サー・ナイトアイの事務所二階の大会議室に集まったヒーローたち。
自分はバブルビームさん達の隣に座り会議の開始を待つ。
「あれから大丈夫でしたか?バブルビームさん。」
「うん、周囲に気を配りながら帰ってみたけど、鏡を向けてくる奴はいなかったよ。メグルは?」
「自分もです。射程距離か何かの問題でもあるんですかね、パトロール中よりも油断してる移動中や寝込みを襲った方が確実だと思ったんですが。」
「そう考えると、お互い生きててなによりだよね。」
「しれっとおっかない会話してるわよね、あなたたち。」
そんな会話をしていると、バブルガールと名乗ったサー・ナイトアイのサイドキックの女性がタブレット片手に会議の開始を告げた。
コスチュームがぴっちりして体のラインが良く出ている、良いスタイルだ。と、煩悩退散煩悩退散。いまは真面目な会議の時間だ。
「我々、ナイトアイ事務所は約2週間程前から死穢八斎會という指定
プレゼンに不慣れなのだろう、ちょくちょく言葉が止まりかけている。頑張れと心の中でエールを送らせて貰おう。
「キッカケは?」
「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故からです。警察は事故として片付けてしまいましたが、腑に落ちない点が多く追跡を始めました。」
「私、サイドキックのセンチピーダーがナイトアイの指示の下追跡調査を進めておりました。調べたところここ一年以内の間に全国の組外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いているものと見ています。そして調査開始からすぐに...
「連合が関わる話なら...という事で俺や塚内にも声がかかったんだ。」
「その塚内さんは?」
「他で目撃情報が入ってな、そっちへ行ってる。」
ハードなヤマだと思っていたが、まさか
となると、あの鏡の騎士は連合経由で死穢八斎會に流れ着いたという可能性もあるか、それなら俺を殺そうと動いたのも納得がいく。
俺は、結果的に彼らを裏切ってしまったのだから。
「小僧、まさかこうなるとは思わなんだ...面倒な事に引き入れちまったな...」
「面倒なんて思ってないです!」
グラントリノさんの声に答える出久。あれを本心から言えるのが出久の強い所だよなぁと思う。俺なら皮肉の一つでも挟みそうだ。
「...続けて。」
サー・ナイトアイの声にビクっと反応するバブルガールさん。可愛い。いやだから煩悩退散だっつーの。
「えー、このような過程があり!HNで皆さんに協力を求めたわけで。」
「そこ飛ばしていいよ。」
「うん!」
可愛い。
「HN?」
「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり便利な個性のヒーローに協力を申請したりできるんだって!」
そんな波動先輩の声に出久の隣に座る色黒のヒーローが文句を言った。
「雄英生とはいえガキがこの場にいるのはどうなんだ?話が進まねぇや。本題の企みに辿り着く頃にゃ日が暮れてるぜ。」
「ぬかせ、この二人はスーパー重要参考人やぞ。」
そんな彼の言葉にファットガムさんが反論する。切島と天喰先輩は「俺...たち?」「ノリがキツイ...」とイマイチ乗りきれていないようだったが。
「とりあえず初対面の方も多い思いますんで!ファットガムですよろしくね!」
「「丸くてカワイイ」」
「お!アメやろーな!」
ファットガムさん女子受けするのか...たしかに隣にいるトロールモチーフのあの生き物っぽいもんなぁ。親しみやすい性格と相まって人気も出ているのだろう。どっかのヴィラン潰しと違ってな!
「八斎會は以前認可されていない薬物の捌きをシノギの一つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました。」
「昔はゴリゴリにそういうんブッ潰しとりました!そんで先日の
ファットガムさんは懐から取り出した飴を握りつぶしながら言った。
「個性を壊す...⁉︎」とざわつく皆さん。確かに恐ろしいクスリだが驚くべき事なのだろうか、相澤先生という前例がいるのだからクスリで代用できない事はないだろう。そんな事を思って相澤先生を見ると、皆さんも相澤先生を見ていた。
「え...⁉︎環、大丈夫なんだろ⁉︎」
「ああ、寝てたら回復していたよ。見てくれこの立派な牛の蹄。」
「朝食は牛丼かな⁉︎」
通形先輩の心配を払う為に天喰先輩が個性を発動する。話を聞く限りだと天喰先輩の個性は食べたモノを体に発現させるというものだろうか。流石雄英のBIG3、汎用性の高そうな良い個性だ。
「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねぇ。」
「いえ...そのあたりはイレイザーヘッドから。」
「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺は個性を攻撃しているわけじゃないので。基本となる人体に特別な仕組みが+αされたものが個性。その+αが一括りに個性因子と呼ばれています。俺はあくまで個性因子を一時停止させるだけで、ダメージを与える事は出来ない。」
「環が撃たれた直後病院で診てもらったんやがらその個性因子が傷ついたったんや。幸い今は自然治癒で元どおりやけど。」
成る程、相澤先生でも個性そのものを傷つける事は出来ないのか。ようやくプロの皆さんが驚愕した理由がわかってきた。確かに前代未聞のクスリだ。自然治癒で治らないほど深く傷つけられたら個性を殺されてしまうという事なのだから。
「その打ち込まれたモノの解析は?」
「それが、環の体は他に異常なし!ただただ個性だけが攻撃された!撃った連中もダンマリ!銃はバラバラ!!弾も撃ったキリしか所持していなかった!ただ...切島くんが身を挺して弾いたおかげで、中身の入った一発が手に入ったっちゅーわけや!!」
当の本人は「俺っスか!!びっくりした!!急に来た!!」と驚いていた。そこは分かってるフリでもして格好つけようや。コネ作りのチャンスやで?
「切島くんお手柄や」「カッコいいわ」「硬化だよね!知ってるー!うってつけだね!」とリューキュウ事務所の女子組からの声がした。あそこの3人会議なのによく喋るなー。まぁ黙ったままより100倍いいのだが。
「そしてその中身を調べた結果、ムッチャ気色悪いモンが出てきた...人の血ィや細胞が入っとった。」
...一度深呼吸する。気色が悪かろうが事実は事実だ、受け入れよう。
超人社会だ、やろうと思えばどんな事でもできるのだから、自分の体を弾丸にして売りさばくという捨て身の荒稼ぎもアリなのだろう。俺が子供の頃行っていた違法労働と違いはあまりないのだから。
「えええ...⁉︎」
「別世界のお話のよう...」
「つまり...その効果は人由来...個性ってこと?個性による個性破壊...」
「うーん、さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會とつながる?」
「今回切島くんが捕らえた男!そいつが使用した違法薬物な。そういうブツの流通経路は複雑でな、今でこそかなり縮小されたが色んな人間・グループ・組織が何段階にも卸売りを重ねて、ようやっと末端に辿り着くんや。八斎會がブツを捌いとった証拠はないけど、その中間売買組織の一つと八斎會は交流があった。」
「それだけ⁉︎」
「先日リューキュウ達が退治した
「巨大化した一人は効果の持続が短い粗悪品を打っていたそうよ。」
「最近多発している組織的犯行の多くが...八斎會に繋げようと思えば繋がるのか。」
「ちょっとまだわからんな...どうも八斎會をクロにしたくてこじ付けてるような。もっとこう、バシッと繋がらんかね。」
「若頭、治崎の個性はオーバーホール。対象の分解・修復が可能という力です。分解...一度壊し、治す個性。そして個性を破壊する弾。治崎には娘がいる...出生届もなく詳細は不明ですが、この二人が遭遇した時は手足に夥しく包帯が巻かれていた。」
娘という言葉に、思わず手を強く握る。それは人として違うだろ。極道ってのは、ヤクザってのはッ!義理人情に生きる奴らだろうがッ!
そう思う怒りとは裏腹に、理性は冷静に物事を見ていた。怒りが長続きしない事、それが俺の弱点なのだろうと理性は言っている。
「まさか、そんなおぞましい事...」
「超人社会だ、やろうと思えば誰もがなんだってできちまう。」
「...ふざけた話ですね。これをまかり通しているなら八斎會は極道じゃありません、ただの外道です。」
「おい団扇、何納得してんだよ!」
「そこのガキみたく分かれよな...つまり娘の身体を銃弾にして捌いてるんじゃね?って事だ。」
「実際に売買しているのかはわかりません。現段階では性能としてあまりに半端です。ただ...仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンの為のサンプルを仲間集めに使っていたとしたら...確たる証はありません。しかし、全国に渡る仲間集め、資金集め、もし弾の完成形が個性を完全に破壊するものだとしたら...?悪事のアイデアがいくつでも湧いてくる。」
サー・ナイトアイの言う通りだ。個性破壊弾は武器としては勿論、見せ札としてどれほど強力で拘束力のあるものだろうか。また、弾の形以外にも薬として効力を発揮するモノだったなら、ヒーローは日々の食事にも気を付けないといけなくなる。恐ろしい話だ。
「想像しただけで腹ワタ煮えくり返る!!今すぐガサ入れじゃ!!」
「こいつらが子供確保してりゃ一発解決だったんじゃねーの⁉︎」
怒るファットガムさんにもしもを語る色黒のヒーロー、どちらの意見にも納得はできる。でもそれは今語る言葉じゃないだろうと言いかけた時に出久と通形先輩の怒りを堪えている表情を見て、出し掛けた言葉を引っ込めた。この場で一番辛いのは娘さんと直接会ったであろう二人なのだから。
「全て私の責任だ。二人を責めないで頂きたい。知らなかった事とはいえ...二人ともその娘を助けようと行動したのです。今この場で一番悔しいのは、この二人です。」
出久と通形先輩が勢いよく立ち上がり言い放った。
「「今度こそ必ずエリちゃんを...!!保護する!!」」
「それが私たちの、目的になります。」
二人のその顔は、怒りを決意に変えたヒーローの顔になっていた。
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「ケッ、ガキがイキるのもいいけどよ、推測通りだったとして若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまってだ!あまつさえガキんちょヒーローに見られちまった!素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。攻め入るにしてもその子がいませんでしたじゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定できてんのか?」
「確かに、どうなのナイトアイ。」
「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かねば反撃のチャンスを与えかねない。そこで、八斎會と接点のある組織・グループ及び八斎會の持つ土地!可能な限り洗い出しリストアップしました!皆さんには各自その場所を探っていただき、拠点となり得るポイントを絞って貰いたい!!」
「なるほど、それで俺たちのようなマイナーヒーローが...」
「?」
「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる!土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ。」
そう納得する者もいれば、回りくどいやり方に怒りを覚える者もいる。ファットガムさんは優しいが故に1分1秒でも早くエリちゃんを助けたいのだろう。
「オールマイトの元サイドキックな割に随分慎重やな回りくどいわ!!こうしてる間にもエリちゃんいう子泣いてるかもしれへんのやぞ!!」
「我々はオールマイトにはなれない!だからこそ分析と予測を重ね救けられる可能性を100%に近づけなければ!」
「焦っちゃあいけねぇ。下手に大きく出て捕らえ損ねた場合火種が更に大きくなりかねん。ステインの逮捕劇が連合のPRになったようにな。むしろ一介のチンピラに個性破壊なんつー武器流したのも、そういう意図があっての事かもしれん。」
「...考えすぎやろ、そないな事ばっか言うとったら身動き取れへんようになるで!!」
サー・ナイトアイとグラントリノさんの言葉も熱くなったファットガムさんには届かない。それを筆頭に各々が自分の意見を主張し始めた。
だが、そんな合理的でない状況を止めてくれたのは相澤先生だった。
スッと挙手をして周囲の目を自分に向けさせた。
「あのー...一つ良いですか。どういう性能かは存じませんがサー・ナイトアイ。未来を予知できるなら俺たちの行く末を見ればいいじゃないですか。このままだと少々...合理性に欠ける。」
「それは...出来ない。」
「...?」
「私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり一日一時間一人しか見る事が出来ない。そしてフラッシュバックのように一コマ一コマが脳裏に映される発動してから一時間の間他人の生涯を記録したフィルムを見られる...と考えて頂きたい。ただしそのフィルムは全編人物のすぐ近くからの視点、見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ。」
「いや、それだけでも充分すぎるほど色々わかるでしょう。出来ないとはどういうことなんですか?」
サー・ナイトアイは手で顔を隠して言った。
「例えば、その人物に近い将来、死、ただ無慈悲な死が待っているとしたらどうします?この個性は行動の成功率を最大まで引き上げた後に勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は闇雲に見るべきじゃない。」
「つまりそれって、見た未来は変えられないって解釈でいいんですか?」
思わず声を上げてしまった。周囲の視線が俺に向く。
「...君の言う通りだ。今のところ、見た未来を変えられた前例はない。」
「つまり誰かの死を見た場合、その人は確実に死ぬっていう未来を抱えたまま生きなきゃいけなくなるって事ですか...そりゃ迂闊には見れませんね。」
そこでようやく周囲からの視線が自分からサー・ナイトアイに向く。
サー・ナイトアイは項垂れていた。
「予知の事は置いておいて、とりあえずやりましょう。困ってる子がいる。これが最も重要よ。」
「娘の居場所の特定・保護。可能な限り確度を高め早期解決を目指します。ご協力、よろしくお願いします。」
サー・ナイトアイの言葉に頷く一同。話もひと段落ついたところで、俺の仕事をさせてもらおう。
「エンデヴァーヒーロー事務所のメグルです。重要な伝達事項が二つあるのでそれを伝えたいと思います。」
「エンデヴァーヒーロー事務所?」と困惑する何人か。そりゃ本人今東京だしぽっと出のサイドキックが説明してもピンとは来ないだろうしなぁ。
「あ、ヴィラン潰しか。」
「...誠に遺憾ながらそんな呼び方されてます、はい。」
プロの中でもそっちの通りが良いとか泣きそう。隣で見てるバブルビームさんとサンドウィッチさんは笑いを堪えていた。おのれ...!
「自分と隣のバブルビームさんはつい昨日、死穢八斎會本拠地近くをパトロールしたところ、そこで
「見えない騎士?どうやって見つけたそんな奴。」
「俺の個性には身体エネルギーを見る目があります。見えなくても騎士の身体はエネルギーで構築されていたので俺には見る事ができました。」
「それで、
「不明です。鏡に個性を取り憑かせる事が出来るのか、鏡の反射を利用したのかはわかりませんが、遠距離から攻撃できる特性のせいで本人の顔を見る事は出来ませんでした。ですが、騎士を撃退した際にモヤとなって移動した身体エネルギーの動きから、本体は死穢八斎會本拠地にいる事までは確認できています。」
そこで八斎會に繋がったあたり割と最悪な
「質問いいか?」
「どうぞ。」
「そもそもどうしてエンデヴァーヒーロー事務所のサイドキックがあの辺りをパトロールしていたんだ?」
「最初は八斎會に同行していた占い師について調べていたんです。」
「占い師?」
「ええ、とある事件の参考人として話を聞きたかったんです。ですが駅に着いてからすぐに素人の尾行がついて回りまして、様子見のために周辺をパトロールしたんです。」
「その男の名前は倉持霧助。住所不定無職、所謂ホームレスでした。八斎會に前金と鏡を渡されてバイトをしただけの自覚のない鉄砲玉ですね。」
バブルビームさんのフォローありがたい。だがその情報前もって俺にも渡して下さいよと内なる俺が愚痴る。まぁ今は置いておこう。情報提供の続きだ。
「パトロールについてきたその倉持に話を聞くためにこちらからアクションを起こそうとしたところ鏡を向けられました。そして、俺とバブルビームさんは殺されかけました。」
「⁉︎」と驚くプロヒーローたち。エンデヴァーヒーロー事務所のサイドキックという肩書きから俺たちの実力を高くみていたのだろう。そんな二人が殺されかけたというのだから、本当にやばい
「単純に速い個性です。鏡を向けられて一瞬でバブルビームさんは首を落とされかけました。」
「成る程な。見えない、速い、鋭いの三拍子が揃ってるって訳か。よく生きてたなお前ら。」
「過去に突然首を落とされたっちゅー案件はなかったんかいな。」
「ええ、警察に問い合わせてみましたが今回が初犯です。発覚されていない裏の殺し屋って線は消えてないですけどね。」
「その鏡の騎士の狙いが不明瞭です。自分たち狙いなのか、八斎會を調べるヒーローを狙った犯行なのか。なのでパトロールを行う際に鏡を向けられたら死ぬ気で逃げて下さい。これが伝えたかった一つ目の伝達事項です。」
「承知したわ、んで、もう一つの伝達事項ってのはなんなんや?」
はぁ、こっちを話すのは気が重い。なにせ完全に未確認情報なのだから。
「八斎會に連れていかれた占い師。今朝参考人の元ヒーロークリスタルアイに確認を取ったところ、その個性は自己申告では直感となっていました。ですが、エンデヴァーヒーロー事務所では個性の虚偽申告だと疑ってみています。睨んでる個性は、未来予知。それも移動中の護送車にトラックを横から突っ込ませる事ができる程の超高精度なモノです。」
「インサート襲撃事件かいな⁉︎」
「ええ、未来予知を使った犯罪教唆の疑いです。そんな個性の人間が敵側に居るという事は、どんなに隠してもこの襲撃が敵側に知られてしまうという可能性があります。これが伝達事項その2です。」
「...それ、まだ未確認情報なんだろ?なら気にする事はねぇだろ。ビビりすぎなんだよ。」
まぁ正直なところを言うと色黒のヒーローさんの言う通りだ。未来予知など気にしたところで防ぎようなどないのだから、各々の最善を尽くすしかないのだ。
「以上の2点を持って伝達事項を終了させて貰います。ご静聴ありがとうございました。」
「おー、若いのにしては頑張ったったで!飴ちゃんやろー!」
「あ、頂きますファットガムさん。」
「ファットさんでええで団扇くん!」
その後、バブルガールさんが個別に詳しい資料を渡して会議は終了となった。
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出久と通形先輩の話を聞く。インターン初日に、救うべき少女エリちゃんと会ったものの、出久はその場で助けようとして、通形先輩は次に確実に助けられるようにして、しかし治崎の卑劣な行為により助けを求めるその手を掴めなかったのだと。
「そうか、そんな事が...」
「悔しいな...」
「デクくん...」
「過ぎたことを気にしすぎるなよ、出久。次は俺たちで助けよう。治崎って奴を皆でボコってさ。」
そんな気休めも、今の出久には届かなかった。通形先輩も出久も、落ち込んだままだ。
そんな時、エレベーターから相澤先生がやってきた。
「通夜でもしてんのか。」
「先生!」
「学外ではイレイザーヘッドで通せ。いやァしかし...今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがなァ...」
「ええ⁉︎今更なんで!!」
切島が憤る。だが自分も同意見だ。エリちゃんという子は必ず助けなくてはならない。その為の一助に俺たちはなるはずだ。
「連合が関わってくる可能性があると聞かされただろ。話は変わってくる。」
相澤先生は頭を掻きながら出久と視線を合わせるためにしゃがみ込む。
「ただなァ...緑谷。おまえはまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ。残念なことにここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと、俺は確信してしまった。俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう、緑谷。」
相澤先生は「わかったか問題児」と出久の胸に拳をそっと当てた。
「ミリオ...顔を上げてくれ。」
「ねぇ、私知ってるのねぇ通形。後悔して落ち込んでてもね仕方ないんだよ!知ってた⁉︎」
「...ああ」
「気休めを言う。掴み損ねたその手はエリちゃんにとって、必ずしも絶望だったとは限らない。前向いていこう。」
「はい!!!!」
出久も通形先輩も復活だ。
「俺、イレイザーヘッドに一生ついていきます!」
「一生はやめてくれ。」
「すいァっせん!!」
「切島くん声デカイ...!」
「とは言ってもだ。プロと同等かそれ以上の実力を持つビッグ3と見えない騎士を見れる団扇はともかくお前たちの役割は薄いと思う。蛙吹、麗日、切島、お前たちは自分の意思でここにいるわけでもない。どうしたい?」
その相澤先生の問いに、3人は迷いなく答えた
「先...っ イレイザーヘッド!あんな話聞かされてもうやめときましょとはいきません...!!」
「先生が駄目とは言わないのなら...お力添えさせてほしいわ。小さな女の子を傷つけるなんて許せないもの。」
「俺らの力が少しでもその子の為ンなるなら、やるぜイレイザーヘッド!」
「意思確認をしたかった。わかっているならいい。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的、それ以上は踏み込まない。一番の懸念である
「了解です!」と皆と息を揃えて返答する。
「それから団扇。」
「なんですかイレイザーさん。」
「お前、後で反省文な。暗殺されかかったとかそういう事件は学校側にも報告しろ馬鹿野郎。」
「...すっかり忘れてました。」
どうして俺の行動には最後にオチがついてしまうのか、疑問に思いつつも早速スマホで反省文の文面を打ち込む。
何故か反省文は書き慣れてきたのでそう時間はかからないだろう。
そんな事を最後に、この日の会議は終了した。
長かった割に対して原作と大差ない会議でした。でもアニメ勢に状況を伝える為にカットはできなかったのだ。
あと言うことといえば、バブルガールさん可愛い。亜原さんは良きキャラを描いたものです。