今度は綺麗なラブコメを   作:三山おなじ

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1-1. 弱点は年上の女性

そう、それはある冬の日のこと。

 

三人は二人になった。

 

俺たちの小さな小さな抵抗は、濁流のような大きな何かに吸い込まれて、消えていった。

 

あれで良かったのだろうか、そんなことを自身に問い続けるけれど、答えは出ない。そもそも、明確な答えなんて存在しないのだろう。

 

あったとしても、考えるだけ無駄だ。もう答え合わせは出来ないのだから。

 

──────

 

終業のチャイムと共に、バタバタと、あわただしい足音を鳴らしながら、クラスメイトが帰路につく。

 

放課後、友人と談笑していた奴も部活に精を出していた奴も、三年の秋ともなると、受験ムード一色になっていく。話題も、遊びや、色ぼけた恋愛の話だとか、そういうものから、模試の点数や志望校、予備校の話になっていくのを見ると、うちの高校は一応進学校だったんだな、と再確認する。

 

とまあ、そんな感じで、俺も受験生の例に漏れず、勉強すべく、図書室に向おうとしたところ、後ろから肩をガシっと掴まれる。

 

「比企谷。ちょっといいか?」

 

「……はい?」

 

「……そんな嫌そうな顔をするな。ちょっと頼みたいことがあってな」

 

そう言いながら、平塚先生が、頭をがしがし掻く。

……何か面倒なことなりそうだ。H(八幡)アラートが脳内で警鐘を鳴らしている。

 

「……なんですか?」

 

「今日、由比ヶ浜が風邪で休みだったろう? 毎日あいつに受験対策用のプリント渡してるんだが、ちょっと家まで、届けてくれないか」

 

「なんで、俺が……。というか、由比ヶ浜が次に学校来た時、渡せばいいじゃないですか」

 

「いや、それもそうなんだが……。半年間、毎日ずっと続けてきたからな。ここで途絶えさせるのもなんだか落ち着かないんだ」

 

どんな理由だよ……。

この人、絶対毎日のログインボーナスとか逃したら落ち込むタイプだろ。

 

「というか、俺じゃなくて、女子に頼んでくださいよ。あいつも俺が行ったら落ち着かないでしょ」

 

「別に知らない仲じゃないだろう? 頼めないか?」

 

「……」

 

それはそうなんだが、俺と由比ヶ浜は──────

 

「……それとも、まだ、何かわだかまりがあるのか?」

 

「っ! ……ありませんよ、んなもん。わだかまりなんて恰好良いもの、生まれてこの方持ったことありませんし」

 

「じゃあ、頼めるな。よし!」

 

そう言いながら、背中を強くたたかれる。痛いって。

気付いたら、手にはプリントの入ったクリアファイルを持っていた。

マジで、この人の頼みを断れたことが無い……。俺ってマジ社畜……。

きっと、社会に出ても、上司の頼みを断れず、仕事が積み重なり、忙殺され病気になる。作り笑いを浮かべながら「はい」と返事するだけのロボットになるんだ……。やっぱり専業主夫になるしかない。

 

「わかりましたよ……」

 

「悪いな」

 

平塚先生が、腕を組み、ウンウンと、頷く。

いや、アンタ、断らせる気無いでしょ……。

 

まあ、勉強は家ですればいいか。

……ただ、ちょっと会ってプリントを渡すだけだ。なにも問題なんてない。

 

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