ただ6000円はちょっと高かったかなー。
戦闘開始してから約5分、天鳥船使用から3分経ったが状況にさほど変化は現れなかった。
せいぜいが、2人の巨人の周りのビルが廃墟と化した程度だろう。
「あの無敵超人め、隙くらい見せやがれ。」
「隙があっても突けぬがの。カラクリを解かぬ限りは。」
「どうする巡、奴の本体を叩かねえ限りはジリ貧だぜ?この五人羽織だっていつまで持つかはわからねぇんだから。」
「...よし、こういう時はぶっぱだ。何かしらのアクションは出るだろ。」
「適当ですね、団扇様。まぁ他に手は思いつきませんけれど。」
とりあえず安直な考えから技をぶっ放す。膠着状況を打開出来るとは思えないが、まぁ正直このまま持久戦を取られるのが一番の最悪だ。向こうは自然エネルギーという回復手段があるのに、こちらのエネルギーは消費していく一方なのだから。
須佐能乎で結ぶ印はうちは一族の代名詞。炎を操るうちはが十八番。
「須佐能乎・火遁・豪火球の術!」
須佐能乎によるブーストのかかった豪火球は、その色を赤色から白色へと変貌させた。須佐能乎の中でも熱さを感じるくらいなのだから、温度はちょっとした災害クラスだろう。
向こうの木人は、その炎を避けずに体で受け止めた。再生能力を過信しての事だろうか。あるいは、白くなった炎でさえ、木人を焼く事は不可能だと認識しているのだろうか。
なんにせよ、当たらない事に定評のある豪火球のクリティカルヒットだ。木人も、表面が焼け焦げていった。
呼吸をしているなら、今の炎による高温の空気で気道を焼けると思うのだが、まぁ柱間は仙人モード特有の超再生能力でなんとかしているのだろう。
さて、表面が焦げたという事は脆くなったという事だ、多分。
ならば、表面が生え変わる前に連打といこう。
だが、敵もさるもの。こちらの超スピードの連打を最小限の動きで払っていった。こちらの狙いは正中線上を狙い放ったものだ。向こうの防御に不自然さはない。
向こうの反撃のクロスカウンターを済んでのところで躱してバックステップで再び距離を取る。向こうが防御に使った両腕は今ボロボロだ、一手打つなら今だろう。だが、その一手が思い浮かばない。
そんな時、何気にこの須佐能乎での貢献度ナンバーワンを誇るフランさんから提案があった。
「団扇様、敵の急所が移動しているとは思えません。ここは正中線に急所があると仮定して、私の糸を芯にした炎でぶった切りましょう。」
「それ採用!」
「ノータイムかよ!」
だって他に策はないのだから仕方ないだろう。
「即興必殺!須佐能乎・火遁・
右手からの糸をフランさんのコントロールでより合わせ一本の力あるムチに作り変え、それに白炎を纏わせる。
それを全力で振り下ろす。ムチの先端速度は、相当なものになっただろう。音の壁を破った時の音が産まれたのだから。
意外な事に、陰我の木人は真っ二つへと切り裂かれた。もう少しなにかあると思っていたので拍子抜けだ。
だが、真っ二つにされたはずの木人が動き出したことで、ある疑惑が産まれた。
動き出したのだ、
「おいおい、ちょっと待て...」
片方の半身だけが動くというのならわかる。そちらの半身にコアがあるということなのだから。
両半身動かないという事ならもっとわかる。陰我ごとぶった切る事に成功したという事なのだから。
だが、両半身動くという事は、それはつまり...
「俺たちが追っていた陰我は、木分身?」
あの化け物は、リモートコントロールによって動いているという可能性だ。
本体は、別の場所にいる。
「んで、それがどこかって話なんだけど。探しようなくね?あの不死身マンの身を守る必要とかないだろ。」
「街を絨毯爆撃するのはどうじゃ?」
「すまん、出来そうな技はない。」
「できたらやるのかよお前...」
ぶった切れた木人がくっつくのを観察する。写輪眼でも木分身を繋ぐ意思のリンクを見抜く事は出来ない。だからこその観察であるが、あまり意味はなかったかもしれない。
「...この中に、あの木人を纏めて消し飛ばせるネタがある奴は言ってくれ。」
「あったらとっくに言ってるっての。」
「人間相手ならひたすらボディ狙うんだが、あいつバケモンだしなぁ...」
「弱点がそもそもないとか、無理ゲー過ぎやしないかの?コレ。」
「泣き言は死んでからにいたしましょう。今は戦う時です。」
豪火鞭を使い、とりあえず木人を細切れにしようとする。周囲の建物は軒並みぶっ壊れているので大丈夫。と思ったが、目算ちょっと間違えたのか無事だった建物までぶった切ってしまった。危ねぇ。
ムチを縦横無尽に振り回し、白炎の熱で溶断する。チャクラはかなり消費するがそれ相応のリターンは確約できそうだ。
実際、木人はムチのスピードに対応し切れずになされるがままになっている。あるいは、もはや木人が囮だと気付かれた物として捨て駒にしているのか?
まぁ、なんにせよ効いているのは悪いことではない。あのスケールの木人を再生するには、それ相応のエネルギーが必要な筈だ。それに、奴を黙らせる事には十分なリターンがある。
「皆、自分の中のエネルギーに意識を割いてくれ。それを才賀に送るイメージで。あとは俺が調律する。」
「5人分のエネルギーで個性を強化するというというわけじゃの。」
「大役ですね、お坊ちゃま。」
「というわけで才賀、行くぞ!」
「おうよ!」
須佐能乎で才賀の個性の範囲をブーストする。才賀に意識を集中するが故に豪火鞭は維持し切れず消えてしまうが、まぁ仕方なかろう。5人で分けているエネルギーを才賀一人で使用しているような者なのだから。
「...うん、わかっちゃいたが人っ子一人いねぇ。奴の遠隔操作精度高すぎだろ。」
「あるいは、避難の際に群衆に紛れ込んでしまったのかもしれませんね...」
「しゃあねぇ、もっかいバラすぞ。多分対策されてるけど。」
「ちょっと待て...」
バラバラになった木人が再生するのを観察するのは中止して、また戦闘に移ろうかと気合いを入れようとした所で、才賀の待ったがかかった。この感知の個性の感覚を一番知っているのは才賀だ。何か掴んだのかもしれない。
「...右前方2キロ半、そこにリラックスしてる何かがいる。思考を持ってる!」
「...遠隔操作のタネはそういう事か!でかした才賀!」
木人を無視して才賀の示した場所へと飛ぶ。
その方向に何があるのか気付いた木人は、再生途中にもかかわらず止めにかかろうとしてくるが、木人よりも俺たちの須佐能乎の方が、速い。
「まずは、
須佐能乎のスピードで、一見普通の。されど濃密な身体エネルギーを持った街路樹を引っこ抜き、握り砕く。それにより、木人は動きを止めた。
この木は陰我の木分身などの操作のためのアンテナのようなものだったのだろう。自分の力が俺たちに割れていると知って、遠隔操作という保険をかけてきたのだ。
だが、それももうネタは割れた。あとは追いかけるだけだ。
「才賀、もっぺん行くぞ!他のアンテナか、本人かが見つかるまで!」
「...いや、遅かったみてぇだ。他の、全ての街路樹がアンテナに変わりやがった!木人が動き出すぞ!」
「どこからどこまで⁉︎」
「感知している街路樹全部だ!」
「入念な下準備だな畜生!」
才賀に供給していたエネルギーをカット。再び豪火鞭を形成して木人に振り下ろす。
今度は、ムチは白炎によって木人を溶断する前に何かに当たり弾かれた。写輪眼で見切れない事から、自然エネルギー由来の技術だろう。
恐らく、NARUTOに出てきた蛙組手の応用だ。自然エネルギーを纏わせて力場を作るという。
陰我は、それで見えないエネルギーフィールドを作り出せるほどに自然エネルギーの扱いに習熟しているのだから。
さて、見えないのだから確かめるしかない。奴の自然エネルギーフィールドが全身を覆っているのか一部に特化しているのかを。
「両手、いきます!エネルギーをフランさんに!」
「任されました!」
両手に豪火鞭を形成しての超速乱舞。一部にしか展開していないのならばありとあらゆる方向からの攻撃には対処しきれないはず。
だがまぁ、こういう事では悪い方に想像は当たるもので、超速の乱舞の結果は白炎による溶断は起こらずに、ただの鞭打程度のダメージしか与えられていなかった。そして、その傷もすぐに治る。
「全身装甲か...厄介極まり無いッ!」
「だが、鞭でのダメージが通ってるぜ。無敵の盾って訳じゃない。」
「...閃いたぞ主様!妾に力を集約せよ!」
「乗った!任せたぞアセロラ!」
「提案を聞きすらしねぇのかよ!」
5人全てのエネルギーを、アセロラに集中する。
湧き上がるのは、乾きの衝動と溢れる力。
衝動により互いに殺し合いを始めかねないので長くは使えないが、これなら超身体能力が扱える。
「皆の心は5分と持たない!速攻で決めろ!」
「5秒で終わらせるから落ち着いておれ!というかなんで5分もつのじゃ!鋼の心か!」
1秒、超身体能力で踏み込み、鞭打の距離を投げの距離まで一瞬で詰める。
2秒、木人に纏わりつく自然エネルギーフィールドを掴み、技も何もないただの力技で上へと投げ飛ばす。
3秒、そうして浮いた木人をアッパーでさらに上に飛ばす。
4秒、超身体能力による跳躍で、浮いた木人をさらに上に持ち上げる。
そして5秒、超上空にてフィニッシュホールドの前段階で止め、チャクラブーストで上空に待機する。
街路樹アンテナの有効範囲から抜け出した事により、木人は完全に停止した。これなら、この須佐能乎ドライバーを決めるまでもないだろう。
エネルギーの集中化を止め、倍加されていた吸血衝動から解放される。これを気合で止めているアセロラは、本当に凄い奴だと改めて思う次第だった。
「どうじゃ!隙を生じさせぬ二段構え!動かずば宙で止め、動けば地面にえぐりこむ。これぞ、アセロラドライバー大作戦!」
「しまった、先に名乗られた!」
「いや、そこどうでも良いだろ。」
そうして、無線で木人の無力化をナイトアイに伝え、俺たちの戦いは小休止となった。
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...上空であの質量を持ち上げ続けるとは、全盛期のオールマイトを彷彿させる無茶苦茶だ。そんなことを指揮所で集めた準イレギュラーの指揮を取っていたナイトアイは思った。
だが、団扇はオールマイトではない。全ての
「さて、団扇からの連絡によるとこの街の街路樹全てを破壊しろとのことだったな。街路樹をアンテナにした遠隔行動、奴はどこまで厄介になるのやら。」
ただ、それを実行するには少し時間がかかるだろう。集めた準イレギュラー達の中で木を破壊できる個性の持ち主は少ない。
なぜなら、集めた準イレギュラーたちのほとんどは警察官なのだから。
10月1日、団扇巡と陰我が戦ったあの日、総勢200名を超える巨大捜査本部となっていた陰我事件対策本部長は事故死した。
キャリアでありながらも気さくで、正義感に熱く、優しさを知っていた本部長を慕っていた者は多かったのだ。
それが故の、148人の大動員である。
準イレギュラーだからといって完全に安全ではない。だからといって、慕う上司の復讐のために、あるいは
ヒーローではない警察にも、プライドはあるのだ。
「バブルビーム、サンドウィッチ、あなた方は別れて街路樹の対処に当たってくれ。戦闘範囲4キロ周辺の街路樹を全て切断する。北はバブルビーム、南はサンドウィッチ、西は数打警部、東は雪平巡査部長の個性を中心に動け。私たち指揮官側は深夜で目撃者がほとんどいない以上、警察の皆さんの個性使用を黙認する。どうせ始末書を書くなら、気持ちよく書こう。...ああそれと、街中で善意の協力者に出会ったときは、身分証の提示をしてもらった後で快く受けるといい。恐らく、彼らは来ているだろうから。」
「了解!」と気持ちの良い返事が返ってくる。これで、指示出しは何も問題はない。
あとは、やってくるであろう来訪者の対応だけだ。
「...来たか、陰我。」
「貴様が、指揮官か。」
「目に隈がない。舐められたものだな。」
「...そうか、貴様が違和感の正体か。サー・ナイトアイ。いや◾️◾️◾️◾️。」
「そうだ。貴様と同じだよ。イレギュラーと深く関わった事でイレギュラーと成り果てた者。運命の外側に外れた後天的なイレギュラー。貴様が感知できなかった、隙だ。」
「だが、殺せば修正は効く。」
「それが出来ればの話だがな。」
ナイトアイは、右肩を一度触り戦闘態勢を取る。
言葉を交わす事を止めずに。
「貴様は、私を感知できなかった。それは、貴様のイレギュラー判別方法が世界各国の個性一斉調査結果を盗み見て、その名前と顔からその人物にこの世界の因果が載っているかどうかを判別していたためだ。」
かざされた手から挿し木が飛んでくる。それを見る前からの予測により回避してサポートアイテムの超質量印を投げつけて反撃を行う。
直撃した、常人なら骨折コースの当たりどころだったが応えた様子はない。この陰我も木分身だろう。
「故に、貴様は盲目だ。時遡祈里や私のような後天的イレギュラーの事を見ていない。見ようとしていない。悪いのは外からやってきて運命をかき乱すイレギュラーだけだと思い込んでいる。だから、そいつのせいにして多くの命を葬ることを肯定している。そいつのせいにして自分の心をまもっている。なぁそうだろう?
「...外道と言われようと、俺の守る運命は変わらない。」
「フッ、そういえば良いことを教えてやろう。」
「なんだ?」
「貴様たちが守ろうとしていた約束の物語、僕のヒーローアカデミアにおいて、死穢八斎會は敵だった。この世界の主人公、緑谷出久は私たちの見た敗北という運命を捻じ曲げて一人の少女を救う。それがその章の結末だったんだ。」
「...は?」
「貴様も思うか、私たちの見ていた確定していた未来が、捻じ曲がる事がこの世界の創造者に定められた運命なのだとは思いたくなかろう。私も経験がある。」
「待て、じゃあ私の選択はッ!」
「団扇巡に感謝すると良い。アイツのお陰でお前の約束の物語は守られているのだから。」
その言葉で、一瞬陰我は停止した。
その一瞬でナイトアイは陰我に詰め寄り、銀色の右腕の一撃を叩き込む。
サー・ナイトアイの購入した最新式の義手、Iアイランドにおける最新技術のふんだんに詰め込まれた超戦闘用の銀の腕。
見るものが見たら言うだろう。こんな馬鹿げたギミックに何億払ったのだと。ナイトアイは貯金の2/3だと自信を持って言える。
何故なら、腕を失った事によりナイトアイは人を救う目と敵を砕く腕の二つを手に入れられたのだから。
その銀の腕に仕込まれていた唯一のギミックにより陰我の木分身は爆ぜ飛び、木片となり散って行った。
「しかし、あの技術者は何故この超電磁式射突拳打システムをとっつきと呼んだのだろうか。実際に使ってみてもわからんな。」
そうして、指揮所の位置を変えるとだけ指示を出して予定していた次の指揮所へと移動する。もっとも、名前と顔を知られた以上意味はないかもしれないが、念のための策である。
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そうして、 二人の巨人が宙に飛び30分が経ったころ、ようやく田等院周辺の街路樹の全撤去が完了した。偶然いたらしいモノを作る仮免ヒーローのお陰でチェーンソーが行き渡った事が作業の高速化につながったのだ。
それを感じながらも、対処をしようとは思わなかった。
自分の戦いは、約束の物語を守るための戦いは、自分の気付かないうちに終わっていた。
「...約束の物語はもう始まっていた、そして私はそれを壊そうとしていた、か。道化だな。」
海浜公園にて独りの男が佇んでいた。
背後の街での喧騒を、世界の外側の事としか捉えられない終わった目の男は、何か考えがあるでもなく、ただ自然のままに体を流していた。
その様は、まるで殉教者のようで、見るものが見れば不安に思うものだった。
故に、根がお人好しの少年は彼に話しかけたのだった。緑色の髪に、そばかすを持つ少年が。
「あの、大丈夫ですか?」
その優しさに、嘘をもって答える。男は、正直に受け答えるにはあまりにも重く荷物を背負いすぎていたのだから。
「少し考えをまとめていたんだ。ここは潮風が気持ちいいからな。」
「そうですね。僕も休憩の時にここの風を受けていましたから、気持ちはわかります。」
そうして、二人で少しの間風を感じる。秋の潮風は少し冷たかったが、それでもどこか爽やかな気持ちになった
「この付近で、
そうして、陰我は気付く。この少年に纏わりつく因果の強さに。
この少年は、強い運命に縛られて生きている。だが、運命とは違う何かもまた、少年と共にある。それはちっぽけなものだったが、どこか暖かかった。
なんとなく思った。彼が
なんとなく思った。この暖かさがあれば、自分や団扇巡の生み出したこの世界の外側の運命にも立ち向かっていけると。
いずれ世界を救うであろう、少年を思って一言言った。
「少年、頑張れよ。」
「?はい、ありがとうございます。」
携帯で連絡を受けたのか、少年は街の方へと走り去っていく。
その背中は、どこか大きいように見えた。
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周囲に展開していた全ての木分身、アンテナを回収。自分の本当の全力を持って、団扇巡という敵と相対してみたい。そう思った。
自分を殺したいほど憎んでいながらも、その配下の者たちを誰一人として殺す事を、死なせる事を許しはしなかった、優しく甘く、自分の失った強さを持つ一人の少年と。
そう思った時、自然エネルギーの使い方を閃いた。この形が、自分の力の最大限だと直感的に分かったのだ。
「さぁ、最後の勝負といこうか。」
そうして、陰我は自然エネルギーを十全に込めたその巨人を作り出す。
今までの、陰我の心の仮面を象る羅刹ではなく、仏。
千の手を持つ最強の術。
その名を、
その力で街を破壊するでもなく、陰我はただ待った。
自分の未来を決める戦いの相手を。
ラスボスとの戦いは間近、な所で区切らせてもらいます。
今年投稿は多分できないのでこの場を借りてこの作品を読んでくれた皆さまに一言。良いお年を!