久々にイカやったら熱が入ってしまい執筆を忘れていたぜ...(正直)あのゲームあと5分あと5分で気づいたら一日終わってるんだもんなー。
リカバリーガールの元で課外授業をすることになってから、自分にはいくつか課題が与えられた。
まずは補習について。今回寮制となった事を存分に生かし、インターン組には0限が追加された。朝弱い麗日に蛙吹よ、すまない...しかも単位の関係上休めないヒーロー基礎学の演習のある日に限って8限9限の追加もすると言うのだから本当にすまないとしか言いようがない。まぁ自分には10限居残りも追加されているため今はどちらかというと同情気味に見られていたが、その視線が怒りに変わるのもそう遠くないだろう。
次に小テストについて。月に一度、定期テストとは別に小テストが課された。これは元々はインターン生用の制度だったようで、職員室で話を聞いたときはプレゼントマイク先生が「無駄にならなくて良かったぜー!」と言っていた。
その二つの課題を乗り越えた先に、本命のリカバリーガールの課外授業がある。週2日と日曜日に4限が終わってからのリカバリーガールの病院巡りに同行する事を許された。まぁ、俺が陰我の組織に命を狙われる可能性を鑑みて、病院近隣のヒーローが有事の際に直ぐに急行できるように場を整えてくれているらしいが。
そんな訳で初めての課外授業、行先は愛知にある国立個性治療研究所病院。リカバリーガールの第2の本拠地だ。
「研究所なのに病院なんですね。」
「治療個性は貴重だからね。治療と研究を一緒にやろうって腹さ。ま、とりあえずここで実習しつつあんたの治療技のデータを取るよ。あんたの個性がなんかの薬や医療器具に応用できるかもしれないからね。」
個性の科学への転用とは考えつかなかった発想だ。
そういえばNARUTOの続編BORUTOには傷を治療するスプレー状の科学忍具が登場している。それなのに発想がなかったのは俺の落ち度だ。もっと早くこの事に気付いていたら救えた命もあったかもしれない。
そんなマイナス思考に陥っていたのに気付いたのかリカバリーガールは注射器状の杖でぽかりと俺の頭を叩いて来た。
「過ぎたことをウダウダと悩むんじゃないよ、男だろうに。」
「...ですね。ありがとうございます、リカバリーガール。」
さて、過ぎたことは過ぎたことだ。日本の最新医療現場にいるのだから、雄英の名に恥じない振る舞いを見せなければ。
「さ、とりあえずここだよ。挨拶しな。」
リカバリーガールの顔パスで通されたのは医局だ。ドラマでよく見るお医者さんのデスクのあるあの部屋だ。ちょっと感激である。
「凄いところまで顔パスで入りますね。セキュリティとか大丈夫なんですか?」
「そ、こ、は!最新式の市民ID管理セキュリティが搭載されているので全く問題はありません!」
黄色のメガネをかけた女性が後ろから声をかけて来た。
「リカバリーガール、それとメグルですね!話は聞いてます。どうぞ中に!」
その女性はどことなく発目と同じ匂いを感じる。つまり若干どころでない迷惑とともにかなりの利益を与えてくれる人であるということ...か?
いや、いきなり発目と同類扱いはこの女性に失礼だ。心の中で謝っておこう。ごめんなさい。
「それでは改めまして、私、
「よろしくお願いします、白鳥さん。メグルです。」
「このお嬢ちゃんは少しそそっかしいけど優秀だよ。」
「そそっかしいは余計ですよ、リカバリーガール。ま、優秀なのは当然ですけど!」
医局で細かい書類にサインした後で病室へと案内される。
治験に協力してくれるという患者さんの元へだ。
「個性治療の治験って協力してくれる人少ないんですけど、今回は説得が楽だったそうです。メグルには実績がありますからね。」
何が身を助けるかわからないものだ。その時その時には全力を尽くしていただけなのだが、その積み重ねが信頼を作る訳なのだなぁ。
「それでは、病室にご案内します。個性因子測定機器やらでちょっとごちゃごちゃしてますけど、治療に影響はないですよね?」
「ええ、精神エネルギーと身体エネルギーを混ぜたものを患者の患部に流し込んで自己治癒能力を促進させるって技なので、そんなにスペースは取りません。」
「なら安心です。あと、万が一治療が失敗した時の為にリカバリーガールには待機して貰いますが、よろしいですね?」
「まぁ、それが妥当ってとこさね。わたしゃ構わないよ。」
「それではレッツ計測です!」
「いや、その前に患者の容態教えてくださいよ。」
「...そうでした。」
確かにそそっかしい人だ、人のことはあまり言えないと自覚はしているが。
患者は
尚、ドライブレコーダーによると事故の原因は男性の不注意な飛び出しらしい。そのせいで慰謝料は大して貰えず、治療費を少しでも賄える治験に協力することを決意したのだとか。
「着きましたよ!」
病室の中に入る。そこには所狭しとなんだかよくわからない機械が置かれていた。
ベッドで寝ている手長さんもどこか困惑気味だ。
まぁ、そういった心配を無くすのもヒーローの仕事だ、頑張ろう。
「それでは、個性治療の治験を始めたいと思います。こちらが今回の治療を担当する...」
「メグルです。売り出し中のヒーローやってます。今日はよろしくお願いしますね、手長さん。」
「これはどうもご丁寧に...ん、メグル?」
誠に遺憾な別名を思い出される前にとっとと治験を済ませてしまおう。
「ささ!メグル、手長さん、機材を接続しましょうねー。」
そう言って白鳥さんはヘルメット型の機材を俺にかぶせ、電極やらを俺の体と手長さんの体にペタペタと貼り付けた。
こんなんで測定ができるのだろうかちょっと疑問だが、まぁここは未来世界、きっと大丈夫なのだろう。
「それじゃあ手長さん、ギブス外しますね。」
テキパキと作業を終えた白鳥さんは「あとはMCTの角度を合わせて、準備完了!始めてください、メグル!」とゴーサインを出してくれた。
「それじゃあいきますね、手長さん!秘術、掌仙術!」
写輪眼で身体エネルギーを観測、印を結んでチャクラを調律、患部である右足に両手を当てて、左手でチャクラ調律フィルターを、右手でチャクラの操作を行い、治癒能力を高めるエネルギーを浸透させる。
「おっ、おっ!良いです良いですよメグル!その調子!」
外野が若干うるさいが、この程度のガヤでどうにかなってはヒヨッコヒーローの名折れだ。
その後、なんとか集中は途切れさせることなく、無事に治療は終了した。
「治療は終了しました。どうですか、手長さん。」
「...凄いな個性治療って、足はもう元どおりだ。今すぐにでも走れるくらいだよ!」
「体力の消耗具合はどうですか?他人の治癒能力促進には患者の体力を使うってのが定説なんですが。」
「言われてみれば少し疲れたかもしれないな。でも気になるほどじゃあないよ。」
「なるほど、データ見る限りだとリカバリーガールの個性と同じ現象なんですが、余分なエネルギーを流し込む事で体力の消費を抑えているんですかねー。そのあたりも追加調査が必要かもしれません。」
「これこれ、仕事を忘れちゃあいけないよ。」
「あ、すいません手長さん!治験の協力、ありがとうございました!あとは術後検査をした後退院となります。」
そう言って白鳥さんは俺と手長さんの電極を外し、機材を台車に乗せ始めた。
「手伝いますよ、白鳥さん。」
「ありがとうございます、メグル。それじゃあMCT台車に乗せちゃって下さいな。」
「MCT?」
「あ、これですこれ。ムーバブルCTスキャナー、個性由来の技術を使った持ち運べるCTです。これから普及が進む救急救命の心強い味方です!」
「確かもう都内のいくつかの区で救急車に搭載が始められてるって話だよ。」
「へー、技術の進歩ってやっぱり凄いですね。」
「本当にねぇ。」
CTといえばドーナツ状のでかいやつを思い浮かべるのだが、それはもはや過去のイメージなのだろう。根付いた文化レベルが実はお爺ちゃんだとボロが出ないように気をつけなければ。
「さ、次の治験に行きますよ!」
「あれ、手長さんだけじゃあなかったんですか。」
「そんな勿体ないことする訳ないじゃないですか!治療個性は貴重なんです。そのデータを取るためならどんな手段でも使いますよ!主に袖の下とか!」
ダーティな話にちょっとびっくり。だが聞かなかった事にしよう。それで救える命があるのなら多少の横紙破りもきっと悪いことではないのだから。
まぁ、
「それをヒーローの前で言う根性がちょっと信じられないのは俺だけでしょうか。」
「安心しな、あたしもだよ。」
「あ、今のオフレコでお願いしますね?」
「だったら言わないで下さいよ白鳥さん。」
「あはは...」
そんな出来事のあと、次の治験へと移った。
次の患者は
「メグル、落ち着きな。」
「あ、今変な顔してました?」
「妙に気張った顔してたもんだからね、つい口を出しちまったのさ。」
「あー、女性の火傷なんて跡が残りそうなもの自分の力で治しきれるかと不安になりまして。」
「それは無理ってもんですよメグル。見たところメグルの個性はリカバリーガールの個性と同様の治療プロセスなので自己治癒能力を高めるだけです。なので火傷の治療痕は残ってしまいます。ただし!その辺のアフターフォローは病院側でやるのでご心配なく!うちの病院では恒久的に使用可能な人工皮膚移植なんて技術が導入され始めてますからね!」
人工皮膚移植か...未来だなー。
「あんた、超常発生以後からの医術の変化についてレポート纏めな。その辺の医療技術に疎いんじゃないかい?」
「おっしゃる通りです。病院とは縁遠い生活をしていたもので...」
「本来いい事なんですけどねー。」
そんな事を話しているともう病室の前まで付いていた。
「では、治験2件目頑張りましょう!」
「おー。」
「...無理に付き合わんでもいいと思うんだがねぇ。」
「あ、病院で大声出す事に抵抗覚えているだけなんで。気合いは十二分にあります。」
「ノってるのかい、これはいらん口出ししたね。」
白鳥さんがドアを開けて挨拶をする。同様に自分も挨拶をした、出来るだけ頼れるヒーローの姿に見えるように気を張って。
すると、「あ、ヴィラン潰し」とすぐにバレてしまった。ヘコむわ。
だが、その異名に怯えられてもアレなのでしっかりしよう。
「今日は1人の治療ヒーローとして来ていますのでご安心を、現在売り出し中のヒヨッコヒーローメグルです。」
「知ってます、将来有望な若手ヒーローの卵!私、ファンです応援してます!」
「お、予想外の反応です。」
「特にあの
「まさかのバイオレンス⁉︎」
「色々聞いても良いですか?」
「え、ええ。治験の準備が終わるまでならお相手しますよ。」
「準備終わりました!」
「「早ッ⁉︎」」
花野さんとは私的な会話することなく治験は始まった。今回はMCTを使わず高精細カメラを使うとの事で、機材準備に大して時間がかからなかっのだそうだ。
「会話は、またの機会にですね。」
「はい。期待してますね?」
年上女性からのアプローチとは、ちょっとクラっと来そうだ。まぁ顔面偏差値高すぎる1-A女子陣を見慣れてるので今のところは大丈夫なのだが。
さて、電極ペタペタと貼られヘルメット装備したので、治療の時間だ。花野さんの右腕に付いている対菌フィルターの上から両手を当てて掌仙術を使用する。フィルターの上からではチャクラの通りが若干悪いが誤差レベルだろう。
調律したチャクラにより火傷により傷ついている真皮の自己治癒能力を促進する。花野さんが「暖かい...」と呟いたのが印象的だった。俺の手はそこまで暖かいのだろうか。火遁チャクラの影響か?
「はい、終わりました。痛みとかはありますか?」
「いえ、全く。」
「疲れとかはどうですか?」
「言われてみれば、少し疲れたかもしれませんね。」
「その辺は術後検査で詳しく調べましょう。さ、次の治験です!」
その後3件ほど患者の治療を行った。それが終わってからはリカバリーガールの治療の見学だ。俺のデータの解析が終わるまで繊細な個性のコントロールを写輪眼で見て学ばせて貰った。
こればかりは自分が数をこなして学ぶしかないと理解したが、それでも得ることができたものはゼロではなかっただろう。特に体力のデッドラインに関しては実際に死者を出す訳にはいかないのでしっかりと見て学んだつもりだ。
実際には点滴を打てる施設までの所要時間などを考慮して体力のデッドラインを設定し、優先順位をつけて傷の治療をしていくのだとか。治療系ヒーローへの道は大変だ。
この病院にいる負傷者の治療を全て終えたあたりで、リカバリーガールの携帯に連絡が来た。どうやらデータの解析が終わったようだ。
医局に戻り白鳥さんから話を伺う。
「では!解析結果をお伝えしますね!メグルの掌仙術はリカバリーガールの治癒と概ね同じものでした。ですが違う点がいくつか。まずは熱について。メグルの掌から発せられたエネルギーに微弱な熱エネルギーや電気エネルギーなど、人によって異なるエネルギーを含まれていたという事。心当たりはありますか?」
「...はい。エネルギーの調律が万全でなかったから、そのエネルギーロスが熱や電気として現れてしまったんだと思います。」
「なるほど、つまりメグルがへっぽこだったという事ですね!」
「もうちょっと言い方を考慮しては貰えませんかね!」
「事実だろうに、しっかり受け入れな。」
なんか釈然としないが、確かに事実は事実だ。受け入れよう。
「次にテロメアの短縮について。細胞の老化に関するものですが、リカバリーガールの治癒と比較してその短縮率が僅かに小さかったという結果が得られました。これはリカバリーガールの治癒とエネルギーの質が異なることが原因だと思われます。まぁ誤差レベルなんですけどね。」
「つまりちょっとだけ体に優しいと。」
「今はそんな認識で構いませんよ。ただ、この現象については追跡調査が必要なので、また今度時間のある時にでもまた病院にいらして下さい。」
「わかりました。」
「そして最後に!」
シュバーンと格好付けて勿体ぶる白鳥さん。テキパキした作業からできる女性のイメージが付いていたのだが、厨二治ってないタイプの人だったのか...まぁ仕事ができて受け入れてもらえているのならいいのだろう。きっと。
「私の個性、鑑識眼で見た結果、メグルの身体エネルギーと個性エネルギーを混ぜたエネルギー、チャクラはこれまでの科学で観測されたことのない未知のエネルギーであることがわかったのです!個性エネルギーと呼称されていたものの1段階先のエネルギー!しかもこれまでの結果から多種多様に応用可能である事は明白!...ちょっとモルモットになりません?生活は保証しますよ?」
「なりませんよ。なんで苦労して手に入れたヒーローへの特急券を放り出さなきゃいけないんですか。いや、研究にはできる限り協力しますけど。」
「言いましたね!約束ですからね!」
手を掴んでぶんぶんと振ってくる白鳥さん。可愛い。けど大人の女性のやる事じゃないな、可愛いからいいけども。
「これからも研究協力お願いしますね!メグル!」
そんな言葉とともに、初めての実習は終わった。
「あ、このデータは個性研究論文誌と個性医療研究ネットワークに上げておきますので、必要な時にはそこからダウンロードして下さい。どっちも無料なので。」
「あ、ありがとうございます。」
論文誌が無料なのか。これは初めて知った。便利だなー。
つまりレポートの内容にこれを使えという事か、辛い。
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帰りの電車にてリカバリーガールと少し話す。
「どうだったかい?個性医療って奴は。」
「今回は治験ばっかりですからなんとも。でも、病院での活動はお医者さん達の十全なサポートあってのことですから、鉄火場での治療とは大分違うなと思いました。」
「そもそも病院で経験を積む前に鉄火場での治療経験がある事自体がおかしいのさ。その経験は大事だけれど、それに囚われちゃあいけないよ。まだあんたには治療の基礎になる経験が足りてないんだから。」
「それに知識もですね。」
「ま、おいおい学ぶがいいさ。あんたはまだ学生で、子供なんだから。」
「...はい。」
子供扱いは少しムっとなるが、実際リカバリーガールの経歴から見ると自分は若輩なので今は受け入れよう。
まぁ、そのうち自分の力で子供扱いを払拭してみせるが。
そんなちょっとした覚悟を決めたものの、特に問題はなく一日は終わった。
さて、影分身勉強法にてレポートと予習と復習を並行して行わなくては。やる事が山積みだがチャクラが続く限り何とかなる!
出てくる色々はフィクションです。でもフリーの論文サイトは色々あるので知識欲が止まらない人は覗いてみるといいかもしれませんねー。