アルコールで少しだけ響に素直になるお話
「響ぃ……響ぃ……」
愛しさ一杯といった表情で、寝言を呟く。
胸もとのふわふわの銀髪はわたあめみたいでちょっと美味しそう。
珍しく私の名前を呼ぶ、素直になれない少女が、今だけ私の元で甘えてる。
「クリスちゃん可愛いなぁ」
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好奇心だったんだ、たまたまSONGの忘年会のパーティ会場に私の広めの家が選ばれて、そこに大人の皆も何人か交えて、パーティをした。
その大人達が持ってきていた、大人だけが楽しんでいた、趣向品。
「つったってもなぁ……未成年が飲酒ってのもなすぁ……」
雪音クリスの中に渦巻くのは好奇心、ただただ、普通に楽しそうに、美味しそうにその飲み物を楽しむ大人の姿。
子どもと呼ぶにも、大人と呼ぶにも違和感があるその年頃の少女には、大人達がそれを楽しむ様子が少し狡いと感じたのかもしれない。
「……少しだけ……少しだけ……ほら、こう、どのくらい飲めるかとか……あるらしいし?
ここで一回試しておくのも決して悪いことでは……ドイツじゃもう飲める歳だし?」
口で言い訳を零しながら目の前の赤くて綺麗な飲み物に目を向けてみる、見てみると凄く綺麗で、まったく大人はずるいと思うばかりだ。
「あ~!ちょっせぇ!!!」
迷ったり、言い訳を繰り返す自分に何処か腹が立って、キッチンに何故か置いてあるワイングラスをひったくるように掴んで、居間のテーブルにグラスと瓶をやや乱暴に置く。
「よし、私はやるぞ……」
覚悟を決めて、ソファに座り背中に這いずり回る罪悪感を振り切ってグラスに品もなくドボドボとワイングラスに注いで、勢いよく飲み干す。
苦い、とにかく苦い、むしろ渋い、これは多分、いや、恐らく絶対にこれ単体で飲むのは間違いだったろう。
香りは悪くない、後味も苦味は後を引かない、酸味が引っ張りあげてくる。
でも絶対に一気に飲むものじゃないッ
失敗した。
「ぬぐ……ぐ……しかも少し頭が痛くなってきた……」
クリスの視界はぐらぐらと揺らぐ、もっと危機感を持つべきだったと、痛む頭を抑えて俯く。
こんなの恥ずかし過ぎる、好奇心に負けて、意気揚々と飲んだは良いがこの有様だ。
こんなのを後輩にしろ先輩にしろ、ましてやあの馬鹿に知られたら最悪だ……
そんな考えをぐるぐると廻る視界で考えていると、インターホンがなる音が聞こえてきて、クリスは背筋に電流が走ったように飛び上がる。
「ひゅいっ!?」
素っ頓狂な声をあげて
ふらつく足でインターホン越しのカメラを覗くと、そこにはいつものように笑う響が立っていた。
「えぇぇ……よりにもよって馬鹿かァ……」
げんなりした顔をして、居留守でも使ってやろうかと思ったが、あいつのことだから合鍵でどうせ入ってくる。
神がいるなら神を恨んだ、といってもこれから来るのは神殺しだ。
きっと私の神はあの馬鹿に殺されたんだ、違いない。
直様テーブルの上に置いたグラスと瓶を片付けて、できれば帰ってくれと祈りながら。
ソファであのバカを待つ。
どうせ来る、あいつはそういうやつだ。
「クリスちゃーん?入るよ~」
なんであいつは入るよーってノックもせず普通に家に上がり込んでから言うんだ……
馬鹿なのか!馬鹿だった……
自問自答を繰り返してる内にバカは早くもリビングに入ってきた。
「もーぅクリスちゃーん、いるならちゃんと返事ぐらいしてくれても~」
にへらと笑いながら擦り寄って、身体を押し付けてくる。
やたらと柔らかい感触が右腕にかかって、本当にコイツは男女問わず勘違いさせに来る、これは絶対に絶対。
しかもなんか少し酒なんか飲んだからか、ふわっと香ったバカの匂いにやられそうだ。
「近いってんだ!バカ!」
「あいでぇ!」
何かバツが悪くなって取り敢えず頭にチョップを叩き込む。
「ひどいよークリスちゃーん!」
馬鹿がソファに私を押し倒して来て、ニコニコといつものアホみたいな笑顔であたしをじっと見つめるその顔がいつもよりも可愛く見えて、頭がぐるぐるする。
沈黙、じっと響の顔を見つめてみる。
唇が艶っぽくて、瞳が綺麗で、私はどうしたんだろう。
「どうしたのクリスちゃん?」
首を傾げてふわりと響の髪の毛が揺れる、揺れる、私の視界もぐらぐらと揺れる。
だから、普段じゃ絶対言わない事が何故だか言いたくなった。
「響……」
ふわふわとした髪の毛に顔を埋めて響の香りを胸いっぱいに楽しむ。
甘くて何処かしょぱいような不思議な香り。
ふにふにとする胸の感触が大層安心する。
「クリスちゃん……いま、名前……」
響の体温が気持ち良くて、愛おしくて、
だんだん眠気が襲ってきて意識が微睡んでくる。
「響……お前……あったかいなぁ……」
あぁ、響の鼓動が聞こえて、あたしはいつの間にか瞼を閉じてた。
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その後は大変だった、起きたクリスちゃんは突然殴ってくるし、「お前も飲め!」ってワインを押し付けてくるし、学校でもやたらと甘えてきたりするし。
それを未来に見られて一体何があったのか問い詰められるし。
そして登校する時には未来だけじゃなくクリスちゃんまでくっついてくるようになったり。
「響♪」
「ひび……きは……私のッ!」
今も右腕にはクリスちゃん、左腕には未来を抱える形になっている。
腕に身体を寄せて、両手でがっちり手を繋がれてしまってどうにもならない。
「えへへー、両手に花って奴ですよ!」
切歌ちゃんも調ちゃんもなんか凄い目で見つめてくるけど、私めげない!しょげない!諦めない!
「「響は私の!」だ!」
今日も平和です。
ありがとうございました