再会の前触れ
文化祭まであと1週間まで迫ったその日でも、僕たちはどこか集中しきれていなかった。
それもそのはずだ、僕たちの大切な仲間、団扇くんは今なお学校へと戻っていないのだから。
「デクくん、今日も団扇くんから連絡ない?」
「うん、今日も既読つかない。」
僕は、日課となっていることを談話室で行っていた。日々の練習風景や雄英の雰囲気などを写真に撮って団扇くんに伝えるという事を。
正直、意味があるかはわからない。でも団扇くんがこのクラスから完全に切り離されてしまわないように、繋がりを守りたかったんだ。
団扇くんがいなくなってから僕たちは当然探しに行こうとした。しかし
それでもなんとかしようと僕たちは足掻いたが、最終的には相澤先生やサー・ナイトアイに任せるしかなかった。
こうして団扇くんにメッセージを送っていると飯田くんと轟くんの言葉を思い出す。
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「...僕は団扇くんの気持ちが少しわかる。僕も兄さんがステインにやられた時それしか見えなくなってしまったから。」
「あいつの場合は多分、見えすぎてるから戻ってこれねぇんだよ。俺と飯田とは違って。413人も死んで、実の母親まで死んだんだ。あいつの受けた心の傷は、俺と飯田の比じゃねぇ。だからこそ力になってやりてぇってのに...」
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飯田くんと轟くんは、復讐に心を囚われる事を知っているから団扇くんに対しての心配も深い。そんな二人でも声の届かない所にいる団扇くんにはどうする事もできないのが見ていて辛い。
僕たちはまだ仮免ヒーローの学生でしかなくて、団扇くんを探しに行くという事すら出来ないという事が分かってしまうからだ。
そんなことを考えている時、談話室に八百万さんの声が響いた。
「団扇さんの情報を掴みましたわ!」と
「マジかヤオモモ!」
「団扇大丈夫なの⁉︎怪我とかしてない⁉︎」
「あの動画で戦ってたのはやっぱり団扇だったのか⁉︎」
「落ち着いて、三奈ちゃん、上鳴ちゃん。百ちゃんが話せないわ。」
興奮冷めやらぬ一同をなだめる蛙吹さん。僕も急いでその輪の中に駆けつけて、耳をすませる。
「実はお父様にツテを使って調べて貰っていましたの。ですが分かったことは少ないです。団扇さんは学校に来なくなってから大企業サイガの社長邸宅に何度か訪れているようですわ。その時に同行していたのは才賀の御曹司とその付き人、あとは情報のない二人の男女でしたわ。」
「てことは、団扇は無事って事だよな!」
早合点して喜ぶ切島くんたち。だけど僕にはそう思えなかった。身を寄せているのでなく何度かやってきただけなのなら、それはつまり...
「団扇さんは、その方々と
沈黙が場を支配する。つまり団扇くんはあの日からずっと...
「戦い続けてるってのかよ、
それは、団扇くんの決意の固さを示しているようだった。
「...私は、この事を相澤先生に伝えて良いものか迷っていますわ。伝えれば団扇さんは不法なヒーロー行為により仮免許剥奪は最低ライン。最悪は、
皆が各々に悩み始める。でも僕の考えは決まっていた。
「僕は言うべきだと思う。相澤先生に。」
「緑谷、お前は団扇がヒーローになれなくなっても良いってのか!」
「今止めないと、団扇くんはきっと人殺しをする。」
それは、入学してから団扇くんと付き合っていた僕だから言える事だった。団扇くんは優しい、心の底からそう言える。
けれど、それだけじゃないのだ。団扇くんが優しいのは、助けを叫べない誰かの為にいつも全力だったからで。
そんな人が、多くの犠牲者の助けてくれという声にならなかった声を無視できる訳がない。
「俺は緑谷の意見に同意する。あいつが人手を集めて動いてるってのはそうじゃないと勝てないからだろ。でもその人手の中に実力者のヒーローを入れていない。それってつまり、そういう事だろ。」
「僕も緑谷くんの意見に賛成だ。彼がこっち側に戻ってこれるうちに手を打つべきだと思う。...過ちを犯してからでは遅いんだ。」
「轟くん、飯田くん。」
その意見に反対の声はなかった。
「わかりました。私から相澤先生には伝えておきます。...緑谷さん、ありがとうございました。」
「...え?なんでお礼言われたの?」
「本当に友人のことを思うのなら、時に非情にならなくてはならない。そんな当たり前のことをわたしは見失いかけていましたから。」
「そっか、それならどういたしましてかな?」
その言葉と共に、八百万さんは教員棟へと向かっていった。暗いから送ると言った轟くんに連れられて。
「なぁ、デクくん。」
「なに、麗日さん。」
「団扇くんの為に、私たちなにができるんやろね...」
「わからない。でも、出来ることをしっかりやろう。それがきっと最善の道だから。」
その言葉には、自分を騙す嘘が少し含まれていた。
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北海道の山奥に存在する私有地、立花個性訓練合宿場。そこは、個性訓練施設とは名ばかりで陰我の私兵の訓練施設となっていた。
「無線の調子はどうだ?」
「問題ねぇぜ。良いもんくれたな才賀の親父さんも。」
「ケッ、なんで親父がこんなもん用意してんだよ。」
「それは、善一郎様がこういった行為に理解があるという事なのでしょう。」
「かっかっかつ、人に歴史ありという所じゃの。」
「良し、全員問題ないな。行くぞ。」
合図と共に施設の正面からアセロラが門を破壊して突入し、裏手のフェンスを飛び越えて俺が侵入する。
少ししてからアセロラの影からあるるかんを装備したフランさんと才賀とジャンクドッグが現れる。正面からの侵入者の人数を誤魔化すちょっとしたトリックだ。これが結構役に立つとは本人達の談である。
門に殺到した警備員たち、各々の個性を使ってアセロラを倒そうとしているようだが、アセロラはどんなダメージも即座に回復する不死身の身体だ。拘束系の個性でも怪力によって無力化するのは難しい。
だが、その怪力を活かした近接戦闘スキルが身についていないので戦力としては若干使い辛い。本人曰く「心臓がないのだから仕方なかろう」との事だった。天鳥船により木のみでなく心臓ごと吹き飛ばしてしまった事が原因のようだ。
心臓がないまま動き続けられる化け物っぷりに、コイツはヤバイと感じざるを得なかった。どうやったら死ぬんだコイツは。
まぁ、味方として死なないというのは心強い。今はアセロラについて考えるのは置いておいていいだろう。
正面口での激闘を横目に、俺は定石通り屋上から侵入する。内部の見取り図からいってこの合宿場の所長がいるのはこの建物で間違いない。所長を洗脳してとっとと終わらせよう。
ほどなくして所長室へとたどり着く。屋上の扉は犠牲になったがセーフだろう。
ちょっと強めのノックによりドアをこじ開け、中に押し入る。
中では、襲撃に慌てて資料を纏めている最中の所長がいた。
「な、なんだお前は!」
「ヴィラン潰し。」
唖然として俺と目を合わせる所長。どうやら今回は楽に済みそうだ。
「自白と、証拠のデータを用意しろ。お前は
「...そうだ、全ては正しき運命のために。」
「そういうのは聞き飽きた。さっさとパソコンのロックを解除しろ。ああ、後で警察が来てもわかるようにパスワードは付箋に書いとけ。」
そうしてPCを操作する所長、しかし画面が奇妙に輝いたと思ったら所長は倒れ臥した。
念のため一歩離れる。すると、「こっちにおいでよ」と少女の声がPCから響いた。幻術返しを意識しながら画面を見てみると、そこにはSFチックな装いの少女が描写されていた。
「お前、何者だ?」
「わたしはわたしだよ?」
「...目的は?」
「あなたの情報収集。あなたはこれまで私が配置した様々な仲間たちを一蹴した。その原因が知りたくて、わたしは来た。」
「陰我の組織の、指揮官クラスッ!」
コイツがここにいるのはチャンスだ。指揮官クラスを潰せばそれだけ向こうの指揮系統は乱れる。
殺してでもここで潰す。そう決めた時だった。背後にあるドアがぶち破られたのは。
反射的に机を盾にする位置に移動する。さっきまで俺がいた場所を貫くモノがあった。射撃系の個性が一人、飛ばしているのは爪。
次に近接型が入ってくるのが足音でわかる。足音から、おそらく二人。
思考は一瞬。こういう時はいつもの手だ。
「影分身の術!」
影分身の術のメリットは、いくつかある。単純に人数が増えること、経験をフィードバックできること、そして、
印を結ぶという一手間を遮蔽物で守っているときには、これはかなり有効なのだ。
作った分身は3体、天井と左右の壁に発現させた。移動術を使える体勢で。
「「「桜花衝!」」」
射撃型の爪の男には迎撃されたが、近接型二人には意識外からの攻撃はクリーンヒットしたようだ。倒れ臥す音が二つ聞こえる。
そして二人の分身は爪の射撃によるダメージで消え去った。爪の男は、かなりやり手のようだ。
だがフィードバックにより情報を得た俺にはわかる。奴の残りの弾数は六発、両手の小指と薬指と親指だ。
奴の個性は爪を即座に再生できるほどのものではないようだ。
さて、どうしたものか。
六発の射撃を撃ち切らせるのは面倒だ、かといってこの机の裏からただ出るだけでは撃ち抜かれる。
そう思考を巡らせた所で、ちょうどいいところに盾になるものがあった。
さて、敵は撃ってくるだろうか。
「...お前、悪魔か?」
「こんなので撃たないとか、お前聖人かよ。」
まさか
「クッ!」
苦し紛れに撃たれる四発の爪の弾丸を余裕を持って回避、今のは足元を狙ってのものだった。跳弾するかと思って足元を見たが、不審な動きをする事はなかった。単純に爪を飛ばすだけの個性なのだろう。
残りは、両手の親指のみ。二発程度なら回避できる、行こう。
所長ごと移動術で突っ込んで動きを見る。男は目で反応はできたものの回避は出来ず、所長を全身で受け止めた。
これで、互いを遮るものは無くなった。
両手の指から俺を狙って放たれる爪の弾丸。一発を回避した後にもう一発を叩き込むつもりなのだろう。左手の親指は俺をしっかりと狙っていた。だが、コイツにはこの術が効くだろう。練習はしていたもののなかなか陽の目を見なかったこの術が。
組む印は未巳寅。基本忍術だ。
「分身の術!」
2人に分身する俺、これで奴はどちらかから本体を見つけなくてはならない。影分身と違い全てマニュアルで動かさなくてはならないのがこの術の難しいところだが、ただ殴りかかるだけならば別段難しい事じゃあない。
当然のように回避し、拳で迎撃する男。だが拳は分身にあたる事なくすり抜けた。
「...何⁉︎」
「目くらましとしては十二分に使えるな、これ。」
分身に目隠しされた男は目以外の感覚だけで俺を狙おうとするも、そんなめくら撃ちにあたってやるほどお人好しではない。
最後の一発を回避した、これで
「終わりだと、お前は思っているな。」
分身に紛れて攻め込もうとする俺の方を、男は見ずに
「奥の手を持っているのはお前だけではない!ショットガン・タスク!」
瞬間、足の爪から放たれる10の爪弾。これは躱せないッ!
写輪眼で弾道を予測、急所に当たる四発のみを両腕でガードしあとは身体で受ける。防弾コートを抜いてくるほどの超貫通力。どんな爪してるんだコイツは。
だが、覚悟さえしていれば痛みは耐えられる。
急所にさえ当たらなければ治療もできる。
痛みで俺が止まると思って距離を詰め、格闘戦を仕掛けてくる男に合わせて、カウンターを叩き込む。
奴の攻撃は驚異だ。貫通力もどうかしてる。
だが、着弾してからの破壊力が所詮爪の大きさなのだ、バイタルパートさえ守れば致命傷は避けられる。
...腕のガードすら貫通してきたらどうしようもなかったが、そこは俺の鍛えた体がどうにかしてくれたようだ。
さて、追撃だ。相手は完全に弾切れ、こちらは10の傷を抱えているとはいえ、それは手を緩める理由にはならない。
カウンターにより倒れた男を踏みつける。
「ガハッ!」
そして見開いたその目、ようやっと写輪眼が通った。
「お前たちの他に奇襲要員は?」
「い、ない。」
「...人手不足極まれりだな。」
柱間細胞にチャクラを流し込み再生を促す。侵食が進んでいるのがわかるがもはや慣れたものだ。
十分に再生を行った所でPCへと向き直る。少女はまだそこにいた。
「...やっぱりこんな手じゃ倒せないんだ。それにまた見せてない手札が出てきた、常に想定の範囲外にいる。不思議。」
幻術返しを意識しながらPCを操作する。コントロールパネルを開いてみたが、起動しているアプリケーションに不審なものは見当たらなかった。となるとこの少女は個性由来の現象だろう。電子機械にダイブしてそれを操作する類の。
となると、証拠データは簡単に消去されてしまうだろう。目的はそれか。
さて、とりあえず有線LANを抜いてみたが、どうなるだろうか。
中の少女が欠片も慌てていないことから、無線繋がっているのだろうか。閉じ込めてPCごと殺すという手は使えないようである。
「さて、どうするかね。」
「お話しようよ、団扇巡。私、あなたの事もっと知りたい。」
「その情報を元にプロファイリングして俺を殺す戦術を組み立てるためにだろ?だれが話に付き合うかよ。」
「じゃあ、交換条件。お話に付き合ってくれたらこのPCのデータを消さないであげる。」
「...はぁ、仕方ないか。」
無線を使って才賀たちに連絡を入れる。一旦逃げ帰っても構わないと言うと、もう来る連中を全滅させたと帰ってきた。訓練施設と聞いて警戒していたが、どうやら腕利きはこっちに回してきたようだ。
「じゃあヒーローに警戒しつつ待機していてくれ。何かあったら連絡頼む。」
無線を切った後、転がっている近接系と思われる連中と所長を起こして催眠をかけておく。これで会話の最中に不意打ちを喰らうことはないだろう。
「さぁ、話といこう。」
「慎重なんだね、知ってたけど。」
「で、なんの話がしたいんだ?」
「あなたの個性が知りたいの。」
「...個性届け見ろよ、できるだろお前なら。」
「うん、見た。更新はあったけど、前は写輪眼というエネルギーを見る目、今はそれと精神エネルギーの操作との複合型って事になってる。」
「ま、どっかの魔王と戦った結果だ。ピンチで眠っていた力が目覚めたんだよ。」
「...嘘つき。」
そりゃ、馬鹿正直に全て言う訳はない
「...というと?」
「あなた、オール・フォー・ワンに力を貰ったんでしょ?何かの取引と共に。」
「奴を知っているのか...」
「うん、私あいつに殺される筈だったから。」
「...にしては、元気そうだがな。」
「そう見える?ありがと。」
「それで、お前はお前を助けた陰我への恩返しとして協力し続けてるって訳か。」
「うん、だいたいそんなところ。...なんだかわたしばっか話してない?」
「...お前が勝手に喋ってるんだが。」
「そうかな?」
「そうだ。それで個性についての話だったな。」
「そう。君の起こす多くの現象はたった2つの個性で実現できるものじゃない。そのカラクリがどう考えても分からなかったんだ。」
「...具体的には?」
「さっき使ったすり抜ける増える技と、陰我に使った瞬間移動。」
「...すまん、どっちも理屈わかってねぇわ。使えるから使ってるだけだし。」
「...自分の切り札なのに?」
「俺の学力は所詮高校生レベルなんだよ。理屈が知りたきゃ偉い学者さんでも呼んでこい。」
「あ、不貞腐れてる。」
「うっせぇ。」
クスクスと無邪気に笑う少女、何がそんなに面白かったのだろうか気になるが、まぁいいだろう。
「それで、俺は合格か?」
「うーん、微妙。まぁ次からは個性が4つある化け物として扱う事にするよ。」
「過剰なご期待ありがとよ。」
「まぁ、話してて楽しかったしちょっとだけサービスしてあげる。」
そう言って少女はPCを操作し始めた。そうして出てきたのは一つの犯罪計画書。
「これはッ!」
「これで君の次の行動は決まったね。ちなみにこの計画はもう動き出してるから、時間はあんまりないよ?」
「...行くしか無い状況に追い込む事が、お前の本来の目的か!」
「どっちでもって感じ。君が気付かないで心に傷を負うのも、それはそれで良かったし。君が見捨てたら、それはそれで行動パターンを絞りやすくなるからね。」
「何故、彼女を巻き込む。」
「君みたいな根が優しい人を殺すのは、やっぱりこういう手が一番なんだよ。それに、警察やナイトアイ事務所のサイドキックが常に彼女を護衛してる。それを理由に陰我に見てもらったら案の定、彼女は外れてた。排除しないと未来が危ない。」
「じゃ、他のデータは残ってるから、後始末頑張ってね。」そう言って彼女は去っていった。一瞬身体エネルギーが宙を通るのが見えたが、干渉する事は出来そうになかった。彼女は無線に乗って逃げ出したのだろう。
PCを調べてみたところ、犯罪計画書のデータは消されていた。それを理由に警察に動いてもらうという手は使わさせて貰えないないようだ。抜け目のない奴だ。
犯罪計画書の詳細は覚えきれていなかった。が、わかっている事はいくつかある。計画本番の日時は6日後、場所は都内にある撮影スタジオ。
ターゲットの名前は、神郷数多。
「...ナイトアイ、恨みますよ。」
所長に警察への自白の命令を再挿入。
無線で撤退開始の連絡を入れつつ携帯電話の電源を入れる。
SNSアプリは相変わらずすごい数の通知を放っているが、いまはそれを無視して神郷へと電話をかける。この合宿所から逃亡を始めながら。
「神郷、無事か?」
「いきなりなんですかメグルさん!行方不明になってるのに突然連絡してこないで下さい、びっくりするじゃないですか!」
「...無事なら良い。身辺警護の人たちに代わってくれるか?」
「嫌です。」
「...いや、何でだよ。」
「私、あの人たち嫌いです。」
「子供か!」
「子供ですよ!」
まずい、向こうのペースに引っ張られてる。一旦深呼吸しよう。現在窓から落下中だけど。
着地と同時に衝撃を逃して即座に車へと走り出す。無線からの連絡では、飛行系の個性を持っているヒーローが先行してやってきたようだ。撤退のタイミングとしては丁度いいだろう。
「いいか、よく聞け。お前の命が狙われている!本犯行は6日後の撮影時、だが陰我の手口から言ってそれ以前にも襲撃はあるはずだ!俺が着くまで死ぬ気で生き残れ!」
「え、ちょっと待って下さいよメグルさん!」という声を無視して通話を切る。無線からの連絡によると、皆車に乗り込めたようだ。後は影分身でヒーローを撹乱しつつ合流地点へと移動術で駆け抜ける。
飛行系のヒーローは、その撹乱によって追いかけるのは無理と判断し内部の被害調査を優先したようだ。ありがたい。
「団扇様!お乗り下さい!」
「ああ!」
フランさんの手慣れたドライビングテクニックによりさっと合流を果たす。そして車内で電話を再びかける。正直逆探知の可能性が高い上、陰我はあの少女という現代社会では無類の情報収集力を誇る手駒を持っている以上デメリットの方が多いが、それでも伝えない訳にはいかない。
ナイトアイへと、連絡を入れる。
「...団扇か?」
「はい、団扇巡です。」
サー・ナイトアイとの、久しぶりの会話が始まった。
出したいと思ってもなかなか出す機会のなかった分身の術のお披露目です。他にもアニメ見返して必死に印をメモした術は結構あります。まぁ、性質変化の関係上まだ出せないんですけどねー。