私はお父さんと買い物に近くの雑貨屋さんに歩いて行きました。
お家から歩いて30分ぐらいかかります。
車だと5分ぐらいですが、お父さんと手を繋いで散歩ができるので、歩いて行くほうが楽しいです。
帰り道、途中から石で出来た狭い道に変わります。
すると前から、近所のお兄さん達3人が向こうから歩いてきました。
すると、お兄さん達3人は、道の端っこに横にならんで、背筋を伸ばしてお父さんに敬礼します。
「「「軍曹!こんにちはであります!!」」」
丁度前を通ると、お父さんに大きな声で挨拶をします。
「うむ。君たちも元気で何よりだ」
お父さんはそう言って挨拶を返します。
私もお父さんの後ろに隠れるようにこわごわお辞儀をします。
急に大きな声だすから、びっくりします。
もう、半年になりますが、慣れません。
真ん中の大っきなお兄さんが中学2年生のビリーくん
左の小柄なお兄さんが中学1年生のダスティくん
右の太っちょのお兄さんが中学1年生のフランクくん
半年前、3人のお兄さんはイタズラばかりする不良というもので、ご近所さんは皆迷惑していました。
半年前のあの時、私とアルはお隣のスティーブおじいさんにお届け物をしに家の門をでると………
「ヒャッハー流石は日本車だぜ!ご機嫌だな!」
「兄貴!やっぱりコンバインはクボタに限るぜ!」
「兄貴!!ジャップ夫婦の娘がいるぜ!!」
不良のお兄さん達が、家の前の石でできた小道を塞ぐように、小麦を刈る大型コンバインを3人乗りで走って来ました。
コンバインは1人乗りなのに、3人で乗るなんて不良だと思いました。
アルは私の前に出て、守るように一吠えしてくれました。
「なんだこの犬は?やる気か!?」
「兄貴、こんな犬刈っちまおうぜ!!」
「ジャップの娘のくせに可愛い面しやがって、俺っちのヨメにしてくれるぜ!!ヒーハー」
アルに向かって大きな音を立てながらコンバインを走らせてきます。
アルが刈られるのは嫌なので、アルを抱っこして、逃げようと思いましたが、アルを掴んでも重いので抱き上げられませんでした。
このままだと、私もアルも小麦みたいに刈られてしまいます。
でも、
ズダダダダダダダダダッ!!
お父さんが格好良く出てきて、H&K MP7を構え地面に威嚇射撃をしました。
「うむ、大丈夫かアスカ?」
お父さんは振り返り私の頭を優しく撫でてくれました。
私は「お父さん!」と言って、お父さんの背中に抱きつきました。
3人は驚いた顔をしてました。
「兄貴……あのジャップ、銃を撃ちやがった………」
「はぁ?あんなのただのモデルガンだ!」
「びびったのか?相棒!」
「貴様ら!アスカは嫁にやらん!俺を倒す事ができるのなら考えてやらんでもない!まあ、貴様らごとき技量では一生かかっても無理だがな!」
「何言ってんだ。このおっさん?いいからやっちまうぞお前ら!」
「兄貴……あのジャップ…変な噂が………」
「ガッテン!コンバイン!発進!!ヒーハー!!」
再び、コンバインが迫って来ました。
「新兵にありがちな驕りだな。相手との戦力差も理解出来ないとは………」
お父さんはそう言って、私にサングラスとヘッドホン型の耳栓を素早く付け………
バスーーーーーン!!
キラーーーーーン!!
お父さんは暴徒鎮圧用のスタングレネードをお兄さん達に投擲しました。
「ぎゃーーーーー!!目が!目が!」
「ああああ!!耳が目が!!」
「はひーーー!!」
スタングレネードの100万カンデラの閃光と170デジベルの爆音で、お兄さん達はコンバインから転げ落ち、地面を転げてました。
「アスカ。今から、この新兵共に教育を施してくる。届け物はお母さんが帰ってから一緒に行くと良い」
お父さんはそう言うと……転げ回っているお兄さんたちを引きずって、道を挟んだ畑の向こうに連れて行ってしまいました。
それから、次にお兄さん達に会ったら、あんな感じになってました。
近所のおじさん、おばさんたちは喜んでいました。
しばらくして、お兄さん達のお父さんやお母さんは私のお父さんにお礼にきました。
でも、帰ってきたお母さんにその日あった事を話すと、おでこを手で抑えて、頭痛がすると言ってました。
でも、なんでお兄さん達はお父さんを軍曹って呼ぶんだろう?
それと、お父さんが言ってた事を思い出しました。
お父さんより強い人じゃないと、私はお嫁に行けないそうです。
お父さんより強い人は私は知りません。
そうなると、私はお父さんのお嫁さんになるしかありません。
お父さんと結婚するのは嬉しいけど、お母さんがきっと泣いちゃうので、お父さんと結婚は出来ないです。
私はしばらく考えました。
……一生結婚出来ないかもしれません。