中古で買おうにもPS2がお釈迦になっているのでWA4、5はプレイするのを諦めていた自分ですが、ようやく少し空気を知れた次第であります。
その日は、あいにくの雨だった。
日曜日、リカバリーガールと共に病院巡りをしていた俺は東東京の方まで足を延ばす事となった。
病院での治療もスムーズに終わり久々に早く帰れると思ったその時、街に言いようのない違和感を感じた。それはリカバリーガールも同じだったようで自分に「ちょっと見てみな」と言ってくれた。
そうして、写輪眼を発動した俺の目に映った街は誰かの身体エネルギーに侵されきっていた。
「街が、終わってる...?」
第一印象での言葉であるが、的を射た表現だと自分でも思う。
この土地は、何かが終わっている。
周りにいる人たちも、何かが変である事を察していたのだろう。キョロキョロしている人がかなりいた。
街に個性由来のエネルギーが浸透していると近隣のヒーローと警察にすぐ通報したものの、影響の範囲が広すぎることと、街の監視カメラ網にも現在は何も異変はないとのことで現在は警戒を厳にすることしかできないという話だった。
エネルギーの上を歩いている自分及びリカバリーガールに影響はない。街を歩いている人々にも影響はない。今のところ謎の個性だ。
だが、これを何かのいたずらだと楽観的に構えられるほど俺もリカバリーガールも場数を踏んでいない訳ではない。
「リカバリーガール、どうします?何がやばいのかはさっぱりですけど、何かがヤバイ事は確かです。」
「...あんたはパトロール中のヒーローと合流しな。あんたの目はこの街の異変を調べるのに必要だよ。」
「リカバリーガールは?」
「あいにくと今のあたしには最前線はキツイさね。大人しく病院で待機させてもらうよ。...何かが起こった時、人が集まるのは病院だからね。」
「ありがとうございます。リカバリーガールが後詰にいるなら安心です。」
「感謝するこったないよ。さ、行きな。時間がどれだけ残っているかはわからないんだからね。」
「はい。」
近場の高いビルを登り街全体を見渡す。どうやらこの個性の範囲は半径数キロ程の超大規模個性のようだ。
こういう時の犯人の探し方は中心を見るのがセオリーだと授業で習った。なのでその方向を向いて見ると、思いもよらない人の組み合わせが見えた。
「あれは、センチピーダーさんと...坂井?」
ワイヤーアロウでビルからビルへ飛び移ってセンチピーダーさんの元へ急ぐ。何やら今回の事件に絡んでいそうだと睨んだからだ。雨が鬱陶しいがまぁそれは今はいいだろう。雨には何かの身体エネルギーは見えない。無視して良いはずだ。
センチピーダーさんと坂井が路地裏に入った所でようやく追いつけた。上から驚かせてやろうかと思った所で違和感を見つけた。
路地裏に身体エネルギーだけの何かがいる。しかもその色は街を侵している身体エネルギーのものと同じだ。
だが二人を害そうとする気配は感じられない。むしろただ見守っているかのようだった。
「一体何が起こってるんだ...?」
今はただ、いざという時の為に警戒しつつ耳を澄ませるのみだった。
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僕には父親がいない。母さん曰く、妊娠が発覚する前に別れて以来連絡が取れなくなってしまったのだとか。
それを理由に小学校中学校といじめを受けていたが、僕の個性“霊化”によりちょくちょく反撃をしていたのでそれほど酷くはならなかった。
だが、それが故に友人というものとはとことん縁がなかった。個性を気味悪がられたからだ。まぁ、欲しいとすら思わなかったのだが。
でも、高校に上がってから彼女に出会った。
天真爛漫な笑顔、小柄で可愛らしい容姿、そして何よりも「一緒に新聞部やりましょう!」と言い放って僕を振り回す時の楽しそうな姿。
彼女と友人になった。それから世界は広がった。彼女をきっかけに友人が増えた。
まるで世界に色が付いたかのようだった。彼女と共に笑って、怒って、また笑う。そんな日々は僕の宝物だった。
彼女と出会えた事は、僕にとって最高の奇跡だった。
でも、それが崩れ去るのはたった一つのアプリからだった。
友人に勧められて始めた占いアプリ。当たると評判だが写真と名前を必要とする妙なアプリだった。まぁ占いに必要なのだろうとタカをくくって本名で突撃してみたら、驚く事が起き始めた。
運営の占い師さんからメッセージが届き始めたのだ。
それは毎日のちょっとした事だったり、テストの内容の予測だったり、或いはいじめ被害者になりそうなクラスメイトの情報だったり。
次第に僕はその占い師とのメッセージに夢中になった。彼は未来を見ているのだと思えて、興奮したのを覚えている。
そうして十分な信頼を育んでから占い師は言った。
言われた通りにしなければ自分は死ぬと。
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誰かを害する様子もなく、ただそこにいる何か。センチピーダーさんと坂井は、ただ手に持った花をそこに置いて祈りを捧げていた。どこか周囲を警戒しながら。
「...覗き見はやめておくか、降りよう。」
屋上から降りながらネットニュースで記事を調べる。キーワードは坂井の通う私立高校。記事はすぐにヒットした。2日前、坂井が俺にメールをくれた日の朝に変死体が発見されたようだ。被害者の名前は
変死体とあの何か。思い浮かぶのは検出不可能だった幕張十色を殺した口封じの毒らしきモノとミラー・ヤマザキの個性だ。
陰我に関係があるとの坂井の言葉を信じるならば、幕張十色を殺した手段が霊堂にも用いられた可能性は充分に考えられる。十分に注意しよう。
ビルから降りて路地裏に入ると、祈りを終えて何かを話していたのか、坂井とセンチピーダーさんはまだそこにいた。連絡と確認の手間が省けて何よりだ。
「センチピーダーさん、坂井、こんばんは。」
「おや、メグルですか。こんな所で何を?」
「...団扇くん、お久しぶりです。」
「ちょっと調べ物をしていたらセンチピーダーさん達を見つけたんで話を聞きに来たんです。今この街に起きている異変について。」
坂井とセンチピーダーさんは、今の言葉で俺の要件をなんとなく察したようだ。やはりこの街がおかしいというのはわかっていたのだろう。
「俺の目には、そこの路地裏にいる奴の身体エネルギーが街中に広がっているのが見えています。」
「...嘘はないですね。やっぱり居るんですか、霊堂くんは。」
「霊堂鏡かはわからない。でも確かに居るよ、そこに。」
路地裏の花が備えられている場所を指差す。これでアクションが無ければただの個性の残り香だ。
だが、それは無いと確信していた。
『僕が...見えるのかい...⁉︎』
「安心しろ。見えてるし、聞こえてる。」
「...ッ⁉︎話せるんですね、声は届いてるんですね!霊堂くんに!」
「『聞こえている』だってさ。」
「霊堂鏡の個性は霊化、死んだ後でも発動していたようですね。...私たちには観測の手段はありませんが...」
「団扇くんお願いします!霊堂くんの言葉を私たちに届けてください!」
「任せろ。それと霊堂、お前のエネルギーは残り少ない。成仏する前に何を遺すべきかをしっかり考えてから話してくれ。お前の言葉は多分、多くの命を救う事ができるから。」
『...わかった』と声がした。それから10分程度経ってから霊堂はゆっくりと話し始めた。
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「僕が...死ぬ?」
そのメッセージを一瞬見間違いかと思った。だが何度見てもその言葉は書かれている。
次に占い師のからかいかと思った。そんな事をする人ではない。占い師は、未来に関してはとても誠実な人だったからだ。
最後に、これが事実だと理解した。
「僕は、何をすれば良い?」
『簡単な事だ。君の個性である家の戸締りをしてくれ。それだけでいい。』
『それだけか?』
『ああ、それで君の運命は変わる。』
『...わかった、やってみる。』
実際指示は自分には簡単だった。霊化の能力、すり抜けと半実体化を使えばドアや窓の鍵を閉めることくらいは簡単だったからだ。
そして次の日、あるニュースが耳に残った。
逃走中だった凶悪
何か関係がある。そう直感が告げていた。
メッセージで占い師に連絡を取った。『この自殺はなんなのか』と。
占い師は言った。『あの殺人鬼は君と君の家族を殺すはずだった男だ。だがあの日、逃げ込むことの出来た筈だった家が閉まっていた為にその運命は変わった。』と。
『あの男は君のクラスメイト達を殺し、逃げ延びる卑劣な男だった。だが君の行為でこれから死ぬ筈だった多くの人は救われた。それは誇るべきことなのだよ。』
『でも、それは人殺しと同じ事だよ!』
『あの男には、本来破滅の因果はなかった。つまりあの男には罰が訪れなかったのだ。それを是とするのか?』
その言葉に、少し迷った。
『まぁ、どのみち君がした事は罪に問われる事はない。君はただ、鍵を閉めただけなのだから。この事件に犯人がいるとすれば、それは法の裁きから逃げた男であり、君に命令をした私なのだよ。』
その言葉を最後に、会話は終わった。
自分のやった事で一人の人の命が終わった。でもその実感はなかった。奇妙な感覚だった。でも、心の何処かはしっかりと悲鳴をあげていた。
そんな事があったから翌日の学校では上の空で、そんな自分を心配するであろう彼女のことをすっかり忘れていた。
「どうしたんですか霊堂くんそんな上の空ではスクープを見逃してしまいますよ?」
「坂井さん...なんでもないよ、なんでも。」
「嘘、ですね。」
坂井誠は嘘を見抜く。そしてその嘘に対して真っ直ぐに踏み込んでくる。
「話して下さいよ、友達じゃないですか。」
「もし、だけどさ。」
友達という言葉、高校からの付き合いだがその言葉は本当に心地が良かった。だからつい、こんな言葉をこぼしてしまったのだと思う。
「もし、僕の些細な行動で死んでしまった人がいたとしてさ、でもその事で誰も困ってなんかない。そんなとき僕はどうしたらいいと思う?」
「その仮定ならだんまり決め込んで良いと思いますよ。でも...」
「霊堂くんは今、困ってます。」
「...え?」
「中学の友達に面白い人がいて、その縁で私も人が困ってるかそうでないかくらいは見抜けるようになったんです。凄くないです?」
「...僕が、困ってる?」
「はい。私にはそう見えました。」
彼女の言葉は、僕の心の自分ですら気付けなかった迷いを見事に撃ち抜いてきた。
そうだ、確かに僕は今困っている。伝えられた現実に戸惑っている。でもその事を誰かに相談するだなんて思いつきもしなかった。
「だから、誰も困ってないなんてのは嘘です。」
「そうなのかな...」
「そうなんです。」
「だから話して下さい、霊堂くんがどうして困っているのかを、例え話じゃなくて霊堂くんの言葉で。友達として、力になりますよ!」
その言葉がきっかけとなり、ポツポツと話した。占いアプリから始まる奇妙な事件の事を。
正直、勢いに任せてしまった感はあった。でも後悔はしていない。坂井誠という人物を信じてみようと思ったのだ。
僕の世界に色をくれた、かけがえのない友人を。
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霊堂からの言葉を伝えた後、自分たちは霊堂の家に向かった。彼の残した最後の言葉を確かめる為に。
「それで、坂井たちのあらましを聞いて良いですか?」
「ええ、始まりは坂井さんに位置情報と音声データのメールが来たことがきっかけでした。メールが届いたのは奇妙な事に彼の死から約半日経ってからですが。」
「でも、意味はわかりました。奇妙な占い師と連絡を取り合っているなんて事を言ってましたから。」
「その音声データには何が?」
「くぐもった声でしたけど、誰かと霊堂くんが話しているようでした。聞き取れた言葉は少ないですが、その中にあったんです。陰我というワードが。」
それが彼女があのメッセージをよこしたきっかけだったのだろう。
高校でも新聞部をやっている坂井なら、ネットに流れている陰我の情報を持っていてもおかしくはない。
「それから団扇くんにサー・ナイトアイを紹介して貰って、センチピーダーさんに護衛して貰いながら事件の事を調べているのがさっきまでの私たちです。」
「音声データを流した事が陰我にバレている可能性を考えると、報復の可能性は高いですからね。」
「ちなみに音声データの解析は?」
「行いましたが、案の定警察のデータベースに登録のない音声でした。現場近くの監視カメラを調べても、おかしな挙動をした人物はいなかった。やはり狡猾ですね陰我たちは。」
「そもそもなんで霊堂くんが陰我と話す事になったのかがわからなかったですけど...」
「ああ、それは間違いなく残ってる。霊堂の家に。」
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坂井さんに話をして少しの日々が経ってから、再び占い師から連絡が来た。
助けて欲しい事があると。
『また僕を利用する気か!』
『協力して欲しい事があるだけさ。これからの1000年の繁栄の為に。君のお父さんのようにね。』
その言葉に僕は少し揺らいだ。占い師に会ったことのない父の事を聞きたい気持ちがあったからだ。
だが、芯はもう間違わない。彼女に教えてもらったからだ。僕の困っている事と、僕がやりたい事を。
『メッセージのやりとりじゃあもうお前を信用できない。会って話がしたい。』
『構わない、今近くにいるからね。だがこんな深夜に学生である君を連れ出すのも忍びない。明日の朝5時にマモーマートから東に二本行った所にある路地裏で君を待とう。』
占い師は時間を開けてきた。だからその間に出来る限りの準備をした。
確かな証拠である占いアプリのメッセージを全てスクリーンショットして画像としてパソコンに保存した。これで万が一の保険はできた。
後は占い師と直接話そう。全てはそれからだ。
朝5時、緊張で眠れなかったが頭は冴えている。大丈夫だ。
携帯端末を録音モードにして胸の隠しポケットに忍ばせてから路地裏に向かう。
「やぁ、待っていたよ霊堂鏡くん。」
「あなたが占い師さんですか。」
そこにいたのは、二十歳くらいの男の人だった。特に容姿に目につく所はない。平凡な男だ。見た目だけで判断すれば。
雰囲気だ。雰囲気がどうしようもなく終わっていた。それ以外の表現は思いつかない。
だが臆してはならない。決めたのだから。
「いくつか聞きたいことがあります。」
「構わない、なんでも言ってくれ。」
「まず、どうして僕だったんですか?」
「手の届く所に君がいたからだ。まぁそれが彼の息子だったのは嬉しい誤算だったがね。」
「父さん...」
「気になるかい?」
「いいえ、今はいいです。」
一旦深呼吸をする。覚悟はもうとっくに決まっている。
「どうして、運命を変えてまで命を守ろうとしたんですか?あなたは未来に対してあんなにも真摯だったのに。」
「...彼は私の守る運命を破壊する可能性を持っていたからだ。彼が殺すかもしれなかった人の中に、死んではならない人がいた。その人が死ねばこの国は割れ、多くの国がそれに干渉する事でこの国を舞台にした大戦が勃発する。」
「その未来を事前に防ぐために、殺人を行なったんですか?」
「そうだ。」
「殺人であることを否定したりもしないんですね。」
「それが私、陰我の取るべき責任だからな。この世界が救われるその日まで我を陰とし守り続ける。それが私が今生きている意味だからだ。」
強い言葉、強い意志、それに流されそうになる。
でも、それはダメだと心が叫んでいる。だから言葉にしよう。
「たとえそれが世界的に見て正しいのだとしても、僕はそれに賛同できません。」
「...何故だい?」
「友達と話して、気付いたんです。僕が死なせた人にも家族がいて、友人がいて、未来に繋がるだれかがいた事に。それは運命なんかで括れない奇跡なんだって。」
「だから僕は、今ここにあなたを説得に来ました。」
「...説得か、それは予想外だ。」
「あなたの今までの罪を公表しろとは言いません。でもあなたがこれから命を奪う事をやめてほしいんです。」
「それは出来ない。」
「あなたの全てを否定する訳ではありません。命を奪う以外の事なら、僕は進んで協力します。他にも友達に声をかけて、多くの人手を集めてみせます。だから、命を奪う事だけはやめて欲しいんです。」
「...わかった、もう良い。」
「お前は、どこかで交わったのだろうな。霊堂鏡は友人も無く、会ったことのない父親に依存する筈だった。故に私達の仲間となってくれる筈だったのだが...」
「それはどういう...?」
「私と君の道はもう交わらないという事だ。アプリの会話データはこちらで消しておく。もう金輪際君に干渉することはない。」
「僕が、あなたと会話した証拠を残してるとしたら?」
「...脅すつもりか?」
「ええそうです。ここであなたが逃げるなら、あなたの事をヒーローに公表します。僕を使って一人の人を殺した、未来予知の殺人犯として。」
「そうか、なら仕方がない。」
占い師、陰我はその両手を合わせた。
すると、男の体から蓮のような花は産まれた。
それがきっかけとなったのか、突然体が痺れて動かなくなった。
「何だ...コレ...⁉︎」
「苦しませるつもりはない。眠れ。」
チクリと首元になにかが刺さった。
そしてそのあとすぐに花と男は視界から消えていった
それが僕、霊堂鏡が生前に見た最後の光景だった。
それから意識が再浮上するまでにはかなりの時間がかかった。
何故か霊化状態だったが、自分の体はすぐそこに見える。だから僕は体に戻ろうとして。
戻れないという事実に戦慄を受けた。外傷は見えない。なのに戻る事が出来ない。それはつまり...
『僕は...死んだのか...?』
その事実を受け入れるのには暫く時間がかかった。
それから出来たことはそう多くない。携帯電話を操作して、最も信頼する彼女に録音データと位置情報を送ることくらいだ。それを終えた時点で、僕の体力は底をついてしまったからだ。
それでも消えたくない、そんな思いから何もせずに留まり続けた。
警官たちが僕の遺体を調べるのを見た。
母さんが僕を見て泣くのをじっと見た。
彼女が警官と揉めながらも僕の所にやってきたのを見た。
そして、彼がやってきた。
赤い瞳で僕を真っ直ぐに見る彼が。
『僕が...見えるのかい...⁉︎』
「安心しろ。見えてるし、聞こえてる。」
そうして彼は僕にチャンスをくれた。ただ殺されただけの僕に何かを残すチャンスを。
彼の提案でじっくり考えて、そして言葉を紡いだ。
僕が
「『10000454...パソコン』」
それを伝えるだけで消えそうになるくらいに辛かったが、どうにかもう一言だけ伝えたい。だって彼女は僕の恩人だから。僕の人生に色を付けてくれた初めての人だから。
『君に...会えて...』
よかった、そう伝える前に僕の意識は消えかけて
「君に会えてよかった。」
でも彼は、最後の言葉を汲み取ってくれた。
それが嬉しくて、僕はもっと彼と話したかったなんて思いながら眠りについた。
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写輪眼には見えていた。霊堂の意識が消える瞬間に周囲の土地からエネルギーを集め、彼のいた場所から盛り上がるように現れたボロボロの騎士の姿が。
一番近くにいた俺に対して向かってくる。おそらく何も考える事ができないのだろう。その左手の剣は真っ直ぐで、しかし致命的なまでに遅かった。
手を添えて剣を逸らす。剣に触った瞬間にエネルギーが吸われたような感覚があったことから、放っておけばこいつはただ消えたくないが為に人を襲い続けるものだったと理解してしまった。
「せめて安らかに眠れ、霊堂鏡。」
腹に向けて桜花衝を放つ。直撃した騎士は路地を吹っ飛び、崩れ落ちた。桜花衝のダメージを再生するエネルギーもないのだろう。崩れて、溶けて、消えていった。
「団扇くん、何を...?」
「成仏させた、それだけだよ。」
「そうですか...ありがとうございます、団扇くん。」
見ていた二人は、俺に何も聞かないでいてくれた。
「さ、行こう。霊堂の家に。パソコンは多分そこだ。」
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「最低一名の殺害の確定。メッセージを用いた間接的な殺人教唆の証拠。音声サンプルの入手。そして手駒を集めるのに使っていたアプリの情報...よくやったセンチピーダー。これでようやく捜査のスタートラインに立てる。」
「はい。...ですがこれは一人の勇気ある少年の犠牲が導いた結果、喜んでいられるばかりではありません。」
「ナンセンス。そんな時こそ笑うのがヒーローだ。」
「そうですね、ナイトアイ。」
ナイトアイは義手を装着し、リハビリを行いながらセンチピーダーと会話をしていた。
「だが、今回も団扇が絡むか。恐ろしい偶然...な訳が無いな。」
一度二度ならば偶然と割り切れる。だが彼には明らかに事件の方から向かっていっている。
何かの作為を感じざるを得ない。
「...オールマイトのようにどこにでも行くのではなく、必然的にそこに居る少年か...一体何が彼をそうさせる?」
「ナイトアイ、それは考えすぎでは?」
「...だといいんだがな。」
元オールマイトのサイドキックは、この時点で何かの違和感を感じとっていた。
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霊堂の家から証拠のデータを回収した後、センチピーダーと坂井とは別れて自分は病院で待つリカバリーガールの元へと戻った。
「お疲れさん。街の異変も収まったようだね。」
「はい。原因は
「そうかい。...終わっていたのは街ではなく、一人の命だったんだねぇ。」
「ええ、俺は街を覆う死を、街自体の死だと勘違いしていたようです。まだまだ目の方も精進が足りませんね。」
「それに気付けただけ上等さね。さ、戻るよ。」
「はい。」
その時、携帯から着信音が鳴り響いた。
「すいません、電話みたいです。」
画面には知らない番号が表示されていた。無視するか一瞬迷うところだが間違い電話だったらコトだ。出よう。
「もしもし?」
「あの!先輩の携帯でしょうか!」
「その声、時遡後輩?なんで俺の番号知ってるんだよ。てか声大きいぞ。」
「番号は善子さんに聞きました!それより大変なんです先輩!」
「善子さん、陣痛が始まりました!」
その知らせは、俺を驚かせるには十分なものだった。産まれるのだ、俺の血の繋がった家族が!
「...よし今すぐ行く!病院はいつものところだよな⁉︎」
「はい!」
リカバリーガールは電話が聞こえていたのか、「学校にはあたしが連絡しとくよ。家族の誕生をしっかり祝ってやりな。あと、電話のお嬢さんに落ち着きなともね。」と俺を送り出してくれた。
現在時刻は夜の10時、出産は明日の10月1日の朝早くになるだろう。
俺の、決して忘れる事の出来ない1日が始まろうとしていた。
長くなった珍道中編もこれにて終了。次回からは10月1日編となります。
えー、こんな作品にこれまで付き合ってくれた読者さんには申し訳ないんですが、10月1日編からは作者の腕で描ききれるか心配になるほどの展開となる予定です。要するに超重くなります。
なので合わないと感じた方は素直にブラウザバックアンドお気に入り削除をお勧めいたします。無理して合わない小説を読む必要は無いですからねー。
とかお気に入り削除にいちいちダメージを受けている作者が言ってみます。