金曜なのに満員御礼、ヒロアカ効果おそるべし。
アクションシーンが素晴らしすぎて口ポカンとしてた記憶があります。オールマイトとデクの共闘が激熱でした。最後のあのシーンで思わず拳を握りしめたくらいに。
あ、今回キャラ崩壊注意です。内面を描くって難しい。
爆豪とともに深夜の雄英を歩く。
辿り着いたのはスタジアム前、そこで爆豪の足は止まった。
「体育祭、懐かしいな。お前に完封負けしたの、割とショックだったんだぜ?」
「んで、今のテメェなら勝てるってか?」
「負けるつもりはない。ヒーロー志望なら当然だろ。」
「そりゃあそうだろうなァ。お前、オール・フォー・ワンとかいうゴミから新しく力を貰った訳だからなァ!」
驚きはしない。勘のいい爆豪なら気付いていてもおかしくはないとは思っていたからだ。
「それが、お前に何の関係がある?」
「テメェは、その力のお陰で仮免に受かった!体育祭で明確に俺より劣っていたお前が!俺よりも上に立ちやがった!」
「オールマイトを終わらせて手に入れた力で!」
その言葉にこもった思いの強さに、一瞬言葉を返せなかった。
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爆豪勝己にとって団扇巡とは、強力な個性を持つだけのモブでしかなかった。あの日までは。
林間合宿においての団扇巡の暴挙、その真に目的を理解したのは、暴走しがちな幼馴染のストッパーとして神野事件の現場へと赴いた時だった。それまで団扇巡はただ調子に乗って捕まったのだと思い込んでいた。
あの魔王を見るまでは。
オール・フォー・ワンという魔王の暴挙を目の当たりにして、初めて自分がどれ程のリスクに晒されていたかに気付いた。それを防ぐために団扇巡という人物が当たり前のように命を懸けたことに気付いた。
自分より弱い筈の団扇巡という人物が強い筈の自分よりもごく当たり前のように戦っているという事実に気付いてしまったのだ。
そして、団扇巡は神野事件の時から目覚めたという新しい力で、プレッシャーだけで自分たちを殺しそうな魔王相手に一歩も引かずに立ち向かい、オールマイトと共闘して、結果凶悪
その時から団扇巡という存在は、爆豪勝己にとって緑谷出久同様に、あるいはそれ以上に目障りな存在となっていた。
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「ああ、俺はオールマイトを終わらせた。限られた時間の中で父さんを助け出すには奴にオールマイトをぶつけるしかなかったからだ。」
「クソが、否定しろや!テメェのその態度が気に食わねェ!何でも全部受け入れるのが格好いいとでも思ってんのか!」
「事実だって言ってる。」
「だったら、何でそんなヘラヘラしてられる!」
「...さぁな、そこん所は自分でもわからない。」
事実だ。俺のせいでオールマイトが終わった。それを理解している筈なのに何故か俺はその事を後悔したりはした事はなかった。
きっと、それ以外に道はなかったと心のどこかで思っているせいだろう。
「だけど、あの魔王を倒すには他に道はなかった。そう思う。」
「わかってんだよそんな事は!でもテメェが捕まったりしなかったら、もしかしたらオールマイトが終わらないで済んだかもしれないだろうが!」
爆豪がオールマイトにそれほど深く憧れているか、俺は知ろうしなかったという事に今更ながらに気付いた。俺はクラスの仲間の筈なのに爆豪勝己という人物について表面的なことしか知らないのだと。
「俺は、そうは思わない。あの魔王を倒せるのはオールマイトだけだった。だから遅いか早いかの違いはあれど結局オールマイトは終わるしかなかった。俺はそう思う。」
「...わかってんだよんな事は!」
爆豪は叫ぶ。なにかを振り切るように。
「なぁ、爆豪。そろそろ本題に入ってくれないか。俺に文句を言うためにここまで来た訳じゃないんだろ?」
「ああ...クソ目、俺と戦え。」
「...それは、今じゃないと駄目か。」
「ああ、誰かが見てたら本気でやれねぇだろ。」
爆豪の目は本気だ。なら、その想いには答えなくてはならないだろう。オールマイトを終わらせた俺にしかその事は出来ないのだから。
写輪眼を展開する。爆豪はタイミングを読んでいたようで即座に目を足元に向けた。
「やろうか爆豪!お前の言葉にならないその声を、全部吐き出して来い!」
「...行くぞクソ目!」
まず放って来たのはスタングレネード、これで目を封じる算段だろう。だが、体育祭でそのエネルギーの流れは見ている。閃光の瞬間目を閉じて回避、小さい移動術で距離を取る。これで爆豪の射程から逃げる事ができただろう。
目を開けると、目の前に広がる爆炎。当たっていてばただでは済まなかっただろう。向こうは初手から倒しにかかっているようだ。
だが、いるべき所にいる事に定評のある奴が、今回の俺たちには邪魔をしに来た。
「なにやってんだかっちゃん⁉︎」
無視して攻撃を放ってくる爆豪。だがその手を払い服の胸の部分を掴み吸着で握力を強化。足、腰、腕とチャクラを流動させての技術怪力で爆豪を力尽くで投げ飛ばす、先ほど声のした緑谷の方へと。
爆豪は空中で爆破を行い体勢を整えて緑谷の近くへと着地した。
「クソデク、なんでここに居やがる。」
「それはこっちの台詞だよ!深夜に出て行くのが見えて、心配になって付いて来たんだよ!かっちゃん、なんで団扇くんと喧嘩なんかしてるんだ!」
「止めるな緑谷、俺と爆豪の喧嘩だ。納得できない事があるなら、あとは殴り合うしかないだろ。」
「団扇くん⁉︎」
「そういう事だクソデク、そこで黙って見てろ!爆速ターボ!」
緑谷を巻き込む形で爆速ターボを放つ爆豪。その動きは今の俺には隙だ、だがその隙を突こうとは思わない。
この戦いは、俺の心を爆豪に伝える為の戦いだ。その為に何をするべきかは分かっている。
「オラァ!」
爆速ターボを上手く利用し、遠心力を加えた爆撃を放とうとしているのが見える。その手と同量になるように調整したチャクラで真っ向から掌で迎撃する!
「桜花衝!」
「
お互いに衝撃から弾き飛ばされる。体勢を立て直すのは同時だった。
俺の予想外の迎撃に驚いた爆豪は俺の目を思わず見た。
だが、催眠は使わない。
「テメェ...⁉︎」
「俺はこの方法で喧嘩をする。俺の目を見て、正面からかかって来い!」
「ふざけてんじゃねぇぞクソ目!俺を舐めてんのか⁉︎」
「舐めてねぇよ。でもこれは勝負じゃなくて喧嘩だ。ならやり方は自由だろ。」
「ああ、そうかよテメェも舐めプか!んな事言えねぇくらいにボコボコにしてやる!」
「かっちゃん、団扇くん...」
「オールマイトを終わらせたお前が許せねぇ!」
爆豪の空中回転蹴りをチャクラを込めた蹴りで弾き落とす。
「オールマイトを利用したお前が許せねぇ!」
着地してからの左右同時爆撃を左右同時に放つ桜花衝で迎撃する。
「そうだ、俺はオールマイトを利用した!」
爆豪の爆破を利用して独楽のように遠心力を作り出した速い蹴りを、移動術の応用で初速を速くした蹴りで迎撃する。
「あの魔王を倒す為に!それしか思いつかなかったからだ!」
爆豪の胸を掴んでくる動きをバックステップで回避し、追撃の爆破を桜花衝で叩き返す。衝撃で互いに後退する。目まぐるしく動き回った結果、緑谷を横目に俺と爆豪は睨み合った。
「テメェ、俺を倒すチャンスなんざいくらでもあっただろうが。」
「お前を倒す事より大事だと思うことがある。だからだ。」
「ケッ、その舐めプ後悔すんなよ!」
走り出す爆豪と俺。だが、緑谷が突然間に入ってきた事により俺と爆豪は一旦止まった。
「テメェ、何の用だクソデク!黙って見てろって言ったよなぁ!」
「緑谷、どいてくれ。これは俺と爆豪の喧嘩だ。」
「2人とも、なんで殴り合うことが前提なのさ!かっちゃんも、団扇くんも話してよ!」
「デク、てめぇは憎くねぇのか!こいつのせいでオールマイトは終わったんだ!それとも何か?お前はオールマイトから力を貰ったからもうオールマイトは終わっていいとでも思ってたのかァ⁉︎」
「悪いのはあの
緑谷の声に一瞬止まる爆豪。だがそんな事は爆豪とて分かっているのだろう。その声には迷いが混ざっていた。
「知ってるよ、分かってんだよんな事!でも収まりがつかねぇんだよコイツがヘラヘラ笑っている事に!オールマイトが命懸けで助けた奴が、オールマイトの犠牲を容認するような奴だって事に!」
「だから止めなくていい、緑谷。爆豪の怒りは正しいものだ。」
「正しいわけないだろ!団扇くんはかっちゃんの怒りが収まるまでひたすら耐えるつもりみたいだけど、その怒りの元は違う!全部悪いのはオール・フォー・ワンだ!団扇くんじゃない!」
爆豪はその言葉に一瞬思考が止まったようだった。
「クソ目、テメェんな事考えていたのか...」
「...ああ、その通りだ。お前の怒りを受け止める責任が俺にあると思った。」
「そんな責任団扇くんにはない!かっちゃんにも団扇くんに怒りをぶつける権利はない!だから2人がこれ以上戦うってんなら。」
「僕が、2人を止める。」
緑谷のその覚悟に俺と爆豪は一瞬気圧された。
「やってみろやクソデク!クソ目もテメェも纏めてぶちのめしてやる!」
「爆豪、お前の相手は俺だろうが、よそ見してんじゃねぇ!」
「2人とも、いい加減にしろ!」
三つ巴の戦いが始まった。
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緑谷出久にとって団扇巡は親しい友人だ。
雄英に入ってからのワン・フォー・オールのコントロールがろくにできなかった頃からずっと助けられてばかりの恩人でもある。
実際彼がいなければフルカウルの習得はもっと遅くなっていた筈だ。もしもそうなっていたらヒーロー殺しに飯田を殺されてしまったかもしれない。あの日は本当にギリギリの結果だったのだから。
そんな団扇巡が林間合宿で
もしかしたら巡は
それを増長とは思わない。団扇巡という人物がそれだけ皆を大切に思っていたという証拠なのだから。
だから神野に向かう事を躊躇いはしなかった。だが、ストッパーである飯田、八百万、蛙吹、爆豪の4人が引き止めてくれなかったらあの魔王の前に無策で出ていたかもしれない。
それほど、緑谷出久という少年は団扇巡という少年を大切に思っていたのだから。
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緑谷の蹴りを躱し、爆豪の爆破に対して桜花衝を合わせる。
緑谷の攻撃の線は単純だ。スピードのついた今の俺なら回避するのはそう難しくない。
だが、視界外から奇襲をされては攻撃を受けてしまうだろうから、早めに戦場からどかしておきたい。そう思っていると自分の足元に潜り込んだ爆豪がかなりの規模の爆破を放とうとしてきた。チャクラを多めに込めた桜花衝で迎撃する。
緑谷は戦場からどかしたい。だが爆豪の前に隙を晒すことはできない。今のようにあらゆる方向から爆破が飛んでくる。
そして、こういった状況に最適である影分身であるが、今回の喧嘩においては使う事が出来ない。なぜなら爆豪の最大火力、
緑谷からも爆豪からも目を切れない。爆豪はうまく爆破の範囲を調整する事で緑谷を牽制している。その攻撃範囲がちょっと羨ましい。
緑谷が一旦俺たちから離れた。シュートスタイルの動きだ。
「2人とも、止まれ!」
高速接近から放たれる飛び蹴りが、今度は爆豪に向けて放たれた。
爆豪は爆破で体勢を崩す事で回避した。緑谷の左足を掴みながら。
爆豪の意図が読めたので緑谷の体を爆豪の側に押して体勢を崩す。
爆豪の爆破の勢いを使った回転投げにより緑谷は遠くへと投げ飛ばされた。これでまたタイマンだ。
爆豪は爆速ターボを使った移動にて俺の視線を逸らそうと動いてくる。だがこちらもチャクラを使った小さい移動術にて視線を外さないように動く。
その瞬間、背後から地を蹴る音が聞こえた。横に大きく移動術で動く。案の定緑谷が背後から襲いかかって来ていた。復帰が早いッ!
緑谷の蹴りを躱して体勢の崩れた俺に放たれる爆発。桜花衝による迎撃は間に合わない。ならチャクラを集中させて身体で受ける!
だが、緑谷の横槍によって爆豪は攻撃を中止して、爆発で回避に移行する。距離を取ってきたのはリーチの長い技を持たない俺に取っては不利だ。
爆豪は緑谷と俺を直線上に置いて、掌の前に拳を作り出した。
「
緑谷を守るために爆豪による
だが、この喧嘩に緑谷が割って入る必要はない筈だ!
「緑谷、お前がそこまでする理由はないだろ。黙って見ていてくれ!」
「黙ってられないから邪魔をしてる!戦う以外に分かり合う道はあるから!」
「知るかんな事!収まりがつかねぇんだよ、コイツをぶっ倒さねぇと!」
爆豪の爆速ターボによる緑谷の頭を超えた高速接近。身体があったまってきたのかスピードは最初よりも速くなっていた。それにこの遠心力を乗せた軌道、来る!
「2人纏めてくたばれ!
「受け止めてみせる、お前の思いを!桜花衝!」
爆豪の
ぶつかり合った衝撃で吹き飛ばされる俺と爆豪
腕に伝わる鋭い痛み。これはおそらく右手が折れている。
それは爆豪も同様だったようで右手をだらりと下げている。
だが、まだ喧嘩は終わっていない。痛みを堪えて気力で立ち上がる。
爆豪も同様に立ち上がってきた。
「もう止めよう!2人とも腕、折れてるだろ!」
「その程度で止まるなら、ハナから喧嘩なんかしてない!」
「同感だクソ目!どっちかがくたばるまで終われるかよ!」
「いいや、ここまでにしよう。」
そう言って歩いてきたのはオールマイトだった。
「君たちは十分気持ちをぶつけ合った筈だ。もう分かっているのだろう?爆豪少年、団扇少年、お互いの気持ちが。」
俺には掌を通じて伝わってきていた。爆豪がどれだけ深くオールマイトを敬愛しているのかが。だからこそオールマイトを終わらせた俺を許す事が出来なかったのだと。
爆豪には、俺の気持ちは伝わっているのだろうか。
「うるせぇよオールマイト!伝わってきてるんだよ、コイツの馬鹿さが!コイツは俺に対して怒りも、憎しみも持たないで、ただ感謝しかしてない大馬鹿野郎だってことは!」
「爆豪少年...」
「だからって止まれるか!あの日のコイツがやった事は許せる事じゃねぇんだよ!」
「いいや違う、君には話そう。私と奴の宿命を。緑谷少年も団扇少年も知っていた事だが、私は元から長く戦える身体では無かったのだよ。5年前に奴に負わされた傷が原因で。」
そうしてオールマイトは語り始めた、長きに渡って戦い続けたオール・フォー・ワンとの宿命を。
「んで、その責任と力を受け継いだ次の世代がデクって訳か。」
「爆豪少年、やはり気付いていたか、受け継がれる私たちの力、ワン・フォー・オールについて。」
爆豪はオールマイトのその言葉の意味を理解した時、自嘲の笑みを浮かべ、そしてダムの決壊のように言葉を吐き出した。
「だからデクはあんたの最期の言葉を違う意味で受け取った。...ハッ、なんだそりゃ。俺より弱かったクソ目があんたの隣で戦って、俺の後ろを付いてきていたクソデクがあんたの後継者になって!じゃあ俺はなんだ!俺の憧れは、間違っていたって言うのかよオールマイト!」
オールマイトは、その言葉に抱きしめる事で答えた。
「君の憧れを嬉しく思う。私は君を強い子だとばかり思い込んでいた。だが、それだけじゃあなかったんだね。私も反省しなくてはならないな。」
「オール、マイト...ッ!」
「君も、少年なのにな。」
抱きしめられた爆豪の目から涙が流れ落ちる。どうやら、この喧嘩はようやく終わったようだ。
チャクラはほぼ使い切った状態で、しかも腕が折れているというおまけ付きだ。だが、爆豪勝己という恩人の心を救えた事を思えば、安いものだ。
「爆豪。」
「なんだよ、クソ目が。」
「ありがとう。あの日、あの場所に来てくれて。俺は、本当にそれが嬉しかった。」
爆豪はその言葉に対して、「ケッ」と吐き捨てるだけだった。
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それから緑谷と爆豪とオールマイトと、本音で少し語り合った。
緑谷が、爆豪に今でも憧れているという事。
爆豪が、緑谷に対して畏れているという事。
俺が、父さんを助けてくれた皆に本当に感謝しているという事。
オールマイトが、終わるという選択をした事に悔いはないという事。
ワン・フォー・オールの秘密は生徒では自分たちしか知らないという事。
応急手当てを終えて、職員寮の相澤先生の部屋に着くまでの短い間だが、ポツリポツリと語りあった。あの日の傷口を塞ぐように。
「君たちは、良いヒーローになる。緑谷少年の救ける心、爆豪少年の勝ちたい心、団扇少年の感謝する心、その三つが互いに影響しあい高めあえば、君たちは最高のヒーローになれる。私はそう思う。さぁ、相澤くんはお冠だ。皆でしっかり叱られよう。」
結果、緑谷は2日間、俺は3日間、爆豪は4日間の謹慎、その間の寮内共有スペースの清掃と反省文の提出がペナルティーとして課せられた。
「ま、3人なら謹慎生活も楽しいだろ!」
「謹慎って楽しむものじゃないと思うんだけど...」
「ケッ、勝手に楽しんでろクソ目。」
「じゃあよろしくな!出久、勝己!」
唐突に名前呼びに変えたときの2人の反応が両極端で、ちょっと笑った。
もっと描きようはあったかもしれないですがとりあえずはこんなオチに。三つ巴の戦いが難産過ぎて辛かったです。
今回の話のバトルシーンは後でこっそり修正するかも知れません。