今度は綺麗なラブコメを   作:三山おなじ

4 / 4
1-4. 現役(嘘)女子大生ガハママ2

由比ヶ浜の家で、ガハママに勉強を教えてもらうこと二時間。区切りついた所で、休憩になった。

 

俺は驚いていた。

 

答え合わせで間違えた所をガハママに解説して貰う、という形で勉強を進めた。

 

解き方、問題に関連した構文や、その応用など細かく、さらにわかりやすく教えてくれる。それも予備校の講師なんて及びじゃないほどに。あの由比ヶ浜の母親だぞ。信じられない……。

 

「コーヒーお砂糖入れるー?」

 

「あ、多めにお願いします。すいません」

 

「いいえー♪」

 

ガハママが可愛らしい犬のマグカップを置いてくれる。

 

頭をぺこりと下げ、口をつける。んまい。

 

「あ、あの」

 

「なあに?」

 

「失礼なんですけど、こんなに頭良い人だとは思ってなくて……」

 

「……どうして、結衣が総武高にいると思う?」

 

こういうカラクリか……。

 

由比ヶ浜が何故あんなアホなのに総武高にいるのか、謎だったんだ。長年の疑問が今解消された。最強のママだ……。

 

「でも、結衣も最近自分で勉強し始めちゃって。ママにはまだ頼らないんだって。ママ寂しいわ……」

 

「もったいないような気もしますけど、良いことじゃないですか?」

 

俺がそういうと、ガハママは、優しそうな、何かを慈しむような顔になる。

 

「そうなのよ……、結衣すごく頑張ってるのよ。急に大人っぽくなっちゃって」

 

そんな顔を見て、やっぱり母親だな、って思う。

 

そして、雪ノ下の母親の冷たい表情がふと、頭を過る。

彼女にも、こんな一面がもしかしたらあったのかもしれない。今は想像しか出来ないけれども、あったらいいな、と思う。

 

今はもう、そんな無責任な想像しか出来なくなってしまったけれど。

 

コーヒーを啜りながらそんなことを考えていると、

 

「ねえ、結衣が急に大人っぽくなったのって、やっぱりヒッキーくんが関係あるの?」

 

「……いや、あいつが勝手に頑張ってるだけですよ」

 

「じゃあ、大人っぽくなったとは思うんだ」

 

「ま、まあ……」

 

そう、由比ヶ浜は変わったのだ。かつての天真爛漫さは、少し身を潜め、落ち着いたというかなんというか、大人びた表情をするようになった。それが良かったのか、俺にはわからない。言い方を少し変えると、強くなったとも言えるかもしれない。

原因は色々あったのだと思う。もしかしたら、俺たちが関わったことによって、考えなくて良いことをたくさん考えてしまったのかもしれない。

 

……いや、それは思い上がりだな。誰かに影響を与えたなんて思い込みなんて流石に痛々しすぎる。

 

そもそも由比ヶ浜自体が気付いていないかもしれない。そんなもんはどんなに頭を回転させたってわかるはずがない。考えるだけ無駄ってもんだ。

 

「ありがとね、ヒッキーくん」

 

「……はい? な、なんですか急に」

 

「んー、なんとなく? 言いたくなったの」

 

「は、はあ……」

 

空になったマグカップをテーブルに置く。

勉強見てもらっておいてなんだが、同級生の女の子が住んでいる部屋に、あまり長居するのも良く無いだろう。

 

「それじゃ、俺はこれで。勉強見てもらってありがとうございました」

 

「えー、帰っちゃうの~? ママともうちょっとお喋りしようよ~」

 

「いや、もう結構長居しちゃってるんで……」

 

「そう……勉強したら用済みなのね……所詮おばさんだものね……」

 

ガハママがしゅんと俯く。

 

や、やり辛ぇ……。

 

「つーか、残ったとして、何の話するんすか」

 

ガハママが、ぱあっと顔を上げる。

 

「ふふ、こういうのがあるんだけど」

 

そう言いながら、テーブルの下にあるカラーボックスから一冊の本を取り出す。

 

「小っちゃい頃の結衣……、見たくない?」

 

「べ、別に……」

 

 言うと、ガハママはニヤニヤしながら、アルバムをぺらっと開き、おそらく小学生ぐらいの由比ヶ浜の写真を見せてくる。

 

某遊園地で、マスコットに囲まれてぼろ泣きしてるロリガハマ。え、可愛すぎるんですけど……。はなみず出てるよガハマちゃん……。

というか、子役と言われても、疑わぬ美少女具合に驚きを隠せない。

 

「こ、この頃からお団子頭だったんすね」

 

「……もっと見たい?」

 

 少し得意気なガハママがこちらをちらっと見る。思わず喉を鳴らす。

 

「……す、少しだけ」

 

 そう。少しだけ。少しだけ見たくなってしまった。

 許せ、由比ヶ浜。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。