ヒーローに大切なのは学力より身体能力や個性ですから、きっとこんな感じの採点方式だろう思います。
雄英高校ヒーロー科、その最高峰の学校の教師陣は会議室にて、今回の実技試験の採点をしていた。
「受験番号0371、ビデオ開始します。」
「おー、こいつ覚えてるぜ!C会場で真っ先に走り出したいい身体してる奴だ!この身体能力、増強系か?」
「よく資料見ろマイク、こいつの個性は催眠能力と人間の身体エネルギーを見る能力を兼ね備えた眼の個性だ。つまりこの身体能力は地だよ。」
「なおさら凄えじゃねえか!お、最初の戦闘だ...良いね!ちゃんとパンチに腰が入ってる。ちゃんと鍛えた証拠だな!でも脆いとはいえ仮想ヴィランの体ブチ抜いて手は大丈夫か?」
「...準備が良いなこの受験生、あのグローブおそらく砂鉄入りだ。」
「Wow、ちゃんと武器を用意してくるとか抜け目も無い、これは良い得点行ったんじゃねえか?...あれ、ヴィランポイント22点だ、てっきり40の大台に乗るくらいの動きだと思ったんだが。」
「あー、この子かね。この子は人助けのために試験を投げ出した馬鹿者さね。むしろ22点も良く取れたと言うものさね。」
「何だ婆さん、知ってる受験生か?まぁ、見てればわかるか」
「細い路地の方に入って行ったぞ、何でだ?」
「合理的だな、こいつは自分の火力の無さを自覚している。だから確実に横槍の入らないエリアで戦う事を選んだのさ。だが、悪手だな。」
「索敵能力の無さが出たって事じゃない?最初の路地にポイントがあったから次の路地にもポイントがたんまりあるって思うのは何もおかしくないわ。まぁ、ヴィランの配置的に美味しいのは最初だけだったんだけどね。」
「でもやるなこいつ、4体の仮想ヴィランをほぼ瞬殺だぜ?2pの足を武器に使う機転もある。そんな奴が試験を投げ出すなんて、何が起こったんだ?」
「見てればわかる事だ。聞くのは合理的じゃない。」
「それもそうだな。...走り続ける持久力もある。個性に頼らずこの動きって事は相当に努力した奴なのは間違いねぇ。一体何が起きたんだか。」
そうしてビデオは進み、2pヴィランが3体集まっている奇妙な場面に遭遇した。
「おい、2pヴィランって確かターゲットを見つけたら追いかけ続けるルーチンだよな。それがどうしてあんな固まっている...ちょっと待て、なんかあいつらの足元に血が流れてるぞ!」
「なるほど、これがコイツの遭遇したアクシデントか...受験生はまだ気付いてないみたいだな。だが、不自然に思ってもまずヴィランを破壊する事を選んだか。」
「まぁまだひよっこ以下だ、血にすぐ気付けないのも無理はない。
...しかしココでも瞬殺か、この戦闘力で個性を使っていないのは本当に驚きだな。」
「お、受験生が怪我人に気付いたぞ!一瞬固まったが体を起こしてハンカチで止血、悪くないな。」
「応急処置は及第点だな。訓練を受けていない素人ならこんなものだろう。だが、ここから立ち去る事を迷っているな。」
「でもこの血の出方からいってそんな深い傷じゃないだろ?立ち去って良いんじゃないか?」
「それを言えるのは俺たちがプロだからだ。素人がそこまでの判断を一瞬でするのは無理がある。だから迷って...動き出したぞ。」
「はぁ、畜生もうどうにでもなれ!雄英じゃなくてもヒーローにはなれるんだ、それなら俺は、俺のやり方を通す!
...それに、針千本飲むのはごめんだしな。」
「彼は助ける方を選んだか!極限状態での判断はその人物の根を表す。特にこんな人生を決める大舞台だ、プレッシャーもあるだろうに。それでも助ける事を選べる彼は、良いヒーローになるぞ!」
「それは同感です、けど被害者の傷の深さから見るに置いていっても良かった、いや置いておいて周囲のヴィランを先に対処するのがこの状況を実際の事件現場として見る分には合理的だ。高いレスキューポイントはやれませんね。」
「確かに、相澤君の言う事はもっともだね。でも、まだ試験は半分だ!これから先彼がヴィランポイントを取る事はないにしても、レスキューポイントはまだ加点があるかもしれない。有望な学生だ、しっかり最後まで見てあげようじゃないか!
「成る程、周囲の学生達を利用して大通りを最短で抜ける選択か。背負っているのが本当に要救助者ならこの選択は正しい。実に惜しいな。」
「ただし、周囲の受験生に自らレスキューポイントを配布するような行為でもある。自分の首を絞めることに余念がないな、この受験生は。」
「レスキューポイントは知らされていないんだから仕方がないわ。私は好きよ?誰かを助けるためにライバルの力を借りるのとか、青春っぽくて!」
「人一人背負ったまま2分で入り口まで走りきったぞコイツ!相変わらず凄え身体能力だ!」
「だがこの運び方だと、背負った奴に振動が大きい。振動をなるべく伝えないように努力してるのは見て取れるが、上手くいってないな。...背負ってる奴が本当に重症だったら危険だったかもな。」
「だが、背負っているのは幸いにも軽症者だ。そこは今はいいだろう。む、リカバリーガールと会話を始めたな。」
「ああ、背負ってたのは赤の他人だった癖に、本気で心配している顔だ。多分、根がお人好しなんだろうな。」
「つまり放っておいても命に別状は無かったと。」
「そういう事になるねぇ。」
「イレイザー見たか今の顔!すっげえ微妙な顔してたぞ!そりゃ試験投げ出して人命救助したのに別に必要無かったってんだからそりゃ苦笑も出てこねぇわ!」
「あんまり茶化すな山田。災害救助とかでたまにあることだ。急いで助けようとしたら耐火の個性持ちだったとかな。受験生にとってはあれの延長なんだよ。」
「あぁ、あの肩透かし感か。確かに今の受験生と同じ感じだわな。
...あ、負傷者落とした。」
「よく見ろ、ちゃんと衝撃がいかないように下ろしてる。確かにパッと見落としたみたいに見えたがな。」
「それから全力ダッシュ、体力あるわねー。でも、ヴィランポイントがもう頭打ちって事はもう仮想ヴィラン見つけられなかったのかしら。...移動速度、C会場のタイムテーブル、まさかアレにカチ合った?」
「可能性はあるな。」
「激戦区まで戻って来たか、ちょうど0pが出てくる時間だな。...運が悪いな、コイツ。」
「ま、俺たちとしては良いんじゃねぇか?圧倒的な脅威に対して、この受験生がどう動くか見る絶好の機会だ。...来るぞ。」
そうして、会議室の皆は見た
0pの壊した道路の瓦礫に足を取られ、倒れた女の子を助けるために走り出す2人の男子の姿を
走り出すのは同時だったが、先に着弾したのは緑髪の少年で、間に合わなかったのはこの受験生だった。
「見たか、イレイザー。」
「ああ、確かに見た。あの一瞬、確かにコイツは倒れた女子を助けるために走り出していた。あの規格外のせいで全くの無駄に終わったけどな。」
「でも、圧倒的脅威に怯える事なく、一瞬で助ける行動に出れたのね。オールマイトさんの言う通り、良いヒーローになるわよこの子。」
「ま、走り出しただけなんだけどな。女子は結局自力で脱出したから大幅な加点もできねぇ。個性に全く頼れない状況でもここまで頑張ったというガッツは俺たちも見習うべきレベルだけどな。」
「ああ、この子の採点は、試験終了ちょっとあとまで見てからにしてくれないかい?この子の個性が見れるさね。」
「試験の原則により、試験時間外の行動には得点には出来ませんよ?」
「それでも、この子の個性をまるで知らないまま終わるよかマシさね。」
「それでは、もう少しだけビデオを続けますね。」
「む、少年の顔を少し上げて、自分は地に頭を付けた一体何を...いや、もう終わったのか!催眠眼による鎮痛ッ!目を合わせるだけでこれほどの催眠をかけられるのか!...凄い個性だ。」
「無重力ガールの方にもなんかしに行ったぜ?何、こっちも治療したのか⁉︎」
「音声の限りだと、平衡感覚を誤魔化して酔いを収めたらしい。催眠眼も凄いが、それをコントロールするこいつの個性操作能力は相当なものだな。」
「ここまで強力な個性を持ちながらそれに奢らず体を鍛え続ける根性、悪意に晒されがちな洗脳系個性なのに保ち続けた善性、どちらをとっても金の卵ね。試験結果を誤魔化してでも欲しい人財よ、この団扇巡って受験生は。」
「ミッドナイト先生、滅多な事は言うものじゃ無いよ?試験は公平でなければならない。それが原則さ!
それにまだ捨てたものじゃないさ!彼のやった事はやらなくても良い事だったのかもしれない。だが、気絶した少年を助け、0pヴィランに救うために立ち向かった、その勇気はきちんとレスキューポイントに加算される筈さ!」
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採点結果、受験番号0371番 団扇巡
敵ポイント 22点 救助ポイント 26点
合計得点48点 実技総合成績 37位
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「実技総合成績出ました。」
「レスキューポイント0で一位とはなぁ!!」
「1p、2pは標的を捕捉して近寄ってくる。後半他が鈍っていく中派手な個性で寄せ付け迎撃し続けたタフネスの賜物だ。」
「対照的にヴィランポイント0で7位。」
「アレに立ち向かったのは過去にもいたけどブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね。」
「思わずYEAHって言っちゃったからなー。」
「しかし自身の衝撃で甚大な負傷...まるで発現したての幼児だ。」
「妙な奴だよ。あそこ以外はずっと典型的な不合格者だった。」
「細けえ事はいいんだよ!俺はあいつ気に入ったよ!!」
「YEAHって言っちゃったからなー。」
「しっかし残念だったよなー、あの催眠の奴。」
「例年なら受かってた点数だからな、今年が豊作だったのがコイツの運のなさだろうさ。しかも最後の一人がポイント追い抜いた原因ってあいつ自身の配ったレスキューポイントだったからな。もしも助けた生徒が本当に重症だった場合なら、きっとアイツは受かったんだろうなー。惜しい奴だったぜ。
あ、校長が戻ってきた。」
「皆、受験番号0371の団扇巡君についてだが、調べてもらったところ怪しい結果が出てきた。もしかすると埃を被っていた
「あの制度ってまさか!一体どんな事がわかったんですか!」
「それを確かめるため、彼に会いに行きたいのさ!相澤君、明日は空いているかい?」
「ええ、空いていますよ、校長先生。」
「それなら行こうか!千葉の指定暴力団、財前組の元へ!」
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高校受験も終わり、あとは結果を待つばかりの自分を呼び出したのは、要の爺さんだった。小指のオッサンと俺に何か話しがあるらしい。
「前行った時はもう来る事は無いと思ってた屋敷だけど、意外と機会ってあるものだねー。」
「一度起きた事は、だいたい2回目も起こるのさ。にしても一体どんな要件での呼び出しなんだか。」
「今回は小指のオッサンも知らないんだ。案外サプライズパーティーだったりして、なんかの。」
「なんかってなんだよ。」
「例えば、俺の受験お疲れ様パーティーとか?」
「自分でも疑問形かい。というかそういうのは普通結果が決まってからやるだろ...いやオヤジならやりかねないな。心の準備はしておくか。」
「ヤクザ流の誕生日パーティー...長ドスでケーキ切り分けそう。」
「どんなイメージだ馬鹿。普通にケーキナイフくらいあるわ。」
「ケーキナイフあるんだ。...俺、ヤクザの意外な一面ばっかり知ってる気がする。」
「ヤクザだって普通に生きているんだ、そりゃ料理道具の1つや2つ、普通あるだろ。」
「そういうもんか。」
「そういうもんだ。...着いたぞ。インターホン、今回はどうする?」
「一回押したしもう良いや。」
「適当だなぁ、お前。」
そう言いながら、オッサンはインターホンを押した。
すると門は自動的に開いた
「また扉の奴か、俺たちじゃなかったらどうするんだか。」
「あ、監視カメラあるじゃん。案外それで俺たちを見分けてたのかもね。」
「え、何処にだ?」
「ほら、後ろの電柱のとこ。」
「後ろ?本当だ、いつの間に監視カメラなんて付けたんだウチの組。そんな金ないだろうに。」
「監視カメラくらいそう高いものでもないんじゃない?」
「最近は安いのもあるんかねぇ。まぁ、いいか。行くぞ、巡。」
「はーい。」
玄関の扉を開けると、そこには要の爺さんが待っていた。
「またか。オヤジ、二度ネタは面白みにかけるぞ?」
「いや、今日は単に人が出払っていてな、今ウチにいるのは俺と扉と客だけなんだ。」
「客?そういや一体どんな要件で俺たちを呼び出したんだ?」
「そのお客さんが、俺とオッサンを呼び出したって事で良いの?要の爺さん。」
「巡の言う通りだ。さあ、客は居間で待ってる。入りな。」
居間に入ると、そこには人型大の白いネズミと着慣れていないスーツを着た男性が座っていた。
「どうも、団扇巡です。」
「どうも、コイツの保護者、財前小指です。」
「ご丁寧な対応ありがとう!白い毛並み、キュートなお目目、その正体は...校長さ!雄英高校のね!名前は根津さ!」
「同じく、雄英の教師の相澤と申します。」
「雄英の先生がた⁉︎一体どうしてウチの組にヒーローが来てるんだよオヤジ!」
「...話してみればわかるさ、取り敢えず二人とも座んな、話はそれからだ。」
「合格を伝えに来たって訳じゃないよね、多分だけど。」
二人は、ヒーローと向かい合う形で机を挟んで座った。
「それじゃあ俺は部屋にいる。終わったら呼びな。」
そう言って、要の爺さんは部屋から去っていった。
「それでは始めようか!団扇君、君は当校の受験において実に良い成績を残した!」
「...やったじゃねぇか巡!」
「...いや、ただの合格通知なら先生方が直接来る必要はない。何か提出書類にミスでもあったんですか?」
「なかなか鋭いね!ならもう本題に入らせてもらおう!優秀な成績を残した君だが、いくら筆記試験の結果が良くても実技試験でヴィランポイント22点という全体から見れば低い成績の君をウチの学校に迎える事は出来ない。」
「それじゃあ、やっぱり自分は落ちたんですか。まぁ納得です、試験棒に振って助けようとした人がアレでしたからねー。」
「そう、君は不合格だ...このままならね!
僕達は君を絶望させるためにわざわざやってきた訳じゃない。君が、ウチの高校にある知られざるある制度に適した人物かを見極めに来たのさ!」
「その制度ってのは⁉︎」
「フフフ、まだ秘密さ!」
「...成る程、その制度の名前から自分が先生方好みの回答を捏造しないためにですか。」
「その通り、流石筆記試験4位の秀才だね!頭の回転も速い。」
「ありがとうございます。筆記そんなに良かったんですか、ちょっと驚きです。それで聞きたいことっていうのは何ですか?」
「単純なこと、君の半生さ!君がどんな境遇にいて、どんな生き方をしたのかを僕達は知りたいのさ!」
「...だから小指のオッサンの家じゃなくてこの財前組の本家に呼び出した訳ですか、もう、ある程度知っているから。」
「君の調査を頼んだヒーローは優秀な子だったからね!君が暴力団関係者だという事はすぐにわかったのさ。芋蔓式で君の戸籍が偽造されたものであることもね!
そんな訳でまず君に質問だ、どうして君は財前組なんて指定暴力団に引き取られる事になったんだい?」
「...俺が嘘をつく可能性は考えないんですか?」
「その時は、君が嘘をつく理由を見抜くだけさ!」
「わかりました、答えます。
生まれた時に親が出生届出し忘れるとかいう大ポカやらかしましたけど、普通の家庭に生まれたと思います。でも4歳くらいの頃、父親が逃げ出しまして、それから母と二人で頑張ったんですけど色々ありまして、なんだかんだでネットで知り合ったオッサンに引き取られる事になったんです。」
「色々の部分を話してはくれないのかい?」
「これは、俺の背負わなきゃならない傷です。先生がたがいくら信頼できそうな人物だとしても、初対面の人に話したくはないですね。」
「...まぁ確かに僕達は初対面だ。あんまり踏み込んだ話をするには抵抗があるもの頷けるね。でもネットで知り合っただけの人に引き取られる事には抵抗はなかったのかい?」
「当時はそれどころではなかったですからね。自分が長く母と同じ所にいたら二人とも駄目になるってのはわかりきっていたことだったんで。多少信頼出来ない人だとしても頼れる糸はそれしかなかったんです。...まぁ、結果は大当たりだったんですけどね!」
「そうかい、君はヤクザに引き取られて良かったと思っているんだね。」
「ヤクザっていうより、小指のオッサンにですね。このオッサンに引き取られた事は俺の人生最大の幸運です。」
「おい巡、あんま変なこと言うな!これはお前の人生のかかった面談なんだぞ!」
「照れてるの?」
「照れとらんわ!」
「ハハハ、本当に仲が良いんだね!それじゃあ次の質問だ。君が財前組に引き取られてから学校に行き始めるまで一ヶ月ほどかかっているね。その間一体何をしていたんだい?」
「...確かに俺がこの組に引き取られてから学校に行き始めるまで一ヶ月ありました。でも、戸籍を偽造したのも一ヶ月経ったあたりです。でも、この事は簡単な調査だけじゃ分からないはずです。
根津校長、あらかじめ要の爺さんに話聞いてますね?」
「ハハハ、君は本当に頭の回転が速いね。実はその通りなのさ!」
「それなら嘘をつく意味とか無いじゃないですか。」
「嘘は人の本質を表すからね!君がどういう嘘を吐くのかも判断基準だったのさ。まぁバレてしまっては仕方がないけどね!」
「これ、俺が話す意味とかあるんですかね...まぁ、話しますけど。
要の爺さんの話した通り、自分は財前ヒプノセラピーサロンって店で個性の不法使用で働いていました。引き取られてから今までずっと。借金みたいなものの返済のために。
一ヶ月の時に自分に戸籍が作られたのは、店でちょっとしたアクシデントがあって、それを解決した事の報酬みたいなものです。
これを隠せないって致命傷じゃないですか?ヒーロー志望とかもう無理でしょう。」
「つまり、君は8歳から今に至るまで、店で個性の使用を強要されていたんだね?」
「?いえ、自発的にやっていましたよ。お金を稼ぐために。」
オッサンは何かを悟ったような顔で話し始めた。
「...いいや、未成年であるお前に責任能力はない。お前がどう言おうが個性の不法使用は店の責任者である俺の責任になる。だから、お前は個性の使用を強要されたと言え。」
「⁉︎何言ってんだオッサン、そんな事言ったら捕まるだろ、この二人はヒーローだぞ!」
「いいや、オヤジが話したって事はもう向こうに証言は握られているのと同じ事だ。...いずれ責任を取る日が来るのはわかっていた。お前を店で働かせるって事は紛れもなく法を犯した行為だからな。
だから、それがたまたま今だったってだけだ。」
「正直に言おうじゃないか。君に適応できるかもしれない制度というのは未成年ヴィラン保護入学制度というものさ。何らかの事情で犯罪に手を染めてしまった未成年の少年少女に、更生のチャンスを与えたいとの思いで作られた制度さ!未成年のヴィランがそもそも少ない上にそんな子は雄英を受験しないから今まで埃を被っていた制度なんだけどね!
でも、この制度を適用するには罪の所在を明らかにしないといけない。未成年である君に罪を問うことはできない。だから、君が、君自身で法律的に罪を背負うべき人物を名指ししないといけないのさ。」
「それって、俺が夢を追うためにオッサンを生贄にしろって事だろ!言える訳あるか!」
「巡!...大丈夫だ、俺は所詮ヤクザ者だ。若い頃の無茶のせいで前科もある。...それに、捕まるっていっても未成年への個性不法使用の強要ってだけだ。なら精々3年って所だろう。大した刑期でもない。
だから、お前が特に悩む事は無い。
それに、組をたたむ際に俺みたいな非合法店を経営していた連中は警察に自首する手筈になっていた。ちょっと警察に捕まるのが早くなるだけだよ。」
「でも!」
「巡、俺はお前のオヤジ代わりだ。お前の夢のためにちょっと格好をつけさせてくれ。」
「...ずっと、抵抗があって言えなかった...父さんみたく居なくなっちゃうんじゃないかと思ってて。ごめん、でも本当に良いの?」
「おう、良いんだよ。...お前との家族ごっこは正直楽しかった。ヤクザ者の俺でも、真っ当な家庭を得られたみたいでな。
だから、ありがとな馬鹿息子、お前のおかげで俺はカタギになるって決める事が出来た。」
少年は、一筋涙を流しながら、こう言った。
「こっちこそ、ありがとう、親父。親父が最初に俺を助けてくれたから、俺はヒーローを目指す事が出来た。本当にありがとう親父、俺と、出会ってくれて!」
その返答は、頭を撫でる父親の優しい手つきだった。
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「落ち着いたかい?」
「はい、ありがとうございます、根津校長。...言いますね。
俺、団扇巡は8歳から今に至るまで、財前ヒプノセラピーサロンにて個性の使用を...」
隣の親父の顔を見た。行ってこいと言われたような気がした。
「...個性の使用を強要されていました。俺の親父、財前小指に!」
「言質は取れたよ。これで君は未成年ヴィラン保護入学制度の対象になった。よってこれより雄英高校は君の事を保護する事を約束するのさ!」
親父は心から嬉しそうに
「良かったな、巡。」
なんて言ってきた。
自分は、うまく言葉を返せなかった。
「さて、相澤先生、資料を。」
「その前にお前に聞いておきたい事がある、団扇。」
「何ですか?相澤先生。」
「お前は、ヒーローを憎いと思ったりしないのか?」
少し考えて、自分はこう答えた。
「ヒーローを憎んだ事はいっぱいあります。母さんと二人の時にどうしてヒーローは助けてくれなかったんだ!とか、今、どうして親父が捕まらなきゃいけないんだ!とか。でも、憎しみは善意と違って良いボールでは帰ってこないじゃないですか。だから、これは心の奥にしまっておきます。」
「...そうか、ならもう一つ。どうしてお前はヒーローになりたいと思ったんだ?」
「自分が、ヒーローに助けてもらえなかったからです。
今のヒーロー飽和社会でも、単純に誰に助けを求めて良いかわからないから、とか、脛に傷があるから、とか、いろんな理由で助けてを叫べない人達がいます。俺は、そんな人に手を差し伸べたい。そう思ったから、ヒーローになりたいって思ったんです。」
「それは、社会への復讐か?」
「いえ、もっと単純です。自分が助けてもらえなかったから皆も地獄に落ちろーってのは悲しいじゃないですか。自分の受けた不遇は、自分を最後の一人にしたい。そんな理由です。」
「そうか...無謀だな。だが良い答えだ。」
「プロから見るとやっぱ無謀なんですね。」
「だが、その無謀を実現できるように鍛えるのが俺たちの仕事だ。
来いよ団扇巡、雄英高校がお前のヒーローアカデミアだ。」
「ありがとうございます、先生。これから3年間、よろしくお願いします!」
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財前組から帰る車の中、相澤と根津はある話をしていた。
「しっかし良い子だったね、団扇巡君は!将来有望な生徒が増えて良かったね!相澤君!」
「ええ、しかも催眠系の個性にも関わらず、俺たちに使うそぶりすら見せなかった。この分だと自分が来た意味はなかったですね。」
「念のための備えは必要さ!もし、僕が一人で行って催眠にかかっていたら、雄英に相応しくない生徒が合格してしまう可能性があった。
互いに信じられない初対面での会話は、いくら保険があっても足りないのさ。特に彼のような危険な個性を持った子相手だとね!」
「...催眠系は本当に危険な個性です。所持者自身にも牙を向きかねないほどの。だからこそ団扇巡は凄い奴ですよ、個性に驕らず、誠実さを忘れなかった。...彼の養父に聞いてみたいですね、どういう教育をしてきたのか。」
「ヤクザの教育メソッドをヒーローが取り入れる、何か不正がありそうな文面だね!」
「そうですね。」
実技試験滑り込みセーフなのは多分青山君。理由は特に無いです。なのでC会場のレスキューポイント配りが主人公にとっての致命傷になりました。無情です。
尚、どっかで書こうと思って書きそびれたのでここで
実技試験で血を流し倒れていた子の個性は跳躍、ビルを飛び越えて真っ直ぐ行ったから脇道をしらみつぶしに見てる主人公より早く気絶した場所にたどり着いたのでした。
-追記-
4/18、教師の会話内容を一部修正しました。プロット書いていてここは書き足しておくべきポイントだと思ったので。プロット作業はあまりはかどってはいませんが、楽しんで書けて、楽しんで読まれる小説を目指して頑張ります。