【完結】倍率300倍を超えられなかった少年の話   作:気力♪

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体育祭編くらいまでのプロットが終わったので、取り敢えず投稿します。投稿速度は落ちますが、プロット作成と並行してのんびり投稿していこうと思います。
なお、新タイトルには300倍を残したいと思った結果こうなりました。一部最終話のタイトルのまんまですねー。


入学編
入学と個性把握テスト


雄英高校ヒーロー科、その狭き門をくぐり損なったのに、自分の行為の報いを受ける事で入学を決めたという数奇な運命の少年、団扇巡

現在16歳、170台の身長と程々に整った顔を持つ少年は、今

 

道に迷っていた

 

「あちゃー広すぎだろ雄英高校、しかも早く来すぎたせいで誰にも会わないし、開幕遅刻ルートか?コレ。早起きしすぎたからって校内散歩とか考えたのが馬鹿だったか...」

 

そんな事をぼやきながら歩いていると、食堂に出てしまった。

食堂なら、誰かしらいるだろうという安直な考えから、ここで誰かに道を聞こうと動き出した。

 

「すいませーん、誰かいますか?」

 

帰ってくる声は無く、見つけたのは一つの張り紙、食堂は、明日からオープンだそうだ。

 

「今日の俺、呪われてるかも。」

 

まぁ、悔やんでも仕方がない、一旦入り口まで戻って人を探そう。

 

そうして歩いていると、身長180くらいの長身を持つメガネの少年が目に入ってきた。

 

「すいません、ちょっと道を尋ねたいんですが。」

「む、すまんが俺は今日雄英に入学してきたばかりで、道は詳しくないのだ。」

「あ、タメだったのか。てっきり先輩かと。一応俺も新入生だ。団扇巡、あおぐ団扇に巡り合わせの巡だ。1-Aに入ることになった。よろしくな。」

「そうか!俺もA組だ。飯田天哉だ、これからよろしく頼む!」

 

飯田は握手を求めてきた。今時の若者は握手するのがトレンドなのだろうかと少し悩みつつ、その手を握り返した。

 

「おう!よろしくな、飯田!」

 

「にしても団扇君、配られたパンフレットに地図があるのだから、それを見れば迷う事はなかったのではないか?」

「え、パンフレットなんて貰ってないんだけど。」

「何?...なにかの不手際だろうか。」

「かもな。そんじゃあ地図を持ってる飯田君、すまんが案内頼むわ。」

「任されよう!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

地図を見ながら歩きはじめて、教室に着くのはすぐであった

「教室に到着っと、にしてもドアでかいなぁ。1-Aが縦にでっかく書かれてるよ。」

「バリアフリーだろうな、異形型個性の者では身長が4メートルを越す者もいると聞く。天下の雄英に入れたのにドアが小さくて入れないというのは冗談にもならないだろうからな。」

「そんなもんか。」

「そんなものだ。」

 

そんな会話をしながらドアを開けると、教室にまだ人は居なかった。

 

「そりゃ、30分前だとこんなものか。」

「だが、団扇君は来た。正直俺も早く来すぎたと思って居たからな、話し相手が出来て嬉しいよ。」

「にしても何で飯田はこんな時間に来たんだ?いや、お陰で助かったんだが。」

「おそらく団扇君と同じだ。緊張で早起きしすぎてしまったのだよ。せっかく早起きしたのだから教室への一番乗りをしようとする気になってな、まぁ団扇君に先を越されてしまった訳なんだが。」

「そうか、どうする?まだドア前だから飯田が先に入るか?」

「...いいや、2人で同時に入ろう!それで2人とも一番乗りだ!」

「飯田ってお固い感じなのに頭は柔らかいんだな。それじゃあ、2人で!」

 

そう言って、2人の少年は同時に教室へと入っていった。

特に意味はないが、2人は笑顔だったので、まぁ良い事なのだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一番右の列のみ6名、あとは5名ずつで4列の席順、自分は一番右の列の一番後ろへと荷物を置いた。

何故か麗日より席が後ろという謎はあったものの、それは後で先生にでも聞けばいいだろう。

そう考えて飯田と駄弁っていると、続々と人が集まって来た。

 

そうして、その中に爆発頭の少年がやってきた。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか⁉︎」

「思わねーよ、てめーどこ中だよ端役が!」

 

そんな言い争いを飯田と少年がしていると、扉が開いて見覚えのある緑髪のもじゃもじゃ頭の少年がやってきた。

飯田と少年との言い争いを見て、ドア前で固まったが。

 

「固まるのも無理ないよな、うん。とりあえず席は名前順だからとっとと座った方が良いぜ、そろそろ始業時間だ。」

 

そう声をかけたら、少年は思いがけぬ人に出会えたと驚いたようで。

 

「う、うん...って君はあの時の催眠の人!ずっとありがとうって言いたかったんだ。」

「団扇巡だ。あおぐ団扇に巡り合わせの巡でな。別に大した事はしていない、気にしなくて良いよ。」

「僕は緑谷出久。僕を保健室まで運んでくれたのも君って聞いていたから。本当にありがとうを言いたかったんだ。なのに僕途中で寝ちゃって...」

「本当に大した事じゃない。というかあのダメージなんだから痛みが抜けたら眠るのは普通のことだろ。気にするな。」

「それでも、ありがとう団扇君。」

「なんか断り続けたら無限ループに入りそうだな。それじゃあ、どういたしまして!さ、席に行きな、"み"なら多分一番左の列だろ。」

「それってもしかしてかっちゃんの後ろなんじゃあ...」

「...かっちゃんてのはあの爆発頭の奴で良いんだよな。なら2人が落ち着くまでここに居ようか、触らぬ神になんとやらだ。」

 

そうして扉前で待っていると、言い争いを中断した飯田が何かに気づいたようでこっちにやってきた。

 

「俺は私立聡明中の飯田天哉だ。」

「あ...っと僕は緑谷、よろしく飯田君」

 

少し悔しさを滲ませながら、飯田はこう言葉を始めた。

 

「緑谷くん、君は実技試験のあの構造に気づいていたのだな。

俺は気付けなかった...!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」

「おい飯田落ち着け、突然の勢いに緑谷が言葉を返せてないぞー。」

 

そんな会話をしていると、後ろのドアが開いた。

そこには、実技試験で仲良くなった無重力ガールがいた。

 

「あ、そのモサモサ頭は!!地味目の!!それに催眠の人も!」

「よう無重力ガール、同じクラスとは縁があるな。」

「ホントだねー、催眠の人!にしても地味目の人!プレゼントマイクの言う通り受かったんだね!!そりゃそうだ!!パンチ凄かったもん!!」

「そうして話し込むのは良いけどさ、そろそろ席に行こうぜ。もうすぐ始業時間だし、話なら放課後でもできるしさ。ちなみに席は名前順。お名前は?」

「あ、そうだね。私は麗日お茶子!よろしくね!」

「み、緑谷です。」

「団扇巡だ、あおぐ団扇に巡り合わせの巡でな。...覚えがある、麗日は俺の前の席だな。」

「あれ?うちなら私のが後ろなんじゃない?」

「俺もその辺は良く分からん。だけど座席の名前だとそうなってた。なんかの手違いだろ。」

「変なこともあるもんやねー。」

 

そんな話をして席に着くと、入り口のドアが開いた。

そこには、寝袋に入ったまま教室に入ってきた見知った男性がいた。

というか、相澤先生だった。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。」

 

寝袋を脱ぎながら教壇に立ち、相澤先生は寝袋から何かを取り出しながらこう言った。

「担任の相澤消太だ。早速だが体操服(コレ)きてグラウンドに出ろ。」

 

そうして言われるがままに、自分たち新入生はグラウンドに出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「個性把握テストォ⁉︎」

 

驚いた麗日が、相澤に詰め寄る

 

「入学式は、ガイダンスは⁉︎」

 

そんな麗日を、あしらうように相澤先生は言った

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。

雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り

中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録をとって平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ。

爆豪、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

「67m」

「じゃあ個性使ってやってみろ、円から出なきゃ何しても良い、早よ。思いっきりな。」

 

爆豪は、ボールを受け取り体をほぐしながら円の中心に着いた。

 

「んじゃまあ。」

 

爆豪は、普通のソフトボール投げの投球の構えから、爆発を球威に乗せて放った。

 

「死ねぇ!!!」

 

その時、クラス全員の心の中は一致した。

いや死ねってどうなんだ、と。

 

そんなクラスを特に気にもせず、相澤先生は言った

爆豪の705.2mという記録を見せながら

 

「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」

 

その大記録にクラス中は沸き立った。

 

「何だこれ!!すげー()()()()!」

「705mってマジかよ。」

「個性思いっきり使えるんだ、流石ヒーロー科!!」

 

相澤先生は、その言葉を聞いて、悪意のようなものを振り撒き始めた。

「...面白そうか、ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?

よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう。」

 

「はあああ⁉︎」

 

「生徒の如何は先生(おれたち)の"自由"、ようこそこれが、雄英高校ヒーロー科だ。」

 

「最下位除籍って...!入学初日ですよ⁉︎いや入学初日じゃなくても...理不尽過ぎる!!」

 

「自然災害...大事故...身勝手な(ヴィラン)たち...いつどこから来るかわからない厄災、日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。

放課後マックで談笑したかったらお生憎、これから3年間雄英は君達に苦難を与え続ける。"Plus Ultra"さ、全力で乗り越えて来い。

さて、デモンストレーションは終わり、こっからが本番だ。」

 

入学初日の大試練、自分の個性は全ての種目で利用不可能、頼れるのは自分の鍛えた体のみ。改めて思う、今日の俺呪われてるかも。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第1種目 50m走

 

「相澤先生、席順から薄々勘付いてはいたんですが、自分の出席番号って21番なんですね。」

「...制度の都合上そうなった。まぁ、お前が正常な入学者でない事はすぐにわかる事だ。Plus Ultraさ、乗り越えて行け。」

「はい、頑張ります。」

 

 

ぼっちだから寂しいけど、それは爆豪みたいな妨害もないという事。

50mは普通に全力ダッシュだ。

 

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第2種目 握力

 

一つ、個性の使用方法で思いついた事がある。なので50mを原付で走るという無茶苦茶をやらかした八百万にちょっと頼んでみた。

 

「えーと、八百万さん、お前の個性って鏡とか作れるか?」

「?ええ、作れますよ。」

「個性関係で試したい事があるんだ。悪いが貸してくれないか?」

 

八百万は、ちょっと困った風で、相澤先生に確認を取った。

 

「相澤先生、よろしいですか?」

「別に鏡程度ならかまわんぞ。」

「それでは。」

 

八百万の腕から、女性用のデザインの手鏡が生み出された。

 

「ありがとな、八百万さん。」

 

必要な道具は出来た、生まれて初めて試す、写輪眼による自己催眠、それによる体のリミッター解除

 

その結果は...

 

握力 120kg

 

その結果が成長に依るものなのか催眠に依るものなのかは不明だが、やらないよりやる方がきっと記録は出るだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後も、立ち幅跳び、反復横跳びと八百万からの手鏡を利用しての自己催眠で記録を出していった。

 

そしてやってきた第5種目、ボール投げ。

出席番号5番の麗日が記録無限という大記録を出すという事件もあったが、他はつつがなく進み、順番は緑谷の番になった

 

 

「緑谷くんはこのままだとまずいぞ...?」

「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」

「無個性⁉︎彼が入試時に何を成したか知らんのか⁉︎」

「は?」

 

自分に大記録が無いからか、この話が聞こえてしまったからか、緑谷は焦りのままに円に入った。

覚悟を決めたその一投、その結果は

 

「46m」

 

その相澤先生の無慈悲な言葉が全てだった。

 

緑谷は混乱しながら

 

「な...今確かに使おうって...」

 

緑谷に絶望を突きつけるように相澤先生は言った。

 

「個性を消した。つくづくあの入試は...合理性に欠くよ、お前みたいな奴も入学できてしまう。」

 

緑谷は何かを思い出したようで

 

「消した...!!あのゴーグル...そうか...!抹消ヒーローイレイザー・ヘッド!!!」

 

「イレイザー?俺知らない。」

「名前だけは見たことある!アングラ系ヒーローだよ!」

 

相澤はさらに畳み掛けるように緑谷に言った。

 

「見たところ...個性を制御できないんだろ?また()()()()になって、誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「そっ、そんなつもりじゃ...!」

 

相澤は首に巻いている捕縛布で、緑谷を近くに引き寄せ、小さな声で何かを話し始めた。

 

「彼が心配?僕はね...全っ然。」

「指導を受けていたようだが。」

「除籍勧告だろ。」

 

何かをぶつぶつ呟き続ける緑谷、そんな焦りの顔が見ていられなくて、つい叫んでしまった。

 

「緑谷!頑張れ!」

 

自分はそう言って、サムズアップをした

 

「団扇君...親指...指...そうだ!この手なら、行動不能にならずに行ける!ありがとう、団扇君!」

 

緑谷は覚悟を決めた顔で、自分にサムズアップを返してくれた。

 

そうして投げた緑谷は、人差し指を血で赤く染めながら。

705.3mという大記録を打ち立てた。

 

痛みからの涙を堪えつつ緑谷はこう言った

 

「先生...!まだ...動けます。」

 

その痛みを和らげたくて自分は

 

「緑谷!いま催眠をかける、少し待ってろ!」

 

そんな自分を無視し、緑谷の元へ駆け出した爆豪

 

「どーいうことだこら、ワケを言えデクてめぇ!!」

 

そうして駆け出した2人は、相澤先生の捕縛布で一緒に縛られた。

 

「んぐぇ、邪魔だこのクソ野郎!」

「邪魔はどっちだ爆発野郎!男とくっ付く趣味はねぇんだよ!」

 

そんな自分達に、相澤先生は言った

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ。ったく、何度も個性使わせるなよ...俺はドライアイなんだ。

それと団扇、お前の個性、緑谷に使うな。あいつはまだ動けるって言ったんだ。」

 

少し悩んで自分はこう言った。

 

「...個性把握テストが終わるまでは個性を使いません、それで良いですか?」

「まぁ、テストが終わった後なら良いだろう。許可する。」

 

相澤先生は緑谷の大記録の余韻を吹き飛ばすように言った。

 

「時間がもったいない、次準備しろ。」

 

右手の人差し指を抑えた緑谷を慮って麗日と自分は駆け寄った。

「指、大丈夫?」

「テスト終わるまでは我慢してくれ。そしたら俺の個性でお前の痛みを取り除けるから、もう少しの辛抱だ。」

「ありがとう、団扇君、麗日さん。痛いけど、あの時程じゃないから。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自分は八百万から貰った鏡と鍛えていた体により、全体的に好成績を残す事ができた。

対して緑谷は、右手の人差し指の痛みからかボール投げ以降の種目で良い成績を残す事はなかった。

最終科目の持久走が終わった後、自分は緑谷に駆け寄った。

 

「相澤先生!テストは終わりました、良いですよね!」

「...ああ、構わないぞ、団扇。」

 

そうして俺は、緑谷の目を覗き込み個性を発動した。

 

痛みの引いた緑谷は、自分に向き合いこう言った。

「団扇君、ありがとう。また、助けられたね。」

「気にするな、じゃ気にするのがお前だったな。どういたしまして。

あと、痛み無くなっても傷があるのには変わらないんだから右手は基本動かさず、心臓より上で固定しておく事。良いな?」

「うん、ありがとう。」

 

全員整列の後、相澤先生は言った

 

「んじゃパパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ、口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。」

 

そう言ったあと、少し溜めてからこんな一言を言い放った。

 

「ちなみに除籍はウソな。」

 

人の悪そうな笑みを浮かべ、重ねて言った。

 

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽。」

 

生徒達の反応はほぼ一色となった。

 

「はーーーーーー!!!!??」

 

冷静さを保っていた八百万はこう言った

 

「あんなのウソに決まってるじゃない...ちょっと考えればわかりますわ...」

 

相澤先生はその言葉に乗る形で

 

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ。」

 

そして懐から保健室利用書を取り出し、相澤先生は言った。

 

「緑谷、リカバリーガール(ばあさん)のとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ。」

 

自分は緑谷が除籍とならなかった嬉しさから、自然とこんな言葉を出していた。

「一応付き添うぜ、緑谷。」

「...本当に何から何までありがとう、団扇君。」

「どういたしまして、まぁ保健室の場所把握しときたいってのもあるんだがな。」

「え、パンフレットに地図あったよ?」

「あ、そうだ。相澤先生にパンフレットのこと聞かないと...ってもういねえし。仕方ない、明日だな。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自分の順位は8位だった。個性が直接的に評価に絡まない割には良い成績だったと自分では思う。

最下位だった緑谷はリカバリーガールの治療により体力が持っていかれて今はグロッキーだ。

 

「肩貸すか?緑谷。」

「大丈夫、歩けない程じゃないから。」

 

そんな会話をしつつゆっくり歩く帰り道、後ろからやってきた飯田が緑谷の肩を掴んできた。

 

「指は治ったのかい?」

「わ!飯田君、リカバリーガールのおかげで...」

「因みに俺は始めて知ったんだが、リカバリーガールの治療って実は本人の体力を使うらしい。だからあんまり頼り過ぎないように気を付けないといけないっぽいぜ。」

「なんとそうなのか、情報感謝だ団扇君。しかし団扇君は緑谷君と仲が良いな、中学からの知り合いなのか?」

「いや、入試のとき始めて会ったくらいだな。片腕両足折ったコイツに個性で麻酔かけたのが最初だよ。」

「何だって⁉︎...そうか思い出した、C会場で倒れていた緑谷君を運んでいたのは団扇君だったか!朝会った時から見たことのある顔だと思っていたのだよ。なるほど、あの時の親切な人だったのか、納得だ。」

 

ゆっくり歩きながらそんな会話をしていると、さらに後ろから声がかかってきた。

 

「おーい、お三方ー!駅まで?待ってー!」

 

ソフトボール投げで無限を出した無重力ガールこと麗日お茶子が後ろから走って追いついて来た。

 

飯田が言う

 

「君は、無限女子。」

 

それに麗日は答えた

 

「麗日お茶子です。飯田天哉君、団扇巡君、それに緑谷デク君!だよね!!」

「デク⁉︎」

 

麗日のあまりにも自然な罵倒に、緑谷は思わず反応した。

 

「え、でもテストの時爆豪って人が『デクてめえ』って。」

 

緑谷はおどおどしながらも答えた。

 

「あの...本名は出久で...デクはかっちゃんがバカにして...」

「蔑称か。」

「えー、そうなんだごめん!」

 

麗日は、左手でガッツポーズをとりながらこんなことを言った。

少年のこれからの運命を変えるような一言を

 

「でも『デク』って、『頑張れ!!』って感じで、なんか好きだ私。」

「デクです。」

 

緑谷は、顔を赤くしながら即答した。

 

「緑谷君!!」

「それで良いのかお前...」

 

「浅いぞ、蔑称なんだろう⁉︎」

「コペルニクス的転回...」

「コペ?」

「物事の見方が180度変わるという意味だな。」

 

そんな会話を新しい友人たちとしながら家路につく。

振り返ってみれば良い1日だった。特に呪われてなんかいなかったと、後から考えると思う。

明日からも苦難が待っている。だからといって今新しい友人たちと出会えた奇跡を嬉しいと思っていけない訳はない。

さぁ、明日からも頑張ろう、そう思いながら歩いていった。




プロット帳は誰にも公開出来ない、ヒロアカのプロットをプロット帳に書いている時に見つけた仮面ライダーウィザード×ドラクエ7の話とか何考えてたのか不思議なくらいのメリーバッドエンドです。なんでどの作品も主人公が最後に消えるような話になっていくんだ...
この作品ではもうメリーバッドエンドはやったので素直なハッピーエンドになるように努力します。

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