さて、こんな導入で良いのかはこの話の後の評価が物語ってくれる!
始まる寄り道
ミラー・ヤマザキの死は、留置所内での死亡事故として処理された。
自分だけに述べられたあの言葉の数々は、正直信じられない。聞いた話をそのまま警察に話してみたところ、タチの悪い個性カルトにハマっていたのだろうと判断されてしまった。
ミラー・ヤマザキという名前は渡航記録や就労ビザなどから検索してみた結果、おそらく偽名、あるいは通り名なのだと目されている。
「そんな嘘をつくようならそもそも名乗らないと思うんだがなぁ...」
警察署での取り調べを終えた自分を待っていたバブルビームさんとサンドウィッチさんは、「所詮
だが違うのだ。あの男の言葉は全て真実だった。俺にはそれがわかった。話た事は正直信じられないが、奴の言葉の強さは決して嘘のそれではなかったからだ。
敵は、1000年の繁栄の未来だ。
思えば、原作知識という未来の事について真剣に考えた事はなかった。それほど、目の前の事件に全力で取り組むしかなかったからだ。
だが、もしかしたら自分の行ってきた事により本来の未来より悪い未来に至ってしまった人がいるかもしれない。
例えば父さんと母さん。俺が転生者じゃなかったら2人は別れる事なく、幸せに暮らしていたかもしれない。
例えば親父たち財前組。俺が買われなかったら集団自首などせずヤクザとして活動し続け、仁義の元で誰かを助けていたかもしれない。
...例えばミラー。俺のようなイレギュラーが現れなかったら今でも命を繋いでいたのかもしれない。
そんな『もしも』が頭を支配する。冷静な部分で、そういう迷いを与える事がミラーの狙いだとわかっているのにだ。
「孤独に生きろ...か。」
実際その通りにするのが一番いい選択だろう。俺と深く関わればイレギュラーとなり陰我たちに命を狙われてしまう。今ならまだ、友人達は大丈夫かもしれない。
中学終わりに出来た友人達、高校に入ってからできた友人達、教えをくれた先生方、頼りになる先輩方、そして、俺の家族。いずれの繋がりも、大切で仕方ない。
その繋がりを守る為に俺が何をするべきなのか、その答えは未だ出ない。
そんな事を考えながら事務所の仮眠室で横になる。今日は、少し寝つきが悪くなりそうだ。
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携帯のアラームが鳴る10分前にふと目が覚める。二度寝する気にもならないのでそのまま朝のロードワークといこう。
「おはようございます...って寝てるか。」
二段ベッドの下では、バブルビームさんがすやすやと眠っていた。起こすのも忍びないので静かに出ていこう。
当直をしていたライズアップさんに挨拶をしつつトレーニングルームの使用の許可を貰う。「こんな時間からトレーニングとか来たばっかの頃のバブルビームを思い出すぜ!先輩に負けないように頑張れよ!」と激励を貰えたのは少し嬉しかった。
だが、この会話でライズアップさんがイレギュラーとされてしまったらと思うと、心のどこかが悲鳴をあげるのが聞こえた。
準備体操をした後、値段的に手の出しづらいトレーニング器具をふんだんに使って筋トレを行う。雄英にもトレーニングルームはあるのだが、使用可能になるは午後からなのだ。全寮制になったのだから改善してほしいポイントである。
そうして筋肉をいじめた後、個性使用可能タイプのランニングマシンでひたすら走る。
10分ほど走った所でトレーニングルームの扉が開いた。
「うわ、ホントにメグルに先使われてる。頑張ってるねー。」
「おはようございます、バブルビームさん。」
「うん、おはよー。」
挨拶のあとは無言でトレーニングを続ける。関わった深度でいえば、バブルビームさんはこのエンデヴァーヒーロー事務所で最も深い。陰我にイレギュラーと見なされていてもおかしくはないだろう。
隣のランニングマシンを使うバブルビームさんを横目で見る。バブルビームさんは普段の適当な姿は何処へやら、真剣にトレーニングに集中していた。
バブルビームさんがトレーニングするのを見るのは初めてだが、その姿勢に違和感はなかった。この人とて、No.1ヒーローのサイドキックの座を勝ち取った人なのだから。
でも、そのあまりにも普通過ぎる姿に少し違和感を覚えた。殺されるかもしれない原因を側に置いておくものだろうか。
だから、少し考えなしの質問をしてしまった。
「バブルビームさん。」
「ん?何?」
「俺といて、イレギュラーとかいうのになるかもしれない事、怖くないんですか?」
「実を言うと、むしろラッキーだと思ってるくらいだよ。」
その返答は、全くの予想外だったが。
「...殺されるかもしれないんですよ?」
「それはちょっと怖いけどね。でもその本当の原因は陰我とかいう奴で、メグルじゃない。だから僕は、メグルの味方になれるイレギュラーになっても構わないと思ってる。」
「俺の...味方...?」
「そう。メグルの味方。メグルには何度も命救われちゃったからね、その分くらいは味方になるよ。僕もヒーローだし。」
俺の味方、その言葉で、イレギュラーという言葉で惑わされていた事の本質が見え始めてきた気がした。
その言葉の持つ暖かさが、俺に少しの勇気をくれた。
「バブルビームさん。」
「何?」
「俺は、誰にも死んで欲しくないです。俺が今まで関わってきた皆にも、これから戦う
「じゃあ、頑張らなきゃね。」
「...はい。」
俺が頑張る事。まずはそれからだ。
自分の意思を通したいなら、無力であっては駄目なのだから。
なのでとりあえず、ランニングして基礎体力を付けるのが一番最初だ。
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警察からの捜査協力要請を受けて、エンデヴァーヒーロー事務所の今回の事件に絡んだ面々は警察病院へと向かう。目的は、占い師への尋問だ。
「個性を使っての尋問とか、警察も割と手段選んでないですよねー今回のヤマ。」
「そうね、死穢八斎會に押し入ったら
「...陰我って、なんなんでしょうね。」
「
「...即答ですか。」
「そりゃそうよ。相手の事情考えるだけ無駄だもの。私たちはヒーロー、実働部隊よ。だから戦う相手と救う市民だけわかっていればいい。考えるのは警察や検察がやってくれるわ。」
ちゃんとしてる大人の女性と思っていたサンドウィッチさん、まさかの丸投げである。
「...バブルビームさん、ヒーローとしてこの考えって正しいんですか?」
「まぁ僕らって、突き詰めて言うと戦闘関係以外やれる事ないからねー。他の事を考えるのは無駄だったりするのさ。」
世知辛い事実を知ってしまった訳である。
「まぁ、それだけじゃ勿体ないからヒーローには副業が許されてるのさ。」
「勉強になります。」
「一応言っておくけど、これサイドキックの戯言だからね?経営に関わるエンデヴァーさんだとまた違う意見が出ると思うよ。」
「まぁその辺はおいおい、卒業後即事務所立ち上げる予定は今のところないですから。」
ぐだぐだと会話しながら車は進む。もうすぐ警察病院だ。
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警察病院の入り口で待っていてくれた茶髪の女性警官に挨拶をする。
「エンデヴァーヒーロー事務所のサンドウィッチです。」
「バブルビームです。」
「メグルです。」
「警察の里中です。今回の陰我事件の担当をする事になりました。」
挨拶はほどほどに、病室に移動しながら状況の説明を受ける。
サンドウィッチさんのサンドバインドにより意識を飛ばされた占い師は、意識を取り戻す事なく警察病院に搬送された。そして検査の結果、何らかの薬物を奥歯に仕込んでいたことがわかり、麻酔をかけて緊急手術を行い取り除いたとの事。
薬物の正体は調査中。何らかの個性により作られた毒物だと推測されている。
「奥歯に毒物とかまた古風な事を...」
「仕込んでた量で致死量ならちょっとした特許で左団扇だと思うんですけどね。それを悪事に利用してくるとは、厄介ですよ陰我って連中は。」
そんな訳で占い師は警官2名の監視の下、現在ベッドに縛り付けられ猿轡をかけられた状態で拘束されているとの事だ。
「着きました。ここです。」
病室の扉を開くと、言われた通りに警官2名と占い師がいた。
「よろしくお願いします。メグル。」
「承知しました。...陰我に繋がる一本の糸、手繰らせてもらう!」
写輪眼を発動し、占い師の身体を見る。
だが、その体は、もう既に他人の身体エネルギーに蝕まれていた。
「...ッ⁉︎この感じ、毒⁉︎」
「嘘⁉︎薬物は取り除いた筈!」
「あのカプセルはワクチンだったって事かな。...メグル、なんとかできる?」
「無理そうです、毒が完全に身体中に回ってる。」
この毒はもう心臓に達している。だがバイタルサインは正常だ、なにかをするにも慎重に行わなくてはならない。
何がこの毒を起動させるトリガーなのだろうか。
まぁ何にせよ本人に吐かせるのが手っ取り早いだろう。
ナースコールを押して念のための準備をしつつ、俺の姿を見て目を閉じる占い師の目を無理矢理こじ開けて写輪眼発動だ。
「さて、まずは今お前を蝕んでいる毒の正体を教えて貰おうか。」
「...万が一の口封じ用だとは聞いていますが、それ以上は。」
「なんで口封じ用だと聞いて素直に受け入れるかね...奥歯に仕込んでいた薬は?」
「抗精神操作薬、体内に含ませ続ける事で体内のエネルギーを整える物だと聞いています。」
「...それは、ミラー・ヤマザキも服用していたものか?」
「ええ、そうです。」
ミラーにかけていた催眠が解けたのはそんな仕込みをしていたからだったのか。だが、それなら薬物に即効性はない。そう警戒するものではないだろう。今のところは。
「じゃあ本題だ。お前は、どうやったら生き残れる?」
「その道はありません。イレギュラーに関わった時点で私たちは取り除かれなければなりませんから。」
「...もっと生きたいだろお前だって。」
「何故ですか?人類繁栄の礎になれるのですよ?」
...狂ってる、思考停止にそう感じてしまった。今占い師にかけている催眠の内容は俺に従う事に幸福感を覚えるというものだ。
つまりこいつは、
「これが、本物の洗脳って奴かよ...ッ!」
もっと生きたい、そんな当たり前の気持ちがこの男からは取り除かれている。それは、なんて悲しいことなのだろうか。
「...お前の名前は?」
「
その瞬間、幕張の身を蝕んでいた身体エネルギーがドクンと脈動した。
「ああ、これが終わりですか...良い人生では、なかったかもしれませんが、まぁこんなものでしょう。」
「何一人で納得してるんだ!生きろよ!生きる事を諦めるなよ!」
バイタルサインはアラートを発している。心拍数の急激な低下、いや停止だ。
流動していた身体エネルギーが停止している。それはつまり、血液の流れが停止しているということで、血が全て固まったということだろう。
バブルビームさんたちに目配せして応急処置に入る。心臓マッサージをしようとするも、幕張の体が固くなっていて上手く衝撃が心臓に伝わらない。
手が冷たい、人でない何かを触っているかのようだった。
すぐに病院の先生たちが駆けつけるも、未知の症状に何もできる事はなく、幕張はあっさりと生き絶えた。
「こんなあっさりと人が死ぬのか...ッ!死んで良いのかよ!」
写輪眼で息絶えた幕張を見る。その身体を蝕んでいた身体エネルギーは霧散していた。血を固める毒の個性、発動条件、感染条件ともに不明。
陰我に対してなんの情報も得られる事なく、幕張十色という人物への尋問は終了した。
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「すいません里中さん。陰我について何も聞き出せなくて。」
「いえ、私も想定外でした。まさか既に毒が仕込まれていたなんて。奥歯に仕込まれていたものを取り除いた事で安心してしまいました。...ここまで外道の集まりだとはッ!」
1000年の繁栄の為なら、命を平然と捨ててくる。そんな狂気の集団が陰我たちだ。
命が、軽すぎる。
命とは、たったひとつしかなくて。たった一度きりで、かけがえのない物の筈だ。それを何故平然と踏みにじることができるのかわからない。
だが、俺の心は二度目だからか人の死に少しだけ慣れていた。
だから聞こえたのだろう。俺の心の底からの声が
「捕まえましょう、陰我を。」
怒りとも悲しみとも違う不思議な感情。この衝動は何なのかは今の俺には分からない。だがこの声がきっと悪いものでは無いと信じて、俺の心からの声を言えた。
「うん、安心した。いつものメグルになったね。」
「ええ、人の死って簡単に受け止められるものじゃないから、ちょっと安心したわ。」
「...いつもの俺ですか?」
「そう。優しさや親切心が過ぎて突っ走る、うちの事務所の問題児じゃん。」
「問題児って言うよりトラブルダイバーって言った方が正しいけどね。」
「酷くないですか二人とも。まぁ否定はできないですけど。」
ちょっとだけ、ただ悲しんでいた頃より前に進めた気がした。
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その後再び警察からの取り調べを受けた。取り調べをした際の警察官の「何度目だよお前」と零した時の声が忘れられない。思わず「すいません、迷惑おかけして」と謝ってしまったほどだ。
そんなこんなが終わった頃にはもう昼過ぎ、今から学校に帰っても7限に間に合うかどうかといった所。地味に学校から遠いこの地が恨めしい限りだ。
インサートの件と合わせて二週間近く休んでいるので、補習地獄が怖い。怖くてたまらない。テストで補習免除とかないかなーとは思ってる。無いと思うが。
そんな訳で地味に余った時間、病院に寄ってみる。サー・ナイトアイの容態も気になるしちょうど良かっただろう。
...未来予知の個性を持つサー・ナイトアイにイレギュラーについて相談したかったというのも少しはある。
俺によって運命が変わった人がイレギュラーになる。その認識は正しいのかどうか。判断できる人物は俺の知る限り陰我とナイトアイしかいない。ナイトアイは言った。
病室のドアをノックする。「はいはーい!」と元気よくドアを開けたのは病衣の通形先輩であった。
「サー・ナイトアイのお見舞いに来ました。手ぶらですけど。」
「おお!命の恩人!」
通形先輩のハグを頭を抑える事で止める。男に抱きつかれる趣味はないのだ。でも進む力が強い、やばい抑えきれないッ!
「ミリオ、少し落ち着け。...歓迎するよ団扇くん。何もない所だがな。」
「何はともあれ、生きていてくれて何よりです。」
「殺される訳にはいかないからな。頑張らせて貰ったよ。」
その言葉に苦笑する。そういえばそんな事言ったなと。
まぁ、病室で長々と喋って体力を使わせるものなんだし、ささっと本題に入らせてもらおう。
「サー・ナイトアイ、あなたに相談事があって来ました。」
「昨日の、ミラー・ヤマザキからの言葉の件か?」
「...知っているんですか?」
「ああ、HNを通じて調書は読ませて貰った。幸い、片腕は無事だからな。」
ベッドの上でナイトアイがスマホを示す。たしかにネットワーク社会だ、やろうと思えばどこでだって仕事はできる。
まぁ、入院中くらいゆっくり休んでいろとは言いたくなるが。
「正直警察の妙なカルトにかぶれた男という判断を責められないな、私と君以外は。」
「私と...ッ⁉︎まさか、もうサー・ナイトアイの元にも刺客が⁉︎」
「Noだ。それとナイトアイで構わない。...私の話をする前に確認したい事がある。君に個性を使わせてもらうが、構わないか?」
「はい、別に大丈夫ですけど。」
そう言ってナイトアイは俺の肩を触り、目を合わせる。「やはりか...」とナイトアイは呟いた。
「連中の言うイレギュラーの定義は分かった。イレギュラーとは、未来予知に映らない人間のことだ。」
「という事は、俺の未来は?」
「ああ、全く見えなかった。そしてミラー・ヤマザキの調書を読んだ際にミリオの未来を見てみたんだが、
「つまり!俺は準イレギュラーって事なんだよね!」
「通形先輩が準イレギュラー...待ってください、てことはナイトアイ、あなたは⁉︎」
「ああ、私もイレギュラーだ。おそらく君に命を救われたあの瞬間から。」
正直予想はしていた。何故なら、
そんな人物が生きているのだ、それはイレギュラーになってもおかしくない事実だろう。
「...自分が殺されるかもしれないってのに平然としてるんですね、ナイトアイは。」
「ヒーローに危険は付き物だ。その程度の可能性、リスクのうちに入らないさ。それに、イレギュラーとなった事で得をした事もある。」
「得?」
「私が運命に縛られないのなら、誰かの死を見てもその死を覆せるという事だ。」
「つまりこれからのサーは自由に未来を変えられるって事なんだよね!凄くない?」
一瞬、ポカンと口が開いてしまった。見た未来を変えられる未来予知、それってつまり、
「無敵じゃないですか...」
「そうだ。その無敵の個性が君の味方だ、だから君が陰我とやらに怯える必要は無い。」
俺の味方、心があったかくなるその言葉が俺の胸を打つ。
「ありがとうございます、ナイトアイ。」
「では、差し当たって君が取るべき行動を提案しよう。」
ナイトアイは、少し笑った後で予想外すぎる提案をしてきた。
「因果律予測などという恐ろしい個性が敵にいるのだから無策で動くのは問題外だ。そして陰我の組織は恐るべき統率力を持っている。故に後手に回らざるを得ないヒーローである君のする事は一つ。多くの人と関わり、準イレギュラーを増やすのだ。」
「...はい⁉︎何言ってるんですかナイトアイ!なんで被害者になり得る人を増やす必要があるんですか!」
こちとらちょっと前まで孤独に生きるかどうか迷っていたレベルだというのに、オールマイトの元サイドキックはその段階を2段くらい飛び越えて俺に奇策を与えてきた。
「敵の因果律予測の精度はどの程度かは分からない。だが、イレギュラーの数が多ければ多いほどその精度は低くなるだろう。故に君に釘を刺す言葉をミラー・ヤマザキに残させた。そう考えれば次に陰我が君に行って欲しい事は予測できる。君が孤立する事だ。」
「でも、そんな事をすれば陰我に殺される人が多く出かねません!」
「そうはならない。単純に考えて、エンデヴァーヒーロー事務所にいる君を殺すために八斎會を利用する必要があるときはどんな時だ?」
「...陰我の組織の力単独じゃあ俺を殺しきれない時...ッ⁉︎」
「そうだ、陰我の組織は狂気的な結束力を持っていても強力な手札はそう多くは無いのだろう。だからミラー・ヤマザキという歴戦の
目から鱗が落ちるとはこの事だ。そんな事実、さっぱり思いつきはしなかった。これが、オールマイトを支えてきたサイドキックの推理力なのかッ!
「勝負の鍵は時間だ。緑谷が運命の内側からエリちゃんを巡る運命を壊してみせたお陰で運命は変わった。奴の因果律予測も予測し直さなくてはならないだろう。その隙に私と君、二人で多くの準イレギュラーを作りその予測を狂わせる。そうすれば焦らされた奴の組織は表に出て来ざるを得ない。そこを準イレギュラーとイレギュラーのヒーローたちで捕まえる。どうだ?この提案乗ってみる価値はあるだろう?」
「...はい、乗ります!その提案!」
その提案への答えは、思考でなく感情からのものかもしれなかったが問題はきっとない。なにせ元No.1のサイドキックのお墨付きだ。きっとなんとかなるだろう。
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ナイトアイの病室を出て、病院のエントランスに差し掛かった所で見覚えのある小さな白衣の老婆が見えた。
「リカバリーガール!」
「おや、まだこの街にいたのかい。ハリボー食べるかい?」
「頂きます。ってそうじゃなくて、この前の話の件について話があったんですけど、俺リカバリーガールの連絡先知らなくて。」
「おやおや、それじゃあ携帯を出しな。アドレス交換といこうじゃないかい。」
「はい、お願いします。」
慣れた手つきでスマホを操るリカバリーガールの姿にちょっと驚きつつも連絡先を交換する。
「その顔を見ると、覚悟は決まったんかいね?」
「はい。でもその前に聞いて欲しい事があります。」
駅まで歩く道すがら、自分はリカバリーガールに話した。2人の人間の死を目にしてしまった事。その原因が自分だと言われてしまった事を。
「それなら、やめちまうかい?」
リカバリーガールが振り返って俺の目を見る。
「いいえ、やります。やらせてください。俺は死なせたくない。周りの人も、
その目をしっかりと見て、言葉を返す。
ナイトアイの提案があったからだけじゃない。きっと、俺のやりたい事だから。
ちょっとだけ寄り道をしようと思った。
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雄英に戻りいろいろな調査や手続きを終えた所、気付けば深夜になっていた。先に雄英に戻っていた出久たちは8時くらいに帰れたらしい。まぁ俺は2人の死に立ち会ってしまったので、慎重に調査したという所だろう。
相澤先生に聞いた所、
懸念事項が一つ減った。相澤先生がわざわざ通常のと言ってくれた事から、リカバリーガールからの話は通っているのだろう。
明日から頑張ろう。1人でも多くの人の命を救う為に、1人でも多くの味方を作るために。
あ、今更ですがTwitterで更新報告とかやってみようと思います。プロフィールにアカウントは乗せましたのでお好きにどうぞ。
まぁ、イカのことかFGOの事しか呟いていないアカウントなんですけどね!今後は作品の進捗状況とか呟いてみたいですねー。