私のお父さん   作:ローファイト

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私のお父さんのお友達のベンおじさん

今日はアメリカからベンおじさんがお家に遊びに来ました。

お父さんの昔のお友達でとても背が高くて力持ちのおじさんです。

ベンおじさんは日本のかわいらしいアニメをお土産にいつも持ってきれくれます。

いつも、後でそのアニメの感想を聞かれたり、へんな言葉は無いかと聞かれます。

 

でも今日のベンおじさんは少し変です。

 

「カナメさん!!ソウスケ!!頼む。この通りだ!!」

「クルーゾーさん。そんなの困ります」

「後生だ!!こんなことは君たちにしか頼めないんだ!!我が社の、いや俺の生涯で最高の仕事になるはずなんだ!!」

「元隊長殿、頭を上げてくれ。まずは理由を説明してくれ」

 

ベンおじさんはお父さんとお母さんに床に頭を付けて何かをお願いしてました。

私はこのお願いの仕方を知ってます。日本の伝統文化の一つ土下座です。

教科書にものってました。

 

「この程、日本で制作された児童名作アニメのリメイクアニメ映画、『アルプスの森のハイチ』の欧米、北アメリカでのパッケージ販売権を俺の会社が獲得したんだ!!その吹き替えを、主役のハイチ役を是非、アスカくんにお願いしたい!!」

「クルーゾーさん。なぜ、素人のアスカなんですか?しかも、わざわざ遠いところまで来られて、アメリカにもいい子役や声優さんが居るじゃないですか」

「アメリカの声優じゃ、あのハイチの愛らしくも元気な子の表現はできないんだ!」

「元隊長殿、アメリカにも子役は沢山居るだろう?」

「それこそダメだ!彼奴等は親の成金主義に染まったモグワイ(子供)の皮をかぶった汚れたグレムリン(悪魔)だ!ピュアなハイチの役などできようはずもない!!」

「マオさんとクルツくんところのクララちゃんもアスカと同じ年ですよ?」

「ダメだ!ダメだ!メリッサのところの子は論外だ!!この感動シーンをなんて読んだと思う?『じじい!ケツに銃口突っ込むぞ!このファッキン野郎!』だぞ!!なんでそうなるんだ。ここはおじいさんに怒られたハイチが、抱きついて健気に泣いて謝るシーンだぞ!!」

「…………それはさすがに」

「だろ!?」

「元隊長殿。それがどのようなものかはわからんが、なぜ家のアスカなんだ?」

「アスカくんは素晴らしい!現代の子供にはないピュアで清純な心をもったままだ!こんな子はもう全米中探しても居ない!!」

「…………………どうする宗介?」

「元隊長殿、俺たちの境遇は知ってると思う。まだアスカは9歳だ。今しばらくは静かに暮らしたい」

「ソウスケ!そこを曲げて頼む!!キャスト名は出さない。絶対漏らさない!録音はすべてここで行う!!頼む!!」

「宗介……」

「了解だ。だが、最終的に決めるのはアスカだ」

「ありがとう!!ありがとう!!」

 

 

ベンおじさんに『アルプスの森のハイチ』の声をやってくれないかと言われました。

楽しそうなので、「やってみたい」と返事しました。

 

ベンおじさんはすごく喜んでました。

 

そして、私はお家のリビングでアニメ映画の吹き替えというものをやりました。

最初は日本語の『アルプスの森のハイチ』を見せてもらいました。

その後、日本語の本を渡してもらい。ベンおじさんに私の好きに英語に訳していいと言われました。

声の入ってない『アルプスの森のハイチ』に日本語の本を英語に直しながら、ハイチのように喋りました。

1人では寂しいので、お母さんがハイチのお友達で街のお嬢様クラリス役、お父さんが羊飼いの男の子ピータン役、ベンおじさんがハイチのおじいさん役、そして、アルがおじいさんの犬のオスカル役を代わりにやってくれました。

お父さんやお母さんとアル、ベンおじさんとみんなで出来たので楽しかったです。

 

ベンおじさんは吹き替えが終わると、

「グレート!!まさしくエンジェル・ボイス!!」

と言って涙を流しながら褒めてくれました。

 

 

後日、ベンおじさんから『アルプスの森のハイチ』のブルーレイディスクが送られてきました。

私の声と、他は本番の知らない人たちの声でした。

家族で一緒に見ましたが、最初、ハイチは私の声じゃないと思いました。

お母さんにその事を言うと、自分の声は話している声とは違うふうに聞こえるのが普通なのだそうです。私の声はこんな声なんだと、声が高くてびっくりしました。

 

お母さんが言ってました。世界中の大きいお友達のお兄さんとお姉さんに人気で沢山売れたのだそうです。

大きいお兄さんとお姉さんって、どれくらい大きいのかな?ベンおじさんのお友達だから、お父さんより、きっと大きいのだと思いました。

 

そして、サプライズと書いてあった箱には、お父さん、お母さん、アル、ベンおじさん。みんなの声が入った『アルプスの森のハイチ』のブルーレイディスクが入ってました。

私はこっちの方が好きです。みんなで楽しく出来たからです。

お父さんはみんなの声の『アルプスの森のハイチ』を見てすごく喜んでました。

お母さんは少し恥ずかしそうにしてました。

お父さんは自分の宝物にすると言ってましたが、お父さんとお母さんとアルと私のみんなの宝物です。

 

 


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