そう、それはある冬の日のこと。
三人は二人になった。
俺たちの小さな小さな抵抗は、濁流のような大きな何かに吸い込まれて、消えていった。
あれで良かったのだろうか、そんなことを自身に問い続けるけれど、答えは出ない。そもそも、明確な答えなんて存在しないのだろう。
あったとしても、考えるだけ無駄だ。もう答え合わせは出来ないのだから。
──────
終業のチャイムと共に、バタバタと、あわただしい足音を鳴らしながら、クラスメイトが帰路につく。
放課後、友人と談笑していた奴も部活に精を出していた奴も、三年の秋ともなると、受験ムード一色になっていく。話題も、遊びや、色ぼけた恋愛の話だとか、そういうものから、模試の点数や志望校、予備校の話になっていくのを見ると、うちの高校は一応進学校だったんだな、と再確認する。
とまあ、そんな感じで、俺も受験生の例に漏れず、勉強すべく、図書室に向おうとしたところ、後ろから肩をガシっと掴まれる。
「比企谷。ちょっといいか?」
「……はい?」
「……そんな嫌そうな顔をするな。ちょっと頼みたいことがあってな」
そう言いながら、平塚先生が、頭をがしがし掻く。
……何か面倒なことなりそうだ。H(八幡)アラートが脳内で警鐘を鳴らしている。
「……なんですか?」
「今日、由比ヶ浜が風邪で休みだったろう? 毎日あいつに受験対策用のプリント渡してるんだが、ちょっと家まで、届けてくれないか」
「なんで、俺が……。というか、由比ヶ浜が次に学校来た時、渡せばいいじゃないですか」
「いや、それもそうなんだが……。半年間、毎日ずっと続けてきたからな。ここで途絶えさせるのもなんだか落ち着かないんだ」
どんな理由だよ……。
この人、絶対毎日のログインボーナスとか逃したら落ち込むタイプだろ。
「というか、俺じゃなくて、女子に頼んでくださいよ。あいつも俺が行ったら落ち着かないでしょ」
「別に知らない仲じゃないだろう? 頼めないか?」
「……」
それはそうなんだが、俺と由比ヶ浜は──────
「……それとも、まだ、何かわだかまりがあるのか?」
「っ! ……ありませんよ、んなもん。わだかまりなんて恰好良いもの、生まれてこの方持ったことありませんし」
「じゃあ、頼めるな。よし!」
そう言いながら、背中を強くたたかれる。痛いって。
気付いたら、手にはプリントの入ったクリアファイルを持っていた。
マジで、この人の頼みを断れたことが無い……。俺ってマジ社畜……。
きっと、社会に出ても、上司の頼みを断れず、仕事が積み重なり、忙殺され病気になる。作り笑いを浮かべながら「はい」と返事するだけのロボットになるんだ……。やっぱり専業主夫になるしかない。
「わかりましたよ……」
「悪いな」
平塚先生が、腕を組み、ウンウンと、頷く。
いや、アンタ、断らせる気無いでしょ……。
まあ、勉強は家ですればいいか。
……ただ、ちょっと会ってプリントを渡すだけだ。なにも問題なんてない。