立ち向かって来てしまった。すまぬ。

 

そんな訳ででただいま8人の男女は血を吐きながら続ける悲しいマラソンの真っ最中なわけだ。一巡した現時点では皆の思いは誰でもいいから早く正解して終わらせて欲しいと言うものに変わっているのは何となくわかる。だが物間と上鳴たちが張り合うものだから途中ギブアップなどできないというのが問題なのだ。

 

「次は俺な。刺すぞ!」

 

思い切って剣を穴に刺す。すると樽の上部が開き、俺の顔に照準を合わせたゴムが伸ばされ、パッチンと放たれて俺のおでこに当たった。かなり痛い。というか血が出てる。

 

「団扇くん⁉︎」と観戦し、撮影している緑谷たちの声が響く。ゴムの先に何かがついていたのかも知れないなぁと思った。とはいえこの程度の傷なら大丈夫だろう。新技の初披露だ。

 

「この程度の傷なら大丈夫大丈夫。」

 

寅の印で自分の体内エネルギーにチャクラを調律し、掌からおでこにチャクラを流し込む。するとエネルギーを与えられた細胞は活性化し、すぐに傷は塞がった。

 

「秘術、掌仙術なり。でも流れた血がなくなる訳じゃないからちょっと顔洗ってくるわ。」

 

「凄い、自己再生なんて事までできるんだ団扇くんの新しい個性は...」と緑谷の声が聞こえる。あらゆるヒーローの個性を研究している個性博士とも言える緑谷なのだからその驚きは相当なものだろう。やってる自分としては頭を悩ませた結果、出来ることが出来るようになっているというだけの事なのだが。

 

「ただいまー。さて、続きと行こう。鉄哲頑張れよ。」

「おうよ!さっさとこんなゲーム終わらせてやる!」

 

そう言って勢い良く剣を刺す鉄哲。鉄哲の個性はスティール。体を鉄にする個性だ。その能力で物理系の罰ゲームなら殆ど無力化できる罰ゲームキラーでもある。1週目では辛子を食わされたが。

 

「うおおおおお⁉︎」

 

鉄哲は剣を刺した瞬間から何かの痛みで体をひくひくとさせた。何があったのか聞いてみたところ。ひくひくした体のまま

「電流は、無理だ...」とだけ呟いた。が、鍛えている雄英ヒーロー科の根性は流石のもので、1分ほどで表面上は回復したようだ。

 

「ナイス根性。」

「応、ありがとよ。」

 

鉄哲とちょっとした友情が芽生えた瞬間であった。

 

「次は俺か...終わらせてやる!行くぞ!」

 

前の手番で尻尾にガムテープを付けられ剥がされるという地獄の苦痛を味わった尾白である。警戒して尻尾は完全に体から隠しながら恐る恐る剣を差し込んだ。

 

すると流れるパァン!!!という乾いた音。海賊の人形と共にカラフルな紙吹雪が舞い散った。

そして流れる発目の「おめでとうございます!」とのハキハキした音声。

 

「よくやった尾白!普通に凄えよ!」

「普通は要らなくないか!上鳴!」

「よくやった、これでこの糞ゲーレビューと動画付けて返品できる!ありがとう尾白!ありがとう尾白!」

「2回言うほど感謝するくらいなら持ち込むなよ団扇!」

「いや、怖いもの見たさってあるじゃん?あれだよ。」

「おメデトウごザイマース!負けちゃいましたネ。」

「ああ、でも犠牲者が出ないうちに終わって良かったぜ!悔しいけどな!」

 

そんな和気藹々とした空気に物申すのが物間寧人という男だ。だが、そんな男を一学期にわたり制御し続けた女傑がここにいる。物間が何かを言う前に手刀で黙らせ、引きずって玄関へと向かった。

 

「それじゃあ、邪魔して悪かったよ。また今度ね。」

「おう、今度は俺たちがB組に遊びに行くかもだけど、その時はB組流のおもてなしを期待するぜ?」

「あはは、八百万たち程のおもてなしはできないだろうけど期待はしててね。」

 

「またねー」と皆からの声が響く。拳藤に話があった自分はもう少し外までついて行く事にする。お隣だからそう大した距離ではないが一言礼を言うくらいなら大丈夫だろう。

 

「ありがとな、拳藤。」

「何さ突然、外までついてきて。」

「鉄哲とか角取とかが、俺を怖がってなかった。多分だけど拳藤が色々言ってくれたんだろ?拳藤は俺を元(ヴィラン)としてじゃなく団扇巡として見てくれた。本当にありがとう。」

「それ、風林に言ってあげて?ヤクザ関係者だとか元(ヴィラン)だとか、そんな程度の事で団扇を色眼鏡で見ないでくれって言い始めたのはアイツだから。私はそれを信じただけ。」

「それでもありがとう。それと、風林にも礼を言いたいから連絡先交換してくれね?」

「いいよ、はいどうぞ。」

「ありがとな。」

 

その日、俺の携帯に連絡先が2つ増えた。拳藤とも風林とも縁はそう深いものではなかったが、これからは大切にしよう。

 

 




独自設定のオンパレードの始まりだぁ!
まずは医療忍者のチャクラの調律について、これは第1部にてネジの重症を治すときに髪の毛を使っていた事からの妄想です。手で触れる事で対象の身体エネルギーを感じ取り、それを元に治療を行っているんだと勝手に解釈しました。

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