なんか書けちゃったので投稿します。
それにしても評価者数が気付けば163人、調整平均が6.7くらい。一時は短い黄色になっていたこの作品もなかなかの評価をされるようになりましたねー。嬉しい限りです。
蜘蛛頭を脱落者待機所に送り、ターゲットの示す合格者の待機所へと向かう。放送によると現在の合格者は30名程度、そろそろ加速度的に合格者が増えていく事だろう。皆が心配だ。
だが、あそこで蜘蛛の糸を操る蜘蛛頭から逃げるのは不可能だった訳なので先に抜けてしまうのは仕方ないだろう。取れるターゲットを放り出して他に行くというのも悪手なのだから。よそに掻っ攫われるのは最悪なのだから。
だが、飯田には悪いことをしたと思う。分身による情報の伝達までは飯田のクラス巡りを助ける気満々だったのだから。
「後でオレンジジュースでも奢るか。」
飯田の事を考えてそんな事を思う。
クラスの皆を助ける為に走り回る飯田は、きっと皆の助けを貰って試験に合格するだろうから。
そんな事を考えて歩いているといつのまにか待機場に着いてしまった。
だが、その中にはまだ雄英の仲間は誰もいなかった。
「八百万あたりならスパッと合格してそうなもんだと思うんだがなぁ。」
そう一人ごちたら、受験前に会ったあの夜嵐イナサに話しかけられた。
「おお!雄英一番乗りはあんたか!熱いな!」
「おお、ありがとさん。ちょうど仲間がいなくて暇だと思ってた所なんだ。話し相手になってくれるか?」
「構わないっス!」
ところで何故夜嵐は俺の事を熱いと言ったのだろうか。まさか豪火球の情報が漏れているッ⁉︎さすが西の士傑、恐ろしい情報力だ。まぁそんな事はないだろうが。
「そういや名乗ってなかったな。知ってると思うけど一応。団扇巡、仰ぐ団扇に巡り合わせの巡だ。」
「知ってるっス!ヴィラン潰しの動画見たっスから。あんなデカイ奴にビビらないで立ち向かえるのはかなり熱かったっスよ!」
「うわ、予想外の好印象。ありがとう。」
「それに神野でのニュースを見たっスから、あの日の活躍も知ってるっスよ!血狂いマスキュラーとマグネなんて凶悪
「なんと、こっちでも好印象とか驚きしかないんだが。俺が元
「それはそれっス!俺は俺が熱いと思った事を言ってるだけっスから!」
熱いの意味がわかってきた。コイツの熱いはおそらく好きみたいな意味なのだろう。心が熱くなるから熱いか、いい言葉だ。
「...いい奴だなお前は。お前風に言うと熱い奴ってことかな?」
「おお!良く言われるっス!」
そうして夜嵐と待機場に置かれていたお菓子を食べつつ会話をする。
「このお菓子美味いっスね!」
「ああ、どこで売ってるんだろ。この辺りの名産品かな。...砂藤なら知ってるかね。」
「砂藤?どんな奴っスか?」
「おう、ウチのクラスの誇る名パティシエだ。寮生活になって一番輝いてるやつでもあるぜ?」
「おお、熱い話っスね!」
「ああ、熱い男だ。この前クラスの委員長の誕生日があったんだが、その時にふるったオレンジケーキがもう絶品でな!甘すぎない口触りに口の中でブワッと広がるオレンジの香り、あの味は当分忘れられないぜ。」
「おお、聞いてるだけでお腹が空いてくる話っスね。」
「んで、お前は砂藤をどんな奴だと思った?」
「体育祭で見たっスよ!...え、あの筋肉ムキムキの奴っスか⁉︎」
「そうなのよ、見た目ムキムキなのに細やかな仕事ができる凄い奴なんだよ。訓練で疲れた日にはホイップクリームに蜂蜜を入れるなんて細やかな気配りもできる。本当に熱い男だ。」
「確かにそれは熱いっスね!」
個性や必殺技の事は、次の試験の内容を考えると話せないが、砂藤は本当にいい奴なのだ。その事が伝えられて嬉しい限りだ。
そんな事を会話していると、自動ドアが開いた。見えてきたのは
「お、焦凍!」
「おう」
雄英合格者2号目は焦凍だったようだ。右手を上げて焦凍を待つ。焦凍も意図を汲んでくれて右手を上げながら近付いてきた。ハイタッチだ。
「そしてコイツはさっき仲良くなった夜嵐...夜嵐?」
「お前は、エンデヴァーの息子だ。」
「...ああ、そうだ。」
「好かん、じゃあな。」
そう言って夜嵐は去っていった
「...ちょっと夜嵐と話してくる。あの様子は明らかに変だ。」
「いや、いいよ。多分あいつは、エンデヴァーアンチだ。」
「焦凍のアンチじゃないなら仲良くできるかもだろ。てな訳で行ってくるわ。」
後ろ手に手を振って焦凍と別れて夜嵐の所へ行く。
「夜嵐、ちょっと良いか?」
「団扇?なんだ、あのエンデヴァーの息子と仲良くは出来ないっスよ。」
「別にそこまでは言ってないよ。ただ、新しい友達が俺の友達を嫌う理由が知りたかったってだけだ。それを解決できるかどうかは俺には分からないけどな。」
そう言って夜嵐の隣に座る。夜嵐は、少し待ったあとこう切り出した。
「俺、昔エンデヴァーを見た事あるんスよ。」
「ああ。」
「それで、ヒーローに憧れてた俺はエンデヴァーにサインを貰おうとした。んで断られた。」
「エンデヴァーさんだしな、『邪魔だ』とか言ってそう。」
「エンデヴァーとも仲良いんスか?」
「職場体験で上司だった、その程度の関係だよ。」
「まぁ当たりっス。その時から俺はあの、エンデヴァーの遠くを見る憎しみの目が苦手になったっス。」
「...そうか、んで推薦入試の時に焦凍に会った訳か。あの、世界全てを憎んでるみたいな頃の焦凍を。」
「そうっス。あの目を見てすぐに気付いたんス、あいつがエンデヴァーの息子だって。んで、声をかけたら『邪魔だ』って返された。」
父親と似たような目で、父親と同じ返しをしてしまった訳か...なら夜嵐が焦凍を気に食わなくなるのも仕方ないな。ある意味焦凍の自業自得だわコレ。
「ありがとな夜嵐、話してくれて。」
「いいっスよ、団扇はもう友達っスから。」
「やっぱ熱い奴だわお前、じゃあ友達として一つだけ言わせてくれ。」
「何スか?」
「お前、やっぱり雄英蹴ったの失敗だったよ。焦凍は緑谷っていう爆弾みたいな奴のお陰で変わった。それをお前みたいな奴は間近で見るべきだったんだと俺は思った。」
「...確かにアイツの目はちょっと変わってたっス。でもやっぱりあいつはエンデヴァーの息子だ。認めらんないっスよ。」
「それならそれで良いさ。次の試験でまた争うかもしれないからな。でも。」
夜嵐のシワになっていた眉間を両手でマッサージする。「何すんスか⁉︎」との声は無視無視。
「そんな眉間にシワの寄った顔は似合わないぜ?お前は誰かを熱いと思って、自分の熱いって思う事をやってる時が一番格好いいタイプの奴だ。自分の強みをなくすのは勿体ないぜ?」
言いたい事は言えた、雄英、士傑ともに合格者が出揃ってきたので皆のいる所に移動しよう。「またな」と手を振って夜嵐と別れる。夜嵐は、眉間に手を当てて、何かを考えていたようだった。
夜嵐と焦凍の問題は根深いものなので、今日会ったばかりの俺にどうにかできる事じゃあないだろう。なので今の俺にできるのは、焦凍に今の話をして、次の試験で問題を起こさないようにする事だろう。
その時の俺は、そんな甘い事を考えていた。
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その後第1次試験終了したが、なんと雄英高校1年A組は全員が突破に成功した。その中で一番の活躍をしたというのはなんと青山優雅であったのだそうだ。乱戦となりぐちゃぐちゃになっていた所を上空へのレーザー照射により目立つという思い切った作戦により皆を集め、尾白たちが咄嗟に組み上げた峰田のもぎもぎを中心とした戦術により連続合格を決めたのだとか。
乱戦の中自身の犠牲を覚悟しての行為、素晴らしいと言わざるを得ない。青山には策士の適正もあったのだろうか...
すると、放送から目良さんの声が聞こえてきた。
『えー、100人の皆さん。コレをご覧下さい。」
画面にはフィールドが映し出された、何かと思って見てみると、突如としてフィールドのいたる所から爆発が発生した。何事⁉︎
『次の試験でラストになります!皆さんにはこの被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行って貰います。』
今回の試験もハードになりそうだ。
要約すると、HUC、HELP US COMPANY の皆さんが傷病者としてフィールド全域にスタンバイしているので、彼等に対して仮免許を取得した者としての適切な対処を行えということだ。
『尚、今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後に始めますので、トイレなどを済ましておいて下さいねー...」
10分間、休憩に使う訳にはいかないだろう。
机の上に乗って大声で話す。注目を引きつけるには高い所がいい。
「俺は雄英の団扇!この10分間を休憩時間に使うのは惜しい!作戦会議をしたい!各校の指揮官や参謀は俺の所に集まってくれ!俺たちはもう敵じゃない!」
「団扇くん⁉︎」と戸惑う声が聞こえる。10分で練れる作戦など大したものではないがそれでもやらないのとでは大分変わる。
そう思ったのは俺だけではないようで士傑のフサフサの人、傑物の真堂先輩などが続々と集まってきてくれた。
「団扇くん、私は士傑の毛原だ。」
「俺は真堂、また会えたね!」
「ありがとうございます!それでは救助訓練作戦会議を始めます!
まず、シチュエーションはほぼ間違いなくテロによるもの、広域に爆破なんて起きる状況は他にありません。なのでそれを前提に作戦を練ります。」
「承知した。だが作戦といっても我々は急造チーム、連携などその場その場でしかできないと思うのだが。」
「救助はそれで大丈夫です。作戦を練りたいのは救護所、助けた避難民をどこに連れて行くかです。」
「成る程、確かにバックアップは大事な事だ。場所はどうする?」
「取り敢えずこの部屋の前に救護所は作りたいと思っています。俺は催眠眼のお陰で避難民のパニックを抑えられます。なので俺を中心に即興で応急処置チームを組みたいと思います。個性が応急処置に向いている人がいるなら教えて下さい。」
すると、「私の個性は布を生み出せる、包帯もガーゼも作り放題だよ!」と元気な女性の声が聞こえた。
「ありがたいです。八百万、包帯さん、二人は今のうちに包帯と消毒液の準備を!八百万は救助に出て欲しいから脂質は使いすぎないように!」
「はい!包帯さんこちらへ!」
「うん、でも私は
「はい、よろしくお願いします絹川さん!」
「それで、救助の実働部隊はどうする?」
「今のうちに話し合って...畜生、時間がない。実働は臨機応変に!でもトリアージはしっかりと行ってください!時間は?」
「あと1分!」
とりあえず救護所の仮設置はできた。あとは皆を鼓舞するだけ!
もう一度机の上に上がって大声で言う。
「ここにいる全員でヒーローになるぞ!Plus Ultraだ!頑張っていこう!」
「応!」と皆の声が揃った。即席チームは出来上がった。後はスタートダッシュの為の準備だ、皆に任せよう。
その時、ジリリリリとベルの音とともに放送が始まった。
『
建物が開くと共に飛び出す皆、飛び出さず救護班に残る事を決めてくれたのは10人程
「ここにいる面子が救護班だ!命を守るヒーローだ!締まって行くぞ!」
返事の「応!」は慣れたものだ。
「絹川さんの他に応急処置に使える個性はいるか?」
反応は無し、どうやら救護は絹川さんの活躍に期待するしかなさそうだ。
とはいえ皆さんは自分たちより一年も多く学んだ先輩方だ、包帯による応急処置も手馴れたものだろう。得点の詳細が語られていないこの試験で救護班を務める事を決めてくれた方々だ。頼りにしていこう。
そうして、個性なのかやけに足の速い人が一人目を連れてきた。
「トリアージは⁉︎」
「黄色!だが足から出血をしてる!」
「ありがとう!こっちで対処する。現場に戻ってくれ!」
「任せた!」
「任された!」
そう言って一人目の救助者に目線を合わせて写輪眼発動。「落ち着いて、ヒーローたちの言うことを聞け。」と催眠をかける。
「一人目、黄色!お願いします!」
「あいよ!私に任せて!」
絹川さんの作ったガーゼを使って止血したあと消毒をして包帯を巻く。見事な手際だ、相当訓練をしたのだろう。
「あなたは?」
「私は
「サブリーダーお願いします!応急処置の人の振り分けを!」
「了解!先輩を頼りたまえ、後輩!皆、後輩に良いとこ取られないように頑張るよ!」
すると続々と救護所には、救助者を抱えたヒーロー達が集まってくる。激務の始まりだ。
「こっからが本番だ、締まって行くぞ!」
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「包帯切れた!絹川!」
「ガーゼも頼む!」
「はい!お任せを!」
救護班の過剰な仕事量を見て救出向きでない個性の人々が続々と応急処置に加わってくれた。それを即座に振り分けたのは渋川さん。本当に経験豊富な人だ。
すると遠くから緑谷がフルカウルのスピードで少年を抱えてやってきた。
「団扇くん!」
「緑谷!トリアージは!」
「黄色!でも頭部に出血あり!」
緑谷の抱えた少年に催眠をかける。「落ち着け、ヒーローの言葉に従え」と、もはや何発打ったか覚えていない。
「団扇くん、大丈夫?」
「大丈夫、鍛えてるからな。それに班に良い人が残ってくれた。」
「もっと褒めてもいいんだよ、後輩!」
「ああ、渋川先輩は最高です!」
「本当に褒められた⁉︎」
そうな馬鹿話をしながらも手は止めない。本当に一流だ。
この調子なら問題なく皆を救助できる、そう思い始めてきたところ、その爆発は響いた。
放送で流れる
だが、このタイミングは最悪ではない。何せ頼れる奴がちょうど来ているところだったのだから。
「総員傾聴!黄色以上は手を貸して、緑は歩かせて市街地エリアに避難!以降の指揮は渋川先輩に、殿は俺たちが行く!遠距離持ってる人は止まって援護を!行くぞ緑谷!」
「この少年は任せて!行ってきな後輩たち!」
「うん、行こう団扇くん!」
移動術を使ったトップスピードで参上。
視線を俺に集める。何名かの黒タイツには催眠を仕掛けられたが肝心のギャングオルカは目を閉じていた。
「フン、団扇巡か。」
「シャチのエコーロケーションですね、相性が悪いッ!だが、今の殿は俺!だけじゃあない!」
俺の後ろに隠れて地面に手を当てた真堂先輩がいる。
「デカイの頼みます!」
「後輩にばっか良いところは渡さねぇよ!震伝動地!」
「起きろ!ギャングオルカを狙え!」
真堂先輩の作り出した大地震、そしてトリガーワードによる催眠の起動。そして、回り込んだ緑谷による奇襲。即興で練った三段構えの攻撃だ。
だが、それを覆してのヒーローという事だろう。ギャングオルカは大地震に動じる事なく黒タイツからの攻撃を回避しつつ、緑谷の奇襲を受け止めた。不味い!
「緑谷、掴まれ!」
そう言って緑谷にワイヤーアロウを射出する。緑谷は即座に意図を理解してアロウを腕で掴みとった。アロウを巻き取り緑谷を引き上げる。ギリギリでギャングオルカの超音波攻撃を回避できたようだ。
「ありがとう、団扇くん!」
「流石のプロヒーローだな、あの状況の奇襲が通じないとは。俺は少しの間余震で動けない、頼むぞ二人とも!」
「「はい!」」
そう言って緑谷とスピードを合わせて左右に分かれて行く。ギャングオルカは動けない真堂先輩へと狙いを定めたようだ。シャチの高速移動が来る。
だが、写輪眼には見えている。
移動術でスピードは補える!
真堂先輩へと襲いかかる途中で桜花衝を叩き込む。高速移動中ではエコーロケーションによる索敵も穴があくというものだろう。
だが、歴戦のヒーローはその一撃を腕につけているプロテクターで防御してきた。プロテクターが壊れる事でダメージは殆ど吸われた。ギャングオルカにダメージは通っていない。
「まさか高速移動中を狙われるとは...⁉︎」
だが、衝撃で良い位置に飛んだ!アイコンタクトをする。行け緑谷!
「セントルイス・スマッシュ!」
脚部のアイアンソールを最大限に活かした重い一撃が、ギャングオルカの脳天に叩き込まれた。
「まだ意識はある!畳み掛ける...耳塞げ緑谷!」
喉に集まる身体エネルギーが見えた。ギャングオルカは、緑谷の全力の一撃をただのフィジカルだけで耐えたのか⁉︎
声は届かず、緑谷は超音波によって叩き落とされてしまった。だがその一瞬前に現れたエネルギーがその音波を減殺させたようだった。
あのエネルギーの色は渋川先輩だ、あの人本当に最高過ぎないか?
「真堂先輩、行けます?」
「すまん、あと30秒くれ。」
「30秒あったら決着付いてますよ、多分。」
つまり孤立無援だ、ダメージはあると信じたいがそれは流石に甘いだろう。
しかも最悪な事に黒タイツの
さて、他に手は無い。突撃と行くか!
そう思っていた自分が恥ずかしくなるほど、その増援はタイミング良く現れた。
大氷結と、暴風を伴って。
「遅くなった。団扇、増援だ。」
「団扇!助けに来たっス!」
「ナイス増援!焦凍、夜嵐!」
移動術での突撃をする。ギャングオルカはいまだ目を閉じたまま、自分の桜花衝を素のフィジカルのみで捌いてきた。だが狙いは足元の緑谷の救出だ。左足で緑谷を踏み、吸着。右足のみにチャクラを集中させた移動術で逃亡する。
「ありがとう、団扇くん!」
「動けるか?」
「あのバリアーのお陰で、ギリ動ける!」
「吉報過ぎるなオイ!最高だよ!そういう事だ、やっちまえ、焦凍、夜嵐!」
2人の個性のコンビネーションならギャングオルカとも戦える。
そう思っての声だったが、2人は、というか夜嵐は欠片も協調する様子を見せず、結果として焦凍の炎も夜嵐の暴風も逸れてしまった。
「夜嵐、コントじゃねぇんだぞ!真面目にやれ!」
「今のは、エンデヴァーの息子が!」
「お前の風が原因だろうが!」
そんな言い争いが始まりかけた所に、黒タイツの武器が焦凍に向けられているのが見えた。
「焦凍、防げ!」
「チッ...今は
焦凍の氷結により黒タイツから放たれた射撃は防御された。あれは何が放たれている?
「セメントガンだ、当たればすぐ固まって動けなくなる!」
「説明ありがとう黒タイツさん!」
そんな話をしつつも緑谷を真堂先輩に預ける。
「真堂先輩、30秒は経ちましたよね。動いて下さい。」
「先輩使いが荒いな、後輩!」
真堂先輩は地面に手をつけて瓦礫の山を登り始めていた黒タイツに振動を浴びせた。
「夜嵐、今の焦凍を見ろ!焦凍、お前のツケだなんとかしろ!お前ら2人のコンビネーションならギャングオルカにも負けはしない!俺と緑谷は黒タイツを片付ける!」
移動術で回り込み黒タイツ連中へと襲いかかる。セメントガンの弾は大きい、大きく回避しなければならないのが辛いところだ。
なのでこの辺に沢山ある武器を使って戦おう。
瓦礫を掴み、チャクラを足、腰、腕と流動させて用いる事で擬似的な怪力を生み出す。そして瓦礫を黒タイツに向けて投げつける!
「即興必殺、怪力乱心!」
「うおマジか⁉︎」と驚いて回避する黒タイツたち、流石のプロだ。
だが、攻め込むには十分な隙ができた。
移動術で踏み込み、桜花衝を一発、1人撃破。
遅れて踏み込んできた緑谷の蹴りによって2人撃破。
小さく移動術を行い踏み込んだ肘打ちを顎に当てて3人撃破
フルカウルの小回りを活かした緑谷の拳で牽制してからの俺の蹴りにより4人撃破
俺の桜花衝を見せ札にして回避させた先に緑谷の蹴りが叩き込まれた、5人撃破
構えられてしまったセメントガンを回避して2人同時に放った拳により顔面と腹にダメージを与えて倒した。
真堂先輩の起こしたフィールド割りにより人数が少なくなっている。第一陣はこれで終わりだ。
「なぁ緑谷、バンド組まね?」
「突然だね...僕は楽器はできないかな。」
「奇遇だな、俺もだ。ここでも息が合うとかちょっと運命感じちゃわね?」
「また適当なこと言う。まぁ...」
「そうだな...」
緑谷と俺、息の合ったダブル回し蹴りにより立ち上がった6人目は、完全に崩れ落ちた。6人撃破。
「次の黒タイツに備えるか。」
「そうだね。」
何だかんだと緑谷との付き合いは長い。俺が力を得ても、それを勘定に入れて動いてくれる頭の良さもある。いい友人を持った、心からそう思う。
ふと、ギャングオルカの方を見る。ギャングオルカは、焦凍と夜嵐のコンビネーションと思われる炎の渦により閉じ込められていた。
だがギャングオルカはプロヒーロー。どうせ破られるだろうから緑谷とともに奇襲に行くかと迷ったところ、他のA組連中がやってきていた。士傑の学帽を被った人たちの姿も見える。夜嵐と焦凍は倒れ伏しているものの傷はない。
「どうする緑谷、どっちか行くか?」
「皆が来ている。だから僕たちは僕たちの役割をしよう。」
「そうだな、おかわりも来ちまったし、な!」
緑谷と共にセメントガンの射撃を回避、瓦礫を乗り越えて現れた黒タイツは7人。さっきより1人多い。まぁ向こうは個性を使わないなんてハンデをつけてくれているんだ、この程度抜けられないのは雄英生徒の名折れだ。
「行くか。」
「うん。」
そうして、自分と緑谷が新たな
『只今をもちまして、配置された全てのHUCが救出されました。まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全工程終了となります。』
「終わったな、手ごたえはどうよ?」
「うん、途中からは悪くないかな。」
「ぶっちゃけ俺はてんやわんやしてただけだわ。」
「嘘⁉︎」
「いや本当。渋川先輩いなかったらどっかで破綻してたと思う。あの人マジで最高だわ。お前を守ったバリアーの人だから会ったら礼を言っとけよ?」
「てことはすごい遠距離でバリアーを発生させたんだ。凄い個性のコントロールだ。どこの学校にも凄い人っているんだね。」
「本当になー。あの人と協力できた試験で良かったわ本当に。」
そんな会話をぐだぐだしながら歩いて行くと、市街地エリアに移された救護所が何か騒がしかった。
「様子がおかしい、行くぞ緑谷。」
「うん、誰か怪我でもしたのかもしれない。」
そこには頭部から血を流すHUCの人と、大量のガーゼで必死に止血を試みる絹川先輩と渋川先輩がいた。
ヒーロー仮免許試験の終わり際に起きたその事故は、卵からヒヨコになろうとしている俺たちには少しばかり荷が重い、命に関する出来事だった。
さぁ、本格的なオリジナル展開の始まりです。
評価バーはもはや多少の低評価でも高評価でもビクともしないので自分の妄想を楽しんで書いて行きたいと思っています。