今度は綺麗なラブコメを   作:三山おなじ

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1-2. 弱点は年上の女性2

「……ここだったか」

 

駅から少し離れ、物静かな住宅街を真っ直ぐ進む。広めに確保された歩道の脇に聳え立つ欅も、その赤い葉を落とし、落ちた葉が、歩道を赤い絨毯のように色染めている。

 

ここに来るのは、いつぶりだったか。花火大会……? 雪ノ下が、まだいた時にも通ったな、そういえば……。

 

色々考えているうちに、由比ヶ浜の家の前につく。

 

千葉の平均的な一軒家。ちょっと違うのは、全体的にほんわかしている。そう、ほんわかだ。うちみたいなザ・普通って感じではない。壁の色とかほんのりクリーム色で目に優しいし。それに加えて、可愛らしい表札、その上に、小さな木彫りの犬がちょこんと鎮座している。そんなどこか抜けたような部分が、由比ヶ浜の家らしいな、と思う。

 

というか、こんな可愛らしい家のインターホンを俺が押していいのだろうか。な、なんか妙に緊張してきた。 押したら由比ヶ浜が出てくるんだよな?

 

思わず、周りをキョロキョロ見渡してしまう。

すると、主婦っぽい人と目が合ってしまい、反射的に頭を下げる。

 

……やべえ、絶対不審者だと思われた。……もうやだ。八幡おうちかえる。

 

考えてみれば、インターホンを押す必要なんかない。ポストにクリアファイル突っ込んどけばそれでいいじゃないか。なんでこんなことに気付かなかったんだ。

 

そう考え、ポストにクリアファイルを入れようとしていると、

 

「あれ、ヒッキーくん?」

 

「……え?」

 

庭先からひょこっと顔を出したお団子頭の美人に話しかけられた。

 

「え~! ヒッキーくんじゃない! 久しぶり~!」

 

そうだ、由比ヶ浜の母親だ。

 

「え、あ、どうも……」

 

「なに、なに、もしかして、結衣のお見舞いに来てくれたの~?」

 

「あ……、お見舞いとかではなく、これ、先生に頼まれて。それじゃ俺はこれで……」

 

ポストに入れようとしていた、クリアファイルを渡す。

 

「そうなんだ! ありがとう、ごめんね~。……ん~? そっちの手に持ってるのはもしかして……」

 

「あ、いや」

 

にこにこしながら、俺が左手に持っていた、コンビニの袋を指差される。思わず体の後

ろに隠してしまう。

 

平日だし、一人かと思って一応コンビニで色々買っていたんだが、母親がいるなら問題ないだろう。

 

「別になんでもないですよ。それじゃ……」

 

「むう」

 

ガハママが、ほっぺをぷくっと膨らます。

いや、え、何この人妻……可愛すぎるんですけど……。女子大生すぎるんですけど……。

 

「えと、何か?」

 

「お茶入れるから、上がってってよ~♪」

 

「いや、俺は……」

 

「うう……ヒッキーくんは私のこと嫌い……?」

 

「えっ、いや、ちがっ」

 

上目遣いで目を潤ませ、こっちを見上げるガハママ。近い、近い。

 

いろはすよりあざといよこの人妻……。なんだそのくりくりお目目は。

抵抗すると、もっと火傷をしそうだ。諦め、嘆息する。

 

「少しだけ、お邪魔します……」

 

「わーい、いらっしゃーい♪」

 

ガハママが俺の腕を引いて歩き出す。

頭の中に雪ノ下の姉が過る。向こうは黒さが滲み出ていたからか、何とでも言い返せたが、ガハママに関しては変なことは言い辛い……。

 

この押しの強さは由比ヶ浜には遺伝しなかったようで。いや、あいつも押しが強いっちゃ強いか……。

 

「あ、そうだ。ヒッキーくん」

 

「……? なんですか?」

 

「……うちのインターホン、押しても別に爆発したりしないよ?」

 

「見てたんすか……」

 

「ふふふ」

 

平塚先生といい、雪ノ下姉にといい、ガハママといい……。やっぱり年上の女性は、苦手だ。

 

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