僕の守護霊は博麗霊夢 作:キシ
一応タグにR15 を追加しときますね。
ギリギリで教室に入ると、教室内の視線が僕へ集中する。
一瞬の静寂の後、コソコソと話し始めたりニヤニヤと笑いながらこちらを見たりと、各々が何時もの様に反応を見せる。
「何よコイツら、人を見てニヤニヤして……気ぃ悪いわね」
「だ、大丈夫だよ。何時もの事だから……」
苛ついた様に言う博麗さんを小声で制する。
博麗さんは納得のいかない様子で腕を組んだ。
僕は皆からの視線に耐えながら一番後ろにある自分の席まで歩いていく。
そして僕の机を見ると、博麗さんは不機嫌そうな声を上げた。
「何よコレ」
「……は、はは、気にしないで」
僕の机は凡そ普通のものとは言えず、花瓶が置かれており、侮辱の言葉が黒のマジックで乱雑に書かれている。
そう、僕は所謂いじめにあっていた。
「気にするわよ。アンタこんなことされて悔しくないの?」
「……何時もの、ことだから」
目を伏せながら言うと、博麗さんは不満げに唸ってから腕を組んだ。
どうやら彼女は不満があると腕を組んで耐える癖がある様だ。
……ごめんね。
申し訳ない気持ちで縮こまっていると、ガラリと教室のドアが開いた。
入ってきたのは担任の谷崎先生だった。
「皆おはよう! 出席取るぞー!」
谷崎先生は体育系の先生で、声が大きく明るい性格の先生だ。
しかし、少々世間知らずというか、いじめなんかは生徒同士のじゃれ合いだという認識をしているらしく、いじめの現場に遭遇しても軽く注意をするだけでそのまま行ってしまう。
初めのうちは相談なんかをしていたのだが、谷崎先生は「友達をそんな風に言うもんじゃない」と逆にこっちが怒られてしまう為、もう諦めている。
「〇〇!」
「ぁ、……はぃ」
先生が僕の名前を呼び、それに返す。
しかし聞こえてないのか、首を傾げて教室を見渡す先生。
「なんだ? 〇〇は休みかぁ?」
「えと、居ます……!」
「おぉ、居るなら返事をしてくれよ」
控えめに手を上げると、先生は気の良い笑み僕に向けてから、次の生徒の名前を呼んだ。
「ふぅ……」
「……ふん」
そして僕が小さく溜め息を吐くと、博麗さんはつまらなさそうに鼻をならした。
◆
いじめと言っても、直接暴力を振るわれるという事はない。
集団で無視されたり、シャーペンや消しゴムといったちょっとした私物を隠されたりなど、昨今のいじめにしては軽い方だ。
机の落書きも油性ではなく水性の為、拭けば直ぐに落ちるし僕に対して直接な被害は殆どない。
だから気にしなくても大丈夫だと、博麗さんに説明した。
博麗さんは面白くなさそうな仏頂面のまま、不服そうな口調で返す。
「……ま、アンタが今のままで良いって言うんなら、私は気にしないけど」
「うん……ありがとう博麗さん」
昼休み。
僕は本来開放されていない屋上に来ていた。
ここならちょっかいは出されないし、入ってこれるのも偶々カギが落ちているのを見つけた僕だけだ。
僕だけの場所、僕が学校で唯一落ち着ける場所。
そんな屋上の真ん中で胡座をかいて座り、母さんの作ってくれた弁当のおかずのふやけた唐揚げを箸でつまみ口へ放り込む。
……うん、改めて味わうと美味しいな。
「どうしても我慢ならない時は私に言いなさい。相手ブチのめすから」
「き、気持ちは嬉しいけど……」
宙に寝転びながら言う博麗さんに、苦笑しながら返して、途中で言葉を止める。
『気持ちは嬉しいけど、博麗さんは幽霊だから……』
そう言ってしまうと、彼女の事を無力だと言っている様で、なんだか嫌だった。
「……ううん、ありがとう」
「ふん」
そっぽを向いた博麗さんにまた苦笑しながら白ご飯を箸ですくった。
ギィ……
「あっ」
宙を浮かぶ博麗さんを眺めながら弁当を味わっていると、ふいに屋上のドアが錆びた音を立てながら開いた。
や、ヤバい、カギ締めるの忘れてた……!!
と一瞬焦ったが、ドアの向こうから現れた制服の女の子を見てふぅと胸を撫で下ろす。
「やっぱりここに居た」
「……な、なんだ紗恵か」
「なんだとはなによ」
頬を膨らます彼女を見て、安心と同時に複雑な気持ちになる。
紗恵と僕は同じ病院で同じ日に産まれた、まさに生粋とも言える幼馴染みだ。
しかし如何せん、最近小言が多くて困っているのだ。
僕がいじめられているのを見て助けてくれるのは嬉しいが、僕の物が隠されたり落書きされたりしていると、それを逐一報告してくる。毎日の事なのだからわざわざ報告しなくてもいいよと言うのだが、全然わかってくれない。
そしていじめに対して諦めた態度を取っている僕が気に入らないらしく、その事に関しても合うたびに小言を言ってくる。
僕の事を気にかけてくれるのはやっぱり嬉しいんだけど、僕を庇うのが原因で仲の良い生徒以外からは無視されたりしているらしいし、彼女の為にもあんまり関わって来ない方が良いと思うんだよな……。
「それより皐! アイツらまたアナタの机に落書きしてたわよ!」
ほら、やっぱりだ。
僕はわかりやすく長い溜め息を吐いてから、気怠い気持ちで口を開く。
「良いって……何時もの事なんだから……」
「もー! いっっつも、何時もの事何時もの事って……っ!」
「あー、もういいから……!」
「なによその言い方! 私はアナタの事を思って……っ!」
紗恵が言葉をつんのめらせながら言うのを無視して、茹でたブロッコリーを噛じる。
そしてそれを見てまた紗恵が怒る。
何時もの事だ。
「……ふーん」
「……」
怒る紗恵の背後で、ちょっと笑いながら博麗さんが僕を見ていた。
「こんな子が居るなら、そりゃ平気か」
なんですかと視線だけで訪ねると笑みを深めながらそう返して来た。
平気かってなんですか。
全然平気じゃないですよ……。
「ちょっと!! 聞いてるの!?」
「聞いてない」
「ッ!」
あ、しまった。と言ってから気付く。
ストレートに聞いてないと言うのは流石に無しだ。
彼女も僕の事を思って言ってくれているのだから、幾ら何でもそこまで蔑ろにするのはダメだ。
「ご、ごめん!」
「……ううん、私もちょっとしつこかったわ」
「紗恵……」
顔を俯かせた紗恵が心配になり、恐る恐る下から顔を覗き込む。
しかし、顔を見る前に彼女はくるりと背を向けて「戻るね」とだけ言ってドアの方へと歩きはじめる。
「ちょっと待って紗恵!」
引き止めるが、紗恵は振り返らずに歩を進める。
ど、どうしよう。今までもこんな事はあったけど、こういう時の紗恵は機嫌が治るまで最低でも一ヶ月はかかる……!
オロオロしている僕に、博麗さんが見かねた様にコソコソと耳打ちをしてきた。
「何時もお前の気遣いには助けられてるって、言いなさい」
「え」
「いいから早く!!」
「あ、はい」
博麗さんに急かされ、ん゛ん゛と咳をしてからもう一度紗恵を呼び止める。
「い、何時も君の気遣いには助けられてるよ!」
「……え?」
紗恵がびっくりした様子で振り返った。
つ、次はどうすれば……!?
博麗さんに目配せをすると、次の言葉を耳打ちしてくれた。
「ボクがいじめに堪えて来られたのも、キミが側に居たからなんだ」
「い、いじめに堪えて来られたのも、君が側に居たからなんだ!」
「……皐」
「何時もは迷惑そうにしているけど、本当は感謝しているんだよ」
「何時もは迷惑そうにしてるけど、本当は感謝してるんだよ!」
「……そう、だったんだ……」
僕の……もとい博麗さんの言葉に、嬉しげにはにかむ紗恵。
よ、よし! なんとか機嫌を治したぞ……!
目線を横に向けると、真顔ながらサムズアップしてくる博麗さん。
ナイスです!!
そして博麗さんが口を開く。
よし、これで最後だ!!
「だから、これからもボクの側に居てほしい」
「だから! これからも僕の側に居てほしい!!」
「えっ!?」
目を見開き、両手で口を覆った紗恵を見て、僕も気付く。
これ、告白だ。
バッと隣を見ると、めちゃくちゃニヤけた表情をしている博麗さんが……!!
こ、この人……ッ!!
畜生! な、なんとか誤魔化さなくては!!
僕に告白されても紗恵が困るだけだ!!
「いやこれはちがっ」
「べ、別に……良いけど……」
「え」
……良い……の?
僕の時間が止まった。
肩まで伸びた艷やかな髪をくるくると首でイジりながら、紗恵が頬を赤らめる。
え、何スかその表情?
今まで一緒にいて一度も見せたことのない表情なんですけど。
え?
良いって?
何が?
告白をOKしたってこと?
ぁ…いやいや! 告白したのは博麗さんであって僕じゃ……いや僕かぁ……ッ!!
く、くそ!!
守護霊かと思ったらとんだ疫病神だ!!
……や、別に紗恵と付き合うのが嫌ってわけじゃなくて……付き合えるならこちらこそよろしくお願いしますって感じで……っ
ち、違う違う!!
ダメだダメだ!
僕は紗恵以外のクラスメイト全員に無視されてるんだぞ!?
そんな僕と付き合ってしまえば、彼女にも今まで以上の迷惑がかかってしまう!!
それだけは避けなければ
「この子に迷惑かけないように、アンタが頑張んのよ」
「!!」
まるで思考を読んでいるかの様に、博麗さんが強い声色で囁いた。
……確かに、そうだ。
僕が、自分がいじめられてる事を何時までも善しとしているのがそもそもの原因だ。
僕がいじめられていなければ、紗恵もこんなに気を遣う事も無くなる。
そうか、僕が変われば。
ゆっくりと、言葉を紡いだ。
「……紗恵」
「は、はい!」
「ぼ、僕、今は不甲斐ないかもしれないけど……! これから変わっていく様に努力するから!!」
「……うん」
「だから、これからも僕の事、……支えていて欲しい」
「うん……! 」
すっかり影の消えた彼女の笑顔は、とても素敵なものだった。
赤らむ頬とうるうるとした涙目に思わずにドキリとしながら、彼女のもとへ歩いていく。
……今まで当たり前過ぎて気付けなかったけど、こんなに綺麗で優しい人が、ずっと側に居てくれたんだ。
それはあまりに。自覚するのも怖いくらいに幸せな事で、今も正直言うと何が何だかわかってなくて……。
……でも、これだけはわかる。
この人さえ居れば、僕は何者にも引けを取らないくらいに強くなれるんだ。
いじめ? 今まで堪えてこられたんだ。紗恵の気持ちがわかった
今、怖いものなんて何にも無い。
目の前まで近付いた紗恵を、優しく抱きしめる。
「紗恵……」
「皐……」
そして、二人の唇が……唇が……
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
予鈴で両者が意識を取り戻した。
「……あ、はは。そ、そろそろ戻ろうか?」
「そっそうね! 次の授業の準備をしないと!!」
二人して顔を真っ赤にさせながら、お互いがお互いの顔から視線を背ける。
あ、危ない危ない……。
勢いに任せてマジでキスする所だった……。
「じ、じゃあ、私先に戻ってるね!」
「う、うん……」
ドギマギしながら返すと、紗恵は小走りで屋上から出ていってしまった。
暫く呆然と彼女の去っていった開いたドアの方を見ていると、階段の下から微かにだが、ご機嫌そうな鼻歌が聞こえてきた。
「……」
「やるじゃない。ちょっと見直したわ」
横から機嫌の良さげな博麗さんの声が聞こえるが、僕はそれに返す気力が無かった。
この短い時間に、余りにも容量オーバーな出来事が起き過ぎて、もはや思考する能力もゼロに等しかった。
「……」
「……皐? どうしたの?」
「……」
「ちょっと? この後も座学があるんでしょ? ……皐〜? ホントに遅れちゃうわよー」
その後、博麗さんの本気の呼びかけに意識を取り戻し、またもや時間ギリギリに教室へ滑り込んだ。
一瞬こちらをみた紗恵と目が合ったが、彼女は顔を赤くして直ぐに視線を戻してしまった。
多分、僕の顔も赤くなっていた事だろう。
ニヤニヤヒソヒソと何時もの様にザワつくクラスメイトを無視して、席に着く。
拭い消した筈の机の落書きがまた書かれていたけど、それどころではない僕は火照った顔を冷やす為に、教科書とノートの表紙を必死に顔に押し付けていた。
まだ全然終わりませんから。
なんだか霊夢さんおマセですけど、男つくったことありませんから(暴露)
まだまだ霊夢さんはっちゃけさせますから。
どうぞ最後までよろしくお願いします。
失礼しました。