【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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予定通りの投稿投稿ギリギリアウトです。あと10分早く作業にかかっていれば...ッ!




彼女の巡った日々の事

「■■■■さん、付いてきて下さい。」

 

ポニーテールの少女、インサートがそんな事を言う。何故か俺を信じ切った無防備な背中で。

その無防備な背中を刺し貫きたいと心は叫んでいる

だが、そんな殺気を受けても彼女は動じず路地裏へと俺を誘った。

 

その時点で気付く、何故か俺は今インサートに対して敵意を抱く事ができていると。話しかけた段階で俺は終わっている筈だ。なら、もしかしてと写輪眼を発動する。

 

インサートと警察で提示された彼女の身体エネルギーの色は、あの職場体験の日に見た色とは全く異なる色だった。

 

「まさか、警察が騙されている⁉︎」

「少し違います。穂村警察署にいる全員が、本物のインサートに支配されているんです。私に罪を着せて、それをヒーローに殺させることによってインサートという(ヴィラン)を闇にくらませるために。」

 

つまり、俺のこの怒りがインサートによって作られたものであるという事なのか⁉︎妹が自殺した日に感じたあの無力感も、憎悪も、この今の俺を突き動かす全てが!

 

「■■■■さん、あなたは、妹さんの名前を思い出せますか?」

「そんなものあたり...まえ...ッ⁉︎」

「インサートは名前だけは挿入する事が出来ない。何十回も繰り返してようやく気付けたただ一つの弱点です。」

 

当たり前のように記憶の中にあるはずの妹の名前を、俺は思い出す事が出来なかった。

 

つまり、俺に妹などいなかったという事だ。

 

それに気付くと、慣れない誰かを恨むという行為が酷く馬鹿らしく思えてきた。この身を焦がすような憎しみはひとまず置いておけそうだ。だが、何十回も繰り返した?また気になるワードが増えたぞ。

 

「凄え、何から何までが意味不明だ。そもそもお前は誰だ?なんでその名前を知ってる?」

「私が誰かについては、私にもわかりません。私は、記憶喪失であるという設定を挿入されたインサートの身代わりですから。もっとも、それを挿入されるのはまだ未来のことみたいなんですけど。」

「...まるで、未来からやってきたみたいな事を言うんだな。」

「相変わらず鋭いですね、先輩は。その通りです。私は、未来からタイムリープしてきたんです。先輩とキスしたあの瞬間まで。」

 

恥ずかしい事を真顔で言わないでほしいものだ。こちとらファーストキスを奪われたばかりの童貞ボーイなのだから。というか先輩?

 

「それを信じるに足る証拠は...あるな、うん。大方俺自身が教えたみたいなオチだろ?俺の前世の名前を。」

「そう、先輩が教えてくれた、私だけの宝物。」

 

そう言って目を閉じ、胸に手を当てる彼女。その行為に込められた意味を俺は理解することは出来ないだろう。だが、わかる事が1つある。

 

今、背中から聞こえる泡の音が、彼女の死を告げる音になりかねないという事だッ!

 

移動術で彼女を抱えて跳躍。その直後、彼女のいた場所を泡の光線が貫いた。

 

「何やってんですかバブルビームさん!」

「嘘、来るのがいつもより早い⁉︎」

「...メグル、何やってるの?」

 

バブルビームさんの底冷えするような声が響く。あれは憎しみに囚われた人の声だ。ついさっきまでターゲットを勘違いしていた俺の声だ!

 

「バブルビームさん、彼女はインサートじゃない!俺の目を信じてくれませんか!」

「そんな世迷言を挿入されてしまったんだね。...メグル、君を倒してインサートを殺す。それが僕のするべき事だ。」

「駄目、エピソードまで挿入されてしまった人に説得は通じない!戦って、先輩!」

「やるしかないのか...ッ!」

「邪魔をするなら容赦はしない!僕は、インサートを殺す!」

 

最後の迷いを振り切るように叫ぶバブルビームさん。だが、その声に秘められた声が聞こえたような気がして、俺が闘う覚悟が決まった。

 

「殺させない!今、そう決めた!だからあなたを止めます、バブルビームさん!」

 

その言葉への返答は、放出された無数の泡だった。

 

視線が泡で封じられて写輪眼が通せない、だがバブルビームさんの狙いは分かっている。泡の表面を反射する光により俺の位置を知ることだ。その答えが高速回転する泡を使ったカッターによる近接戦闘!

 

バックステップで一先ず回避、泡が風に流されて周囲から消える事を期待したが、泡は依然俺を取り囲んだままだ。おそらく個性でカッターを作りながらも新しく泡を作り続けている。厄介だ。

 

泡により視界の大半を奪われたままでは不利だ。かといって払うなど泡に対して一手使えばその隙にカッターで持っていかれる。

 

その考えていた一瞬でバブルビームさんは既に泡のチャージを行なっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

チャージの終わったが聞こえた瞬間に、俺は気付いてしまった。

バブルビームさんの狙いは俺でなく彼女なのだと。

 

「や、ら、せるかぁ!」

 

身体中のチャクラを足に集中しての最速の移動術により真後ろの彼女を抱えて射線から晒そうとする。

だが、バブルビームさんの代名詞、本気のバブル光線は文字通り光の如き速さで貫いた。

 

咄嗟に彼女を庇った俺の身体の心の臓を。

 

「先輩?ああ、いや、いや!いやあああああああ!」

 

今際の際に彼女の叫び声が聞こえる。どうか逃げて欲しいと心の中で願いながら、俺は眠りについた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「先輩、光線が来ます!」

 

俺を先輩と呼ぶ彼女の声が聞こえる。

その声に従うのなら回避するべきだ。だが、違う。これはチャンスだ。

バブル光線のチャージを完了させたということは、今バブルビームさんは泡のカッターを展開していないという事!

 

前に、出られる!

 

しゃがみ、低空を駆けるように移動術を使って一瞬で距離を詰める。

だが、バブルビームさんは片手で泡のチャージをしながらもう片方の手でカッターを作り続けていた。

 

「読んでいたよ、そのスピードで突っ込んでくるって!くらえ、バブルカッター!」

 

移動中、脳を限界まで酷使する。このまま直進すればカッターに切り裂かれて終わる。だからそうならないための動きを一瞬で考えて実行に移す!

 

左足を無理矢理地につけて右に向けて直角移動。そしてビル壁を蹴り、三角蹴りをバブルビームさんの顎に向けて放った。

 

...狙い通り蹴りは当たり、無事バブルビームさんを昏倒させることに成功した。無理な動きをしたことで左足を捻ったため物凄い痛いがそれは掌仙術で治せば良いだろう。

 

だが今はバブルビームさんの状態の確認が先だ。

倒れた拍子に頭でも打っていたから大変だ。

 

「...よし、問題なし。取り敢えず大事はないな。」

「急いで足の治療をしてください!バブルビームが来たってことは、サンドウィッチがもうすぐ来ます!逃げましょう!サンドウィッチとだけは戦っちゃいけない!」

 

何かを恐れるように焦る彼女。サンドウィッチさんを何故タイムリーパーがやばいというのかはわからないが、取り敢えずは従っておこう。

 

「秘術、掌仙術なり。...よし、オーケーだ。逃げよう。」

「私を抱えて移動術で移動をお願いします。ルートは指示しますから。」

 

そう言った彼女を背中に抱えて走り出す。背中に抱えているにも関わらず背中に当たる感触がささやかなのは残念だ、というのは黙っておこう。

 

「先輩、今変なこと考えましたね?」

「流石タイムリーパー、そこまでお見通しか。侮れないな。」

「...私だって好きでこんな小さい身体をしているわけではないですよ。」

「ま、その辺は10年後に期待だな。」

 

指示されたルートを移動術で駆ける。そうしてたどり着いた先は、ビルを建設中の工事現場だった。仮囲いに穴が空いているところを知っていたのか迷わずに中に入れた。

 

「ここで夜まで待ちます。今のうちにイレイザーヘッドやエンデヴァーに連絡をしておいてください。」

「その前に聞いていいか?」

「はい、構いません。」

「お前の目的は何だ?タイムリープなんてとんでもない個性を持っているなら一人でも逃げおおせる事は出来る筈だ。どうして俺を巻き込んだ?」

「そんなに、いい個性って訳じゃないんですよ、私のタイムリープは。何十回も暴走させたんですけど未だに自由に発動する事はできなくて、飛べる時間も最初に先輩と出会ったあのキスの瞬間だけですから。」

「...それじゃあ今のインサート包囲網が敷かれてるこの穂村市から逃げ出す事はできないな。」

「だから、私の目的は本物のインサートを捕まえて私の無実を証明する事なんです。それ以外に、私がここから抜け出す方法はありませんから。」

 

彼女のその言葉には不思議な重みがあった。幾たびも時を遡り、駆け抜けて来た経験がそれを形作っているのだろう。

 

インサートを憎む気持ちとは別に、頑張っている彼女に力を貸してあげたいと思えるようになった気がした。

 

「さて、それじゃあ相澤先生とエンデヴァーさんに連絡させて貰うな。」

 

その時、サンドウィッチさんの身体エネルギーの線が目の端に映った。瞬間、彼女を抱えて移動術で針のように鋭く足を狙う二本の砂の槍から退避する。クソ、携帯落とした!

 

「おい、タイムリーパー。夜までここにいられるとか言ってなかったか?」

「...まさか、つけられていた⁉︎」

「どうする、何処に逃げる!」

「サンドウィッチの飛行速度を考えると逃げるのは無理!ここで倒すしか無い!でも、傷ついたら駄目!傷口から砂が入って心臓をやられる!」

「サンドウィッチさん戦術がガチすぎる!」

 

これだけ喚いても軽口の1つも返ってこない。おそらく個人で用意できるインサート対策の耳栓あたりをつけているのだろう。

 

「さて、お姫様抱っこと気合いで背中に張り付くのとどっちが慣れてる?」

「気合いで背中に張り付きます。...ねぇ、先輩。私を守ってくれますか?」

 

背中から自分を先輩と呼ぶ彼女の不安の声が聞こえる。今までの印象から強い心で苦難を乗り越えていくようなイメージを持っていたが、意外な一面もあるようだ。その不安を取り除けるかどうかはわからないが、正直に心の内を話そう。それがきっと誠意だ。

 

「とりあえずさ、先輩方に人殺しなんかさせたくないから、お前を守るよ、後輩。今の理由はそれくらいだ。」

 

一発目の奇襲が躱されてからしばらくしてから、第二波がやってきた。

 

工事現場全体を覆う砂の雨だ。

 

「これ無傷で抜けるって無理がないか⁉︎」

 

そう言って移動術で壁に近づき、桜花衝で仮囲いを破壊して外に出る。

 

ギリギリ回避に成功したようだ。

 

「まだです!横に飛んで!」

 

言われるがままに横に飛ぶ。背後から砂が槍のように襲いかかってきていた。この感じ、まだ来る!

案の定砂の槍が直角に曲がり襲いかかって来た。移動術で手近なビルに飛びつき吸着で駆け上がる。

 

砂の槍の変化が追いついていない事から、ひとまず砂の追撃は振り切れたようだ。

 

「ここにいろ、俺はサンドウィッチさんを倒す。」

「はい。でもお願いします、絶対に傷を負わないで下さい。サンドウィッチだけじゃない。インサートにエピソードまで挿入された人は先輩を殺す事を躊躇いません。憎しみに支配されてしまっているんです。」

「それはさっきのバブルビームさんとの戦闘で身にしみてるよ。...行ってくる。幸運を祈っててくれ、後輩!」

 

そう言って工事現場へと戻る。身体エネルギーの流れを見た限り、サンドウィッチさんは工事現場の中にいる筈だ。

 

「でも、空中にいるとは思わなかったですねー。サンドウイッチさん、そんなとこにいるとパンツ見えますよ?」

「大丈夫よ、下に重ね履き用の付けているから。」

 

そう答えるサンドウィッチさんは、目を閉じたまま足元のみに砂を作って宙に浮いていた。これがサンドウィッチさんの本気という事だろう。

 

「...耳栓は取ったんですね。」

「ええ、メグルが一人で戻ってくるのが見えたもの。インサートは妨害がなければいつでも殺せる。だから私は先に妨害を排除する事に決めたの。インサートは、苦しめて、苦しめて、苦しめて、苦しめて、それから殺すのじゃないとあの子の無念は晴らせない。...お願いメグル。私にあの子の無念を晴らさせて。」

 

ドス黒い感情をそのまま吐き出すようなその言葉に、一瞬気圧された。これがエピソードを挿入されたということなのだろう。本来持っていた

 

「迷いとかは無いんですね、サンドウィッチさんは。」

「当たり前よ。私は、私の全てを使ってでもインサートを殺す。そうじゃないとあの子が浮かばれない!だから、メグルにはここで倒れて貰う。」

「じゃあ教えて下さい。あの子ってサンドウイッチさんが言っている人の名前を。」

「...え?」

 

張り詰めていた意識が途切れた。今が隙だ!

 

移動術で工事現場の鉄骨を跳ねるように移動して意識の外から桜花衝を叩き込む!

 

だが、サンドウィッチさんは鉄骨に隠して仕込んでいた砂を使って盾を作り出し桜花衝の衝撃を受け流した。見てもいないのにどうやって気付いた⁉︎これも経験による予測って奴なのか⁉︎

 

「危ないわね、レディに不意打ちを仕掛けに来るなんて。でも残念、メグルは空中で自由に動けない。終わりよ!」

 

鉄柱に隠されていた全ての砂が俺を貫くためにエネルギーにより起動させられ、俺を貫く槍と化した。

 

この槍一つ一つが必殺の毒を持つ、掠ることすら許されない!

だが逃げ道はある、真下には砂の槍は無い!

 

ワイヤーアロウを真下に向けて放ち無理矢理砂の槍の檻から抜け出す。アロウの巻き取り初速が槍の初速より速かったためなんとか無傷で回避する事ができた。だが、これで降り出しに戻った。いや、唯一の不意打ち策がなくなった以上一歩下がったといったところかもしれない。

 

「それで、大切な人の名前は思い出せましたか?」

「...メグル、私はインサートを殺すわ。絶対に許さない、絶対に!インサートは、あの子の命だけじゃなく名前まで奪った!頭にモヤがかかったようにあの子の名前だけが思い出せない。あの子の笑顔も、温もりも、優しさも記憶の中にあるのに!」

「...なるほど、だから説得は無駄だって言った訳か。」

 

エピソードを挿入される前に警察署から抜け出せた俺以外、後輩の味方はいないのだろう。全く、どうしてこんな役回りばかり自分に回ってくるのか不思議でならない。

 

「サンドウィッチさん、あなたに彼女は殺させません。彼女は、インサートじゃない。」

「そんな世迷言を信じろと?」

「信じてください。って言ってもどうせ信じないでしょうから、今はサンドウィッチさんを倒させて貰います。」

「バブルビームを倒した時のように?」

「ええ、そうです。」

 

後輩を殺させない為にはにはサンドウィッチさんを倒すしかない。サンドウィッチさんが後輩を殺すには俺を殺すしかない。

互いの道は完全に分かたれている。もはや言葉は不要だ。

 

砂の雨を降らせるサンドウィッチさんそれに対する傘を作るために桜花衝で地面を割り、瓦礫をめくり頭の上に掲げる。

 

人間に対して必殺の性質を持つ砂の雨だが、その砂一つ一つの大きさは小さい。瓦礫を貫くには大きさが足りなかったようだ。

そして、サンドウィッチさんは使える殆どの砂を今の雨で使い果した!

 

瓦礫を全力でサンドウィッチさんに投げつける!防ぐための砂はもうない筈だ!

 

「即興必殺、怪力乱心!」

 

だが、サンドウィッチさんはまるで見えているかのようにそれを回避した。そして反撃を試みていた。

 

「必殺、サンドバインド!」

 

エネルギーを砂の雨で地面にまかれた砂に伝わり、俺の体を縛ろうとする。だが、エネルギーが伝わるまでのタイムラグで十分に逃れる事は可能!

 

全力の移動術で回避により慣性のついたサンドウィッチさん目掛けて一直線に飛ぶ!どうやって感知しているか知らないがこのスピードに対応できるならやってみろ!

 

「終わりだ、桜花衝!」

「まだ終わらない!あの子の仇を討つまでは!アーマーパージ!」

 

瞬間、サンドウィッチさんのコスチュームに身体エネルギーが流れ、コスチューム内部に仕込まれていた砂が爆発した。

 

だが、慣性のついた俺の体はもう止まれない。なので桜花衝によるチャクラの放出範囲を広げる即興の防御で砂を防ごうとした。

 

その結果、サンドウィッチさんは桜花衝とアーマーパージの衝撃により鉄骨に背中から衝突して気絶した。

俺の体に、多くの傷を残しながら。

 

サンドウィッチさんをワイヤーアロウによる空中機動により回収して着地。背中を強く打ったようだが、触った感じ背骨が折れているなんて事は無く、とりあえず放置しても大丈夫そうだ。

 

「しかし、このコートが貫かれるって相当な威力だったな最後の爆発。あんな隠し球があるとは、本当にプロってのは侮れない。」

 

コートを脱いでコスチュームの破れたサンドウィッチさんにかける。これで偶然来た人にあられもない姿を見せる事はないだろう。さて、後輩の所に戻ろう。

 

これで終わったと俺が去った後でぴくりと動くサンドウィッチさんのその手に、俺は気付けなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「戻ったぞ、後輩。」

「先輩!...その傷は?」

「サンドウィッチさんの最後の足掻きで良いのを貰っちまった。まぁ防弾防刃性能の高いコートのお陰でなんとか生きているけどな。さ、どっか公衆電話でも探して状況をエンデヴァーに伝えないと。」

「公衆電話なら場所を知っています。監視カメラに気をつけていきましょう、先輩。」

「お...う?」

 

その時、心臓に激しい痛みが走る。咄嗟に写輪眼を発動すると、心の臓にサンドウィッチさんの身体エネルギーが見えた。どうやらサンドウィッチさんの最後の足掻きは、俺を殺しうる絶殺の一撃だったようだ。

 

血を吐きながら薄れる意識のなかで残すべき言葉を考えようとしたが、そんな言葉は決まりきっていた。

 

「後輩、生きろよ?」

「嫌です、先輩がいないと私はもう駄目なんです!死なないで、死なないでください、先輩!」

 

俺を抱きしめる後輩の暖かさがなぜか嬉しくて、痛みよりも安らぎに満ちた心で俺は眠りについた。

 

「いやああああああ!」

 

最後に見るのは後輩の涙より、笑い声の方が良かったなと思いながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「戻ったぞ、後輩。」

「せん...ぱい⁉︎駄目です、今すぐ治療して下さい!サンドウィッチの砂が体内に入ってます!」

 

その余りにもな焦りっぷりからサンドウィッチさんの気絶を確認してから閉じていた写輪眼を再び起動させる。

すると、サンドウィッチさんの倒れたあの位置から俺の体向けて身体エネルギーが伸びているのが見えた。

 

「嘘だろ⁉︎確かに気絶していた筈ッ⁉︎」

「早く治療を!先輩の医療忍術には毒を取り除く技があるんでしょう?だからそれを使って、早く治療して、死なないで下さい、先輩!」

 

被害者の俺より取り乱す後輩を見て、かえって冷静になれた。感謝だ。

確かに医療忍術には毒を取り除く術はある。だが、そんな技術を俺は未だ習得していない。きっといつかの俺がついた安心させるための嘘なのだろうなーと思った。

まぁ、ここで成功しないと死ぬ訳だからやるしかない。自分の命と、未来に見られるであろう彼女の笑顔を守るために。

 

そう思って、初めての解毒治療に挑む事を決めた。




ループ物のお助けキャラの役割で進める物語。書いてみたかった設定でした。
インサート(偽)こと後輩の個性はチートオブチートです。でも発動の仕方がわからなかったから今まで大事にはなっていなかったという設定。AFOに目を付けられなくて良かったね!

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