【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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仮免試験編の開幕です。
楽しいオリジナル展開の時間だぁ!


仮免試験編
ヒーロー仮免許、第一次試験


エクトプラズム先生の足技を躱しつつ、印を結ぶ。

この印を結ぶ動作にも慣れたものだ、圧縮訓練の後半はほとんどこの術の練習をしていたのだから。

 

結ぶ印は、巳未申亥午寅。火を操る団扇一族の代名詞、叫ぶ術名はただ一つ!

 

「火遁、豪火球の術!」

 

燃え盛る火球がエクトプラズム先生を襲う。火球の大きさは人1人を覆うほどのモノだが大したスピードではない。エクトプラズム先生はふらりと容易に回避してしまった。

 

「相変ワラズノ低速ダ。要改善ダナ。」

「でも圧縮訓練のお陰で虚仮威しくらいにはなりましたね。チャクラ消費クソ重いですけど!」

 

そうなのだ。豪火球の術はNARUTOの中忍レベルの術らしくチャクラ消費もそれなりに激しい。今の自分のチャクラ量では連続使用は4〜5発が限界だろう。

正直完成度の低いこの術使うくらいなら移動術からの桜花衝を狙ったほうが良い気すらしている。

 

「マァ試験ハ明日ダ。今日ハコノクライ二シテオコウ。」

「ですね。しっかり休んで明日に備えようと思います。」

 

この圧縮訓練で身に付いた術は、移動術、桜花衝、豪火球(要改善)だ。一つ程怪しいのが混ざっているが必殺技2個習得のノルマは達成できたろう。掌仙術は小さな傷なら治せないことはなくなったが技としては未熟も良いところだ。まだまだ精進あるのみである。

 

あとは新装備の確認だ。とは言ってもバックパックを新しくつけてもらい、ミラーダートを3つと応急処置キットを新しく装備に入れただけなのだが。

 

そうして、最終調整を終えた後その日の訓練は終了となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、仮免試験本番。自分たちは雄英のバスに乗り、試験会場の国立多古場競技場へとたどり着いた。

 

緊張を表に出す耳郎や峰田。

そんな彼らを叱咤激励するのは我らが担任相澤先生だった。

 

「この試験に合格して仮免許を取得できればおまえら志望者(タマゴ)は晴れてヒヨッ子...セミプロへと孵化できる。頑張ってこい。」

 

そんな相澤先生の応援の声に燃えない生徒はいない。当然テンションは上がってきた。

 

「っしゃあなってやろうぜヒョッ子によォ!!」

「いつもの一発決めていこーぜ!」

 

「Plus...」

 

「Ultra!」と叫ぶいつもの決まり文句。だが音頭を取っていた切島の後ろから学生帽を被った大柄の男が混ざってきた。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよ、イナサ。」

「ああ、しまった!!どうも大変、失礼、致しました!!!」

 

グン、ガン、ガァンとダイナミックにお辞儀をするイナサと呼ばれた少年。地面に頭ぶつけてるけど大丈夫だろうか。

 

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は⁉︎」

「飯田と切島を足して二乗したような...!」

 

「待ってあの制服!」「あ!マジでか」「アレじゃん!!西の!!!有名な!!」

などの声が聞こえる。

 

「東の雄英、西の士傑。」

「数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する程の難関校ーー士傑高校!」

 

イナサと呼ばれた少年は大声で話し始める。頭から血を流しながら。大丈夫かアレ。

 

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分雄英高校大好きっス!!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!」

 

勢いに飲まれて「よろしくな」の一言すら返せなかった。不覚だ。

去っていく少年。その姿を見て相澤先生は「夜嵐イナサ」と呟いた。

 

そうして先生は言った。夜嵐イナサとは雄英高校の推薦入試においてトップの成績を取りながら入学を辞退した相当の実力者であると。

 

「雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴るとかよくわかんねぇな。」

「変なの。」

「変だが本物だ、マークしとけ。」

 

などと話していると、新たな来客が現れた。

 

「イレイザー⁉︎イレイザーじゃないか!テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直に会うのは久し振りだな!!」

 

頭にバンダナを巻いた女性ヒーローだ。ここにいるという事はどこかの学校の教員なのだろうか。

 

「結婚しようぜ。」

「しない。」

 

「わぁ!!」と突然の色恋沙汰に喜ぶ芦戸。あの相澤先生の態度からしてそんな浮いた話ではないと思うんだがなー。

 

「しないのかよ!!ウケる!」

「相変わらず絡み辛いな、ジョーク。」

「スマイルヒーローMsジョーク!個性は爆笑!近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせるんだ!彼女の(ヴィラン)退治は狂気に満ちているよ!」

 

流石のヒーロー博士緑谷出久だ。言われずとも解説を忘れない。いつも助かってます。

 

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ。」

「その家庭幸せじゃないだろ。」

「ブハ!!」

 

相澤先生とジョークさん仲良いなー。

 

「さ、おいで皆、雄英だよ!」

 

そうしてゾロゾロとやってくる。ジョークさん曰く傑物高校2年2組なのだそうだ。

 

そうして見られる。自分の事をニュースにより広められたレッテルでのみ知っている人たちからの視線で。

 

などと警戒していたところだったが、向けられる視線に敵意のようなものは感じられなかった。

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!しかし君達はこうしてヒーローを志し続けているんだね!素晴らしいよ!不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!」

 

皆と握手するために動き回る真堂先輩、爽やかスマイルが眩しいぜ...とは不思議と思わなかった。何故だ?

 

「そして、神野事件の中心にいた団扇くん。僕は君の心が最も強いと思っている。元(ヴィラン)であるという過去にも負けず、奉仕と正義の心を失わなかった。それは本当に素晴らしい事だと思う。」

 

そんな違和感を感じる真堂先輩の言葉だが、今の言葉には嘘はなかった。不思議とそうな風に感じられた。

 

「...ありがとうございます、真堂先輩。」

「本音を言っているだけさ!今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらう!負けないよ?」

「こちらこそ、負けるつもりはありません。」

 

そう言って握手する。この人は言動に違和感はあれど悪い人ではなさそうだ。

 

そうしてワイワイと始まりかけた他校間交流。だが、相澤先生の「コスチューム着替えてから説明会だぞ、時間を無駄にするな」との一声によりその交流は歩きながらする事となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

集まった大勢のヒーロー志望者。1000人は余裕で超えていそうだ。

そんな中で始まる説明会、全く疲れを隠さないヒーロー公安委員会の目良さんという人が説明を担当するようだ。大丈夫かこの人、誰か休ませてあげてと思うのは俺だけだろうか。

 

「えー、ずばりこの場にいる1540名一斉に勝ち抜けの演習を行って貰います。現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローのあり方に疑問を呈する向きも少なくありません。」

 

ステインの主張とは「ヒーローとは見返りを求めてはならない、自己犠牲の果てに得うる称号でなくてはならない」というものだ。正直、自分にも納得できる点がある。そんな事が奴のカリスマ性を高めているのだろうとなんとなく思う。

 

「まぁ...一個人としては...動機がどうであれ命懸けで人助けしている人に何も求めるな、は現代社会において無慈悲な話だと思う訳ですが...とにかく対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・(ヴィラン)退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決までの時間は今、ヒくくらい迅速になってます。君たちは仮免許を取得しその激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者はハッキリ言って厳しい。よって試されるはスピード!条件達成者は先着100名とします。」

例年の仮免許取得倍率は約5割と言われている。それを一割未満にするとは思い切った事をする。今年の試験はかなり厳しそうだ。

 

当然受験者からはブーイングが飛ぶが、「社会で色々だったんで...運がアレだったと諦めて下さい」とのありがたい言葉で押さえ込まれた。

 

それからは試験自体の説明が始まった。

ターゲット3つ、ボール6つを配布する。3つのターゲットを体の見えている範囲に貼り付けてそこにボールが当たるとアウト。ターゲットが点灯する仕組みだ。

3つ全てのターゲットが点灯すると失格であり、3つ目のターゲットにボールを当てた人が倒したという事になる。そして、2人を倒すと勝ち抜けとなるのだそうだ。

また、試験の開始はボール、ターゲットの配布が終わってから1分後となるそうだ。列に早く並んで良いポジションを確保しろというスピードも求められているのだろうか。

 

この試験は最後の1つのターゲットを横から奪い取る事を推奨しているルールであり、そんな混乱の中で受験者がどう動くかを見るルールでもあるだろう。

 

自分の取りうる選択肢は二つ、皆とチームアップして安全に勝ちに行くという事。もう一つは、一人でこの混乱の中に立ち向かうということだ。

 

体育祭での大立ち回りにより写輪眼の催眠はバレている。だが、バレているが故にチームアップする際には敵に目線を上げさせないという強力な支援効果が現れる。俺と目線があったら終わりだからだ。

だから、俺は皆とチームアップして勝ちに行く事が最善だと考えられる。

なのに頭をよぎるのは一人で苦難の道を行くべきだという考え。どう考えても悪手だ。なぜ一人で行かなければならないのか、考えても答えは出ない。

 

「ま、気の迷いだろ。」

 

そう一人ごちてターゲットを受け取るための列に並ぶ。弱点となるターゲットは、実戦に感覚を近づけるために心臓を挟んだ胸と背中の両側に、最後の一つはどこにつけようか迷ったが、丹田に貼る事にした。実際腹は急所なので悪くないだろう。

 

「にしても説明会場が展開するとか妙なとこに金かけているなー。」

「ははは、そうだね。団扇くんはターゲットどこに貼るか決めた?」

「ああ、正中線の上の胸と背中に腹にする。急所に貼っておけば普段の訓練と変わらない感じで動けるだろ。手首に貼って死守するってのも考えたけどな。」

「なるほど、そういう考えもあるか...」

「まぁ適当で構わないと思うぞ?このルール的当てじゃあないみたいだし。」

「団扇くん?」

 

そう、このルールは的当てのうまい奴が勝つのではない、的の動きを止めた奴が勝つのだ。おそらく拘束系の個性を持つ連中はその事にもう気付いているだろう。

A組の拘束系個性は俺、瀬呂、峰田、焦凍の4名。使いようによっては麗日と八百万もいけるだろう。

 

「畜生、列に並ぶ瞬間から勝負は始まっていた訳か...急いで並んだから近くに作戦を練れる奴がいない。緑谷、ボールとか貰ったら速攻で皆と合流するぞ。」

「...うん、この試験の勝ち筋はクラスによるチームアップでの戦いだからだよね。」

「それだけじゃない。さっきから色んなところを見ているが、クラスの連中以外誰とも目が合わない。俺はかなり警戒されているみたいだ。」

「なるほど、それなら体育祭で見せた個性は全員に知れ渡ってると考えた方が自然だ。」

 

ここからは聞かれたくないので耳打ちする。

 

「つまり俺の新個性と緑谷のフルカウルはノーマークって訳だから悪いことばかりじゃないってことさ。」

 

緑谷は「⁉︎」っと頷いた。

 

「ま、その辺を活かすための策を練るために皆で集まりたいんだがな。」

「そうだね、となると僕と団扇くんが前線を張るわけだから合宿の時みたいな団扇くんに指揮官を任せるってやり方じゃ駄目だしね。」

「そういう事。すまんな、餌につられた俺が浅慮だった。」

 

目の前の餌に釣られて急いだ結果指揮官適性のある八百万や飯田と別れてしまったのはかなりの痛手だ。

個性を知られていないも同然の俺と緑谷は前線を張る役になってしまうだろうから余計にそう思う。

 

だがこの程度の逆境は雄英ヒーロー科にとっては日常だ。Plus Ultraだ。

 

「頑張るか、緑谷。」

「そうだね、頑張ろう団扇くん。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ターゲットとボールをもらいボールをバックパックに4つ、コートの両ポケットに一つずつ入れる。ターゲットを貼り付けて準備完了だ。

クラスの皆と合流して岩山エリアへと移動する。爆豪、切島、上鳴、焦凍はクラスから離れたので、今俺たちは17名。主軸に置くのは瀬呂と峰田の二人だ。二人が敵を固めまくってポイントを重ねようという作戦だ。

まぁ、少し雄英風のやり方になる訳だが。

 

大雑把な作戦は立てられた。ならあとは高度の柔軟性を保ちつつ臨機応変にだ。

 

予想通りSTARTの合図とともに俺たちは囲まれて、ボールの集中放火を食らう羽目になった。

 

「自らを破壊する程の超パワー、催眠と身体エネルギーを見る目の複合個性、...まァ、杭が出てればそりゃあ打つさ!」

「出過ぎりゃ杭とて打たれまいさ!」

 

そのボールの雨とて、写輪眼なら見切る事ができる。

チャクラにより強化された身体は、その動きについていくことが出来る。

さあ、早速のトリックプレイと行こう。

 

着弾の一番速いボールを掴み取り、肘から先のみを用いたショートモーションでボールを投げ返す。それでボールをいくつか弾き、人一人が通れる程度の隙間をボールの雨の中に作り出した。

 

というわけで、突貫行きます!

 

「消えた⁉︎」

 

移動術で隙間を抜けて走り抜け、手近な者を皆の方に投げ飛ばす。

 

「何⁉︎」

「嘘だろ、コイツは⁉︎...体が動かな...ッ⁉︎」

「馬鹿、コイツの目を見るな!」

 

一人目、写輪眼により金縛り成功。この試験はチーム戦、足手まといを即見捨てるという判断を下せる奴は少ないだろう。

 

「飛び込んでくるとか馬鹿かよ⁉︎」

「飛んで火に入る夏の虫!ボコっちまえ!」

 

そうして俺に投げつけられるボール。だが、まだ戸惑っている者も多いためにボールの数はそう多くなかった。移動術での不意打ちチャンス再びだ。

 

くの字に移動術を使い、小柄な奴の背後を取り関節を決めつつ言う。

 

「雄英潰しだったか?随分と優しいな!この程度の苦難は日常茶飯事なんだよ!雄英舐めんな!」

「うるせぇ、囲まれているのはお前だ!ポイントになっちまえ!」

 

俺に向けて投げられるボールの雨、だが今回は手元に傘がある。

 

「ちょっと痛いかもしれないけど、運が悪かったと諦めてくれ。」

「今関節決められてるのでもうすでに痛いよ!」

 

チャクラを足、腰、腕と流動させて傘を持ち上げる。そしてもう一度足にチャクラを集中して、傘としている奴を自分を中心にぐるぐる回し、飛んでくるボールを全て叩き落とす。

 

「即興必殺、人間芭蕉扇の術。なんつって。」

「...気持ち悪い...」

 

傘にしていた奴は胸と足につけていたターゲットが点灯していた、

 

「悪かったよ、休憩室で休んでてくれ。」

 

そう言ってそいつの背中にあったターゲットにボールを叩きつけてポイントゲット。あと一人で突破だ。

 

「畜生、なんてパワーだ⁉︎あいつ魔眼個性じゃあなかったのか⁉︎」

「まずいぞ、ポイント取りやがった!あと一人で抜けられちまう!」

「ていうか人を人と思わないあの戦法、(ヴィラン)潰しってやばいんじゃないか⁉︎」

 

パフォーマンスを行ったお陰で俺に目線が集中している。だがそれは悪手だ。

 

「俺を見ていていいのか?」

 

そう言った俺の後ろからは緑谷、飯田の高機動組が自分の援護にやってきた。俺に気を取られている二人に不意打ちの蹴りが当たって昏倒する。

 

「「団扇くん!」」

「ああ、暴れるぞ!『雄英潰し潰し』だ!」

 

要するに、雄英を潰そうと集まってくる連中を餌にして勝ち上がってしまおうという脳筋戦法である。

作戦の鍵は現在の個性の割れていない俺と緑谷の機動力と小回りだ。俺の目があれば大体の初見殺しは回避できる。なので俺メインで撹乱しつつ峰田と瀬呂のキルゾーンへと人を集める算段である。

 

個性の詳細を判別する前にこの作戦をするのは少々危険だが、そんな事を考えさせないほどに速戦で終わらせて仕舞えば関係ない。

そう考えた作戦だったが、写輪眼で地に走る身体エネルギーを見た結果、失策だと気付いた。

 

「全員、足元気をつけろ!」

「凄いな、エネルギーを見る目ってのは!だが俺の必殺技は止められない!震伝動地!」

 

突如発生した地震により地面は割れて面子が分断される。暴れ回っていた俺、飯田、緑谷は孤立してしまいそうだ。なので飯田には影分身を、緑谷には自分自身で援護に行こうとする。だが緑谷とは地震の振動により割れた地面により分断されてしまった。影分身は無事に飯田の元にたどり着けたので、飯田は大丈夫だろう。

 

振動が収まった時には、地形は様変わりしていた。

もともとはポツポツあった岩山くらいしか障害物はなかったのに今ではちょっとした迷宮である。そして突出していた俺の近くには味方はほぼ間違いなくいない。

まぁそれは突出していた自分が悪いのだから自業自得な訳だがそれは別にいい。

問題は、さっきからずっと感じている敵意についてだ。そういう感覚に鈍い自分が感じ取れるのだから相当なモノだ。

 

そうしてその敵意の元へと目を向ける。そこには、背中から四本の足を生やしている異形型の蜘蛛男が、()()()()()俺に向かい合っていた。

足音をたてないように少し横に移動してみる、蜘蛛男は体ごと自分に向いてきた。

 

「やばい、目を閉じてるのに全く俺を見失わないぞコイツ。どういうカラクリだ?」

「スパイダーセンスだ。」

「マジで⁉︎」

 

驚愕の真実である。スパイダーセンスは実在したのか...

 

「ヴィラン潰し、お前が先ほど盾にした先輩は俺の恩人なのだ。その仇、討たせてもらう。」

「仇討ちか...まぁそりゃあ怨みも買うか。こんな試験ならな。」

「西岡島高校一年、蜘蛛頭飛糸(くもがしらひいと)。いざ尋常に。」

「雄英高校一年、団扇巡。勝負と行こうか!」

 

勝負の開幕は、両手首から出す蜘蛛の糸だった。そこまでスパイディなのか⁉︎

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

長期戦になればなるほど俺は不利になる。この起伏の大きいフィールドだ、蜘蛛の糸でトラップを張られかねない。

なので速戦あるのみだ。移動術で高速接近し、桜花衝を叩き込もうとする。しかし、背中の四本の足でガードされ、いなされてしまった。衝撃のほとんどは足元へと逃がされてしまったのだろう。

 

異形型の例にもれず、人間以外の部分が強力なパワーを持っているようだ。しかもテクニックもある。強敵だ。

 

手首の射出口が向けられたので迎撃行動に入る。蜘蛛頭の右手の手首を左手で掴み、チャクラで吸着、桜花衝をガードした背中の四本足も右手で吸着し、足をチャクラのこもった蹴りで払う。変則的な背負い投げを行い、投げる瞬間に吸着を解除して、投げっぱなしで大ダメージを狙う。

 

だが、相手もさるもの、しっかりと受け身を取りつつ残った左手で蜘蛛の糸を瓦礫に向けて放ち、投げの勢いそのままに瓦礫を振り回すことで自分に糸を絡みつけようとしてきた。

糸に絡まればおそらく次はないだろう。当然回避だ。ジャンプして糸を回避した瞬間、両手首に身体エネルギーが集中するのが見えた。空中では回避が出来ない、だが向こうの打つ手は読めている、そしてその対策の術もすでに習得している!空中で落ち着いて印を結び、胸にチャクラを貯めてチャクラに燃えるようなイメージの性質を付与する。そして最後の寅の印と共に思いっきり吐き出す!

 

「必殺、マシンガンウェブ!」

「火遁、豪火球の術!」

 

マシンガンのごとく連続で放たれた蜘蛛の糸を、これまでで最高の出来の豪火球で全て焼き尽くす。

 

「何⁉︎」と驚いて斜め後ろに大きくジャンプする事でで火球を回避する蜘蛛頭、だが一瞬でも宙に浮いたが最後だ、豪火球を吐き続けた事により地に足がついたので、俺の必殺技はもう発動が可能なのだ。

 

全チャクラを両足に集中、全力の移動術で距離を詰め、空中で先ほどガードされた分よりも多くのチャクラを掌に込めた一撃を放つ!

 

「桜花衝!」

 

空中では衝撃を流すことが出来ない。全てのダメージを体で受けた蜘蛛頭は、ダメージから目を見開いた。その目は当然俺の目と合う。

写輪眼発動である。金縛りの幻術だ。

 

「...体が動かぬ、これが催眠眼か。」

「ああ、金縛りの催眠だ。お前のポイント、取らせて貰うぞ。」

「構わない。拳を合わせてわかった、お前は強い。力も、心もな。悔いはあるが、負けた事には納得できた。俺のポイントを持って、次の試験に進むといい。」

 

ボールをバックパックから取り出し、右胸、左胸、腹の三点についていたターゲットにボールを投げて当てる。この辺りはダートの投擲で慣れたものだ。

 

その時、放送の目良さんから放送が入る。俺とほぼ同時に合格者が現れたのだそうだ。そいつの撃破数はなんと120人、広域殲滅系の個性だろうか、驚きである。

 

影分身を作り、解除。これで分身を通じて飯田に連絡が行くだろう。

と思ったらすぐに分身解除の経験が伝わってきた。どうやら飯田は皆の所を回って助けに行くらしい。それに付き合えなくてすまないと謝って分身は消えたようだ。

 

「やっべ、自分勝手過ぎたか...?まぁ皆なら大丈夫か。」

 

そう言ってから倒れている蜘蛛頭に目を合わせ幻術を解除、ついでに鎮痛の催眠をかける。

 

「...痛みが消えた?」

「鎮痛だ。傷が消えたわけじゃないから無理はするなよ?」

 

倒れている蜘蛛頭に手を差し伸べる。蜘蛛頭はこちらの手を取ってくれた。

 

「勝負が終わればノーサイド。肩貸すぜ、蜘蛛頭。」

「ああ、頼む、団扇。」

「おうさ!」

 

蜘蛛頭に肩を貸して脱落者の待機場所へと移動する。合格者の待機場所とは違う場所だがそれはおそらく2次、3次試験と試験が続くことを示しているのだろう。これからも油断は禁物だ。

 

「ところで団扇、俺のマシンガンウェブを防いだあの熱いのはなんだったんだ?お前の個性は催眠眼と聞いていたが。」

「ああ、ちょっと前の事件で眠っていた新しい個性に目覚めてな。精神をエネルギーにする個性だ。」

「なるほど、その個性の応用で炎を作り出したということか。いい個性に目覚めたな。」

「本当にそう思うわ。」

 

そんな会話をぐだぐだしながら蜘蛛頭と共に歩いて行く。話してみると聡明だが気のいい面白い奴だった。また今度会うときは携帯のアドレスでも交換しよう。そんな事を思った。




そんな訳でオリジナル展開マシマシの展開でした。アニメオリジナル展開で仮免試験の内容詳しく描写されるとか予想外のタイミングでの追い討ちよ。すっごい楽しみ。

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