私のお家の裏には小さな畑があります。
お父さんの畑です。
お父さんは畑で、ジャガイモと人参と玉葱を育ててます。
最初は表のお庭に作ろうとして、お母さんに怒られて、裏の林の木を切って畑にしたそうです。
1年に2回野菜が取れます。
お父さんはこの畑を大事にしてます。
私も植える時と掘り起こす時はお手伝いをします。
でも、育てるのは、いつもジャガイモと人参と玉葱だけです。
なので、いつもお家にはジャガイモと人参と玉葱は沢山あります。
余ったら、お母さんと一緒にご近所さんにおすそ分けをしてます。
美味しいとみんな言ってます。
でも、お父さんはおすそ分けする野菜を悲しそうに見ます。
ジャガイモと人参と玉葱は日本から、送って貰ったものを育ててるそうです。
お薬などは使わない。ムノウヤクで育ててるとお父さんは言ってました。
お父さんに、なんでジャガイモと人参と玉葱しか育てないのか聞いてみました。
「うむ。ジャガイモと人参、玉葱は野菜の基本だ。これがあれば、お母さんがこの野菜を使って美味しい料理を作ってくれる」
「お母さんのご飯は、ジャガイモ、人参、玉葱が無くてもなんでも美味しいよ」
「うむ…そうなんだが……」
お父さんは何か言い難そうでした。
今日の夕ご飯はお母さん特製のカレーとシーフードサラダでした。
お父さんは無表情に見えますが、とても嬉しそうでした。
「お父さん。お母さんのカレー大好きだね」
「うむ、お母さんが作ったカレーは最高だ」
「ありがと、でも、結構大変なのよ。日本のルーやらをわざわざ、あやめ(かなめの妹)に送ってもらってるし、宗介が作ってるジャガイモと人参、玉葱だって、元はあやめに送ってもらったものなんだから。あんたがこれじゃなきゃダメだって言うから」
お父さんがお外でカレーを食べてるのを見たことがありません。家でお母さんのカレーしか食べないです。
私もお母さんのカレーが大好きです。甘いからです。お外のカレーは辛くて食べれないからです。
きっとお父さんも甘いカレーが大好きなんだと思いました。
私はわかりました。お父さんがジャガイモと人参と玉葱しか育てない理由です。お父さんはきっとお母さんのカレーが食べたいからです。
「でも、宗介は何でそこまでカレーにこだわるの?」
「……俺にとって懐かしい味、日本で言うおふくろの味とはこのカレーであり、肉じゃがだからだ」
「なによそれ」
「俺は君に出会うまで、食料とはエネルギーを補給するための手段だとしか思っていなかった。しかし、君に出会い。君が作ってくれたこのカレーや肉じゃがを一緒に食べて、料理と言うものを知った。あの満たされた幸福感は今も忘れない」
「………そんな、大したものじゃないってば」
お母さんは顔を赤らめていました。
「いいや、俺の世界観は一気に変化した。衝撃だった。無感動だった俺の感情は動かされた」
「って、料理だけかい!」
「いいや、君がそこにいて、一緒に食べてくれるからこそだ」
「ちょ………宗介」
「今も君がいて、アスカもいる。そして今日も君が作ったカレーが食べられる。これ程幸せなことはないだろう」
「…………もう、やだ…今、アスカもいるのにそんな事言わないで」
お母さんは顔を真赤にして俯いたままでした。
夕ご飯が終わって、あやめお姉ちゃんとスカイプでお話しました。
お礼を言うためです。カレーのルーと私に日本の美味しいお菓子を送ってくれるからです。
あやめお姉ちゃんはお母さんの妹ですが、おばちゃんと言ったら泣いちゃったので、お母さんにお姉ちゃんって呼んであげなさいって言われました。なんでなんだろう?
あやめお姉ちゃんに今日のお父さんとお母さんとカレーの事をお話したら、「料理がうまく無いと結婚できないのか」って、やっぱり涙を流していました。うーん。何で泣いちゃうのかな?
それと、あやめお姉ちゃんが最後に言ってくれました。
「アスカちゃんに弟か妹が出来るかもね」
私に、弟、妹……出来たら嬉しいです。
でも、なんで、お父さんとお母さんとカレーの話をしたら、弟と妹ができるのかわかりません。
今度、お母さんに聞いてみようと思いました。